浜岡原発永久停止裁判 原告団・弁護団・支援組織共同ブログ

 中部電力を被告にした浜岡原発永久停止裁判(静岡地裁浜松支部)の原告団・弁護団・支援組織の共同ブログです

浜岡原発永久停止裁判 第11回口頭弁論と報告集会の記録

2014年05月10日 13時47分55秒 | 浜岡原発裁判の内容

浜岡原発永久停止裁判 第11回口頭弁論と報告集会の詳細記録

2014年4月14日(月)晴れ

10:00 浜松市地域情報センターホールに原告や傍聴者が集まり始めた。

10:15 第7次提訴を行った(204人)。(これまでの第1次~6次までの355人と合わせて559人)

10:30 傍聴抽選のために裁判所南側広場に集合した。

10:40 抽選で外れた原告も30席分の原告席で傍聴に参加。参加者 約100人。

11:00 裁判が開始。

裁判長は桐ケ谷敬三、右陪審は澤田順子、左陪審は植村一仁、

   訴訟代理弁護団計20名の弁護団のうち、今日の参加者は13名

田代博之、大橋昭夫、塩沢忠和、杉山繁二郎、阿部浩基、北村栄、杉尾健太郎、

小池賢、平野晶規、加茂大樹、末永智子、山形祐生、北上紘生、

被告側は国と中電で20名。

11:00 はじめに、裁判長と原告側、被告側で準備書面や提出資料関係のやりとりがあった。

裁判長;(第6次)原告の陳述と準備書面の説明をしてください。

11:10 原告・高橋俊和(県内診療所の職員)私は静岡県内に1病院3診療所と複数の介護施設を運営する法人に医療従事者として勤務する高橋俊和といいます。現在56才です。

東京電力福島第一原子力発電所事故から3年が経過しましたが、今なお日本は「原子力緊急事態宣言」が発令中です。福島原発の影響で今なお15万人を超える方々が避難生活をしている現実と被ばくの脅威にさらされながら収束作業にむけ、奮闘している現場労働者の健康被害、また一向に収まらない放射能汚染水の流失の状況です。日本国憲法が定めた基本的人権や25条をも侵害する状況を、私は許すことができず、原子力発電政策の本丸である国を訴えることにしました。

福島第一原発の事故により、空中に放出された放射線は静岡県にも飛来し、伊豆の椎茸や、お茶などへの被害も報告されているところです。児玉龍彦東大教授は、国会証言で広島に落とされた原子爆弾の約20個分に相当する放射線量が放出されたと発言していました。当時の政府関係者は、国民に対して、「この線量では、直ちに健康被害を与えるものではない。安心してください」を繰り返していましたが、結果として福島県をはじめ全国に被害を拡大したのはその後の報告にあらわれています。

 私が勤務する病院では、福島原発事故後、子ども達が安心して外でのびのびと遊べるよう毎年50名から100名近い子ども達を静岡県に招いています。昨年静岡県内にみえた二本松市在住の母親たちから、福島県が実施している検査に対しての不審や不満があり、12名の子ども達の、甲状腺エコー検査を実施しました。検査した子ども達の中には、小さな甲状腺嚢胞(のうほう)が100近くある所見が見つかるなど、何人かの異常所見が見受けられました。検査した女児から「大人になって子ども産んでいいの」「結婚していいの」発言は、私の心を痛める重い言葉でした。いつからこの国は、子ども達に将来の不安を感じさせるような国になったのでしょうか。

 福島県は事故後の平成23年7月から県民健康管理調査事業の一環として、福島県立医科大学で、小児甲状腺超音波検査の先行検査を行い、先日結果を公表していましたが、私たちの検査内容とは異なる内容であり、またチェルノブイリ原発事故では、小児甲状腺がんが事故後4~5年以降に増加したという事実もあるので、私たちとしても、関係医療機関と協力して、実態把握に努めていくつもりです。

また福島第一原子力発電所の事故究明は道半ばですし、汚染水処理や原子炉解体に向けた作業も完了していません。日本は2025年に向け超高齢者社会を迎えます。ひとたび原発事故が起これば、高齢者が不安なく避難できるでしょうか。

現在の国の最優先課題は「被災者救済」「事故の収束と事故原因及び責任追及」「安全な避難計画策定」です。福島の現状から逃避し、経済優先の国の原子力発電再稼働は言語道断です。

人それぞれ生き方や考え方は違うと思いますが、同じ間違いを犯し、基本的人権を脅かすことがあってはいけないと思います。「健康に生きたい」「自由に好きな所で暮らしたい」当たり前のことができるために、浜岡原発廃炉を含む司法判断を心から願います。

裁判長におかれましては、国民の良識を拠り所にしてご判断くださるようお願いいたします。

貴重な発言の場をいただき、ありがとうございました。

11:15 原告・大橋定夫(磐田市在住) 私は、浜岡原発から30キロ圏内の磐田市に住む大橋定夫と申します。

被告中部電力はさる2月14日、浜岡原発4号機の再稼働に必要な新規制基準の適合審査を、原子力規制委員会に申請しました。4月5日には、自治体における原発事故時の「住民の避難時間予測」の取りまとめや、公表が遅れていることが報道されました。防災体制の整備が進まない原因が、原発再稼働への積極姿勢に比べて、原子力防災への取組みが消極的である被告国の姿勢にあることが、同時に指摘されています。

一方で、環境経済研究所の試算によれば、浜岡原発で放射能漏れ事故が起きて、30キロ圏内に避難指示が出された場合、住民74万人が避難するのに、国道のみ使用した場合、最大142時間(6日間)以上かかり、被ばくを避ける現実的な時間内で避難することは不可能だということが、すでに公表されています。

いずれにしても、この避難計画は今後地域防災計画に組み込まれることになりますが、本当に実効あるものが策定されるのか、不安と疑問はつきません。原子力災害対策指針で策定の必要性が明記されているにも関わらず、策定された避難計画の実効性をチェックする国の機関もありません。これでどうして新規制基準が世界一厳しいと言えるのでしょうか。アメリカでは、実効ある避難計画がなければ原発は稼働できません。事実、ニューヨーク州のショーラム原発は避難計画を州知事が承認しなかったため、建設したにも関わらず、そのまま廃炉となりました。1989年のことです。

何よりも、海外ではマグニチュード7以上の地震が予想される地域には設置しないことが当然とされているにも関わらず、日本では、南海トラフで30年以内にマグニチュード8~9クラスの地震が起こる確率は70%程度と予測されています。その震源域の真上に浜岡原発が設置されています。自然災害は、いかに対策を施しても想定外の事故が起こりうることを過去の事例から明らかです。福島原発事故の教訓は、「絶対に大事故は起こらない」という「安全神話」を繰り返してはならない。「事故ゼロの原発はありえない」というものだったはずです。それにも関わらず、新規制基準からは「原子炉立地審査指針」が削除されました。これは、原発を設置するためには立地審査指針が障害となるので削除した、と考えざるを得ません。

そのようなことをした上で、原子力規制委員会は、規制基準への適合性を審査するが再稼働の判断はしない、判断するのは政府だと言い、政府は「審査に適合した原発は再稼働する」と、エネルギー基本計画に明記しています。いったい誰が住民のいのちに責任を取ってくれるのでしょうか?

私は、浜岡原発は永久停止・廃炉以外に選択肢はあり得ないと考えます。かけがえのないいのちを守り、安心した生活を送ることができるよう切望し、私の陳述を終わります。

11:19 原告・中村ひふみ(浜松市西区在住の主婦)私は、浜松市西区大久保町に住む主婦歴44年の中村ひふみと申します。

3年前の3月11日、テレビに映し出された黒くうごめく津波、あの時、福島原発で起きた非常事態、思ってもみなかったことです。国も電力会社も大きな地震があっても原発は大丈夫だと、たびたび言っていましたよね。でも事故が起きてしまいました。福島原発の重大事故の放射能で広範囲の地域が汚染されました。

私の周りの若い子育て中のお母さんたちから「福島産と書かれているものは買えない」との声が聞こえてきました。でも非難はできませんでした。

私たち夫婦のように老境にあれば、市場に流通しているものは基準値以下なので、どこの産地であっても、福島産であれば買い支えるという気持ちも働き、買ってきました。

私にも4歳の孫がおります。かわいいです。この子に食べさせるものなら、きっと細心の注意を払って食材を選んだでしょう。幸い孫は浜松より140キロ西に住んでおりますので、心配しませんでした。

今、東海・東南海・南海と三連動地震も心配されています。浜岡原発で事故が起きないとの保証はありません。事故が起きれば、孫をこの地に呼ぶこともできなくなります。

処理方法さえ確立されていない核エネルギーからは、直ちに撤退していただきたいというのが私の本心です。

それなのに、国は原発を稼働させたい一心で、「自己責任を問わない」とまで言い始めています。儲けは自社のもの、リスクは「国の税金で処理」と、際限のない処理費用は国民に負担させるということです。事故処理費用の負担がなければ、原発で上がる利益は大きい、企業にとってこんなにうまい話はありません。原発を稼働させたいわけですよね。ゴミ問題でも、排出者責任の制度が確立されています。なぜ原発だけ優遇するのでしょうか。主婦には解らないことばかりです。

私は、水力・風力・太陽光・地熱などの再生可能エネルギーでの発電を願っています。発言の機会を与えてくださり、ありがとうございました。

11:22 原告・渡邊久次(掛川市議)私は、掛川市議会議員をしております渡邊久次と申します。浜岡原子力発電所から10キロ程度しか離れていない隣接市の掛川市海戸に住んでいます。ですから福島第一原発事故によって苛酷な避難生活を強いられている被災者の苦しみは、とても他人事と考えることできません。

私の選挙公約の柱は、子どもたちのためにも原発のない安心安全な未来をでした。私自身にも7人の孫がおり、近くに住んでおり、これは切実な願いです。

浜岡原子力発電所は、いつ発生してもおかしくないと言われている東海地震の震源域の真上にあり、世界一危険な原子力発電所と言われています。昨年7月に発表された「南海トラフ巨大地震」による第4次被害想定でも、巨大津波と地震動による大きな被害が想定されております。万一の際には、どこに、どのように避難をしたらよいのかということがまったく見通しがなくて、非常に大きな不安を抱えております。

さる2月14日、中部電力は浜岡原子力発電所の4号炉について規制基準への適合審査の申請を原子力規制委員会に提出しました。直ちに再稼働を目指すものではないということを、中部電力は繰り返し言明していますが、今回の申請が再稼働を前提としたものであることは疑いの余地もありません。

今回の規制基準への適合審査の中には、原発事故発生の際の住民の避難計画の策定は含まれていません。どんなに地震・津波対策を講じたとしても、原発事故のリスクがゼロになることはあり得ない以上、周辺住民の放射能被ばくの危険性は消えるものではありません。

2013年9月5日に改訂された「原子力災害対策指針」では、「原子力災害対策を重点的に実施すべき区域」として各原発から半径30キロ圏内と定めており、「緊急時防災措置を準備する区域(UPZ)」と規定しています。静岡県は浜岡原発のUPZを半径31キロ圏内としています。31キロ圏内には11市町があり、約96万人の人々が生活しています。これだけの人たちをどのようにして数時間以内に避難させるのか、受け入れ先はあるのか、避難ルートは確保できるのか、どのような交通手段によって避難をするのかなどの具体的な避難計画は作成されていません。

私たちの住んでいる地域は、掛川市の中心部に向かう道路も、浜松市方面に向かう道路も路線が少なくて、普段の通勤時間帯でさえ、混雑や渋滞が起きています。ましてや、巨大地震が発生し、交通網の大混乱が予想される中で、数時間以内に31キロ圏外への避難など不可能です。実効性のある避難計画の策定ができない以上は、原発の再稼働は認められません。周辺住民に放射線被ばくの危険性がある浜岡原発は再稼働しないで、永久停止・廃炉にすることを求めます。以上で陳述を終わります。

11:25 阿部弁護士;第1~4次の準備書面(6)の概要を口頭で若干説明します。只今原告の意見陳述のなかにも避難計画の不備のことが触れられています。避難計画を含めて、防災体制の不徹底は住民を放射線被ばくの具体的危険にさらすもので、原子力発電所の運転差し止めを求める要件にあたるものであるという内容です。

原発は多重防護と言われています。細かいことは省きますが、第1層から第5層まである。そのうち、第4層がシビアアクシデント対策といわれるもので、浜岡原発でのベント。第5層は、シビアアクシデントが起こって、放射線が漏れたとき、その影響をいかに小さくして住民の被ばくを防ぐかということを目的にしたものです。第1層から第5層までは、IAEAの要請であるが、重要なことは、各層の間には優先順位の関係はない。各層は独立して存在している。つまり各層は自分が最後の砦になったつもりで、対策を行わなくてはならない。前の層がまったく役に立たなくても、自分のところですべて止めるのだということが期待されている。その各層が全部そろって、はじめて安全だと。原発の事故は万が一にも起こってはならないと。IAEAは大量の放射性物質の飛散に伴う過酷事故が起きることを前提にして、防災体制を整えることを要求している。それが争点だ。残念ながら、3・11までのわが国の対応は、第1層から第3層までだった。シビアアクシデントはそもそも起きない、たとえ起きてもその確率は無視しうるほど小さい。深層防護の考えを歪めて、第3層までで事故は防止できると。

それが露呈したのが福島第一原発事故であった。防災対策はこれまでの裁判では争点になっていなかった。福島原発事故を踏まえて、第5層まで重要だと認識してもいいわけだが、現在も原発再稼働の状況を見ると、新規制基準をクリアしていれば、防災体制のことは問題にしないと。原子力規制委員会も防災体制についてはチェックしないと。しかしながら福島第一原発事故の教訓に学ぶならば、シビアアクシデントが発生して、大量の放射線が原発外に放出されることがありうるということを前提にして、第5層が確立されているのが原発の再稼働の条件でなければならないという考えだ。

原子力防災に対する基本は災害対策基本法だ。わが国は、1999年のJCO臨界事故を契機にして、原子力災害対策特別措置法が制定された。そのもとで、原子力規制委員会は、原子力災害対策編を策定し、都道府県は原子力災害対策編を策定し、市町村もそれに合わせて、地域防災対策原子力対策編を策定することになっている。なっているけれども、現状はどうか。PAZ、UPZは省きますが、30キロ圏内では、緊急事態の場合は直ちに避難しなくてはならない。原子力発電所の事故では、あらゆる事態に対応しなければならないが、全面緊急事態のとき、30キロ圏内の人間が数時間以内に地域外に脱出しなければ大量の放射線を浴びる、そういうことだ。そういう対策が果たしてできるのか。

そのことができるためにはその地域の住民はどのような手段で、自動車で行くのか、バスなのか、トラックなのか、どのような経路か、一般国道ならどこなのか、その道は使えるのか、道路が寸断されたらどうするのか、どこに逃げればいいのか、避難所はどこにあるのか、受け入れてくれる自治体はどこにあるのか、それから高齢者、障害者、妊産婦など、災害要援護者の避難方法はどうするのか、受け入れ先は確保されているのか、そういうことが具体的に決まって実行可能でなければ、絵に描いた餅だ。

最大の問題は、30キロ圏内にたくさんの人が住んでいることだ。御前崎、浜岡の地域をみれば人口は少ないが、31キロ圏内では93万人の人口がいる。その人口を数時間で30キロ圏外に脱出させる具体的方法が考えられるのか。それは到底考えられない。福島第一原発事故が発生した時、実は、楢葉町の7800人が国の避難命令が出る前に、5か所の避難所に一斉に自家用車で出かけたが、普段は3~40分で行けるところが、何千台もの車が道路に入ったために、渋滞で3~8時間もかかった。たった7800人でさえこのような状況であった。何十万人では到底道路は持ちこたえられない。浜岡原発については、交通工学の観点から30キロ圏内の人を避難させるのに63時間はかかるという予測も出ている。条件によって予測時間は変わるが、基本的に70~90万人を数時間に30キロ圏外に脱出させることは不可能だ。

こういう防災計画・避難計画の不備と原子力発電所の差止めの論点とどうからむのか。差し止めには具体的危険性が必要であると言われているが、原子力発電所の事故の被害の甚大さを考えると、危険性は普通の差し止めの危険性よりも相対的に低くてもいいのではないかと考える。

それはIAEAが言っている、第1層から第5層までの防護体制が十分確立していなくてはいけない。そのうちの一つでも欠けていると、その原発そのものの安全性を欠くことになる。住民を危険にさらすものである。静岡県はいまだに具体的避難計画を立てておらず、将来も実効性のある避難計画を立てることは不可能であるから、浜岡原発を永久停止するしかない。

裁判長;今後の進行について

11:35  大橋弁護士;中電に伺いたい。一次訴訟はもう少しで3年。中電は再稼働の申請をしている。安全だと言うが、3年経つのだから、準備書面の予定を聞きたい。我々はこま切れ的に準備書面を出しているが、中電が安全だといってもらって、反論するようにしたい。

裁判長;中電はどうか。

中電;準備書面(1)(2)を出している。安全性を主張している。今後は原告の追加が予定されている。原告の主張の最終のものが見えないので、本格的対応はできない。

大橋弁護士;当初と変わっても、中身の基本は同じで変わってはいない。これから原告を1000名に向けてやっていく計画であるが、全面的なものを待つのではなく、安全だから安心してくれと言ってほしい。我々はそうではないと言っているのだから、もっと積極的に安心だと言ってほしい。

裁判長;新規制基準に通らないと出さないと言うのはもっともだ。通るだろうということで、主張するのか、原告からの新たな主張もあるので、これからのことを検討してほしい。

北村弁護士:2月14日、新規制基準のもとで、中電は申請をしている。HPでも公表している。安心安全だと言っている。中電は内では自分たちはこういう主張だと言っている。早く出してこないと反論できない。世間に公表しているのだから、出してほしい。

裁判長;ご指摘のように公表しているのでどうか。いずれにしても、今後について、次回までに書面のことを検討してほしい。

中電;2月14日の申請のことでの発言があったが、申請時の内容は公表しているが、膨大な資料で、誰もが見ることができる。原告の方からこの点が問題だと指摘してくれればいい。こちらから出す用意はない。

杉山弁護士;異議あり。代理人の弁護士の杉山だ。裁判はだいぶ前から始まっている。それにも関わらず、根本的なことで議論をしないで、HPに載っているのは膨大だからといっているが、膨大なものを出せとは言っていない。的確なものを出すべきだ。

大橋弁護士:膨大なものを出す必要はない。

裁判長;膨大なものを出されても、裁判所も困る。膨大なものの大半は争いのない部分だ。議論すべき重要な論点が打ち消されてしまう恐れもあるので、逆に言えば、膨大なものの目次みたいなものを、エッセンスを出していく中で、原告から見てどの論点が問題か、防波壁、津波の高さとかは争点になる。中電の申請が仮に申請通り通っても、通ったこと自体の判断が争いになるので、ある程度問題になりそうな点について、中電の方で明らかにできないか。

中電;裁判長の趣旨は分かるので検討するが、論点を我々が出すよりも、問題点があれば原告から出してくれ。

(傍聴席;もう出しているではないか!そんなことない!安全なら安全だと言えばいい!の声あがる)

裁判長;静かにしてください。傍聴席は発言しないでください。

杉山弁護士;不当な代理人の発言をそのままにして、原告がおかしいと感じるのは当たり前だ。裁判官、期限を決めて、いつまでに書面を出せと。出さないならそれ以降は受けつけないという訴訟指揮をしてほしい。

裁判長;それは無理だ。

杉山弁護士:なぜか。中電は全然出す気がない。

裁判長;逆に言えば、原告は出すのか。

杉山弁護士;むこうがやるのが当たり前だ。

裁判長;基本的に代理人の意見は統一されているのか。

大橋弁護士;されている。基本的には前から述べているように、安全性についてこちらは安全でないと言っている。その後被告は安全だと言っているが、福島の事故のあの惨事を見れば、これまでの立証は崩れているというのが我々の考えだ。むしろ安全だというのなら、これだけ安全だということを、我々の主張を待つのではなく、我々はそんなに大きなバックがあるわけではない。中電は専門家で出していく役割がある。裁判所に出してほしい。

裁判長;意見を聞いて、審議を充実されてほしい。

杉山弁護士;期限を決めないからずっとこの状態だ。裁判官が的確な訴訟指揮をしてほしい。

裁判長;意見は一致しているか。

杉山弁護士;している。裁判官が的確な訴訟指揮をしていないからだらだらとした訴訟が行われている。

杉山弁護士;裁判官、あるのであれば、何か的確なことを言ってください。

裁判長;今日はそういう意見もあるので。

杉山弁護士;意見があるって、裁判官、訴訟指揮をしないのか。

田代弁護士;問題になっている安全防護に関する防災体制について、裁判長から被告側に次回にしかるべきものを出すように。大量のものを出すのではなく、的確な範囲で出してくれと要請しているので、被告側が分かったと言えばいい。それで審理を終わってくれればいい。

裁判長;そういう意見があるので、被告側はどう考えているか。次回までに検討したものを提出してくれるかどうか。

杉山弁護士;そんなことにも答えられないのか。

中電;準備書面(6)も直前に出されて、どちらかというと一般的、抽象的なことで、我々もどう対応するか検討していく。裁判所から指摘された点は今後審議のうえ検討していく。

杉山弁護士;裁判官、検討するというのは、被告は回答しなくてもいいのか。

裁判長;検討するというのは、回答することもしないこともある。

杉山弁護士;どちらでもいいのか。

裁判長;裁判所が義務付けることはできない。

杉山弁護士;そんなバカな!!

大橋弁護士;前向きにやってください。さっきも言ったように、被告の方が安全性の専門家だから、我々を安心させて、再稼働を言っているわけだから、ちゃんと危険性がないことをきちんと積極的にやってほしい。

中電;(何か言ったが、記録できず)

裁判長:次回は、7月28日(月)11時から。

11:52国;意見陳述について、意見陳述する前に、事前に原稿を下さい。意見陳述を証拠として使うのであれば、事前にほしい。

大橋弁護士;準備書面とは違うが、ある面で考え方を述べるもの。文書にしているので、事後に渡している。

裁判長;要請ではあるが、裁判所としては最低限、事後に渡してくれればそれでいいが、裁判所には出してほしい。事前に渡すのは構わない。

大橋弁護士;では今後はそのように。                        11:56終了

 

12:02 地域情報センターで報告集会

司会;中谷信和(第4次原告団・県の会・事務局次長); 今日はかなり時間がかかりましたが、報告集会を始めます。最初に県の会代表の林弘文さん、弁護団長の田代博之弁護士に簡潔に挨拶をお願いします。

林弘文(県の会代表);こんにちは。今日はご苦労様です。意見陳述の4人の原告の方々、ご苦労さまです。まとまった発言で感心しました。弁護士さんも日頃思っていたことを発言されて、スカッとしました。

 実は先日報道特集があり、川内原発、玄海原発、高浜原発の海洋のことがあり、温排水で海の生態系がずいぶん変わったことがはっきりした。先日、東電の福島第一原発でポンプがおかしくなって、たくさんの汚染水が流れている。裁判で市民運動が大切です。これからもよろしく。

12:05 田代博之弁護士(弁護団長);

 第7次原告を迎えて、我々が目指すいよいよ裁判所を包囲する1000人の原告を結集して、県民に対して大きなバックアップを裁判所に結び付けていく。法廷でのたたかいには限度がある。法廷の中の原告団の要求・主張を広く法廷外の市民県民に届けて、力を結集して裁判所を包囲し、裁判官をして、世論の力の前にはその尊重した判決をせざるを得ないそういう方向に追い込んでいくのが我々の最終的な目的です。その展望からすると、559人はまだまだ。1000人にしていくのが不可能ではない。

今日は従前の法廷の雰囲気とは違い、圧倒的な原告団・傍聴者が裁判官を包囲し、裁判官がいいかげんな訴訟指揮をするのを是正しようとしたことは大変結構なことだ。裁判長は原発裁判に好意を持っていないと聞いている。最高裁の全国原発裁判官会議をひそかに開いているらしい。印紙代までコントロールすることもありうる。他の裁判でもかつて最高裁裁判官会議を開いて、国民の要求を遮るということも、国民の声に耳を傾けない対応もあった。最近、浜松でも裁判官だった、エリートクラスの裁判官が裁判官を終えて、ある本を出している。「絶望の裁判所」というショッキングな名の本。裁判所内で、司法改革がうまくいっていない、国民の声を大切にする裁判官の中の一つの訴えだ。主権在民だから、政府はもちろん、国会はもちろん、裁判所も国民に背を向ける訴訟指揮を強行するならば、我々は裁判所のあり方を究明し、批判し、是正させていくことが必要だ。

 今日は原告団4名の方の簡潔にして要を得た、地元生活体験を踏まえたいい意見陳述で、裁判長も評価してくれるのではないかと思う。弁護団も防災体制が何も安全ではないという基本的なテーマで意見陳述を行った。中電もそれに対して答えになっていない答えをして、弁護団から激しい追及を受けた。弁護団も団結していく。皆さんも団結を強めて次回の裁判に臨んでいただきたい。ありがとうございます。

12:10 中谷;今日提訴した7次の原告を代表して、東部の板垣さんから原告としての決意とあいさつをお願いします。

板垣和子(東部原告団);

 先生方ありがとうございます。力強い裁判を改めて実感した。実は原発問題は山田洋先生からも教えていただいてきた。ずっと浜岡原発が危ないよということでやってきた。今日は過酷事故の話も出ていたが、原発震災もずっと言い続けてきた。福島も危ないよと、直接福島へも入って、長いこと続けてきた。アメリカのスリーマイルこともあり、いろいろやってきた。楢葉町の住職の早川さんとも一緒にやってきた。早川さんは、一緒懸命やってきたが、事故を起こさせてしまった。まだ力が足らなかったなと嘆いていた。最近、疲れたという手紙。原発を止めるしかないとメッセージをもらった。

 私も運動をやってきたが、裁判は初めて。中電に交渉に行って地震のことを言ってきたが、福島のことでも地震のことを中電は語らない。浜岡は震源域の真上にあることを言い続けて、動かしてはならないと。東部では東京電力沼津支店があるが、その前で私たちは金曜行動をしているが、東電の皆さんは陰でいろいろ聞いている。東電管内では、浜岡での林先生たちが行った風船実験では東部に飛んできた。そういう思いで、67人の東部の原告になった。孫の代まで繰り返させない。今日は、なかなか浜松まで来られず、高橋さんと来た。よろしくお願いします。

12:15 中谷:第7次原告の人、お立ち下さい。法廷の報告ということで、弁護団の方でどなたか法廷の全体像を再現していただきたい。その後で、安倍弁護士から準備書面の(6)の説明を5分で、そして本来は4人の人の意見陳述を再現したいが、時間がないので、補足があればお願いします。

杉尾健太郎弁護士;法廷にいなかった人たちへの報告をします。まず、1~4次の原告が併合されているが、今日、5次6次が併合された。7次はこれから。今日は、1~4次の原告について準備書面(6)を提出した。これはあとで阿波弁護士から報告がある。そしてコピーと原本を照らし合わせた。5次については、中電の上申書、国の準備書面が提出された。

その後、6次原告4人の陳述と阿部弁護士の準備書面(6)の陳述があった。裁判所側から今後の進行のことで御意見はと聞いてきて、我々は中電の書面を求めたが、中電はこちらの注文に対して抽象的な答えに終始していて、こちらの質問にまともな反応をしない。その中で、再稼働を進めている中電に対して、それを踏まえて我々は再稼働申請をしているのだから、「安全だ」という主張をせよと。中電の方は、資料が膨大だから原告から論点を明らかにせよと。杉山弁護士から中電があいまいな態度をとっているので、裁判長がきちんとした訴訟指揮をせよと。

最後に、大橋弁護士が引き取って中電は検討せよと言って、中電は安全性について検討するということで終わった。

12:20安倍浩基弁護士;原子力防災体制が不十分な状態で、原発の安全性を欠いているので、そういう状態で稼働はできないので、その場合差し止めができるという主張をした。

  IAEAでは、深層防護、多重防護の考えで、第1層から第5層までの防護体制を取っている。第1層は、異常運転及び故障の防止を目的とする。第2層は、異常運転の制御及び故障の検出を目的とする。第3層は、設計基準内の事故を起こさないように、また事故が過酷事故に進展しないようにするため、工学的安全施設を設置する。第4層は、過酷事故が起きた場合、事故の進展を防止し、その影響を緩和することを目的とする。格納容器を守るためのベントもここに入る。第5層は、過酷事故の発生後に、放射性物質が施設外に出た場合、放射性物質の影響を緩和することを目的とするもので、原子力防災体制はここに入る。

 第1層から第5層までの関係は、どの層が優先で、どの層がそれよりも劣っていていいではなく、それぞれの層が独立して、それぞれが完結していなくてはいけない。つまり第1層から第5層のどの一つが欠けても原発の安全性は確保されないという考えに基づいている。第5層があるということは、過酷事故が起きて、放射性物質が漏れるということを前提にして、それでも人間への影響を小さくする対策を取らなければ、原発は稼働させてはいけない。

 ところが日本のこれまでの原子力政策は、第1層から第3層までの対策で充分安全性は確保できている。シビアアクシデントは起きない、起こったとしても小さい確率だから無視してもいいということで原発を運転してきた。そして3・11を迎えて、原発事故が起きた。事故後、海外ではフィルタベントをつけてやらなくてはいけないと、第4層はやらなくてはいけないと。原子力規制委員会でもやらなければ通らないよと。ところが第5層の防災体制はやらなくてはいけないよと決まってはいるが、原発の再稼働を審査する規制委員会の審査の対象になってはいない。世界一厳しい規制基準と言いながら、第1層から第4層までしか審査していない。

 避難計画は規制委員会が判断しないと。あとは国や自治体で判断してくれと。それはおかしいわけで、すべてが揃って初めて安全が確保されるということであれば、防災計画・実効性のある避難計画がそろってはじめて、稼働させるべきで、あやふやにして再稼働させることは言語道断だ。第1層から第5層のどれが欠けても、原発の安全性は確保されず、住民の放射線被害の危険性を及ぼす可能性がある。原子力防災体制には、事故が起きた時、関係者を集めて、情報を集めて、モニタリングでどの程度放射線が出ているか、風向きでどの方向に拡散するか全部的確に分析して、それを住民に伝えて、住民がどこに逃げていけばいいのかの的確な指示を出すのが目的になっている。連絡体制がうまくいかない地域があっても、情報をたくさん出すというのが事故の教訓だ。仮にそこまでうまく行っても、住民が逃げられなければ、どうしようもないという問題を強調した。

 浜岡原発から30キロ圏内には70~90万人の人間が住んでいる。数時間以内に出ないと大量の放射線を浴びてしまう。そういう具体的計画が立てられているか。一つ一つの計画を立てることはできるかもしれないが、実効性のある避難計画を立てることは難しいのではないかと言われている。これだけの人を受け入れる先の問題、交通手段の問題、どこの道路を通って、自家用車では道路が寸断されていたら、行けるのか。高速道路が使えるかどうかも分からない。交通工学の方がシュミレーションしたら、60~70時間かかる。その間、事故はどんどん進展して、放射線は大量に漏れてということになりかねない。浜岡原発の場合、本当に30キロ圏外に数時間以内に出す実効性のある防災計画を立てることは不可能であると。そうすれば浜岡原発そのものが安全性を欠いた原発であると、この点だけでもいえると。永久停止廃炉しかないと。こういう内容の書面だ。

それに対して、中電の代理人は抽象的なことを書いていると言う。では具体的にどういう避難計画が可能なのかを逆に中電が書くべきことだと思う。

12:28 中谷;3つの裁判をやっている。東京高裁、静岡地裁、そして静岡地裁浜松支部。今日のやりとりの伏線として、北村弁護士から話をしてもらいます。

北村栄弁護士;名古屋の北村です。脱原発の全国弁護団に参加している。そこからの情報を。7年前から静岡地裁での浜岡原発の裁判。いま東京高裁にかかっている。時々私も行っている。進行が一番早い。東京高裁の裁判官はよりイライラしている。中電がなかなか、自分の考えの根本のことを言わない。2月14日、4号機の再稼働の申請をしている。そうであれば、中電なりに地震、津波がくることを予想して、対策をしている。だから安全だと。それを我々は求めているのだと。それを言わないのは問題だ。当然東京高裁でも話に上るわけで、それが出ないと証人尋問のやりようがない。どのくらいのマグニチュードや予想震度や主張がない、根本的なことが出ない。東京高裁では期日が決まらない。裁判長が熱心でどうなのだと。中電にもうすこし待ってくれと繰り返すが、多分、今月か来月あたりに出ると思う。

それで、今回そういう話が出た。弁護団の中では一致しているが、三か月に一度は公判をやっていくことが必要だと。今回7月が次回なので、予定した日程だ。進行の問題については、一致団結してやれればよかったかなと思う。書面にして出すと残るのでその方がよかったかなと。東京高裁に追いつくことが必要かなと。

最後に全国の弁護団では、東京高裁が一番早いかと思ったが、それよりも大飯原発の差止め裁判の

判決が早いのでないかと。5月21日・水曜日に判決を出すと。証人尋問をせずに福井地裁の裁判官が出すと。どういう判決が出るか分からないが、いい判決が出ると非常に追い風になる。大飯より危ない浜岡にとって、5月24日に静岡で集会が予定されているのでさらに盛り上げていきたい。

12:35 中谷;原告も増えていますが、21人の弁護団が27人に増えた。今日参加の弁護団、お立ち下さい。本来の準備書面、原告全員にお配りしたいのですが、お金がないので、ファイルで各原告団に渡 しているので、読んでください。あと5分。先ほどの4人の方、何か発言があればどうぞ。

高橋;福島県でやった検査と違うのはどういうことなのかということですが、福島県の検査を開示してもらって、その検査に不満があり、静岡での検査では、小学校高学年の結果は高かったので、福島県の検査は一般の人と差がないよと言うが、それは少し違うのではないかと主張した。

中谷;他に何か発言は?

 林克(原発をなくす県連絡会代表);第5次の原告の一人ですが、今日の準備書面(6)に関わって、2月14日中電が再稼働申請した時、中電に行った。中電は安全審査と言ったが、全然安全審査ではないと指摘した。規制基準に適合すると言ったが、規制基準がいい加減なので、これは安全審査ではないと言ってきた。

 特に避難訓練では、住民の安全を守るしくみになっていないという話をし、その足で県に行ったが、県も含めて避難訓練を立てるので、原子力安全対策課長と一緒に議論をしてきたが、県知事が安全審査をやめてほしいと言うように申し入れをし、我々が福島の避難計画の検証を国がまったくせずに、そのノウハウのない自治体に丸投げをするのは、十分な避難計画はできるわけないと言うと、課長はその通りだ。国のやり方は憤りを感じるというように自ら言っていたので、そこは今日の準備書面どおりで、非常に欠陥のあるやり方だと言うことを報告しておきたい。

12:40 中谷;最後に落合さん、簡潔にまとめをお願いします。

 落合勝二(県の会・事務局長);原告の数が増えて、本当に元気になっていいなと感じた。法廷の中でのたたかいも限界があるので、外で大いに運動を広げたい。次回の弁護団原告会議は5月10日土曜日13時半、国労会館を予定している。

 今日の中で2つのことをお知らせしたい。次回は7月28日11時から。これに向けて、運動を盛り上げる。第8次原告の募集をする。1000人の原告に7月28日の裁判に合わせて、第8次提訴を準備したい。第7次の訴状、委任状と同じもので構わない。明日から広げてください。

 次に、いま県評議長の林さんの話があったが、実は、中電の再稼働申請に対して、当面、絶対再稼働をさせない!再稼働させない圧倒的な世論を創り出したい。2015年9月までに地域防災計画を完成させて、再稼働させようとする。それを踏まえて、来年9月をめどに、何と、県内100万人の再稼働反対の一点での署名を集めていこうという準備が進められている。4月26日(土)16時、実行委員会をやりたい。静岡労政会館3階会議室で行う。裁判の県の会として参加して、議論に加わりたいのでご了解いただきたい。同時にこの準備会議に各地の会の人も参加してほしい。

 裁判で勝つためには、圧倒的な世論がバックにほしい。署名も集めよう。原告を1000名に、そして100万人署名を。この二つのことでがんばろう。

12:45終了(文責;長坂)