浜岡原発永久停止裁判 原告団・弁護団・支援組織共同ブログ

 中部電力を被告にした浜岡原発永久停止裁判(静岡地裁浜松支部)の原告団・弁護団・支援組織の共同ブログです

原告の投稿  「原子力規制委員会「これからSPEED使わず」方針!」だって?!

2014年10月09日 19時28分23秒 | 各地のお知らせ・報告・投稿・発言など

原告の投稿  原子力規制委員会「これからSPEED使わず」方針!

 10月9日の「朝日新聞」朝刊で、原子力規制委員会が「これからSPEEDシステムは使わず実測に方針転換する」と出ていました。実測といいうといかにも放射線モニターがたくさんあるかのように思いますが、住民はたとえば静岡県内で

原子力規制委員会
 
というのを見ることができるくらいです。しかも大地震で停電になったら、これらの静岡県内のポストはどうなるのかな。静岡県内には34個所あって、うち浜岡原発周辺の御前崎市には11個所あります。あとは圏内各市に1個所くらいあるだけです。「反原発市長」で有名な湖西市には置いていません。意趣返しでしょうか。
 
 規制委員会方針では「5km圏内は即時避難」そして「30km圏内は屋内待避したうえで、周辺のモニタリングポストの実測値をもとに避難などの判断をする」と書いてあります。「周辺のモニタリングポスト」というのは県内のどこにどれくらいあるのでしょうか。
 
 しかも「30km圏外」のことは書いてありません。つまり、私たち浜松市民が「避難するような」最悪の事故(福島では東京都民も避難という「最悪」事態も起こりえました。4号機で作業が遅れていて、偶然燃料プールの隣に水が張ってなかったら、そしてそこが地震で少しずれてプールに水が流れ込まなかったら、確実に「東日本壊滅」だったでしょう。)は考慮されていません。
 
 実測値といっても、浜松市内には公的には県総合庁舎に設置された線量計(ネットで10分ごとに読める)と浜松市の鴨江別巻にしかないようです。自衛隊は持っているだろうな?警察は?消防は?
 
 あとはわが家と、市役所内の共産党市議団控え室にもあります。もちろん、民間で持っている方も市内で多いだろうと思います。大地震や地震でない原発事故のときは、政府や自治体に命を預けてはいけません。線量計を持っている人は、自分で測って、自分で判断して、自分と家族の命と健康は自分たちで守りましょう。
 
 2014年10月現在、浜松市政と鈴木康友市長は、自分の市内に避難しなければならないような放射能が来るという、「想定」をまったくしていません。実際に起きてから「想定外でした」とのたまうんだろうな。
 
 これは、あたりまえに「想定しなければならない」。アメリカ政府、日本政府報告も含め、いくつもの報告で「急性障害死者」の出る大事故を警告しています。福島が最悪の大事故ではないのです。福島では原発構内でがんばった従業員も含めて放射能急性障害は出ていません。
 
 (投稿:浜松の原告 雨宮智彦)
 
 

浜岡原発永久停止裁判第12回口頭弁論と報告集会の記録の2 2014年7月28日(月)午前

2014年10月07日 13時12分40秒 | 浜岡原発裁判の内容

≪ 続き ≫

11:50裁判長 では被告・中部電力からの陳述、お願いします。

中部電力;

  本日、答弁書(3)について一言説明します。これまで7次に渡り追加提訴の申し立てがあり、それなりに重なりがあり、その動向を見守ってきた。前回裁判所からの要請もあり、本件訴訟の主要な争点となると思われる津波について、被告の検討と対応について述べたものです。

  具体的には今般規制された基準地震動、基準津波について、実際に支配的影響を与えるプレート間地震、それに伴う津波の検討を行い、その作成内容を述べ、それを踏まえた地震及び津波の対応を述べたものです。

杉山弁護士;内容がない。具体的内容をまったく言っていないではないか。

裁判長;概略が話された。

杉山弁護士;何も言っていないではないか。

裁判長;静かにしてください。

杉山弁護士;言わせてくださいよ。

裁判長;原告の準備書面での陳述がされ、概略が述べられた。被告もそういうことをした。

杉山弁護士;内容を言っていないではないですか。

裁判長;書面に書いてある通りだ。何か意見があれば書面で出してください。

杉山弁護士;裁判官、いま何を言っているか、理解できましたか。概略もなにも言っていない。

裁判長;概略を言っていないという意見があることは裁判所も理解しますが、後は具体的に書面を検討するとともに、それについて原告で反論があると思うので、次回までに書面を出してください。

  本日は以上で終わります。本来、準備書面(7)(8)を含めて主張をお願いしたい。

  次回は、11月10日(月)11:00からとする。                  

11:55終了

12:02 地域情報センターで報告集会

司会・中谷信和(第4次原告団・県の会・事務局次長); 今日はかなり時間がかかりましたが、報告集会を始めます。最初に弁護団長の田代博之弁護士さんから3分でお願いします。

12:04

田代博之弁護士(弁護団長);

  傍聴席が満席で久しぶりの対決の展開がされた。特に北村弁護士が大飯原発の断固たる判決が出たという紹介がされた。福島の事故以来、初めての司法の裁きであり、裁判所が毅然として、この被害を二度と繰り返してはならないと、堂々と自信をもって被告に言い渡したことは、日本の原発裁判で極めて画期的、歴史的判決だと言われたが、我々弁護団も同感だ。

  今後のたたかいは、鹿児島の川内原発が規制委員会のはじめての許可決定があったということで、自民党や保守勢力は喜んでいるが、大飯原発の判決を直視するならば、川内原発の再稼働はそう簡単に許されるものではない。ここの人々のアンケート調査では83%の人が再稼働を許さないということで、心強い限りです。

  私ども、教訓として大飯原発を学習して、多くの市民とともにそれを生かしていくことが、浜松の裁判所を福井判決の延長線上に置かせるための力量になるのではないか。原告団を中心として、100万人の静岡県民の浜岡原発廃炉を求めるたたかいとして、大きな大衆運動として、これからもがんばっていきましょう。

 

12:07 中谷;林弘文原告団長よりお願いします。

林弘文;

  みなさんごくろうさまです。4人の陳述人の素晴らしい話で裁判長もしっかり耳を傾けていました。板垣さん、鈴木さん、石田さん、岡本さん、遠くからきて、説得力のある話であった。そして阿部弁護士、北村弁護士が、分かりやすく問題がどこにあるかを説明してくれました。北村弁護士は、コンパクトに大飯判決の意義と本訴訟との関係を明確に述べられ、法廷を圧倒した。最後に被告の弁護士が何を言っているのか分からないということも言われましたが、被告もたじたじになったのではないか。これから我々ももっともっと世論を盛り上げていかなければならない。静岡市では先週、金曜アクションが107回を迎えた。8月2日には脱原発での全県交流集会がある。いままでに知らなかった団体も含めて41団体が参加している。これからもよろしくお願いします。

12:10 司会・中谷;今回の裁判の全体像と、今日の陳述の要約の要約を阿部弁護士にお願いします。

阿部弁護士;

 今日の意見陳述の前にやりとりしていたことは、こちらから出した準備書面、被告・中電・国からの準備書面の陳述をしていた。中味をいちいちやっていると時間がないので、中身は省略した。

  中部電力から出てきた3点は、基準地震動、津波の評価、それに対する対応を、30ページにわたって書いてあります。中身は書いてあるが、説明をしなかっただけです。

  こちらの方は、私が簡単に要約して話した立地審査指針についての準備書面(7)と、北村弁護士が担当された大飯原発判決の意義と本訴訟との関係を書いた準備書面(8)を提出しました。

  それ以外に、中部電力は、地震動、津波に関わる膨大な書証を提出しています。原告の方からは、細かくは言いませんが、原発に関する主に雑誌「科学」の論文を中心に書証を提出しました。その中に大飯原発の判決も含まれています。

  そういうやりとりをした上で、4人の原告の意見陳述と弁護団は私と北村弁護士の二人で陳述をしました。私は、立地審査指針のことを取り上げた。新規制基準ができた時にどうなったのか、まだよく分からないところがあって、新規制基準はシビアアクシデント対策などごく一部に限られていて、そこに触れられていない立地審査指針は廃止されたのか、残っているのか、はっきりしない。もともと法律ではなく行政的指針なので、廃止する時は廃止するとなるはず。そうは書かれていない。やはり生きているという位置づけだ。

  立地審査指針は、原発事故が起きたとしても、住民が放射線被害を受けないように、原発周辺には住民は住まないようにしようと。重大事故とかを想定して、原子炉施設の周りは非居住地域だとか、さらに低人口地帯だとかあるから、原発敷地内は放射線量が高くなっても、そこには人が住んでいないし、その周りは人が少ないところだから、そういうところに原発を建てようと。

  しかし厳密にやっていると原発を建てるところがなくなってしまう。浜岡原発の建っている周辺には確かに人は少ないが、2~3kmでは人がいっぱい住んでいる。そこに放射能が飛んでいくわけで、福島では高い放射線量が出ているわけだ。現実に立地審査指針を適用していると、原発を建てるところがなくなるので、実際は原発の敷地内で、非居住地域も低人口地帯も全部含まれていると解釈して、原発の敷地外は、放射線被害の及ばない地域だと解釈して、立地審査指針を応用してきた。そういういい加減な指針だという問題点を指摘した。後は、北村弁護士から。

12:15

北村弁護士;

 今日の話の資料はたくさん持ってきたので、それを見てください。繰り返しません。私の話は、大飯原発判決の意義と浜岡原発・本訴訟との関係を述べた。脱原発全国弁護団の一員として、先週木曜日、静岡本庁での裁判で、脱原発の河合団長が大飯原発のことを分かりやすく話していた。

 何かいいものはないかと聞いたら、大間仮処分の人が下地を作ったというので、それを貸してくださいと。急きょ借りたが、大間は仮処分なので、そのままは使えないので、かなりヒントはあったが、いくつか浜岡原発に合わせて書き直して、準備書面(8)として26ページくらいで詳しく書いたものを落合さんに渡したので、持っている方のいると思いますが、メーリングリストで皆さんに渡るようにします。

 今日は5分と言われて、それでは無理なので10分くらいでと。15分くらいでしたか。要旨を書くのに、4分の1くらいにするのに苦労しました。全国の力が合わさった。静岡本庁でも同じ進行をしていて、大飯判決の250kmのことを使っていたのでそれを使った。

 それから書証で使ったもの。「までいの力」。3年前の3/11の時、私は原発をなんとかしなくてはと東京の勉強会に出た。名古屋から通うのは大変でしたが、第一回の勉強会の時、福島の方がこれを持ってきた。買ってくださいと。「までい」とは手間暇を惜しまず、丁寧に心を込めて、つつましくという意味の東北地方の方言ですが、まさにこの写真集が出版されるばかりの時に原発事故が起こった。

  この本をどうしようかと。一枚の紙を差し込んで、出そうと。「ここには2011,311前の美しい飯館村があります」と。建屋の爆発した写真も非常に訴えるものがありますが、だけどよりこの方が美しい日本の原風景があり、子どもたちも元気で、お年寄りも元気で、お母さん方も北欧の人たちと交流している。これが一瞬になくなる。これを書証にした。

  最後に付け加えると、田坂さんという内閣参与が原発の専門家だけど、福島の4号機の燃料プールが一番危ないと。燃料が多くむき出しになっている。近藤俊介・原子力安全委員長が菅首相から、どうなっているのだと言われた。シュミレーションを出したら、4号機が一番危ない。このままいくと、首都圏250km、3500万人に、丸を書くと東北まで含めて5000万人の人に影響が出る。ところが幸いにも水があって、神わざ的にクリアした。田坂さんは「映画を見ているのではないな」と思ったというのも紹介した。

12:23 司会・中谷;

  今日の書面、発言、証拠書類はブログに載せる予定です。中電のものも載せます。4人の原告発言、ありがとうございました。時間がないので、それぞれ1~2分くらい感想か、言いたいことがあればどうぞ。

12:24

石田;

  伊豆の国市から来た石田です。2分ということですが、いまなお旅館が倒産した、あるいは職場をなくしたということで、生活保護を受けている人に毎月一度家庭訪問をしていますが、こんなことがあっていいだろうかということが、いまなお続いている。浜岡ではなくて、福島の事故のことが300km離れたところで起こっている。80kmしか離れていない浜岡であったら、決して静岡県みんながやられる。いや日本全体がなくなるよという話があって、では私も話をさせてくださいと。

私は思うのですが、いま浜岡原発のことがたたかわれていますが、実は静岡県にとっては、50年前、沼津三島石油コンビナート反対闘争がありました。50年前は、東京オリンピックで国中がハイになっている時、そして原発が各地で誘致されている時、石油化学コンビナートを国が、県が、沼津のあの柿田川を中心として、そして駿河湾の良港にコンビナートを作ろうと推進しようとしました。県が最先頭になりました。ところが住民たちがそれを跳ね返しました。住民が国策を跳ね返した日本で最初の出来事でした。

どうして住民たちが跳ね返したのか。それは、四日市に行こうよと言って誘った、その最初のバスで、漁民が四日市に行って、その中で、補償金をもらった。だけど三種の神器で消えた。就職先をあっせんしてもらったが英語が分からない人は辞めて結構だと言われた。最後に残ったのは腐った魚しかない。こんなことがあっていいのかと、四日市から帰って漁民たちが語りはじめ、そして先生方からコンビナートの大きな問題点を学び、現地を見て、自らが立ち上がっていった。この浜岡もそうであってほしい。

12:28

板垣;

新日本婦人の会でずっと原発のことをとりくんできた。今日発言させてもらった駿河湾地震のこと、M6.5という普通の地震なのに、それでもトラブルが発生した。しかも5号機が大きく揺れた。耐震設計値を超えた。浜岡原発は前から危ないと言われていたが、この駿河湾地震でこれは大変なことになるぞと、認識を深めた。私も直接駐車場で運転しようとしたが、めまいを感じた。

もし東海地震が起きればとんでもないことだなと。いろいろな会をつくり、欠席裁判的になりましたが事務局長を受けることになった。浜岡をなくそうということになった。3回書き直して発言をした。どんな角度からしても廃炉しかない。沼津からだと遠いが、東部・伊豆の原告を集めたい。

12:31

鈴木;

県民医連の事務局の鈴木です。今日は最初に、安定ヨウ素剤の紹介をさせてもらった。静岡民医連では、三島から浜北まで診療所がありますが、そこの門前薬局で販売している見本をもってきました。これが安定ヨウ素剤です。安いのです。300円です。今度、川内原発の再稼働のことで、5kmの範囲でヨウ素剤を配布する話がありますが、特に子どもたちの甲状腺がんを防ぐために、放射性ヨウ素を吸う前に先にヨウ素剤をと。

今日はどう話をしようかと思い、事務局とも話し合い、大飯原発の話をしようとなりました。準備のためにちょうど静岡で勉強会があり、大橋弁護士の大飯原発のレクチャを受けた。これまでは憲法の25条、生存権のことでしたが、13条、人格権も入れようと。

時間の関係で弁護士さんから削られたことがある。今度の東日本大震災、岩手・宮城・福島が甚大な被害を受けたが、遅ればせながら、岩手・宮城で復興がはじまり、前向きになってきている。ところが福島は、復興が止まっている、ますますひどくなっていて、深刻な事態になっていることを詳しく言おうと思ったのです。震災そのものよりもその後に亡くなった人が福島では多くなっている。是非、福島と他の2つの県とを対比して、しっかり福島の現実を告発していくことだ。

12:35

岡本;

環境会議の岡本です。弁護士さんに間違っていたら失礼ですが、今日は直下型の加速度の話をしたのです。東北大震災のあと、実は余震がものすごく起きている。余震の直下型のデータが膨大にある。URLで全部ファイルしていたが、URLをクリックしたら消えてしまった。きようし(?)ネット、気象庁、各自治体の東北の直下の余震のデータを掘り起こしてもらいたい。直下の真上のデータの宝庫なのでぜひお願いしたい。

古い話ですが、長野県の大滝村の地震があった。神社の大きな石が2メートルも飛んだ。エネルギー量が分かっている。大きな石を飛ばすのに推定ガルは15000ガル以上の加速度でないと飛ばない。実際の直下型の加速度は、そんなものではない。今度浜岡で起きる状態は、いままで知っているすべてが吹っ飛ぶ。とんでもない最大加速度だ。浜岡原発の全体がドカンと、何メートル、真下から飛び上がる。毎秒4000ミリ(?)の加速で飛び上がる。これでは壊れてしまう。被告の反論を聞きたい。

12:37

司会・中谷;

原告のもとの原稿も載せますので、送ってください。一人二人、質問、発言ありますか。いいですか。それでは最後に、落合さんから県の運動の状況、それから100万署名の状況を含めてまとめをお願いします。

落合勝二(県の会・事務局長);

大変暑い中、ご苦労様でした。次回は11月10日(月)11:00~です。中電から書面が出て来るというが、どんなものが出て来るか。次に二点について触れます。

①これまでの559名の原告に加えて、第8次を今日出そうとしましたが、充分な集約ではなくて、一か月伸ばします。9月早々に出したい。可能な限り原告を増やしたい。ご協力お願いします。申し込み用紙等、ネットでも簡単に出せるので、飛躍的に増やしてください。

②毎回言っていますが、大飯原発に学んで、裁判に勝利するために、法廷外のいろんな運動をもっと大いに強めていく。実は、準備が長くかかったが、静岡県内で、反原発、脱原発、原発はあってもいいけど浜岡原発だけはだめだという人も含めて、いろんな考え方があるが、浜岡原発は絶対とめようという一致点で共同して、全県で「浜岡原発再稼働を許さない静岡県ネットワーク」を立ち上げた。これにこの原発裁判の会も参加して活動していきたい。まだ充分な活動状況ではない。30~40団体が結集している。どんどん広げて一大運動にしていこうと。

発足集会を8月2日13:30~、静岡労政会館で行う。福島県浪江町・馬場町長、そして浜岡原発が絶対にとめようと、牧之原市長、伊豆の国市長も参加する。是非集会に参加ください。そして次に、ネットワークが基盤になって全県で100万人の署名を集めるという一大運動を起こしていきます。これについては効果がないのではという意見も飛び交い、ずいぶん準備がかかっていますが、とにかくやろうということで、9月2日から一斉にやろうということで進めています。

浜岡原発の再稼働を許さないという一点での署名です。全県で100万人、ものすごい数です。しばらく前の静岡空港の住民投票を求める署名をやったが、これに集まったのが29万人です。それから原発の是か非かの住民投票をやろうという署名は、16万人です。これに比べて100万人ですから、ものすごい数です。そのために私たちの原発裁判の会も、底力を発揮して大いに取り組んでいこうという運動をやっていきたい。まもなく署名用紙やよびかけができてきますので、各地でとりくみをしてください。

原発裁判そのものの運動の発展、そして国民的運動の発展を行い、必ず浜岡原発の永久停止・廃炉をめざす運動を大いに強めていきたい。よろしくお願いします。

12:44 大橋弁護士;9月6日13:30~、弁護団は聞いていると思いますが、今日の中電の反論もあり、今後のこともあるので、弁護団・原告会議を開く予定です。場所はすぐ連絡します。

司会・中谷;大事なことを言い忘れていました。朝日新聞7月20何日か、日曜日の一面、中電が直接ではなく、建設会社から裏金を出させて、知事、衆議院議員に渡していたと。どこかの新聞が後追い記事で、実名で愛知県知事と出ていました。静岡県知事、衆議院議員は誰かはまだ分かりませんが、時効だとも言っていますが、少なくとも道義的責任はある。調査を含めて摘発していく必要がある。今日はながいこと、ありがとうございました。

12:46終了(文責;長坂)

 


浜岡原発永久停止裁判第12回口頭弁論と報告集会の記録の1 2014年7月28日(月)

2014年10月07日 13時10分42秒 | 浜岡原発裁判の内容

浜岡原発永久停止裁判 第12回口頭弁論  2014年7月28日(月)晴れ

10:15 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。

10:30 傍聴抽選のために裁判所南側広場に集合した。

10:40 原告30席分を含め、傍聴席は満席となる。参加者 約70人。

11:00 裁判が開始。

裁判長は桐ケ谷敬三、右陪審は澤田順子、左陪審は植村一仁、

訴訟代理弁護団計20名の弁護団のうち、今日の参加者は14名。

田代博之、大橋昭夫、塩沢忠和、杉山繁二郎、阿部浩基、北村栄、杉尾健太郎、小池賢、平野晶規、加茂大樹、山形祐生、北上紘生、栗田芙友香、玉木宏和

被告側は国と中電で17名。

11:00 

はじめに、裁判長と原告側準備書面(7)(8)、中部電力の準備書面(3)や提出資料関係のやりとり、さらに5、6次訴訟原告に関する被告国の準備書面(2)、7次訴訟での原告の訴状、それに対する中電、国の答弁書に関する確認があった。

裁判長;第7次原告4名の陳述と中電の答弁書の陳述をしてください。

11:11 

原告・板垣和子;

  私は、浜岡原発から80キロの地、沼津市に住む板垣和子と申します。

  浜岡原発1号機が建設される1971年、科学者による「風船飛ばし実験」でも多数の風船が沼津に着地しました。福島第一原発のようなことが起きれば、あの放射性雲は容易にやってくるでしょう。

  私は、2009年8月11日の早朝に起きた駿河湾を震源とする「駿河湾地震(M6.5)」の話から、意見陳述を始めさせていただきます。駐車場の車が波を打っている光景を見て、「いよいよ東海地震が来たか」と大変びっくりしたことを覚えております。

  この駿河湾地震で、浜岡原発では60件を超す事故・トラブルが確認され、原子炉の制御に関わる事故の他、地盤の沈下や隆起、道路の亀裂などが発生し、排気筒から放射性物質が排出されました。その中でも5号機は、3、4号機の2倍の地震動が観測され、耐震設計値(安政地震M8.4)を超えてしまいました。

  東海地震は、駿河湾地震の数百倍のエネルギー、地震の揺れは10数倍・100秒以上続き、ほとんどの地域で震度6強から7と、駿河湾地震とは規模も被害も比較になりません。

  そこで、私たちは日頃、浜岡原発の危険を考えている13団体、2個人で、2010年の1月、「浜岡原発即時停止を求める署名ネットワーク」を立ち上げました。その時の事務局長が私です。学習会や街頭宣伝、署名行動を各地で展開しました。

  私も各地から学習講師に呼ばれました。学習会で、女性たちから「原発って聞くだけで難しいから、やさしく話してほしい」と言われ、図を示しながら話すと、「原子炉も大変だけど、配管などたくさんの計器類も壊れたら、ダメでしょう」などの素朴な質問が出されました。

  浜岡原発のある地元は、浜岡原発で働いている人や、交付金などの関係もあって、住民自身の行動には難しさがあります。それでも、地元にある「浜岡原発の危険から住民を守る会」の人たちは、住民の「街頭宣伝に仕事をしながらじっと聞き入る様子」に感動したと話していました。

  街頭宣伝でも、これまでの雰囲気とは違い、署名のしたくをしている時から列ができるなど、駿河湾地震から東海地震への心配がうかがわれました。署名活動の際、「チェルノブイリ事故では、子どもの甲状腺がんが多いと聞きます」と言う子ども連れのお母さん。「原発は必要だが、浜岡だけは…」と言う男性。「息子や娘が浜岡の近くに住んでいて心配。」と言う年配のお母さん。「僕も署名を手伝います」と飛び入り参加する若者など、これまでになく関心が高かったように思います。

  署名期間、実質5か月の中で、20,551筆を経済産業省に提出しました。対応した若い3人の官僚に対して、「中部電力は、固い地盤の上に原子炉が建っているから大丈夫だと言っていた。5号機の下をボーリングしたら、砂の比率が多くて、地盤は軟弱だったのではないか」と問いましたが、原子力安全・保安院の回答は「今、専門家に委ねて審査中である。」というものでした。その後も納得は得られていません。

  この駿河湾地震は、中部電力にとって想定外だったと思います。中部電力の原発の依存度は10数%です。浜岡原発を廃炉にすることは可能だということを申し上げます。

11:15 

原告・鈴木英治;

  私は、鈴木英治と申します。浜岡原子力発電所からは、UPZ・緊急防護措置区域の30km内の袋井市に居住しています。私は、静岡県民主医療機関連合会という医療団体の事務職員として仕事をしていますが、福島第一原発の深刻な事故を目の当たりにして、日々不安と恐怖にさいなまれています。

  5才と8才の孫には、私の勤めている職場の保険薬局より「安定ヨウ素剤」を薬剤師の指導のもとに購入し、嫁に「浜岡原発による放射能汚染の発生時には直ちに服用させる」ようにと、「安定ヨウ素剤」を渡しています。

  この間の唯一の救いは、福島第一原発過酷事故後、時の政府の要請と静岡県民の世論に押されて、浜岡原発の運転停止がされたことです。運転を停止していても、使用済み核燃料からは「崩壊熱」が発生し、引き続き冷却が必要です。

  現在、中部電力が行っている「防波壁」などの安全対策は、そのためにも当然必要とされるものです。しかし、この安全対策を口実に中部電力は、再稼働をもくろんで、今年2月14日に原子力規制委員会に「安全審査」を申請しましたが、もってのほかのことです。いったい中部電力は、福島第一原発過酷事故から何を学んでいるのでしょうか。

  東日本大震災の甚大な被害が、岩手県・宮城県・福島県に集中し、3年あまりが経ちました。岩手県・宮城県は、依然として深刻ではありますが、曲りなりにも、復旧・復興への歩みを進めていると言えます。

  しかし福島第一原発過酷事故の惨禍にみまわれた福島県については、時間がたつにつれ、ますます深刻な事態に陥っていることが報道されています。まさに原発過酷事故被災は、他の被災とは、異質・異次元なものであり、一度起こしてしまえば、復旧・復興ができないという極度に深刻なものです。中部電力はこのことこそ、学ぶべきではありませんか。

  今年5月14日に、大飯原発再稼働差止めについて、福井地裁で判決が言い渡され、差止めの法的根拠として「人格権」を上げました。判決は、「人格権は、憲法上の権利であり(13条・25条)、また人の命を基盤とするものであるがゆえに、我が国の法制下においては、これを超える価値を他に見出すことはできない」として、「よって立つべき解釈上の指針」としています。

  私は、この判決に接して、「この間の唯一の救い」から「ここにこそ根源的救い」と、深く意を強くしました。浜岡原発は、近く必ず起こると予測されている東海地震の震源域の真上にあり、福島第一原発よりも放射能被害の発生・被害の深刻度は、より大きく危険といえます。原子力発電は、電気を発生させる数ある手段・方法のひとつにすぎません。そのために、浜岡原発過酷事故が発生して「人格権」が脅かされることには、排除・拒絶されてしかるべきです。

  私たちの団体では、医師をはじめ各専門職が、放射線被曝被害者に寄り添い、ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ、そしてフクシマの医療支援に取り組んでいます。原発過酷事故では、深刻な放射線被曝の実態がありますが、急性外部被ばく・急性障害とともに、これも異質・異次元の被害として低線量内部被ばく・晩発性障害の問題があります。

  静岡地裁においても、原発過酷事故に対して、日々不安と恐怖にさいなまれている人々に対して、生きる希望を示した福井地裁の「根源的救い」の判決を踏まえて、浜岡原発をこのまま停止し続け、原発過酷事故への危険度合いを下げ続けて、「永久停止」をする判決を出してください。

11:21 

原告・石田義明;

  伊豆の国市の石田と申します。今後30年以内に88%の確率で発生するといわれている東海大地震。その規模は東海・東南海・南海地震、三連動の超巨大地震となる可能性が指摘されています。

  浜岡原発はその震源域の真上にあって、「世界で最も危険な原発」と言われており、日本の大動脈・太平洋ベルト地帯のど真ん中での原発事故は、日本全体にとって、とてつもない被害をもたらすことは必至です。浜岡から80キロ、事故が起きたら「避難勧告地域」に入る伊豆半島が、浜岡原発に無関係であるはずがありません。

  2011年の東北大震災と、伊豆から300キロも離れた福島第一原発の事故によって、全国有数の観光地である伊豆は、観光客が激減しました。被災前の3割、5割しか客が来ない年が続き、宿泊業、観光施設、交通関係は大きな打撃を受けました。

  伊豆の国市では「湯もとや旅館」「こだま荘」など老舗の5つの旅館が廃業に追い込まれ、みやげの温泉まんじゅうの店は4軒、飲食関係の店も10軒以上が店をたたみました。

  私は民生委員をしていますが、震災前4人程度だった生活保護受給者は、震災後、15名に急増し、現在も12~3名の方が受給されています。新たに受給者となった方は、もと旅館の従業員や調理師、廃業した芸者さんやコンパニオンなどで、震災・原発の観光不況さえなければ、そのような窮状には陥らなかったはずの方々です。

  まさに、観光業は平穏な日常生活の上に成り立っている「平和産業」であり、災害は伊豆の死活問題に直結することを、多くの方が痛感したのです。

  3・11を経験して、原発に対する人々の意識が大きく変わりました。電気代の高い低いより、人の命や人々の生活環境の方がよほど大事、かけがえのないものだという認識が広がりました。浜岡原発に対する見方も大きく変わりました。

  伊豆の国市議会は、2011年9月に「浜岡原発の『永久停止・廃炉』こそが安全安心の最良の選択である」とする国への意見書を、満場一致で採択しました。同様の意見書は伊豆市・三島市はじめ、熱海・河津・西伊豆・南伊豆・松崎町など10以上の市町でも採択されており、「浜岡原発の永久停止・廃炉に」の声は、伊豆半島全体の声といっても過言ではないのです。

  裁判官のみなさん、どうぞ福島原発の被害の甚大さに真摯に向き合ってください。万一の浜岡原発の事故の、恐ろしいほどの深刻さに思いを馳せて下さい。

  私は何も大それたことを求めているのではないのです。伊豆の田舎で、子や孫や家族とともに、地域の皆さんとともに、安全で、平穏に暮らしたい。ただそれだけを求めているのです。電力会社も、さらには政府であっても、私の、この、ごく当たり前の願いを踏みにじることは許されないはずです。 

  再度申し上げます。私たちは、「世界一危険な」浜岡原発の至近距離で暮らしているのです。原発という類例のない危険性を持つ事業に、万万が一の事故を絶対に起こさせない未然の防止策を、司法の責任で示してください。「浜岡原発の『永久停止・廃炉』こそが安全安心の最良の選択である」という、伊豆の各地の議会の見識をぜひ検討していただくことをお願いして、私の陳述といたします。

11:26 原告・岡本;

 「緑と水の環境会議」の岡本祐市と申します。静岡県東部を中心に、ゴルフ場や空港などの大規模開発による環境破壊を止める活動や、ゴミ・ダイオキシン問題など、くらしと健康を脅かす問題の解決、提案などの活動を行ってきました。目的とした成果も数多く上げてきています。

  2011年3月の福島第一原発の大事故は、日本における最大・最悪の環境破壊をもたらしました。

  このようなことを、二度とこの国で起こさせてはならない。ましてや浜岡原発で起こしてはならないと痛感し、原告となりました。

  浜岡原発は、想定されている超巨大地震の震源域の真っただ中にあります。中部電力は、本年2月、原子力規制委員会に新基準の適合性審査請求を行いました。

  中部電力のホームページによりますと、4号炉の基準値振動は1200ガルとし、それに対応する耐震工事をするとしておりますが、現に日本で起きた地震による加速度はこの1200ガルを遙かに上回るものが数多く知られています。

  ここ数年間、日本で起きた直下型地震の加速度を少し紹介します。2004年新潟県中越地震において新潟県川口町で2515ガルが計測されています。2008年岩手・宮城内陸地震において、岩手県厳美町で4022ガルを計測しました。

  上下動、東西動、南北動の三方向の合成のガルですが、この時は、上下動だけでも3866ガルでした。直下型地震の凄さを示すものです。

  直下型ではありませんが、2011年東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震では、震源から150km離れた宮城県栗原市で2933ガルが記録されています。

  1000ガルを超えるというのは、地上にあるどんな重いものも飛び上がらせるのです。1万トンであろうが、100万トンであろうが飛び上がります。

  このような直下型地震の加速度の知見がありながら、浜岡原発で想定すべき加速度は1200ガルでいいのでしょうか。これらの直下型地震の知見から見れば、中部電力の行っている耐震補強は極めて不十分なものです。

  本来建設すべきでないところに造った浜岡原発は、永久停止・廃炉にするしか人類の取るべき道はありません。

11:30

阿部弁護士;

  弁護団から2点について陳述します。一つは立地審査指針の重要性です。重大事故か仮想事故が起きたとしても、周辺住民の放射線障害を及ぼさないために、原子炉から一定の距離は非居住地域にしなければならない。あるいは、低人口地帯にしなければならない。このように規定している。

  この規定からすれば、原子炉施設の周辺に非居住地域があり、その周りに低人口地帯があると読めるのですが、指針そのものには原子炉施設からの具体的距離を示したものはありません。それが実際にはどのように解釈されているかというと、準備書面(7)の8ページ、アンダーラインの部分、「立地指針で規定している『非居住地域』『低人口地帯』の範囲は、我が国の原子力発電所のほとんどの場合、原子炉施設の敷地内に包含されているので、設置許可上必要な原子炉の安全性は、原子炉施設の敷地内で確保されている」このように解釈され運用されてきた。それから、重大事故が起きても、放射能は原子炉敷地内にとどまるとされてきた。そういう評価のもとに立地審査指針がなされてきた。

  本件浜岡原発も立地審査指針をクリアしているとして設置許可がおりているが、その実態は、元になる立地指針の本来の趣旨とは異なって解釈・運用がされてきたわけですから、いまから思えば、明らかに本来の立地指針に違反していることだと言わざるを得ない。このことは福島第一原発事故によって原子炉施設から広く放射線が飛び散ったことによって明らかだ。

  (二つ目の)問題は、この立地審査指針と新規制基準との関係だ。新規制基準そのものには、立地審査指針について触れていない。触れていないということは、立地審査指針がそのまま生きているのか、廃止されたのか、その点での解釈の余地がありますが、我々としては、立地審査指針はあらゆることを網羅されているものではないわけなので、立地審査指針はそのまま生きていると考えざるを得ない。そういうことで言うと、浜岡原発は立地審査指針に違反して許可されたもので、そういう現状からみれば、危険を免れるような安全性を有しているとはいえない。

11:34

北村弁護士;

  本日提出した大飯原発についての福井地裁判決の意義と本訴訟との関係について口頭で述べます。

第1 はじめに

  本年5月21日、福井地方裁判所において、大飯原発の差止めを認める判決が言い渡されました。言い渡しの際、法廷では、その一言ごとに思わず拍手が湧き起り、朗読の間、聴衆の拍手は鳴りやみませんでした。

  この大飯判決は、福島第一原発事故後初めて言い渡された差止め訴訟の本訴判決であり、福島原発事故という大災害を経験した日本で、政府がブレーキの壊れた車のように原発の再稼働・原発輸出に突っ走る中で下された極めて重要な判決でした。

  また、この判決は、その結論だけでなく、理由付けの確かさにおいて歴史に残る判決であり、そこに述べられた事項は、原則として他の全ての原発訴訟及び本件浜岡原発永久停止訴訟にも妥当するものです。従って、この判決で述べられた判決理由をすべて否定しない限り、本訴訟及び全国の原発差止め訴訟において住民らの請求を棄却することはできない状態になったと言っても過言ではありません。

  以下、大飯判決の意義(第2)及び本訴訟との関係でどのような意味を持つのか(第3)について述べる。

第2 大飯判決の内容と意義

  1.大飯判決の内容ですが、まず福島原発事故の被害から出発していることです。その冒頭において「福島事故においては、15万人が避難生活を余儀なくされ、避難の過程で入院患者等60名が命を失い、家族の離散・劣悪な避難生活の中で遙かに多くの人が命を縮めたことは想像に難くない。さらに、原子力委員会委員長が250キロメートル圏内の住民に避難を勧告する可能性を検討した」と指摘しました。

  また、「大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかは想定し難い」として、原発事故の被害の大きさやその特殊性について言及している。

  その上で、「原子力発電技術の危険性の本質、及び、そのもたらす被害の大きさは、福島原発事故を通じて十分に明らかになったといえる」とし、原発差止め訴訟において、「福島原発事故の後において、この判断を避けることは裁判所に課せられた最も重要な責務を放棄するに等しいものと考えられる。」と断じました。

  このように、大飯判決は、福島原発事故の経験を司法がどのように総括するか、という司法の覚悟・矜持が現れた判決というべきである。

2.差止め訴訟の判断基準

(1) 人の生命を基礎とする人格権は経済活動の自由に優越する

  また、判決は、差止め訴訟の判断の在り方につき、まず、「人の生命を基礎とする」人格権について、「我が国の法制下においてこれを超える価値を他に見出すことはできない」と、最も重要な権利であることを明確に認める一方、原子力発電所の稼働について、「電気の生産という社会的には重要な機能を営むものであるが…(略)…法的には電気を生み出すための一手段たる経済活動の自由に属するものであって、憲法上は人格権の中核部分よりも劣位に置かれるべきものである」と、両利益の質的違いを明確に指摘しました。

(2) 何が判断されるべきか

ア 大飯判決の判断枠組み(万が一の具体的危険性)

  その上で、「大きな自然災害や戦争以外で、この根源的な権利が極めて広汎に奪われるという事態を招く可能性があるのは原子力発電所の事故のほかに想定し難い」と原発事故の特殊性を認定した上で、原発の差止め訴訟においては、福島事故のような事態を招く「具体的危険性が万が一でもあれば、その差止めが認められるのは当然である」という判断枠組みを採用しました。

  本判決の中で、最も重要な部分はここであり、福島原発事故のような事態が、この日本において、もう二度と起こってはならない、という強い姿勢が明確に示されています。

イ 非科学的であるとの批判

  なお、この姿勢に対して原発を推進する立場から、原発に絶対的安全を求めることは非科学的であり、非常識である、といった批判がありますが、後述するように、大飯判決こそ科学的論争の迷路に入ることなく考え抜いた極めて科学的な判決です。

3.冷却機能の維持(地震学の限界)

(1)

  当該原発における地震想定及び安全確保の点につき、本判決は、地震学の知見の限界を指摘し、当該原発のクリフエッジたる1260ガルを超える地震が到来した場合はもちろんのこと、基準地震動たる700ガルを超える地震・超えない地震のいずれにおいても冷却機能喪失による重大事故が生じ得るとして、当該原発の有する危険は、「万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険」であるとしました。

(2)

  本判決が指摘する問題点については、大飯発電所特有のものではなく、そのほとんどは本件原子力発電所においても問題となるものです。

  特に、地震学の限界については、我が国において、「20か所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり基準地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来していること」や、「既往最大という概念自体が、有史以来最大というものではなく近時の我が国において最大というものにすぎないこと」「この地震大国日本において、基準地震動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにすぎない」ことなど明確に断じましたが、この問題点の指摘は、浜岡をはじめどの原発にもあたるものです。

4.閉じ込める機能の欠陥・使用済み核燃料の危険性

  大飯判決は、使用済み核燃料についても、堅固な設備が存しないことから、その閉じ込め機能が維持できなくなる可能性を明確に認めました。

  福島事故の最大の危機は、4号機の使用済み核燃料プールにあり、250km圏内の避難、すなわち首都圏3000万人の避難が内閣内部で現実に考えられていたのです。原発の専門家の官房参与の田坂氏でさえ、「このシュミレーション結果を見た夜、『自分は映画を観ているのではないのだな…。』と述べた程でしたが、浜岡原発には、3~5号機内に使用済み核燃料プールがあり、現在合計6575本もの使用済み核燃料がいわばむき出しに近い状態になって置かれていることを忘れないで頂きたい。

5.本件原発の現在の安全性及び新規制基準

  また、大飯判決は、「国民の生存を基礎とする人格権を放射性物質の危険から守るとの観点からみると、本件原発に係る安全技術及び設備は、万全ではないのではないかという疑いが残るというにとどまらず、むしろ、確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱なものであると認めざるを得ない」と断じました。

  また、新規制基準についても、いくつかの不備な点を指摘し、仮に新規制基準に適合したとしても、判決が指摘した具体的危険が解消されないまま稼働に至る可能性があり、その場合には、「本件原発の安全技術及び設備の脆弱性は継続することになる」として、その適合性判断を待つまでもなく判断が可能であることを示しました。

6.被告事業者のその余の主張について

  事業者が主張する①電力供給の安定性、コストの低減の主張については、「当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されないことであると考えている」と述べ、また「たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」と明確に述べました。

  この点、我々は今回福島原発事故により壊滅的な被害を受けた飯館村の写真集「まいでの力」を書証として提出しました。実は、飯館村の写真集が出版されるばかりの時、原発事故が起きたのです。そのため、発売時に一枚の折り込みが入れられました。「ここには2011年3月11日午後2時46分以前の美しい飯館村の姿があります」との折り込みです。この本にある自然が豊かで人々の笑顔で溢れていた美しい村、日本の原風景を思い起こす村は、もう戻りません。この写真集にある人々の笑顔溢れる豊かな生活は、この地上から全くなくなってしまったのです。原発がどんなものを私たちにもたらすのか、本当に国富とは何なのか、どんな悲惨な写真より人の心を打ち、原発の問題性を一瞬にして深く誰の心にも伝えるものと思います。

  また、②CO2排出削減で環境面で優れているとの主張については、「原子力発電所でひとたび深刻な事故が起こった場合の環境汚染はすさまじいものであって、福島原発事故は我が国始まって以来最大の公害、環境汚染であることに照らすと、環境問題を原子力発電所の運転継続の根拠とすることは甚だしい筋違いである」と一蹴しました。

第3 大飯判決は本訴訟との関係でどのような意味を持つか

1.大飯判決は特殊な判決ではなく、骨太の判決である 

  大飯判決は、福島原発事故という深刻な事故を真正面から見据えた、現実的で極めて論理的な司法判断である。福島原発事故のような深刻な事故を二度と繰り返してはならないという原告らの思いを受け止めるだけでなく、事業者側も抗いようのない事実に基づいて、誰もが納得できる論理によって導き出された骨太の判決となっています。

2.大飯判決の核心(強い説得力を持つ論理的な判決)

  また、前述した10年の間に5回にわたり想定した地震動を超える地震が実際に起きたとの事実を中心に据えた、強い説得力を持つ論理的な判決であるのが、この大飯判決の核心です。判決は、実際に過去に誤りを重ねてきたという誰にでも理解可能な、動かし難い「実績」を重視し、それと同じ手法を用いている以上、また同じ過ちを犯すかもしれないではないかと、これまた誰にでも理解できる論理で問題を指摘しています。

  これは、司法が科学技術論争に過度に踏み込まなくても、専門技術訴訟において明確な判断ができることを示した、非常によく考えられた論理であり、強い説得力を持つものと言えます。

3.判示事項の共通性

  これら大飯判決が示した具体的危険性に関する判示は、全国の原発すべてにあてはまるものであり、当然ながら浜岡原発にも妥当するもの、すなわち、日本の原発が抱える本質的な危険性を認めた判決であると評価できるものです。この判決の判決理由をすべて否定できない限り、日本の原発訴訟において原告敗訴の判決を下すことはできない状態になったといっても過言ではありません。

4.本訴訟においても同様の審議方法を採用することは可能であり、適切である。

  ところで、大飯判決は、平成24年11月30日に提訴がされ、口頭弁論は8回、審理期間はわずか約1年4か月で、証人尋問を全く行うことなく判決が言い渡されました。一方、本訴訟は、提訴以降3年余りが経過していますが、被告において、新規制基準の運用まではこれを理由に引き伸ばし、また、方や新規制基準適合性審査の申請準備を進めながら、申請以前には訴訟手続き内においても根拠資料を提出しないなど、明らかに審理を引き延ばし判断を先延ばしにしようとする意図が見受けられます。

  従って、本訴訟においては、裁判所としては、積極的に早期の真理をはかるべきであるし、特に本訴訟の浜岡原発の次の特徴からすれば、大飯原発の福井地裁以上に早期に争点整理に入り、迅速に審理、結審し、証人尋問等をすることなく認容の判決を出すべきであります。そのことを強く訴えたいと思います。

  まずは被告に早期に主張を出させ、出ない時は出ないものとして早期に争点整理をして、早期に結審し、判決を下すべきです。

5.浜岡原発の特徴を考慮すれば結審は明らか

(1) 壊滅的な打撃

  大飯判決では、大飯原発から半径250キロメートル圏内に居住する者は、原発の運転によって直接的にその人格権が侵害される具体的危険性があるとして、差止め請求を認容しました。一見、広範に過ぎるとと思われるかも知れないが、前述した近藤駿介氏の「福島原発の不測事態のシナリオ」が同範囲の避難を考えていたのであり、少しも過大な数字では決してありません。

  そこで、大飯判決と同様の基準に基づき、浜岡原発から半径250キロメートル圏内を図示しました(図は省略)。

  これをみると、まず、20km圏内には東海道新幹線と東名自動車道が入り、事故が起きた場合の影響は甚大で、現時点では代替えがきくはずもなく、日本国内の経済活動をはじめとする全ての分野において取り返しのつかない被害をもたらすことは明らかです。まして、この図のように、250キロメートルとなれば、日本が国として成り立たなくなります。いわゆる世界で一番被害が大きい原発と言われるのはこのことである。

(2) 高度の地震発生率

  福島原発は、事故発生前(2010年度)の地震調査委員会での震度6強以上の地震が30年の間に発生する確率は0%とされていて、事故が起きました。判決が出た大飯も0%でした。一方、その時の浜岡原発の確率は84%でした。浜岡原発は、近い将来いずれ到来する南海トラフの巨大地震による地震・津波被害が発生することは確実視されているのであり、いわゆる世界で一番危ない原発と言われるのはこのことです。

  なお、まともな避難経路の策定など、しっかりした避難計画が出来ていないことも重要な事実です。

(3) まとめ

  このように、本件浜岡原発は、世界で一番危なく、かつ世界で一番被害が大きい原発です。裁判所にあっては、原発というものの特徴、原発事故の悲惨さ、本件原発の特質を十分踏まえて、勇気ある判断をして頂きたい。それも早期にして頂きたい。それこそが司法に期待される役割であり、国民の大多数が望むものである。ぜひ、この浜松の地においても、「司法は生きていた」との声を響かせて頂きたいと強く願います。

(傍聴席から拍手が起こる)

 ≪ <下>へ続く ≫