社会基盤の一つとして定着したおサイフケータイを安全に利用するためには、使いやすいロック機能が搭載されていることが前提条件であるし、カードタイプの電子マネーと比較した場合、ロック機能そのものが優位性の一つであるはずだ。そんな中、iモードケータイでは数字キーの長押しで手軽に設定できていたおサイフケータイ(ICカード)のロック機能だったが、スマートフォン版のおサイフケータイアプリではロック設定時にも毎回パスワードを要求するという意味不明な仕様に変更されてしまった。
ARROWS NX(F-01F)では「本体設定」→「無線とネットワーク」の「その他」のメニューの中に「NFC/おサイフケータイロック設定」がある。これまで通りおサイフケータイアプリのロック設定からも同メニューにアクセスできる。
初回設定時にはNFC/おサイフケータイのロック用パスワードを決める必要がある。
ARROWS NXにおいても、おサイフケータイアプリそのもののロック機能に改善はみられない。おサイフケータイロックの設定時に毎回パスワード入力を求められる残念な仕様は相変わらずだ。
だが、ARROWS NXには指紋認証という強力なツールがある。NFC/おサイフケータイロックの認証に、この指紋認証を利用することができるのだ。
さっそく、設定して試してみよう。
まず、ロック画面解除時などに利用するセキュリティ解除方法として指紋認証を設定する必要がある。「本体設定」→「セキュリティ」内にある「指紋設定」メニューを開いて指紋を2個以上登録する。
指紋の登録は、背面の指紋センサーを指の腹で最低3回なぞる方法で行われる。中央付近には読み取りの進行状況がバーで表示されるのが参考になる。
この登録画面では左右の手10本分それぞれの指の指紋として情報を登録することになっているが、実際に登録する指と対応している必要はない。もちろん指紋の読み取り時にその指を使うか指定するわけではないので、10本の指をすべて登録するよりは、日常利用する何本かの指を「別の指」として登録しておく方が認識率が高まるのではないかと考え、指紋センサーへの指の当て方を変えながらいくつか登録してみたところだ。
指紋登録が終わったら、もう一度「NFC/おサイフケータイロック設定」の画面に戻り、「指紋認証を利用する」のチェックボックスをONにする。現在設定しているパスワードを正しく入力すると無事指紋認証を利用する設定が完了した。
今回、ARROWS NXがおサイフケータイロックの利便性向上に真摯に取り組んでいると感じたのがスワイプ操作で起動するオリジナルアプリの「スライドインランチャー」に「NFC/おサイフケータイ設定」を起動するショートカットを用意していることだ。
これまで利用してきたスマートフォンでは、おサイフケータイのロック設定画面を直接呼び出す手段は用意されておらず、アクティビティのショートカットを作成できるアプリを利用して設定してきたのだが、ARROWS NXではそんな手間は必要ない。「スライドインランチャー」の初期設定にすでに「NFC/おサイフケータイ設定」のショートカットが含まれているのだ。なんというありがたい仕様だろう。
【2013/11/07追記】
スライドインランチャーのショートカットだけではなく、ホーム画面に直接置ける「NFC/おサイフケータイロック設定」ウィジェットが用意されていることをレビュー記事で知った。アクティビティのショートカットをわざわざ作る必要はない。富士通さん、参りました。
さて、スライドインランチャーから「NFC/おサイフケータイ設定」を起動すると直接ロック設定(解除)の画面が起動し、指紋を読み取りが開始される。
緊張しながら、指紋センサーを指でなぞると、約1秒後、NFC/おサイフケータイロックはスムーズに設定され「ロックしました」と画面に表示された。
その後、幾度となくロック設置と解除を試してみたがいずれも短時間でスムーズにできる。これは快適だ。
もっともロック時に認証が必要な状況が改善されたわけではないが、いちいちパスワードの文字列を入力する手間が、指紋センサーを指でなぞる簡単な操作になったことの「衝撃」は大きい。
指紋認証そのものの認識率は感覚で言えば90%~95%程度、実用上まったく問題ない。
すっかり調子に乗って、ロック画面の解除にも指紋認証を利用することにした。「セキュリティ解除方法」を「指紋」に変更する。
解除に指紋以外の方法を併用する設定が選択できるので、「指紋+パターン」で認証することにした。
ロック解除にかかる実際の操作は以下の通りだ。
画面表示が状態から、背面のスイッチつき指紋センサーを押すとまずスリープが解除される。いちいち小さな電源ボタンに手を伸ばす必要はない。
そのまま指をスライドさせると、一瞬でロックが解除されホーム画面が表示された。「登録された指紋と一致しました。画面ロックを解除します」とほんの一瞬表示されているようなのだが、そのメッセージも読み取れないくらい瞬時の反応で思わず感嘆の声を上げてしまった。
現時点で気になる点を挙げておくとするなら、スイッチを押したあとおそらくは指を離す際の動きを感知して「なぞる距離が短すぎます」という読み取りエラーのメッセージが表示される。直後にセンサーを指でなぞるので実用上は何の影響もないのだが、エラーメッセージは気になるのでスイッチを押した直後にはこのメッセージを出さないようにしたらどうだろうか。
今から5年前、iモードケータイ「SH-01A」に搭載された指紋認証機能を利用しようとしたが、うまく指紋の登録と確認ができず利用を諦めたことを思い出す。SH-01Aに搭載された指紋認証機能がどの程度のモノだったのか知るよしもないが、いったん諦めた指紋認証という技術がこのARROWS NXとの出会いにより、毎日の生活で利用できるようになったことは感慨深い。
このほど発売されたiPhone 5sにも指紋センサーが搭載され、ロック解除のみならずiTunesやApp Storeでの商品購入にも利用できるとのこと。富士通が10年前に発売したiモードケータイ「F505i」から搭載をし続け、地道な改良を続けてきた指紋認証機能の普及元年が2013年なのかもしれないと感じている。
これまでおサイフケータイロックの操作、特にロック設定時のパスワード入力作業を自分は非常に煩わしく感じていた。決して日の当たる部分ではないが、指紋認証という手間のかからない認証方法を用意し、なおかつ「スライドインランチャー」にNFC/おサイフケータイロックのショートカットを搭載することで入り口の部分も広げた富士通の姿勢を高く評価したい。
【参考】
- GALAXY Note Edgeの指紋認証はおサイフケータイロック設定に使えない (2014/10/31)
- ARROWS NXの指紋認証データに名前をつけたい (2014/2/14)
- ELUGA XのNFC/おサイフケータイ ロックにはガッカリだ (2013/2/2)
- 指紋認証はあきらめた (2009/1/18)