花日和 Hana-biyori

夕凪の街、桜の国

「この世界の片隅に」を読んだのでその流れで。
こうの史代 著「夕凪の街、桜の国」双葉社 (発行:2004/10/12)



終戦から10年後の広島。23歳の皆美は原爆投下直後の惨劇が脳裏に焼き付いて離れない。生き残ったことに罪悪感を感じ、幸せになることを拒絶しながらも表向きはふつうに明るく生きてきた。

普通の人の普通の生活が、原爆によって大きく変わってしまったことを強く感じる。話題にしなくても、あったことは無かったことには出来ない。

色々と知っているつもりだったけれど、知らなかった気づかなかった視点がまだまだあると気付かされた。一般市民のの、「その後」の暮らしだ。

「死ねばいい」と誰かに思われた、思われたのに生き延びたと考えながら生きていくこと。こんなモノローグがつらい。
「そしていちばん怖いのは あれ以来 本当にそう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったことに 自分で時々気づいてしまうことだ」

投下直後は自分が生き延びるので精一杯で、助けを呼んでくると言い残して戻れなかったこと、遺体から下駄を盗って履いたこと。酷いことをしたと思い続けて生きること。
幸せになってはいけないと自分を抑えながら生きること。

心や体に傷を負っているだけでなく、被爆者として差別を受けること。被爆者でありながら、自分も他の被爆者を差別してしまう複雑な思い。

どうにかして生き延びるしかなかった状況を、責められる人などいないだろう。でも、自分で自分が許せないということがある。

ずっとずっと心の深いところに傷として残り続け、なおかつ否応なしに身体を、命を奪いにかかる。しかも、幸せになりかけたその時だとは残酷にもほどがある。しかし、こういう人がたくさんいたのだろう。

しかし、物語はそれでは終わらない。
いまも、ずっと続いていると分かる孫子の代を描いた「桜の国」もまた違う意味で鮮烈だった。
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