デセル 【神殿】 -６

神殿が此の地での役割を終えると決定されたので

それに伴う撤収作業がはじまった。


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もうエネルギーを循環させるシステムはいらない。使わない。

大いなる源からは既に切り離されている。

破壊する必要はなかったので、主装置から１部品を抜いただけ。

これで充分バランスが崩れ、エネルギーは抜けてしまうだろう。



装置群からエネルギーが散じてゆく。



それらが徐々に輝きを失ってゆく様をみるのは、自らの手で愛するものを、命を手をかけたようで、抉られるように辛い。



これらはこのまま封じられる。半永久的に形は保ち続ける筈だ。

時間が経っても元に戻せば、すぐにまた起動直前の状態まではなるだろうな。

機能まで起動げられるかどうかは、その時代の人の、……次第。



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境界に浮かぶ神殿のシルエットが揺らぐ。急激に薄れてゆく。


神殿は次元を移動しつつある。現世と徐々に分離してゆく。



エネルギーの失われたクリスタル群。

もう何処へも繋がらない只の構造物。

ゆく部分は全て全て去ってしまった。







…「門」は、この次元に固定され、構造体も残される。



他にも建物がすこし残される。

時間の移ろいを示すよう、刻々と朽ちて崩れてゆく為に　






さよなら。

私の愛した世界。

デセル 【 街 】 －５

神殿が閉じられると決まる前から、街には衰微の兆しが現れていたように思う。


ある時から、ただ少しずつ少しずつ人口が減少し、街を支える人々の活気は
弱く薄まっていった。


外へ伝わった技術が独自の発達を始めて、段々とその大元であった基礎技術が
時代遅れな空気を帯びるようになったからであり…
技を求める者は新技術が売りの都市へ向かい、源を学ぼうとこの地に訪れる者が
徐々に減っていったせいでもあり…


新たな人を引き寄せる魅力が、此の地から失われてしまったのかもしれない。
魅力とは龍脈のことだったかもしれない。　

地の気脈が逸れたのかもしれない。

詳細は不明だ。　私は知らない。




鉱石の採取にしても、この干潟が唯一のものでもなく、ここでしか採れない
稀少鉱石があるわけでもなかった。
他の産地に押され出すと、この街で育った者も生活のため出て行かざるを
得なくなっていった。




住まう人を失った家は、徐々にそのエネルギーが停滞して…沈黙した。
その状態が長く続けば、つなぎ合わせていた力も散じ、やがてバラバラになって
戻っていったとおもわれる。

そうしてエネルギーサーキットから外れる家が増えると、街はランダムにパーツを抜かれた
ジグソーパズルの画のように段々意味を成さないものになっていったのだろう。


それでもまだ街は眠りに入ったようなもの　…　だったろうか。

目覚めるあてのない眠りでも。