見出し画像

花日和 Hana-biyori

読書会『燕は戻ってこない』#2 

『燕は戻ってこない』(桐野夏生)のオンライン読書会、勝手な備忘録です。(ネタバレあり)
なんか間違っていたらこっそり教えて下さい。

●風太さん
私は「OUT」以来だからもう10年くらい読んでないんじゃないかと思って久しぶりで読みました。

皆さんおっしゃるようにスイスイ読めてすごくうまい。たしかに誰一人共感できないけれど、リキの心情はすごくリアリティがある。

ただ、最後の結末はポンと投げられたような終わり方。それまで地に足が付いて読まされてきたのにこれでどうするのと釈然としないまま終わったような気がする。


■生殖医療に対する腑に落ちない思い

それはたぶん、私がずっと生殖医療を読んでて気持ち悪くてしょうがなかったから。

リキは単に子宮を貸すだけという形ではあるけど、育てるためのものは母体から栄養、食事、考えたことや細胞など、それも育てるために必要な要素でその子を形作っていくんじゃないか。

実際の生殖医療では自分の卵子じゃないのに(子宮で)育てる代理母がいるわけで、その場合は3人の子になるんじゃないかなとか考えてしまう。

逆にそういう複雑な要素が出てこないためには人工子宮で育てた方が割り切れるような気がして。このシステム自体がどうにも気持ち悪くて納得できなくてもやもやしながら読み進めてしまった。

持てるものたちの思想

ちょっと面白いと思ったのは、基の母親がなんで子供(孫)が欲しいかというと、自分の遺産が嫁さんの親戚に行くのが嫌っていう。そこ?って。どうでもいいじゃん、自分が死んだ後のことなんてと。

でも考えてみると王家が自分の血筋にこだわって子孫に跡を継がせたい心理と同じ。これは支配層というか持てるものたちの思想なんだってことが表れている。

■出産後のリアル

リアルだったのは、産んだ後のリキが「こんなに大変だと思わなかった」という所。私も産んだら普通に育てて、可愛く楽しく眺めていればいいんだと思っていたけど、大変だったんですよ。産んだ後が大変なので、リキの考えが産んだあと変わってくるのはリアルだった。

単純に子育ての大変さより自分の体がしんどいっていう意味でも大変。お母さんなんだからしっかりしなさいと言われるのもすごい嫌で。急にお母さんになれるわけない。そんな事を色々思い出しました。


***

ありがとうございました!

私も産んだときのことを思い出して、リキの

“当初は、赤ん坊を産んでも、自分ならもっとクールに処せると思っていた。 それなのに、この土砂降りのように濡れそぼった感情はどこからくるのか。”

という思い(表現)に妙に共感しました。これは母というより“産んだ人”とか“産まれたての生物の面倒をみる者”の実感ですね。誰もがこうとは限りませんが。


続きます!



 
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「読書」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事