浜岡原発裁判 10月1日(月) 原告「準備書面③」の原告陳述
10月1日(月)に開かれた浜岡原発永久停止裁判第6回口頭弁論で、原告側「準備書面③」を原告の落合勝二さんが陳述しました。(弁護士のお話では、「準備書面」の解説を弁護士ではなく原告が話すのは、あまり例がないそうです)、
被告側「準備書面②」は法廷に提出されただけで、口頭での説明はおこなわれませんでした。
以下は、落合さんの当日の陳述です。
「原告準備書面(3)陳述
原告の落合勝二です。原告準備書面3の陳述を行います。
先月8月29日,内閣府有識者会議は,「南海トラフ地震」で最大級の地震が起きた場合,御前崎市の津波予測高さは最大で19mと発表しました。
本年3月に発表した、21mの津波予測高さより、少し下りましたが、いづれにしても巨大な津波の予測です。
浜岡原発周辺の海底地形は,御前崎海脚といわれる浅い海が、半島状に突き出ているためが他のところよりも高くなります。
海岸線で押し寄せる津波の高さが19mであれば、後に山がある浜岡原発のような地形では遡上高さは30mから40mにもなります。
浜岡原発は、津波が巨大化する特質をもった地にあり、立地条件としては最悪の場所にあります。
津波は海岸でみる波と違い,高速度で押し寄せる連続した海水の流れであり,大きなエネルギーをもち,すざましい破壊力を持っています。
次に巨大津波により砂丘堤防は崩壊するおそれがあることを述べます。
被告は,原発敷地前面には標高10から15mの砂丘堤防があるから,安全であると主張しています。
では,砂丘が,想定される地震,津波に対して,抵抗力があるでしょうか。
今,全国的に海岸侵食がおこり,遠州灘海岸においても侵食が急速に進んでいます。
浜岡砂丘などの遠州灘海岸の砂丘を形成した主要な土砂供給源は,天竜川です。
海岸浸食の主な原因は,天竜川水系のダムが土砂を堰き止め,海への流出が極端に減少したことにあります。
自然の土砂供給サイクルがこわれたことで,浜岡の砂丘も年々侵食されつづけ,巨大地震や津波に抵抗できる保証はありません。
次に地震での液状化などによる、砂丘の不安定化について述べます。
被告は,「砂丘堤防は充分に締まった砂や砂礫が分布しており、大津波に対して,砂丘は一定の防波機能が期待できる。」としています。
しかし、砂質系地盤ては,地震の強い振動により内部の間隙水圧が高まり、液状化現象がおき,地盤が流動化します。
液状化などで,砂粒子のかみあわせがゆるみ,非常にルーズな状態になり,砂丘は不安定化し、抵抗力が低下します。
せん断抵抗力が減少した砂丘に,高速かつ大量の津波が押し寄せ,容易に砂は流され,砂丘は崩壊し、巨大津波に対する防波機能は期待できません。
次に砂丘の植栽、テトラポットは巨大津波に対して効果がないことを述べます。
想定される津波の上陸時の速度は毎秒14m程度です。
東日本大震災では,各地の防潮林が津波に対して無力でした。
気象庁によれば,津波高さ8m以下の津波であれば防潮林の効果は期待できるが,8mを越える大津波には全面的被害,無効果とされています。
被告は、適正な植栽があると主張しますが、現状は、強風により松の木などは育たず,枯れて砂丘がむき出しの箇所も多く見られ津波への抵抗性は期待できません。
波打ち際に設置してある6トンテトラポットは,高速度の津波には抵抗できず、容易に遠方に押し流されます。
しかも、現地のテトラポットは台風などの高波によって移動し、脚がもぎれてバラバラになったものもかなりあります。
東日本大震災では、推定重量170トンもの岩が河口より500mも移動した例があります。
次に標高(T.P.)18mの防波壁では,予想される津波を防ぐことはできないことを述べます。
海岸線で高さ19mの津波が押し寄せれば,当然のことながら,18mの防波壁では,1m以上越えて海水は連続して原発敷地に流れ込みます。
大きな運動エネルギーをもって押し寄せた津波は,あたかも砂丘の滑り台を這い上がるがごとく進行し、防波壁に当り,19mの高さをはるかに超えて流れ込みます。
防波壁からの越流水深を3mと仮定しても、流れ込む海水量は、一分間で約370万㎥にもなります。
津波の流れ込みにより,水面標高18mの巨大な池がたちまち出現し、満水状態になるのにわずか3分程度しかかかりません。
深さ10~12mで水没した状態が長くつづき,建屋等への海水の浸入を防ぐことは不可能です。
さらに,海水のみが防波壁を乗り越えるだけではありません。
テトラポットや,砂丘の砂,松の木,アスファルト舗装のガレキが,敷地内や取水槽に大量に流れ込み,施設の破壊や冷却水の取水が不可能に陥る危険性があります。
冷却機能が失われ,福島第一原発事故の二の舞になることが予測されます。
次に建設中の防波壁は地震動と津波の衝撃力に耐えられないことを述べます。
防波壁の基礎は,岩盤に根入れされた鉄筋コンクリート製地中壁であるから十分な支持力があるとしています。
基礎の上に,鉄骨と鉄筋コンクリートのL型ブロックをのせた構造で、1ブロックの長さ12m,重量900トンのものを連結した,連続体構造物です。
被告は,この防波壁は頑丈にできており,充分な強度をもつと主張していますが、次のような重大な問題点があります。
第一に、津波の波力は,「9mの水深の進行波が防波壁でせき上がり,この進行波の3倍に相当する水深の静水圧分布が働くものとして設定」としていますが、あまりにも過小な波力の設定です。
第二に、東北地震により観測された最大加速度は,宮城県栗原市で2,933ガルでしたので、これを考慮した設計とすべきです。
第三に、防波壁の高さは,基礎の先端より最大で約40mですが,岩盤で固定とした片持ち梁として設計する必要があります。基礎は、長柱杭基礎として設計するべきです。
頭部に非常に重い防波壁ブロックをのせた構造形式は、細長く高い電柱の上に重いものを載せたと同じことで、きわめて不安定な構造物です。
第四に、 津波により洗掘現象がおき,構造物の破壊が多く発生しますが,設計上いかなる検討をしたのか明らかにして下さい。
防波壁周辺で洗掘がおきた時、引き波の時の残留水圧や,噴砂現象により,防波壁そのものが転倒し壊れることが想定されます。
第五に、長大な連続体構造物が,長周波振動をふくむ地震動によってどのような動き方をするのか,解析する必要があります。
地震動や地盤の隆起によって,大きな力が働き,接合部での切断や折れ曲がりによって破壊される可能性があります。
防波壁は,全体として安定性が確保されなければ、その存在価値はありません。
連続体構造物の安定評価は,断面方向のみを考慮した2次元設計では、全体の評価はできません。
防波壁の構造設計詳細および基礎設計詳細について地質構成も含めて,全容を明らかにされるよう釈明を求めまして陳述を終ります。