ぐぅんと大きく躰をしならせて青の濃い流れを目指し、潜る。
… 昔々
私達は海にいたことがありましたね …
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涼やかな水をくぐり流れに乗っていました。
大きな鰭の次々起こす、リズミカルな渦巻。
纏わっていた小さな者達がころころと巻かれ、楽しげに水中を舞います。
鰓を通る潮水はどこまでも透き通り、遠ざかるものは青に溶けゆきます。
辿り着いた処では、かすかに硫黄がかおる。
水底の泉が吐く、細かな泡の樹々が立つ森。
そぞろにすり抜けると鱗に気泡が大小、宝石のように光っていました。
古い鱗が剥れ、キラキラと散ってゆきます。
あれらは遙か下で積もるのかもしれません。
いいえ落ちる先を追ったことはありません。
どこまででも落ちていったかもしれません。
海が薄墨に沈んだとき、浮上して空を見ました。
昏い白色の空。
前に見たときは、海と同じ鮮やかな青色でした。
水面の空の流れはとても冷たく乾いて痛みます。
ずっと上から魚鱗のようなものが落ちてきます。
落ちて落ちて落ちて、次々と端境で消えました。
ふわりふわりと。
たくさん。
空にも私のような竜がいるの?
鰭で幾らかいてみても、空の応えは全く疎らで躰を高みへ運びません。
溶けあうほど近い色でありながら、けっして混ざり合わない密度の差。
凍えて痛くて諦めて海に潜りました。
暖かくて大好きな海。
… でも。
鈍色の空には誰かいたのでしょうか?
私達のいた海 …
Sagara / サーガラ(海
… 昔々
私達は海にいたことがありましたね …
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涼やかな水をくぐり流れに乗っていました。
大きな鰭の次々起こす、リズミカルな渦巻。
纏わっていた小さな者達がころころと巻かれ、楽しげに水中を舞います。
鰓を通る潮水はどこまでも透き通り、遠ざかるものは青に溶けゆきます。
辿り着いた処では、かすかに硫黄がかおる。
水底の泉が吐く、細かな泡の樹々が立つ森。
そぞろにすり抜けると鱗に気泡が大小、宝石のように光っていました。
古い鱗が剥れ、キラキラと散ってゆきます。
あれらは遙か下で積もるのかもしれません。
いいえ落ちる先を追ったことはありません。
どこまででも落ちていったかもしれません。
海が薄墨に沈んだとき、浮上して空を見ました。
昏い白色の空。
前に見たときは、海と同じ鮮やかな青色でした。
水面の空の流れはとても冷たく乾いて痛みます。
ずっと上から魚鱗のようなものが落ちてきます。
落ちて落ちて落ちて、次々と端境で消えました。
ふわりふわりと。
たくさん。
空にも私のような竜がいるの?
鰭で幾らかいてみても、空の応えは全く疎らで躰を高みへ運びません。
溶けあうほど近い色でありながら、けっして混ざり合わない密度の差。
凍えて痛くて諦めて海に潜りました。
暖かくて大好きな海。
… でも。
鈍色の空には誰かいたのでしょうか?
私達のいた海 …
Sagara / サーガラ(海