曹達記

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2021年9月ポケスペ剣盾編感想

2021-10-18 00:11:00 | ポケスペ
シーソーコンビの本格的な登場で、話の方向性が大きく変わってきた回。


前回の引きを受けて、しーちゃんが思い出した影の人物を探るところから始まる。
手持ちの失踪が人為的なものであると知ったしーちゃんは終始激怒。それはある程度予想の範囲内として、今回ですぐに「なぜそーちゃんの手持ちを拉致しなかったのか」という問題を取り上げるとは思わなかった。
というのも、割と重箱の隅をつつくような指摘だと個人的には思っていたからだ。
ポケスペにおいて手持ちが使えなくなることは武装解除としての意味合いが強く、過去にはそれを強いられたミクリが凄惨な攻撃を喰らうシーンがあった。
にもかかわらず、14章ではムーンを武装解除したまま特に理由もなく止めを刺さない失態をザオボーが犯しており、悪役のリアリティに欠けると思ったが、一方で理由を用意するのは難しいとも思った。
なので、この突っ込みも野暮だと思っていたのだが、今回あっさり作中で疑問を呈したところからして、展開に係る秘密が隠されているのかもしれない。


ソニアも二人の存在にたどり着いたらしく情報を繋ごうとするが、タクシー乗車中に撃墜されてしまう。
アーマーガアタクシーは悪意ある攻撃には無防備なので、治安のいいガラルじゃないと成立し得ない輸送手段なのかもしれない。ポケスペ世界はゲームに比べて治安悪いのが基本だけど。


一方、以前の話でローズの行動に不信感を覚えたキバナはネズと接触。
ネズの方ではビートの扱いについて怪しむポプラから連絡を受け、横繋ぎを進めていた。
遺跡破壊なんぞ比にならない、と言いきるこの二人が過去で何をやってきたのか気になるが、それを許してきたのもローズだと言う。
さらに、ローズが過去にジムチャレンジをより良くするための様々な施策を行ってきたことが明らかになる。
この中での「誹謗中傷に怯えるトレーナー」は明らかにソニアだろう。
となると、彼女が挫折しあっさりと辞めたのも世間の声が原因となるのだろうか。
日下先生は性悪説で話を書いてきたし、直近の14章でもスカル団がリンチされ壊滅する様を描いた。
民衆悪はシビアな世界観に適合してるし、個人的には嫌いではない。
ただ、民衆悪を描くことは戦いでどうにも解決できない後味の悪さを残してしまうのも事実。
5章のナナシマ住民みたいに、何かしらの反省を見せるぐらいは挟んでもいいのかもしれない。


ここでネズは12章のフラダリを例に出し、善人と思われた人物であっても後で変わることは十分あり得ると疑念を強める。
ポケスペにおけるキバナ・ネズは、意識的に過去作との繋がりをもたらすキャラとして描かれているように思える。
キバナは以前書いた通り自撮りキャラから情報収集に余念がないキャラへ発展させたと思われるし、そのキバナと交遊関係があるネズも自然とそうなったのだろう。
逆に言えば彼ら以外過去作への言及はほぼないと感じられる。
14章では図鑑所有者二人にジーナ、デクシオ、リラ、ハンサム…と余所者が基本的に過去作との繋がりを意識していたのに対し、剣盾編では言及がほぼない。
あえて言えばマナブもその言及をできる立場ではあるが…。


さて、墜落に気づいたネズは現場へ直行するが、先に来ていたのはダンデ。
ソニアは先にダンデと連絡を取っていた、と考えるのが自然だしその通りだと思うが、ダンデの表情が若干気になる。
明確な悪意による攻撃が身近(実は疎遠ではあるが)な人物に及んだ、となれば動揺は隠せないだろうし、ましてやしばらく話せていない相手である。不安がない混ぜになるのは普通だろう。
ただ、本当にそれだけなのかと若干疑いがあってもいいのかなと思う。ここは正直自信がないし、特に何もなくても肩透かしになるとかそんなことはない。


襲撃は図鑑所有者一行にも及ぶ。
以前悪人が遠隔操作でポケモンを使うときは、「シャカビー」という共通規格の装置を用いていたが、今回はポケモンに直に貼り付ける方式。
まあその正体はどう考えてもシーソーコンビなのだが、勿体ぶった言い方のわりに本来の目的を伝えられず交渉が噛み合ってない。
正直な印象として、これで話の黒幕と言われても…と思わざるを得ないギャグ描写ではある。
一応原作再現ではあるのだが、やはりもう一捻りしてくると思われる。
そもそもなぜポケモンを奪ったのかは全くわからないのだし。


そんな状況に乱入するネズ、で今回は〆。
今回の印象として、外の地方に目を向けているキバナとネズは話をうまく引っ掻き回してくれる感じがしてきた。
というより、図鑑所有者二人がそのような縦軸の成長とか話の回しかたにうまく絡んでないから、余計にそう感じられるのかもしれない。
意識的に内面描写を減らしている、という見立てが正しいのであれば、彼らの縦軸の動きに変化が見にくいという問題は無視していい。
ただ、逆にそれが尺不足に起因するのであればことは深刻だな、と未だに不安定さを感じてしまう。
あと連載は予定通りなら1年。どう着地していくのやら…。


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1 コメント

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Unknown (ジュパー)
2021-10-18 23:55:41
今回も読ませていただきました。とても興味深い内容でした。


悪の組織がいない地方じゃないと、アーマーガアタクシーは成立しない。まさしくその通りです。

エール団くらいしかいないから可能な事と言えるでしょう。




しかし、民衆悪とありますが、そんな事を本格的に描いている尺があるんでしょうか。

前章のスカル団関連だって、島巡りの闇とかそういう方向には舵を切らず終いでしたし。

仮に10章や12章のような空気なら話は別ですが、そういうわけでもないので前章のようにちょっと描いて終わりなんじゃないかと思う次第です。


それと、ソニアが誹謗中傷だけであっさり辞めるほど追い詰められたのだとすれば、流石のダンデもガラルを見限ったんじゃないでしょうか。

いくらダンデにチャンピオンの器があるとしても、ソニアをそんな風に追い詰めた世間の期待に応え続ける事なんて無理ですよ。

世間がそこまでアレなら、ダンデはソニアを連れてシンオウあたりに移住したと思います。


まあ、ポケスペの作風を考えれば、ひょっとしたらダンデにも裏があってチャンピオンやってる可能性は否定できません。

事実、今回のダンデの振る舞いは管理人さんに怪しまれるようなものだったわけなので。

極論、実はダンデはギルガルドでローズを操っていた黒幕だった。

ムゲンダイナを目覚めさせてゲットして、ソニアのためにタイムスリップや世界征服やガラル浄化を目指していた、なんて展開も覚悟はしております。

(善人でも悪人に変わるという内容とも合致しますし)

(ダンデがチャンピオンでい続けたのは、リーグと親密になって、ムゲンダイナに関する情報を仕入れるためだったとか)


もっとも、こんな展開にしたら相当叩かれそうなので可能性は低いですが。




ポケモンを奪ったのはいろんなポケモンを対象にキョダイマックス因子の有無を調べて、遺伝できないか長期間タマゴを作らせて試していたとか?王族の権威を示すために強いポケモンが欲しかったから。

ソニアが誹謗中傷を受けたのも、実はシーソーコンビの仕業だった。ソニアの親が王族の犯罪に勘づいたのでソニアの親に汚名を着せて、民衆に叩かせてソニアのトレーナー人生を潰したとか。

現実の厳選厨の批判みたいになって更に叩かれそうな展開ですが、一応これなら特権意識による暴走やそれに乗せられる民衆悪も描けます。




キバナやネズは確かに便利そうですよね。

以前管理人さんはキバナが悪人になる可能性がどうこうとおっしゃっていましたが、ひょっとしたら過去に二人が悪の組織に所属していた過去が示されるかもしれません。

いまや公認リーグ四天王である、シバやキョウやイツキやカリンも悪の組織に所属していたわけですからね。

キバナやネズにそういう過去がついてもおかしくは無いです。

(かつてはマグマ団のメンバーで、三頭火と同等以上の地位にいたとか)

(キバナはカガリみたいに暴れたかっただけ。ネズはグラードンを目覚めさせる事で都合の良い地殻変動を起こして、スパイクタウンをダイマックスできる土地に作り変える算段だったとか)

当然、こんな展開にしたら相当叩かれると思われるので、可能性は低いですが。



最後に、ムーンをさっさと始末しなかったザオボーがリアリティに欠けるとありますが、ザオボーとムーンの年齢差を考えれば、殺人には迷いが生じて当然かと思います。

ザオボーは良い歳した大人で、ムーンはまだまだ子供なわけで。大人が子供を殺してしまうというのは、可能な限り後回しにしたい気がします。

(ムーンは、リーリエのようにルザミーネの関係者というわけでもなければ、プルメリのように悪寄りの人間というわけでもありませんでした)

(そんな何の罪もない人間、それも子供を殺してしまうというのは、無意識に避けたかったのではないでしょうか)

それに、ザオボーってグラジオの対応を見る限り何処か狂いきれないところがありましたし。それなら彼がムーンに対する殺人を後回しにするのは当然かと思いました。

(ザオボーがそれまで何人もの人間を手にかけた外道ならともかく、あそこまで思い切った事やったのはあの一件が初だったんじゃないですかね)




ちなみにザオボーは、ムーンにガチでルザミーネ殺しの冤罪を被せるつもりは無かったように見えます。

あの変装はあくまでもプルメリに殺人を実行させやすくするためのものかと。殺しても他人に罪を被せられるとなれば、殺人のハードルは低くなります。

おそらく、プルメリにルザミーネを殺させた後は、ムーンもついでに殺させるつもりだったのでしょう。

一度一線を超えた人間に二度目の殺人を実行させるのは容易いです。プルメリはムーンに逆恨み染みた感情も抱いていたわけですからね。乗せやすい事この上ありません。

その後は、適当な財団職員にでもプルメリを殺させるつもりだったんじゃないでしょうかね。

ルザミーネを信奉している財団職員はそれなりにいると思います。

そういう人にプルメリがルザミーネを殺した事を伝えれば、その人が自発的にプルメリを殺してくれる。

そんで、その人が自首して警察に事情説明して調査させれば、状況証拠からプルメリがルザミーネとムーンを殺した事が明らかになるわけです。

そして、プルメリとムーンの両方が死んだ事で、ザオボーが犯行に関わっていた事実は永遠に秘匿される。警察にもベルリッツ家にも悪事がバレる事は無い。

ただ、あまりにも悪辣過ぎるため、その罪悪感を減らすためにせめてムーンの名誉を守ろうとした。そのために警察などにはプルメリの犯行である事がわかるようにした。


そんな感じだと思われます。


なので、ザオボーには、ムーンにガチでルザミーネ殺しの冤罪を被せるつもりは無かったように思いました。

(偽善以外の何物でもありませんが、ザオボーならこうなってもおかしくないと思います)
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