映画化もされた文乃ゆき/プランタン出版 (2014/10/27発行)の純粋青春BL漫画。
中3で難聴になり心を閉ざした航平と、太陽のように明るい太一。対象的な二人が大学で同級生として出会い、ノートテイク(授業内容をまとめるボランティア)で…というよりはお弁当をきっかけに親しくなっていく。
太一のよく通る声や美味しそうにお弁当を食べる姿に惹かれていく航平は、太一に「聴こえないのはおまえのせいじゃないだろ」と言われ救われる。しかし難聴が進んでしまい、太一の声が聞こえなくなることや太一が離れていくことに怯えはじめ…。
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母の家に向かう途中で、積極的に癒やされたくて数年ぶりに電子で再読です。最初に読んだのは2014年末で、好評につき続編が6巻まで出ていて最近それらを立て続けに読んだところかなり良かったため、1巻は借りて読んだのを買い直しました。
太一は両親が離婚し祖父に育てられているのですが、彼の行動力とか今時珍しい直球にアツい男な感じなのはやはりじいちゃん子だからでしょうか。航平の繊細な優しさに思い至る太一のモノローグにしびれ癒やされました。
ただ、再読して思ったのは太一はけっこう直情型で暴力的だなと。正義感が強いといえば聞こえがいいけれど、大学の先輩が「不幸自慢うぜえ」(自慢などしてませんが)と言ったからといって、太一が殴っていいってことはないでしょう。周囲の女子や同級生の航平に対する態度が、「イケメンだからちやほやする(男子は妬む)、難聴だから可哀想or面倒くさい扱いする」といったクズ的ステレオタイプのため、一人だけまっとうに航平に接する太一がやけにいいヤツに感じてしまう。
でも、読んでいるときはそういうことはあまり感じず、太一はやっぱり魅力的ないい子です。
BLである必要あるのかというレビューも見かけますが、確かに男女ものでも成立する、難聴の人の生きづらさに理解が深まる話です。でも、航平の絶望感や抑圧感って「難聴だから太一に迷惑かける」だけじゃなくて「同性だから(好意を)嫌がられる」もプラスされて葛藤がすごいことになっちゃう。最新刊まで読んでみると、そういう葛藤を何度も乗り越えて、二人が関係を深めていくのがこのお話の魅力の一つなんだろうなと思います。
https://comic.pixiv.net/works/7985 ←ピクシブで少し読めます。