機動画報日誌 Mk-Ⅱ

英 浩史の日々徒然を記すブログ

映画の日 5/5

2006年06月03日 | 映画
■ダ・ヴィンチ・コード ◎
 ルーブル美術館内で起きた殺人事件と、そこに残されたメッセージ
からキリスト教最大のタブーに迫るサスペンス映画。
 歴史の中に残されている文献や絵画彫刻に散りばめられたピース
を組み合わせ、大胆な仮説も盛り込んだストーリーを構成していく
もので、語り部というか主人公が現代にいて過去の事象を推理して
いくという部分以外は、手法的には「トロイ」や「キング・アーサー」
などに近いかと。
 問題なのは世界三大宗教のひとつ、その頂点に坐す至高の存在の
意義を根底から覆す、大胆すぎる仮説であって、ぶっちゃけ、ガノタ
がガンダムの設定解釈に関して色々やってるのと大して変わらん(笑)
ような気も。ガンダムだったら「ハイハイ、それはアンタの俺ガン
だよね」で済んでしまうところが、信者の規模も問題の質も段違い
だから(*1)、政府見解として上映禁止を言い出す所もある訳で。
 仮説はあくまで仮説で、信者に「これが事実だから信仰を捨てよ」
と言ってる訳でもないし、主人公(トム=ハンクス)にも「そうで
ある可能性もあるし、そうでない可能性もある。結局、大事なのは
自分が何を信じるかなんだ」と言わせてるし、誤誘導を誘う演出が
過ぎて登場人物それぞれの誰が秘密を護る側なのか、抹殺しようと
する側なのかが判りづらい部分はあるけれど(*2)、物語そのものは
非常に面白かったと言っていいかと。

 謎を追いつつも、殺人容疑をかけられて追跡される主人公を追う
フランス警察チームのチーフがジャン=レノで、真面目なカソリック
かつ冷徹で部下の信頼も厚い刑事である彼は、秘密を抹殺しようと
する勢力の命令で主人公たちを追い詰めるんだが、部下にも秘密で
指令を実行しようとするために巧く連携が取れず、あと一歩の
ところで何度も取り逃がす羽目に陥る。
 『ピンクパンサー』での怪演(笑)もあって、最後は主人公に味方
するんじゃないかと思っていたけど、そんなことはなかったのは
ちょっと残念。ただ、教会に対する疑義というか信仰に対する姿勢
は変わったような。自分に直接指令を下していた司教(恐らくは尊崇
をもって接していたであろう)が、秘密を隠し続けるためには殺人
すら躊躇わないことを知って、最後には、冷徹な刑事として接して
いたし。

0602:H●4-0 .612 ① -0.5
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  *1:ガンダムファンも、世界規模で信者が増えて、一部が強大な権力を握った
    ら、そうした集団に都合の悪い設定解釈や仮説は抹殺されていくんだろう
    か(笑)。しかし、バチカン(オフィシャル)の公式見解が「アレ」ではな~。
    それを承服できないグループは別に分派を立てて、解釈違いで分派同士で
    論争したりするのか。
    ・・・既に現状でそうなってるというハナシもあるけど(苦笑)。
  *2:少なくとも、サー・リーの執事が(ストーリー展開上殺されることは事前に
    予想できたけれど、全体を観た上で考え直すと)死ぬ必要はなかったような
    気はする。



映画の日 4/5

2006年06月03日 | 映画
■明日の記憶 ◎
 渡辺 謙プロデュース&主演による、2005年本屋大賞 第2位に輝いた
同名小説の映画化。
 業界の第一線でバリバリ働く広告マンが、物忘れによるうっかり
ミスや、部下やクライアントとのコミュニケーションに支障を
きたすなどの状況に見舞われ、心配する妻の勧めで受けた診察の
結果、若年性アルツハイマーと診断される。
 徐々に記憶が失われる恐怖と戦う主人公とその妻(樋口可南子)。
しかし症状は確実に進行していく。「最後の記憶」が消えた時、
妻は・・・という話。
 いまやハリウッド俳優と並び賞される渡辺 謙の演技力をどうこう
言うつもりもないですが、病名を知った時の取り乱し様、症状を自覚
して以降の言動、特に記憶障害に侵されていない部分での「普通さ」
など、ストーリーの進行に伴う主人公・佐伯雅行の変化が、「痴呆(と
敢えて書く)の進行=老化ではない」ということがリアルに伝わって
きて、所々に見られるトリッキーな映像表現も相まって、下手な
ホラー映画よりも怖いです。

 ちなみに演技力といえば、今作で佐伯に病名を宣告する医師役で
出ている及川光博が、出色の演技を見せてくれてます。自分が好き
でやっている部分があるにせよ、変にイロモノ的なキャラを作って
いく必要は全くないんじゃないかと思うくらい。
 また、クライアント先の責任者として出てくる香川照之もいい
感じ。冗談を交えつつも佐伯を励ます電話のシーン、それまでの
どちらかといえば軽薄さを覗わせるキャラ作りが活きてます。
 あと陶芸の先生として出てくる大滝秀治も、あの歌のアドリブが、
パンフレットのコメントにある通りだとしたら、この人は当分の間
ボケる心配は無用ではないかと。

 ところで、『博士の愛した数式(*1)』でも感じたんですが、社会
通念とか一般常識といったものは、何かしらの芸術的な成果を得る
際の「足枷」にしかならないんでしょうか。まあ他人と同じ部分を
捨ててこそ独創性が生まれる面はあるとは思いますが。

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  *1:この原作小説も、2004年の本屋大賞で第一位、つまりは大賞に選ばれている。



映画の日 3/5

2006年06月03日 | 映画
■ピンクパンサー ×
 「ピンクパンサー・ダイアモンド」をめぐる事件に挑むクルーゾー
警部のドタバタを描いたコメディ映画。ピンクパンサーと警部の
アニメーションも健在・・・なんですが。
 少なくとも、個人的には笑えるシーンが数ヶ所しかなくて退屈な
映画でした。アメリカ英語の発音を習い切れないままNYに出張し、
きちんと発音できないためにトラブルを引き起こしてしまうネタ
にしても、他のシーンで普通に英語喋ってる以上、説得力のカケラ
もない訳で。
 自分の栄達のために、クルーゾーを警部に抜擢した上で彼の失敗を
待ち望むドレフェス警視が、クルーゾー監視のためにつけた補佐役
ポントンにジャン=レノが扮していて、クルーゾーのムチャクチャな
捜査活動に呆れつつ(*1)も、真面目につき合っていくんですが、
全身タイツでクネクネ踊らされているジャン=レノは、この後(*2)の
ことを割引いても、あまりに痛々しいです。
 事件の顛末も(コメディ刑事ものによくあるとは言え)クルーゾーの
強引な推理に事実が後追いしていったような感じだし、ラストのオチ
のネタも『裸の銃(ガン)を持つ男』を思い出してしまうような内容
だし(*3)。キャラクター的にもフランク=ドレビンの方がより毒が
あって面白いし、少なくとも個人的にはあちらの方が性に合ってる
気がします(*4)。

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  *1:クルーゾー自身、今回の事件のために特別に抜擢されただけで、本来は
    田舎町の、それもポントンよりも階級の低い警察官のようで。
  *2:近日中にエントリー予定の「映画の日 5/5」を参照のこと。
  *3:過去の『ピンク・パンサー』シリーズで、同じようなオチがあり『裸の銃を・・・』
    の方が逆にそれを“インスパイア”した可能性もなくはないんだけど。
  *4:最近のお笑い芸人(関東/上方を問わず)の笑いが解からなくて、雨上がり
    決死隊とかDonDokoDon辺りで止まっている人間なので、一般的な笑いの
    ツボとはズレが生じている可能性もなくはないんだけど、他の観客もあまり
    笑ってなかったような気が・・・。