Stripe Volume

ストライプ ヴォリューム

魂って何でしょうね?

Sirena - Amuleti del mare -

2012-02-14 00:46:03 | Sicily



その約束の証に。

その望みの導に。

その導を貴方に。



それからこれは

貴方への護りに。







Tiamu,Ray... 

愛しているわ レイ


Ray, l'invito al mio mare

レイ あなたを私の海に迎える






 先に逢った、再び逢えた、あなた。

 

 銀色のあなただけに出会ったのだったとして

 例えばあなたが私に惹かれなかったとしても

 私はあなたに恋したでしょう。


 愛して、陸に返したでしょう。


 
 出会いの後先は巡り合わせがそう回っただけ。


 
 










Amuleti del mare / 海の護符
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Sirena - Alba. Ray -

2012-01-06 00:00:16 | Sicily
一筋の光線から海は明け始まる。
太陽の瑞々しさは季節に由来するのだろうか。



波に揺られ嬲られ身を任せてそれを眺める。

海綿の繊維を結んだ網篭に二枚貝を幾つか。
彼の食事に足るように大きな粒のを拾った。



__ さ あの人の処へ届けにゆきましょうか。


私に向かって独り、呟いた。




----





浜が近くなったので顔を出して陸の男を捜す。
少々途方に暮れた風の彼が流木に座っていた。



__ おはよう。少しは眠れたかしら。


波間から呼び掛けると夢から引き戻された顔で私を認めた。


__ 火は大丈夫ね?水場は分かった?
 



夜更けと同じ眼差し。
動揺を隠して己の記憶を浚い直しているよう。

私もまた苦笑が浮かんでしまう。


太陽が空にある時は、金の髪と青い鱗の尾鰭。




__ ごめんなさいね。 苦笑
__ 私は夕べのシシィよ。私の昼の姿なの。






そして波の及ばない辺りへ、貝などを置いた。




__ これはあなたの食事にして。その為に採ってきたの。

__ 枯れた海綿も持ってきたわ。これで水を溜めて頂戴。



__ あなたに必要なものは探してくるから。



 また来るわね。

 用事のときは、波に触れて私の名を呼んで。

 私に伝わるわ。



じゃあね。



一方的に話してそして、寄せる波へ身を翻した。
彼からの返答を、たぶん私は聞きたくなかった。







 同じで、同じでなく。
 彼とは違って、当然。
 それも勿論、私は納得している。

 納得している。でも。
 懐かしい人を透かして見ている。
  
  面影を追っているのは勝手な私… それは何処かの心に。
  どこかに仕舞う。。。










 沈没船や難破船の散った品が眠る海底の洞窟へ潜る。

 過去の彼が使っていたような、現在の彼に必要な物。


 見つかるわ。
 
 … きっと。






浅い海の波のうねりが海中の、光の柱を揺らめかせる。




覚えていようといまいと… 変わらないものね。
私だけの海にすっと差し込んできた… その様。




 
  空に在るときは「天使の梯子」




 
そう言って笑った人に。





  海の中に差すのは、光の… リボンかな。ゆらゆらして。

  君にあげる。 笑  シシィ。






つかの間でも、また恋していられる。







… 出会いの新鮮さが懐かしいのは、、






Alba, Ray / 朝、 光の線
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Sirena - Il suo mare  -

2011-12-30 00:23:38 | Sicily
月光に白い波と白い砂と濡れた銀の髪。
沈みかけた男の息を継いで引き揚げた。


小さな浜に上がり、痛そうに仰向けに転がった。
荒い息が静まってのち、男がぽつりと私に問う。


「ここは? 君は … 何者なのかな。




--------





「… それで、その男はどうなったのかな?


苦労して起こした炎を絶やさぬよう朽ち木をくべる。
彼と私の間では、途切れがちな言葉を埋めるように。

炭火が赤く熾き、新しい枝に炎の葉を茂らせてゆく。
その揺らめく明かりを見つめながら言葉を交わした。



__ 海戦に巻き込まれて、海で死んだわ。

__ 戦えない人では無かったけれどね …




赤い帯のように血を引いて何人も沈んでいった。 戦の海。






__ あそこの …ひとつ向こうの洞窟に奥津城があるの。



月で光る岩礁を指さす。

波飛沫が音もなく散って、また海に還る。
白銀色に光っては、繰り返し…繰り返し。




__ そこへ私が連れて行って葬ったの。




__ … あなたのことよ? 


返す指でその男の胸に触れた。




やはり困った表情で首を傾げる。



__ 苦笑 いいのよ。ごめんなさい。 分からなくて当たり前のことだから。
__ そのとき恋仲だったから、また愛して欲しいと言いたいのでは無いの。


__ 今度はあなたが沈む前に息を繋げられたから、良かったと思ったのよ。
__ 私には嬉しいことだった。



楕円の月を見上げながら言った。


__ でも。 あなたにはあまり嬉しいことでは無かった。 
__ そうなのね?



夜の海の上を雲が軽々と渡ってゆく。 月が陰る。



__ …あなたは陸にお帰りなさい。 私、小船を見つけてくるわ。

__ 怪我がもう少し良くなったら、船を操ることも出来るでしょう。






どこかの…港の近くまでは送ってあげる。 そうしたら、さよならね。

水の禍にはもう巻き込まれませぬように。 護りを渡すわ。あなたに。








「… シシィ? 

 
___ なんでもないわ  笑

___ 





磨りガラスの月が擦れた光で深夜の海を照らす。





    … 待って、シシィ。 君の鱗に傷がつくから。…

    いいんだ。 笑




遠い記憶が波のように寄せ退いてゆく。

昔々、私をマントで包んでくれた恋人は、いない。











___ 日が昇ったらまた来るわ。



じゃあね。

悟られぬように振り向かずそう言って、私は水に飛び込んだ。











Il suo mare / 彼女の海
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Sirena - Brezza marina -

2011-12-29 19:11:11 | Sicily
その洞窟は、陸と海の境界に用意された不思議な広間。

半分は海の中、半分は砂浜と岩場。

海岸から続く真白い砂が絨毯のように厚く洞窟の中を覆っている。
まるで手頃に配されたような岩が、外からの荒波を防いでくれる。


所々波に浸食されたヵ所が窓の様にあり、そこから入る日差しは涼しげで明るく、洞窟の中を、透明な海中までもよく照らしこんでいる。



俄雨を避けようと駆け込んだその人とは、此処で出会った。

この夏、私達はたちまちお互いの虜になってしまったので
その旅程を変えて、彼はこの街を拠点に逗留すると決めた。





-------



「… それで、その子は?



洞窟を抜ける涼風が開いた本の頁をくるくると捲ってゆく。

そこに慌てて栞代わりの海鳥の羽を挟み込んでいる陸の男。


夜の私と似た暗い色の髪と瞳。 優しい微笑み。



__ その子は12の歳に死んでしまったのよ。

__ 陸の墓地に葬られているから私は迎えにいけないわ。

__ それにあの子の母さんが悲しむからね。




え?! と顔をあげるその人に薄く微笑んだ。


__ そんなに昔のことじゃないのよ。 苦笑

__ あの子の母さんは、陸の命が終わっていない。


__ 母さんが墓地へ向かう時、私にも花を一輪投げてくれた。




__ まだ彼女が元気で若い頃のことだけど。 




「… シシィ。 ねぇ 君はいったい幾つなんだろう?


 
__ さ 知らないわ  笑

__ 波や風に、あなた年齢を聞くの? 笑



ふふふ。


__ ほんとうに真顔で質問するのね。 笑






思わず笑い転げて、海中に潜ってしまう。

寄せる波も笑うような音を立てて跳ねる。




海面に顔を出すと神妙な顔で彼が待っていた。





「 … 私は … ねえ シシィ? …




__ …すぐの話じゃないわ 苦笑

__ あなたは陸のものだもの。




__ ね? お願い。 陸の命を精一杯生きて頂戴。


少し不満そうで寂しそうで物言いたげな彼の眼差し。




__ そうでないと、望んでもあなたは海の者になれない。

__ 命と使命を果たしていない者を引き込みはしないの。

__ 引き込んでも身体だけ残して陸に還ってしまうのよ。



__ 空っぽの亡きがらが降り積もるだけだわ …




いままで私はどれだけの骸を弔ってきただろう。

俯き睫毛をふせる。

白い骨。沢山。 暗礁で、海底で朽ちる船達…




「分かってる。君を困らせたいのではないんだ。 

「…でも、長生きだったら私は相当な年寄りになってしまうな。苦笑





__ そうね 笑  でも素敵よ。
__ あなたを私の海に迎えるわ。

__ その約束は違えない。




磯の岩に這い上がりながら、半身を起こして彼を見上げる。




「… 待って、シシィ。 君の鱗に傷がつくから。 … っと


旅行用のマント取り出して私に着せかけ、抱き上げる。



__ 笑 いいのに。 マントに潮が染みてしまうわ。




「いいんだ。 … 笑


その男は、顔をのぞき込むようにして口づけた後、にこっと笑った。









Brezza marina / 潮風
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Sirena - Alba -

2011-10-20 00:33:19 | Sicily
空も海もまだ瞑く、眠っている。


----------



「ね~ぇ シシィの家はどこなの?」


汀の岩礁に両の手をつき、乗り出すように海を眺める子供が言う。

傍らに置いたランプの炎は、暖かい色の光で無邪気な顔を照らす。



__ 笑   海の底よ。 坊や。



潮に髪を揺すられながら、遙か沖へ眼をやりながら、私は答える。





「わぁ いいなぁいいなあ 僕行ってみたいな。」

「…ね? 駄目? 」

「僕を連れて行ってよ。シレーナ。」




__ …そうね。 坊や…

__ あなたが陸で為すべき事を終えたら招待しても




__ いいわ。




海水を潜って振り返り、その子に答えた。

夜の色が私から去り、深淵に還って行く。

… 闇の底へ。




青い沖から吹き寄せる風は陸に恋した乙女達。

ランプの小さな炎がその海風に煽られ消えた。

気づかない子供は、目の前の不思議に夢中だ。




「ほんと? 約束だよ! 笑」



__ ええ。 私は嘘は言わない。



陽光が染め上げる金色の髪。

空を映す青色に輝き出す鱗。



「シシィ… 夜明けだね」



劈開の無い石英に一筋の明るい亀裂が走る。

その節理から新しい日がまばゆく生まれる。

空に瑞々しい光を放ち、潤んだ太陽が昇る。



__ 坊や、ほら母さんが呼んでいる。



もうお帰りなさい。 そう私は言った。







 Alba / 夜明け
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