Stripe Volume

ストライプ ヴォリューム

魂って何でしょうね?

【eidos】 書架の守人 ― 曹灰針石  ―

2019-12-03 12:03:03 | observer of beautiful forms

「ラリマー(Larimar)」の名を知らぬ石好きはいないだろうと思う。


あの石の色、優しい勿忘草色をした湖には、同じ色をした竜の棲み処があるのです。







Sky Blue Lake











曹灰針石 / 正式名称:ブルー・ペクトライト(Blue Pectolite)和名:ソーダ珪灰石 
無色透明、白色、灰色、青色、ピンク色、淡黄色などがある。

宝石名【ラリマー(Larimar)】の名は、この石を発見した地実学者の娘「ラリッサ」と
スペイン語で"海"を意味する「マール」を組み合わせたことに由来する。

パワーストーンとして / ラリマー 人種、環境などを超えた理解、協調性、調和、変化に強い
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【eidos】 書架の守人 ― 柘榴石(虹色) ―

2018-10-24 18:41:01 | observer of beautiful forms


万聖節の前夜も近いので、少し不思議なお話が聞きたくなった。


語り手は、Iと呼ばれた彼女。


Iは、柘榴石の人で、柘榴は人の血肉を表すこともある果実のこと。
その実の名を持つ石の、虹色に輝くものがレインボーガーネット。

彼女は、薄暮の祈り という名の吸血鬼の元へ嫁いだ人だった。

その人の話を聞きたいと思う。




吸血鬼 - Vespertine -

吸血鬼 - Vespertine ・ 2 -






※写真の転載はご遠慮ください。


柘榴石 / ガーネットの名は、ラテン語の”granum”(種子、殻粒)"granatum"(多くの種子をもったもの=柘榴)から。
原石は12面体や24面体、色はブルーを除いたほとんどの色があります。
ガーネット結晶の表層部が熱水による融食作用を繰り返し受けたために薄膜構造となり、虹色の干渉光を示すことからレインボーガーネットと名づけられたものです。

パワーストーンとして / レインボーガーネット : 目的への的確な示し、活力、エネルギー不足の解消、権力、優雅、勝利
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吸血鬼 - Vespertine ・ 2 -

2018-10-24 16:33:55 | observer of beautiful forms
森の入り口に立ち、大きく深呼吸。

ふわりと鼻腔に漂ってくる、予感。

さ、行ってみましょう。


… 初めてその場所を訪れたのは、あたしが幾つの時だったかしら。




---




緑が濃くなり、その草木たちが吐く清々しい霧が立ち込める季節。
その朝霧に時折、不思議な芳香の溶け込むことに気が付きました。

いい匂いがするねえ♪ と大人達に話しても、その香りのことを誰も教えてはくれません。

この村にない香りでしたので、幼いあたしには見当もつきません。



ある朝、あたしは謎の香りの正体を見つける冒険に出かけました。

昏い霧の中、香りの流れだけは、仄かに紅く見えた気がしました。


そうやって着いた処にあったものは、それは、見事な薔薇の園。
黒色に見えるほど、深く濃い赤色に、天鵞絨の光沢のを持つ花。
一輪に、幾重も重たげな花弁を巻く、大きな剣先薔薇の咲く庭。

霧を染める、甘く滴る香りの豊潤なこと、、、夢のようでした。

薔薇なら街でも見ましたし、野茨の小さな花は村にもあります。

でも、それらとは全く想像の結びつかぬ素晴らしい芳香でした。



薔薇園の少し向こうに、ひっそり佇む灰色の館が見えました。

赤みのある灯のともった窓も見えます。

それから…






朝霧が薄くなる時刻、あたしは森の中の慣れた道を、伯父様の屋敷へと戻ってゆく途中でした。
咲きかけた薄紅色の薔薇を数輪手にして。


その後、数度訪れてみたのですが、いつも気が付くと数本の薔薇を手に帰るところなのでした。

何度か、…何年か。
薔薇園について少しずつ思いだせることは増えたものの…、それでもまだ夢の中のことのよう。






そうしてそれから、あの日。



母さんの病気がとうとうどうにもならない事を、それを受け止めざるを得ないと知れた日、あたしは、朝まだきの森の道を走っていました。




ううん、本当はそうじゃなかったはず。


許婚のところへ慰めて貰いに行ったらば、彼は、あたしも知ってる女の子を家に引き込んでいたのです。

とは言え、そのことでは涙は零れなかった。

あたしは、あの人を、あんまり好きではなかったので。
でも、これから好きになって、あたしを守ってくれる人になるのだと、そういうものなのだろうと、あたしはただ単純に思っていました

彼はそうじゃなかった、と言われ始めて気付きました。

彼にとって、あたしは好きな人ではなく、またそうなる相手でなかった。

あたしも、あの人は、いらない。
彼もあたしをいらないのだから。



。。あたしは、すごく、だめだ。

母さんにはもう時間がないのに。
あたしは自分独りの先が不安で、病気の母さんの傍に居られないなんて。。






不意に。





霧の狭間の薄暮に、黒く紅い薔薇が香った。

手つかずの時間が魔法のように、あたしを手招いてくれたように思えて、あたしは暗い霧の道をひた走った。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

吸血鬼 - Vespertine -

2017-10-24 16:23:55 | observer of beautiful forms
春、誕生日の朝。

食卓の席に皆がそれぞれきちんと収まり、給仕を待ち、ふと静まったときでした。

にこやかな顔の伯父様が、改まった様子で掌ほどの飾り箱を取り出し、あたしに告げました。


「これはお前の母さん、私にとって従妹のキャシーから預かっていたものだ。

開けた飾り箱の中には、古びた、でも凝った装飾のある鍵が二つ。

「今日から正式に、あの別荘はお前のものだよ。
「アイリーン、誕生日おめでとう。 笑


あたしは飛び上がるほど嬉しくって、伯父様に抱きつきに行ってしまいました。

「大好き!伯父様と伯母様!
「ありがとう!



------



深い森の近くに切妻屋根の小ぢんまりとした別荘があります。
素敵なお家と敷地続きの薬草苑。

ここは、母さんが、母さんの母さん、あたしのお祖母さまから、そのお祖母さまもご両親から受け継いできた土地。


張り出し窓の綺麗なこの家には、これまでも、お掃除や片付けなどで割と入り浸っていたけれど、

(寝泊まりは、まだ子供だから駄目。

だから、日暮れ前にはお屋敷のあたしの部屋にちゃんと帰っていました。

もちろん! お屋敷の部屋だって素敵な場所。…なんだけど、…でも。


この別荘は特別で、あたしのお気に入りなのでした。



だって母さんが(父さんと出会うまで、あの家でよく過ごしたのよ)と、たびたび懐かしんでいたお家だったから 。







結婚してから父さんの職の都合で、母さんはこの土地を離れました。 

そして、まるで旅をするように住いを転々と移したのですって…。


あたしが6歳になった頃、遠い街で一人、父さんは亡くなりました。

それで、母さんと一緒に伯父様を頼り、この屋敷にやってきました。




初めて訪れたこの村は、遠い国の禍など嘘のように静かなところでした。

村を囲む森が美しくて緑が濃くて、それだけでたくさん慰められました。



母さんが病に倒れるまで、一緒に伯父様のお家の手伝いをしていました。


外国へ行ったりもしていたせいでか母さんは語学に堪能で、伯父様の事業にとても重宝がられていたようです。


子供のあたしが手伝いをと言ってもなにを任される訳ではなく、子供の居ない伯母さまに伴われ、お出かけをしたり。
その他の時は、お屋敷の図書室で本を読み、、遠い世界のことをうっとりと考えたりして過ごしていました。




伯母様には、本を読むよりもお裁縫や料理を覚えなさい とやんわりとたしなめられることも。

もちろんお裁縫も嫌いじゃなかったけれど、それより薬草苑の中の草木を世話し
森の中を1人で飛び回っているほうが、ずっと好きでした。


村の子とも遊んだし、皆仲良くしてくれました。

でも、あたしは「離れた街から来たちょっと変わったお嬢さん」で、みんな親切ではあったけれど…。
遠慮されているのか敬遠気味なのか、あたしには分かりません。


… いま思い返すと、母さんの血筋の密やかな噂や、父さんがその同郷の人だったことなど
入り組んだ大人の事情を、子ども達もなんとなく感じ取っていたのかもしれません。





…母さんは肺病で倒れてからは、伯父様たちに迷惑だからと1人別荘に引きこもってしまいました。

薬草園の手入れを一生懸命やって、母さんの身の回りのことも手伝ったけれど 次の秋が来る前に、母さんは父さんの元へ去ってしまいました。

手伝いの姉やはとても元気で病など寄せない人で、伯父も伯母も頑強な質であったので、誰にも病が感染ることはなく、また母さんの葬儀の後には、難しい病で床に臥せる人も出なくなったので、母さんが一人で全部の禍を持ち去ってくれたようになりました。


病の種が残っていてはいけないと、カーテンや寝具の布など燃やせるものは全部燃やされてしまったから何もない。
母さんが使っていた部屋に病の気配など微塵も残っておらず、あっけらかんとした明るい 空っぽの空間があるだけ。


あたしの手には、母さんが父さんから送られた銀の魔除けが残りました。


--------


その日からは五年…。


正式に別荘を引き継いだ春の日から半年。



季節は過ぎ、霧深い秋がやってきていた。


朝まだき、あたしは、かねてからの冒険を実行することに決めていました。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【eidos】 書架の守人 ― 緑簾石 ―

2014-06-15 00:00:00 | observer of beautiful forms
ひとつ歯車が回り始める。 もうひとつまた歯車が動きだす。


--------


・】 汝、ただ純粋に己の哲学を深め、知識と智慧を高めることに専念せよ 【・


訳された文言を頭の中で、もう一度、反芻する。

Rを、ひらひらと見送った、左手を降ろしながら。





   あれ?



首を傾げながら、板張りの廊下をとことこと歩く。



   なんだったっけ?



窓が柱おきになって明るくなったり暗くなったり。



   どこでだっけ… 同じ言葉…



   うー… ん?




廊下が終わって、次の閲覧室の開け放たれた扉をくぐる。
そこに見覚えのある姿が、するっと眼に滑り込んで来た。




   笑  あら。



何冊か本が積まれ、幾つかは開かれ所々の頁に栞が挟んである。

その山を横に、黄橡の机でなにかを熱心に覗き込んでいる背中。

ぱりぱり糊のきいた白いシャツに
薄く地模様が織り込まれている。

灰桜のベスト。くすんだ優しい色。



鎖式のアームバンドは銀色。




藍色の瞳をした私の大事な…





   大御祖父さま  笑
   今日は何を?


 


  
顔を上げて私に頬笑む、…皺こそ刻まれているけれど端正な面立ち。



藍鉄のナロータイを小さく結んだピンホールカラー。
アイレットに通したカラーバーには鶸萌黄のシンプルな飾り石。
同色石のカフスボタンが、落ち着いた統一感を醸し出している。


黒のアンダーリムの細縁眼鏡をかけている。
昔は銀鼠の髪、今は月白の髪の(元)守人。


大御祖父様は、結晶の内包物とそれが及ぼす影響を研究されている。




   待っていたよ、D。 笑



   D…こちらへ来てレンズを覗いてごらん


   どうだね?なかなかに美しいものだろう。


真鍮色の古めかしい固定式拡大鏡を指す、指の長い手、きれいな形の爪。


さあさあと促され、右手で髪を押さえ片眼をつぶって覗き込みながら私は
よく似た大きな手に、軽々と抱き上げて貰った幼い頃のことなど思い出す。




薄緑の砂糖ごろもをかけたような結晶は、一面のみ磨かれていて、内部を眺められるようになっている。



   …これは、中にあるのは…電気石ではありません
   草入り、つまり、緑簾石でしょうか?
   他に薄紅色に見えるのは、桃簾石かしら?
   ぽったりとした花が、散ったところみたい。

   綺麗ですわ 笑


机に肘をついたまま上目で見上げれば、にこにこと笑っていらっしゃる。



   そうだよ、よく分かったね。 D 笑
   明るい芝草に中に居るようだろう。
   桜花も終わる季節のね。



頬笑みにつられながら、私は答える。
   


   そりゃあ、沢山みせられましたもの。


   …いいえ 嘘です 笑 
   推理です。

   今日は、ピスタサイトのカラーバーにカフスまで揃えていらっしゃる。

   だから、同族の緑簾石などかと思いました。笑




こちらもよく分かったね、と、笑いながら、カフスボタンの石を撫でている。


   内包物の結晶の形、入り方にも注意をはらいなさい。
   推理だけではなく、ね。 笑
   
   細かく観察することは重要だ。



   それから石に聞くのだよ。
   在り方や目的についてね。



   
   緑簾石は、こう教えてくれている。
   


   昨日のように繰り返した(と思い込んでいる)今に、ため息をつく必要は無いんだよ、とね。
   
   そして、過去の呪縛から自由になる為の暗示を示してくれる。

   しかつめらしく言えば「固定観念からの脱却」…だろうかね。 笑


   つまりは、同じ立ち位置からしか見ていないことに、気付かせてくれる。

大御祖父様は、そう言いながら、拡大鏡の下に置いてあった小さな結晶を、掌に転がしてみせてくれた。



   この水晶のように、磨かれた窓がひとつしかないようなものかもしれない。




   しかし、よく覚えておきなさい。 D。
   覗く角度を変えるのは、D、あなた次第で自由自在なのだということを、ね。

   反復に埋没したような毎日であっても、発展的な事が隠されているのだよ。

   それが見えないときは、自分が見方の切り口を特別なものに変えてごらん。




   …といって、極端な方向へ思考を走らせてしまうのでは意味が無い。

   感情が波立つとき、荒々しく使いたくなる扇情的な言葉もあるだろう。
   心情から言えば、正直な吐露かもしれないね
   が、本当にその表現でなければならないだろうか?

   本質を見誤らせかねない危うさが、そこに加味されていないかどうか。

   惑わされることなくバランスを取りなさい。
   

   D。
   もし今が絡まった状況であるなら、本当に「余計なモノ」だけを
   身の回りから、慎重に丁寧に削ぎ落とすことから始めればいい。
   そこに「思いきって大胆に」なることは、必要ないのだからね。

   ムリに変わろうとしなくてもいいのだよ。… 焦らずに。 笑







 … ところで、


   先程の司書官は、Dのご友人かな?

   見事な紫の貴石を着けている… 薫衣草翡翠と呼びたい風だったね。
   彼女はよく見かけるけれど、挨拶くらいしか交わしたことがなくてねえ。





と、眼を細めるその人に舌を巻く。 流石です。



   そうです。 笑
   
   当たりですわ、大御祖父さま。
   彼女は、翡翠の人なのです。

   今度、石を間近に見せてくれるよう頼んでみますね。 笑



---



大御祖父様の深い藍色の、灰簾石の瞳に思う。



私も大御祖父様のように、己の信条にまっすぐでありながら、軋轢や摩擦を作らぬ、明晰で柔らかな思考を、静かで大きな力を持つことができるでしょうか。

私には、大御祖父様のように優れた資質なんて無いんです。

でもせめて。
私のちいさな世界とは調和してゆけたらいいなと願っています…



---






   … 笑。

   私、お聞きしたい事があります。


「汝、ただ純粋に己の哲学を深め、知識と智慧を高めることに専念せよ。」



   大御祖父様は、ご存じ?





ん? と耳をこちらへ傾けるように質問を受け、向き直って微笑んだ。



   古い標語のことだね。 あちこちに様々に書いてあるよ。

   ここは昔、学舎だったからねえ。 笑
   外の切り通しにも、確か刻んであったろう?
   他の語句もあるはずだ。





   あ!… そういえば。 笑

   随分と前に聞いた覚えがありました。
   でもその頃は興味が無くって。
   それで、すっかり。



忘れていましたわ と、笑って私は舌を出した。





------------------------------------------------------------





今回は、この写真の撮影時の逸話を紹介いたします。(撮影者本人談




***

撮りたくても、あえて撮らない時があります。

地元の図書館わきにある八重桜の木。
ある春の日の午後、花びらが散り敷くこのベンチで、
素敵なおじいさまが静かに本を読んでいました。
邪魔をしたくなかったので、その情景は記憶にだけ留め。
翌朝戻って、撮った写真です。

***





※写真の転載はご遠慮ください。





緑簾石 / エピドートは、幾つかの鉱物種類からなるグループ名でもあります。名前の由来はギリシャ語で「増加する」という意味の「epidosis」から。同グループには「ゾイサイト」(灰簾石)があります。青色系の灰簾石は「タンザイナイト」と呼ばれています。

タンザナイト / 青~青紫色を有する多色性の宝石で、灰簾石(黝簾石、zoisite、緑簾石グループ)の変種です。



パワーストーンとして / エピドート : 自由、伸びやかな発想、ユニークな視点

タンザナイト: ゆとり、魔法、浄化、清廉潔白、超然、直観、決断力、判断力、透明、明晰、流れにのる、自然界、柔和、的確、心の豊かさ、調和
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【eidos】 書架の守人 ― 翡翠 ―

2013-10-12 00:00:10 | observer of beautiful forms

惑星歯車を渦に乗せて、太陽歯車は力を伝達させる。




-------------



望みの在処は分かっているの。

私は、時を焦らなければいい。




歩き出そうとした爪先にコツンと何かがあたる。
え?木の実??摘みあげてしげしげと眺める。


近くに葉ごといくつも落ちている。
なにこれ可愛いけど?なんで? 笑




コホン 



私の背後に小さく咳払いの音。



そこには書架の守人のひとり、翡翠色の友人・Rが微笑み立っていた。

翡翠、といっても彼女は、青紫のラベンダー・ジェダイドの人である。

首から提げた硬玉と同じ色の瞳、淡紅藤の腰まである長い髪の持ち主。


今日の彼女は、生成り色の七分袖ワンピース、撫子色のローパンプス。
襟はマオカラー、袖口にミルフィオリを模した飾り釦が3つ、膝下丈セミタイトなスカートの裾にティアドロップの小さな透かし模様がくるっと入っているのを着ている。

とてもお似合いである。


造詣の深い彼女が教えてくれる。



   それね、ピンオークの実よ。
   調べに来ていた人が、落としていったのね。


   まるでリスの忘れ物みたい。 笑






私が預かるわ…と、彼女は私の手からその木の実を受け取った。…ときに




    D、守人を探していると聞いたのだけれど?





相変わらず耳が良い。

綺麗な髪を両サイドの分だけ、後ろに高く束ねている。




    視るように聴く人らしくて、情報早いわね… R。 笑     

    でも、残念。 今日は違う書架に用事なの、私。
 



あら?それは残念、言いながらRはケラケラと、上品に笑っている。




    どう笑っても品が良い。
    Rがいつも羨ましいな。 笑



並んで歩き出しながらそう言うと、また実に嬉しそうに彼女はウフフと笑った。

彼女の石、紫色をした硬玉が歩みに軽く揺れ、きらっと光って物言いたげだ。



    ねえ R。
    「賢者の石」にも色々あるけれど、貴女のは堅さもとびきりの部類
    でも、全然そう見えなくてね。 笑

    探求を続ける堅固さは、他者を受け入れ難くするものではない、と     
    相対する人へ、理解しようと取る態度は、いつもとても柔らかい。



    全天一頑固につき処置無しの、と言われる私と違うとこ… 




そこで話を遮り、私と向き直って、Rは澄んだ青紫の眼を丸くする。




    まぁ D。 苦笑
    私、そこまでは聞いたことなくてよ?



     
掌のピンオークを転がしながらRが言う。 思慮深い眼差しをして。




    この樹はね、とてもとても大きくなる樹なの。
    自由に枝を伸ばして、地中に根を広げるのよ。
 
    D、あなたもそのように、おいきなさいな。




    春から夏、日差しを受けて緑の影をつくるわ。
    秋は炎の紅葉… 冬は枝が炎の影を地に映す。
     
    その変化を何かに慮ることはしていない…。   

    
     
    誰でも、そんな風に移ろいゆく季節を歩いていいのじゃないかな?
    人は、どのような体験や出会いからも最善の答えを導きだすもの。

    物事の捉え方や答えを導きだす…全ての過程は、とても個人的な作業よ。



あのね、説教がましくするつもりはないのよ、と、締めくくるRに私は言った。


    ええ。
   
    他者を変えようと、あなたが行動していないのは、私も知っているわ。   
    あなたに会って変わってゆく人は、あなたの生き方に刺激されてるのよ。 笑

    受けた感銘が臨界に達したとき、その人は自らを変えてゆくのだと思う…




あ、私はこっちに用事だから、じゃあここで… 
岐路に立ち止まったRが、壁に掛けられた装飾用の織物にある
古い文字で書かれた一文を指さし、翻訳して読み上げてくれた。






 ・】 汝、ただ純粋に己の哲学を深め、知識と智慧を高めることに専念せよ 【・






私も知っているのよ。と、R。


   他者を変えようとなんて思って、あなたが行動してないのは、皆が知っているわ 笑。   
   けれど、それでもあなたに会って変わってゆく人が居るのは
   あなたの生き方を素直に映しだした言葉に刺激されてるのよ。

  「常識」を覆すその言葉を受けた衝撃は、その人を盲信から目覚めさせ、自らを変えてゆくのだと思うの…



全天一のなんて刺激的な目覚まし時計、と、澄ました表情で返してくれた。








    








翡翠 / 本ヒスイ(硬玉ジェダイド) 東洋の宝石と呼ばれ、日本や中国では古くから珍重されている宝石。ラベンダージェイドはその名の通り、翡翠(ジェイド)の中でもラベンダー色のものを指す。



パワーストーンとして / 不死、純粋、忍耐、知識、慈悲、正義、道徳を象徴する石


日本の伝統色 和色大辞典 ・ http://www.colordic.org/w/


※写真は友人提供につき転載を禁じます。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【eidos】 書架の守人 ― 尖晶石の双晶 ―

2013-09-27 00:00:00 | observer of beautiful forms
内歯車に沿って、惑星がくるくると銀河の渦をダンス。


-----



守人に望みの扉を開けて貰うには、まず守人を見つけなくてはならない。



荷物の一切をロッカーに押し込んで、私は身軽になった。
何処から探そう? 藍海松茶の絨毯を歩みつつ思案する。



ただ通り抜けるつもりで、談話室の重い扉を開けた途端




    Hi! D 笑 (輪唱する、AとI




気軽な親しい挨拶が、華やかな声で呼びかけてきた。


AとI は、黒い髪の双子座男子。


部屋に据えられた円卓の中央には、尖晶石の黒い双晶が飾られている。


重厚な円卓に腰で寄りかかっているのが、ひとり。
そばの揃いの椅子に座っているのが、もうひとり。


読みかけの本に空のカップと、手元を照らす洋燈。




彼らの、今日のズボンは烏羽色に蝋色の細縞ので、靴は黒エナメルのオペラシューズ、片っぽは同生地のジャケットを、もう片っぽはベストだけを、白練の詰め襟シャツにはおっている。




品良く着込んでいると、尖晶石の双子精霊が降りてきているみたいよ。



    久しぶりでしょう?D(A
    
    来てなかったよね? ( I



どっちの瞳も真っ黒で、ぴかぴかしている。
尖晶石の精霊って、眼が猫科なのかな。笑




     久しぶりってなんなの? 笑

     笑 私、来てましたわよ、ちょくちょくと。



ええ~そうなの?と、ふたり揃って笑いあう。



     こっち側に寄らないだけです。
      
     今は調べ物の前の人捜し中。



     Mr.ヒュレーを見なかった?




これも揃って首をぶんぶんと横に振る双子。



     今日は会ってないよ。(A

     昨日はあったけどね。( I







     あっそう。笑

     今日の予定、何か言ってた?



ん~首を傾げる双子。しなやかで猫みたい。    



     ううん。僕は聞いていない。(A

     僕もぜんぜん聞いていない。(I




     ねえDはさあ、なに調べるの?(A

     趣味のこと?(I

     ちがうよ仕事できたんでしょ?(A

     遊びでしょ?(I



代わる代わるにしゃべる双子猫、黒猫にゃあ。



     あ、終わったらお茶しようよ。(A

     お茶なら、いまでも良いけど。(I




お二人さん、STOP~!(片手を上げて制す
      


     ありがと、お茶は後でね。 
     お昼も一緒にしましょ。 笑

      
      でね。

      あの人見つけたら伝言をお願い。
     
      私が探してるって言っておいて。




はーい♪了解。…という返事を背に談話室から出て…ふむ。








さて。

望みの在処は分かっているの。

私は、時を焦らなければいい。



颯爽と優雅に行きましょうか。笑










尖晶石 / スピネル  スピネルという名前は、結晶が尖った形をしていることから、ラテン語の「Spina(トゲ)」から付けられた。

パワーストーンとして / 自己実現や目標達成へのサポート。改善が難しい悪習慣を絶ち、自己改善を行う助けになる。ブラックスピネルは他の色のスピネルに比べて、大地に足をつけるグラウンディングの力に優れると言われる。



日本の伝統色 和色大辞典 ・ http://www.colordic.org/w/


※写真は友人提供につき転載を禁じます。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【eidos】 書架の守人

2013-09-13 00:00:00 | observer of beautiful forms




旧式でも惑星歯車機構は面白いと私は思う。



-------



晴天なり 朝の9時。

青色の水色の空の色。



本日の私は、図書舘で終日を過ごす予定。

1日居られる用意を持って、自宅を出た。



木蘭色の舗道は、前夜の雨に濡れていてまだヒンヤリしている。
だが、陽光で目映い。


   なんだ金剛砂でも盛大に撒いたみたいだ。苦笑
   この時間、こんなにキラキラだっけ?


いや、この時期の太陽の角度を忘れてサングラスを置いてきたのが失敗、木陰に入るまで小走りに急いだ。





   ふう。


山麓から吹き下ろす風が涼しいので、汗にはならないけれど。



見上げた切り通しの先は、右へゆるく曲がって視界から消える。
この坂の上で調べ物三昧の時間が、手薬煉を引いて待っている。


   待ってろよ 笑


私は、資料でずっしりした帆布の大きな鞄を肩にかけ直し、図書舘裏手門に繋がる狭い切り通しをはりきって上り始めた。




日陰では黒に見えるほど濃い緑色の石段に足を掛けたところで立ち止まり、切り通しの壁に彫り込まれた飾り文字を読む。


【・・知恵と叡智・・】

   むんー… 図書舘へ至る道ですものねー…



浮き彫りが風化して細かい文字などは、どう頑張ってももう読めない。(文字らしい形があるのみ)
これは古い案内標識だったのだろうか。

   詩文のようなのになー… 摩耗がちょっと残念。



殆ど儀式のように、いつも通りにそう思って前を通り過ぎた。





木漏れ日が降り注いでる千歳緑な透輝石の道。



陽の当たる場所のそれは、綺麗な深緑色なので(葉の色そのものが落ちているのじゃないかしら?)と錯覚するくらい。

山のほうは何処も同じようなものなので、近辺の住人達は誰もさして有り難がりもしない。しかし、この道が私は好きだ。








登り切って平坦な道になると、新しい案内板が掛けてある。



>> 正面入り口は、こちら >>



緑青の古典的な拱門を潜り抜けて石畳を歩く。

裏道の、この独り占め感を楽しみつつ。
  



図書舘脇の路地は、正門前庭へ繫がっている。
  




◆】National Central Library Eidos【◆
 < 国立中央図書舘 エイドス > 





艶のある真鍮色の植物模様に彩色硝子が填められた重たい扉を押し開け、小さく靴音を響かせて中へ。



    さて


床に山鳩色の石が貼られたエントランスの空気は、坂を上ってきた後の火照りにひんやりと心地よい。


優美な弧を描く高い天井を多角柱が支えている。
白い明るい上部、黒緑の書棚の並ぶ壁もシック。

足音を吸い込んでしまう厚地の絨毯に踏み込み、
図書館独特のいい香りを胸いっぱいに吸い込む。


 ここに住まう知識達は、その大きく豊かな翼を体にぴったりとたくし込み、どんな閲覧者が(どうかその翼を自分に広げてくれ見せてくれ)と懇願しに訪れるか、素知らぬ振りをして、しかし興味深々に今日も待っているのだ。




錆浅葱のカウンターに濃紺のペン立てがあって、閲覧用には黄橡の大きな長机と葡萄茶の椅子がある。




申し込み用紙に必要事項を記入して、係に提出。





奥の専門書書架室へ。





錫色の髪をした生真面目な書架の守人がいる。

梨地仕立てにした細い銀縁の眼鏡をかけてる。

…はず。


    
    ああもう、居ないし。苦笑
    ここの椅子に座っているのは見たことがない。
    

    

    あ、あのー… Mr.ヒュレーは、今日はどこに居られます?
    許可は貰ってるんだけど、鍵がないの。



すいすいと舘内を泳ぎ回り業務をこなしている司書を、ひとりやっと捕まえて聞き出す。
多分倉庫で新しい本の整理をしていると教えて貰った。



守人に望みの扉を開けて貰うには、まず守人を見つけなくてはならない。


    やれやれ。 苦笑









※写真の転載はご遠慮ください。





日本の伝統色 和色大辞典 ・ http://www.colordic.org/w/
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする