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ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【歌舞伎】歌舞伎座 壽 初春大歌舞伎 昼の部・夜の部 2020年1月

2020-01-03 22:51:14 | 歌舞伎
壽 初春大歌舞伎
歌舞伎座
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例年「壽初春大歌舞伎」の感想には、かなりの確率で"ことほぎ"って
書いてきたけど。
今年はちょっと違った。
華やぎとともに、清浄な何かが漲っていた。
ここに居合わせる幸運。
そして、三が日に、舞台を供してくださる演者・奏者、他、
劇場の総ての方々に感謝を。

◆昼の部

一、醍醐の花見

芸が受け継がれていくことと、生命が受け継がれていくことが、
重なりながら、新しい年を思う。

このキャスティングは、「近しい人たち」だなぁ。
どういう"近い"だっけ…成駒屋さんか。
歌右衛門さんと先代の芝翫さんが、網目の真ん中にいる感じ。

二、奥州安達原

近松半二(ほか)なのね。安倍氏の復讐の物語。
予備知識不足で観てしまい、少し理解しづらいところあり。

そして、三味線の辺りで、図らずも泣いた。

隅々まで贅沢な配役、に、加えて、
子役ちゃんの芝居が思いのほか長丁場で、すごい頑張ったね。

三、素襖落

安定の太郎冠者(吉右衛門さん)。
安定の大名某と姫御寮(又五郎さんと雀右衛門さん)。

太刀持、次郎冠者、三郎吾は種之助さん鷹之資さん吉之丞さん。
楽しい場を、すべての演者がつくっている。
ほんわか。

四、河内山

短縮版かな?
いいとこどり構成。

「ばかめ」は割とさらりと。
ゆえに意外と刺し感が。これは、出雲守じくじく痛かろう。
(そして泉屋が出雲守に仕返しされないか心配になる、今回)。

◆夜の部

一、義経腰越状

昼の部の〆に続いて白鸚さん&芝翫さん。
夜の部は猿之助さんが入ります。

酔態の五斗兵衛(ごとうひょうえ)を白鸚さんが。
竹田奴のみなさんの絡みも、おおきくみどころだと思う。
拍手しそこねたりしたけど、楽しみましたよー。すてき。

二、連獅子

舞台にみなぎる、清冽な緊張。

色々な連獅子を観たけれど、この感じは初めて。
猿之助さん、團子さん、唄と鳴物、後見、全体。

きれいな、とてもきれいな所作。シンメトリも。

想定していなかったから、予想外の事態に圧倒された。

上演2日目ですよ。
義経腰越状でも思ったけど、呼応が合っているのがすごい。
いったいどれだけ鍛錬したのだろう。
團子さんっていくつだっけ、、15歳、もうすぐ16歳。

猿之助さんが注いで、團子さんが吸収していったんだろう。
すごい組み合わせかも。

三、鰯賣戀曳網

みんなかわゆい。

つくづく、出て来る人みんな、かわゆい。
(脚本演出がそうなっているし、演者がそう具現化している)。

観ていて、幸せだ。

お正月に、歌舞伎座で1日過ごして、
〆としてこれ以上があるだろうか。

丹鶴城の姫のキャラクターは秀逸だなぁ。三島由紀夫すごいな。

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今回ことさらに、衣装の色彩と文様が楽しかったです。
奥州安達原の立回り、素襖落の太郎冠者、などなど。

(2020.1.3)


【歌舞伎】花組芝居 義経千本桜 2019年12月

2019-12-15 12:29:45 | 歌舞伎
花組芝居 義経千本桜
あうるすぽっと
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興味はあれど長年観ずにいた(チケット取るの難しそうだったから/誤解)、
花組芝居の、通し狂言を観てきました。

どうやってすべて詰め込むのだろう?

…入ってた。すごい。

早送りで観てるみたい。

でもちゃんと機微の表れるシーンは入ってる。

著名シーンの登場人物の心理の表出には
時々オリジナルな解釈が混ざってたと思う、たぶん。(小金吾とか特に)

たぶん、というのはとても展開が速いので、脳内で文脈を整理する
余裕がないのである。ただ楽しめ、ということかな。
そして、
「巻き戻してもう一回見る」的なことをしたくなっちゃった。
何回か観に来い、ということかな。ふふ。

何度も、拍手したいシーンがあったけど、できなかった。
みんな静かに観てるからさー。

http://hanagumi.ne.jp/

(2019.12.14)

【歌舞伎】歌舞伎座 十二月大歌舞伎 夜の部 2019年12月

2019-12-13 21:40:05 | 歌舞伎
十二月大歌舞伎
歌舞伎座
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十二月大歌舞伎は、女形の存在感が前に出る演目ぞろい。
牽引する方と、追うという言葉を超え始めた方々と。

一、神霊矢口渡

梅枝さんのお舟が佳いですわ。
この方の所作はきもちがよいのです。
今回特にそういう見どころが多かった。

二、本朝白雪姫譚話

白雪姫です。
真向正面から、白雪姫。

児太郎さんの、実母・野分の前が絶妙なのですが、
脚本・演出的に、真摯に演じるほど、笑いの要素がちらちらと。

相当ストレートに原作を踏襲しているのだから、本来原作にもある
母親の「美で一番」への執着が、ある種の滑稽さと哀しみのようなのを
含んでいることが、浮き出て見えて来るのが面白い。新発見だなぁ。

玉三郎さんの白雪姫は可憐この上なく、
最後は約束されたHappyEndだけれど、
この演目は白雪姫でなく、若く絶対的に美しい比較対象の出現によって
何かを測り間違えた野分の前の、児太郎さんが主軸の物語のように思われる。

中庸の鏡の精・梅枝さんを加えて、今だから見れる3人の女形の
奇跡のような瞬間を観たのかもしれない。

(2019.12.13)

【歌舞伎】新橋演舞場 新版オグリ 2019年11月

2019-11-10 20:55:43 | 歌舞伎
スーパー歌舞伎II
新版 オグリ
新橋演舞場
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あまり余談をもたずに行った。
芝居も演出も、いろいろ衝撃的だった。出来栄えすばらしい。
面白さと、心揺さぶられるところと。

前半、閻魔とまみえるまで、
隼人さんの藤原正清と郎党の小栗党は、先鋭的で戦闘もキレよく
カッコイイ、から、そこがスーパー歌舞伎の味わいか、と思いきや
もっとおいしいのは後半の芝居だった。

脚本が厚い。
自由に生きることに歓喜がある、と小栗党はいう。
そこから長い物語を経る中での変転がみごと。

特筆すべきは新悟さん。大活躍。

(2019.11.10)


【歌舞伎】歌舞伎座 吉例顔見世大歌舞伎 昼の部 2019年11月

2019-11-09 19:31:49 | 歌舞伎
吉例顔見世大歌舞伎
歌舞伎座
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◆昼の部

「研辰の討たれ」
観る側(私)の近況状況で受け取り方がすごく変わるものだと
改めて思う。
今回、平井兄弟(彦三郎さんと亀蔵さん。あ、美声兄弟だ)への
同情ひとしお。
辰次は、弱者ポジションをフル活用しながら、
口先で嘘を、あるいは気を許した時の秘密の暴露を連ねる。
(という要素を今日の私は強く受け取った)。
おそろしい。
愛嬌があるところがまた。
聴衆も惑わされる。
というか、危うい真実を含んでいるから微妙なのだ。うへぇ。
幸四郎さん、さすが。

「髪結新三」
菊五郎さん左團次さん権十郎さんで、新三、家主、勝、
團蔵さんの源七。
時蔵さんの忠七に梅枝さんのお熊。

品質完全保証で安心の観劇、的な。 楽しかった。

(2019.11.9)

ちなみに10月は、台風で中止になった回を取っていたので
見れませんでした。(T T)

【歌舞伎】歌舞伎座 秀山祭九月大歌舞伎 昼の部・夜の部 2019年9月

2019-09-16 00:47:48 | 歌舞伎
秀山祭九月大歌舞伎
歌舞伎座
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昼の部の幡随長兵衛と沼津、夜の部の寺子屋。涙ダバダー。
 
◆昼の部 
 
一、極付幡随長兵衛
 
いつもよりも劇中劇の「公平法問諍」がじっくり。
種之助さんの金平が印象的。
何故あえて行くか、が今回は割とシンプルに胸に入ってきた。
幸四郎さんの長兵衛はまっすぐなインパクト。
松緑さんの水野殿様、亀蔵さんの近藤氏、悪よのぅ。
 
二、お祭り
 
はなやぎ、かろやか。
幡随長兵衛と沼津の間にこの演目があるの、後から考えたら
とてもよかった。
 
三、伊賀越道中双六 沼津
 
終盤の、歌六さんの平作が吉右衛門さんの十兵衛の脇差を、からの場面は
知っててもやっぱりとても切ない。
出語りは葵太夫さん&宏太郎さん。
泣かすねぇ。
秀山祭の口上や歌昇さんご長男のお目見えあり。
 
◆夜の部 
 
一、寺子屋
 
吉右衛門さんの松王丸、首実検でみぞおち掴まれた。
 
寺子屋の武部夫婦は観る度、残酷な発想と善き人がうまく
まざらなくて違和感あるのですが、今回は調和度が高かった。
幸四郎さん武部源蔵と児太郎さんの戸浪。
 
菊之助さんの千代、華ある。
福助さん、園生の前。更に出番増。
 
二、勧進帳
 
弁慶は仁左衛門さん、富樫は幸四郎さんの日。
舞台に目が釘付け。
私はこの配役とてもよかったけど、偶数日のも観てみたかったな。
 
三、松浦の太鼓
 
歌六さんの松浦の殿様は、かわいい。かわいすぎるくらい。
東蔵さんの宝井其角、出の花道での台詞で声の良さを再認識。
 
(2019.9.15)

【歌舞伎】歌舞伎座 八月納涼歌舞伎 第一部・第二部・第三部 2019年8月

2019-08-10 22:41:16 | 歌舞伎
八月納涼歌舞伎
歌舞伎座
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実験いっぱい。青葉いっぱい。
 
◆第一部
 
一、伽羅先代萩 御殿/床下  
 
七之助さんの政岡は、飯炊きのでの2回の毒見の、ただならない緊張感が
印象に残る。常に子の死の可能性があるのだな。
 
嘆きは、でかしゃったの表向きの方が少し強いかなと序盤は思ったけど、
最後には泣かされました。エナジーで押し切ったかな。
 
幸四郎さん。八汐と弾正の2役、兄妹なわけだし、なるほど感。
 
七之助さんの政岡と児太郎さんの沖の井。
こういうの見れるようになったんだなぁ。これから暫く楽しみだな。
千松を勘太郎さん、鶴千代を長三郎さんていう布陣もまた楽しみの種。
 
二、闇梅百物語
 
顔の見えない骸骨は幸四郎さん。
あやかしいろいろ、舞う舞う。
 
◆第二部 
 
東海道中膝栗毛:
 
納涼歌舞伎だし、幸四郎さん猿之助さんの弥次喜多だし、
笑いとチャレンジ(お試し?)を楽しむ2時間。
次々世代(10~20代くらい)オールスターキャストじゃないか?
応援しちゃう。
上演2日目とは思えない、途切れないテンポはおそらく
集中力のたまもの。みんな真剣だと思う。
 
弥次喜多のアウトラインを知ってないと面白さ減だろうし、
楽屋オチ、さまざまな名場面の引用、などなど、
観客は試されているのかもしれない。
 
一見ハードル低そうで実は初見の人を連れていくのが
ためらわれるのであった。
(実は、連れてってと言われたので、第一部にしました)。
 
お隣の席のご婦人がたが「最近の若い人は演技は上手いけど
歌舞伎は・・なんですって」とか言ってた。
世に江戸の名残はもうないし(今、懐古されてるのは逆輸入的
視点よね)、私だって昭和の歌舞伎は観てないし。
いいんじゃないの。変わっていくの。
 
「歌舞伎とは何か」っていう問いを観客にも提示してるよね。
 
虎之介さんの猫爪艶之丞の絶叫は伝説になると思う。 
 
◆第三部 
 
新版 雪之丞変化:
 
映像をふんだんに。
むしろ映像との共演も含めた一人Ⅹ役を大胆に。
 
これは、ある種の"身体拡張"だ。
舞台が拡張する。役者が拡張する。時間が拡張する。
 
玉三郎さんは若々しい青年で、七之助さんや中車さんは
人生の先輩格の位置。
枠組みのはっきりした古典ならまだしも、今回の演目で
これを貫いて素直に観させたのはすごいことなんだと思う。
 
鈴虫、元気で透明で、いいね。
 
(2019.8.10、2019.8.11)

【歌舞伎】歌舞伎座 七月大歌舞伎 昼の部・夜の部 2019年7月

2019-07-07 23:03:37 | 歌舞伎
七月大歌舞伎
歌舞伎座
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成田屋スペシャル。
児太郎さん全演目制覇。
 
◆昼の部 
 
一、新歌舞伎十八番の内 高時
二、西郷と豚姫
 
めったに取らない東の席で(不可抗力的に)、
高時の右團次さん、西郷と豚姫の錦之助さん、とも舞台の上手の
芝居が見えず台詞が聞こえるのみ、音も反響して耳に入りにくかった
ので(体調のせいか)、感想控えます。
 
「西郷と豚姫」のお玉の告白はじんときた。
 
三、素襖落
 
へべれけの太郎冠者。
役者さんみんな軽やかで楽しげ。
 
四、外郎売
 
「堀越勸玄早口言立て相勤め申し候」。
まさか。
あの長台詞。
あそこまでやれるとは。
 
いま何歳?…6歳ですって。

末恐ろしいや楽しみ。
 
彼が言い立てている間、
役者さんと劇場内の観客のあらゆる耳が一点に集中していると
感じたのは28年の観劇生活で初めてかもしれない。
 
◆夜の部 
 
十三役、早替わりに次ぐ早替わり。
ひと幕それぞれやってもそれなりに重厚になる演目がどんどこ続く。
 
長尺です。知る限りで歌舞伎座の最長だったかも。
2度の宙乗りや終盤の襖活用や映像+三味など、
仕掛けもおおきくたっぷりです。
お値段据え置き。
 
最後の大花吹雪を見ながら、音楽ライブみたいなデザインだったの
かな、と思った。
ファンおなじみヒットソングを次々に歌うような。
 
敵と味方、上位と下位、親と子、めまぐるしく切り替わる。
 
例えば、権太と弥左衛門が同じ人(どちらかが台詞している間は
もう片方は語れない)など、別の役者さんがやる上演に比べると
薄くなるのは致し方なし。
それよりもエンタメ性を今回は優先。
 
今回「義経千本桜」の全体像がちょっと理解できました。
 
#をめん
 
(2019.7.7)

【歌舞伎】歌舞伎座 六月大歌舞伎 昼の部・夜の部 2019年6 月

2019-06-15 21:50:17 | 歌舞伎
六月大歌舞伎
歌舞伎座
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◆昼の部
 
一、寿式三番叟
 
東蔵さんの翁、気品が香り立ってた。
 
幸四郎さんと松也さんの三番叟、生命感あふれる舞が
絶え間なく続く。
高い跳躍は静かに、連続した速い舞に差しはさまれる
ふわりとした所作が美しい。
  
二、女車引
 
魁春さん雀右衛門さん児太郎さん、
三者三様の個性を味わうぜいたく。
 
三、梶原平三誉石切
 
花道から入り、中央に座して最初の台詞の瞬間、
若々しさに息を呑んだ。
 
吉右衛門さんの梶原。
そういえば歌舞伎を観始めて間もなくの頃、
石切梶原を観て吉右衛門ファンになったのだった。
大きさ、頼もしさ、明るさ。
 
 俳優協会のデータで検索したら1992年1月公演でした。
 青貝師六郎太夫を坂東三津五郎(9代目)さん、梢を児太郎(現・福助)さん。
 俣野五郎は現・又五郎さんでした。
 
又五郎さんの大庭三郎はすっと筋が通って重さがあって、
吉右衛門さんの梶原とのバランスが、こりゃいいですね。
 
歌昇さんの俣野五郎、米吉さんの梢、健闘。
 
四、恋飛脚大和往来
 
渾身の。
仁左衛門さんの忠兵衛と孝太郎さんの梅川。
 
序盤の軽やかな、おえんとの遣り取りに一切曇りがない分、
この先の展開を知る観客には悲痛の予感が来る。
 
封印を切るまでの緊張感と説得力。
 
ああ、このまま続けて新口村が観たい、と思った。
 
愛之助さんの丹波屋、軽いイジリとも計算づくの意地悪とも違う重層。
忠兵衛のことが案外好きなのかも知れないと思うような。
 
(2019.6.2)
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◆夜の部 
 
月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)風雲児たち
 
三谷幸喜さん作・演出の新作歌舞伎。
 
主役級が並び立つ舞台がなにしろ豪華だし、その俳優さんたちが
三谷演出のリズムとテンションで演じ続ける。
厚い。みっしり厚い。ずっと濃い口。
 
笑いあり波乱あり、笑わせる間合いにぬかりはないですが、
それよりやっぱり慟哭の場面は胸に来ます。
 
ところどころ歌舞伎の場面を想起する演出。義太夫。下座音楽。
俊寛と重なって見えるところも。
 
男女蔵さんが前に出てた。今回エポックかも。
 
歌舞伎俳優さんズの中、八嶋智人さんの交わり方が絶妙。
 
(2019.6.15)
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【歌舞伎】歌舞伎座 團菊祭五月大歌舞伎 昼の部・夜の部 2019年5月

2019-05-06 00:08:21 | 歌舞伎
團菊祭五月大歌舞伎
歌舞伎座
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令和元年の最初の歌舞伎座。團菊祭。そして「こどもの日」の今日、
丑之助初舞台を観る。
他所様のファミリーを拝見してこんなに幸せな気分になるって…。
 
◆昼の部 
 
一、寿曽我対面
 
「世代交代」という言葉をこのブログで使い始めたのは、確認したら、
2014年7月でした。「チャレンジ」とか言い始めたのはは2015年くらい。
そこから5年近く経ち、"交代後"がほぼ定常に。
 
今月の曽我対面は、シックで穏やかなトーンが基調で、破れがない。
破れ感が出るまでまだ時間がかかるのかも知れない。
でも少しそわそわした感じが時折噴出するのは、初日から間もないからかな。
他の演目でも垣間見えたので、今年今月という特殊性なのかも知れない。
 
二、歌舞伎十八番の内 勧進帳
 
海老蔵弁慶に菊之助義経に松緑富樫。
新・團菊はこれなんだろうな。

それぞれ素敵な役者さんの組み合わせ。
バランスの在り方はいろんなバリエーションありそう。

三、神明恵和合取組
 
楽しい。

お仲(時蔵さん)とのやりとりの心情のぐっとくるところも
もちろんあるけど。
 
モブvsモブの視覚的・音響的面白さは秀逸。
 
◆夜の部 
 
一、鶴寿千歳
 
令和のはじまりに。きれい。
 
梅枝さんの所作、やっぱり好きだな。何が違うのだろう。手?
 
二、絵本牛若丸
 
七代目尾上丑之助初舞台、でございます。
しっかり務めたよ。
引っ込みの飛び六方も(出だしだけど)。
 
両祖父を左右に配し。父が添い。
 
出て来る俳優さんたちがいちいち豪華。
そうして、その人たちが全員で初舞台を支えている。
 
なんだか幸せ。
  
三、京鹿子娘道成寺
 
菊之助さんの花子。
改めて思うのは、
この役が必要とする体力や集中力。
安定的に1時間以上を華やかにたおやかに表現する力。

四、曽我綉俠御所染
 
松也さんの五郎蔵。
観客が手に汗握る、怒りと無念の感情。
 
彦三郎さんの土右衛門。
この人の声はすごいなと、改めて思う。
 
いつもこの演目の逢州は優しすぎて可哀想すぎて、好きだけど
観ていて辛くなる。右近さん好演。
 
(2019.5.5)

【歌舞伎】歌舞伎座 四月大歌舞伎 昼の部・夜の部 2019年4月

2019-04-14 18:44:43 | 歌舞伎
四月大歌舞伎
歌舞伎座
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◆昼の部 
 
一、平成代名残絵巻
  
用事がぶつかり欠席。ごめんなさい。
福助さん観たかった。。。
  
二、新版歌祭文 座摩社・野崎村 
 
又五郎さんが悪役(手代小助)。
小助の「ふつうの悪意」って怖い。
又五郎さんのは一層怖い。
 
歌六さん久作のお染久松へのつらね。
そして、終盤、呆然となり久作に数珠を拾い戻してもらったお光に
感情が戻る瞬間。一瞬で胸に来て泣いた。
 
佐四郎(門之助さん)と久松(錦之助さん)がカテゴリーが近いので
インパクトがちょっと減っちゃったかな。
 
演出が冗長な感じなのは上方の世話物だから仕方ないのだろうけど
現代に合わせてもう少しスッキリさせてもいいかも。
 
三、坂田藤十郎米寿記念 寿栄藤末廣
 
米寿。華やかな宮廷調、舞踊。
藤十郎さんて小柄、と改めて思った。それなのにあの存在感。
鶴を鴈治郎さん、亀を猿之助さん(キャラ消してふわりと美女)。
  
四、御存 鈴ヶ森
 
そりゃあもちろん、安定の権八と長兵衛。
味が深い。
そしてこのあとの大きな物語の存在を感じさせる。
 
立回り(XX切りいろいろ)楽しく。
又五郎さん活躍。
 
(2019.4.14)
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◆夜の部 
 
一、実盛物語
 
仁左衛門さんがいつもどおり素敵。何度見ても鮮度落ちないのってすごい。
歌六さん貫禄。説得力。
 
松之助さんの九郎助が実盛に言い募るところがちょっと個性的。
クセと観るか分かり易いとみるか。
 
馬が毎度ながら達者で名演技。
 
二、猿翁十種の内 黒塚
 
猿之助さんの舞踊がすごい。隙なく舞い続ける。
終盤の立ち回りもすごい(わかりやすいすごさ)。  
猿弥さんが強力、達者。
 
三、二人夕霧
 
鴈治郎さんの伊左衛門。
(なんとはなく、シンデレラ後日談とかシニカルなパロディを連想。
 生活するって色々大変だよねー。)
 
孝太郎さんの若々しい後の夕霧、
魁春さんのじっとりとした先の夕霧。
てんれつと小れんの、ずん(三味とうた)
 
(2019.4.7)

【歌舞伎】歌舞伎座 三月大歌舞伎 夜の部・昼の部 2019年3月

2019-03-17 20:25:49 | 歌舞伎

三月大歌舞伎
歌舞伎座
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◆夜の部 

一、近江源氏先陣館 盛綱陣屋
 
首実検から終盤にかけてはもう、くぎ付け。
今月ほど「家族の物語」を感じたことはなかった。なぜだろう。
死にゆく小四郎を囲む、叔父、母、祖母、叔母の情が舞台に溢れて
胸がつまる。

幼子への同情、ではない、複雑で深い何かを受け止めた大人たちの
心情はおそらくそれぞれ異なるのだ。
でも一方で、同じ思いも抱えている。
それが舞台上にあった。言葉じゃ説明できない。
 
二、雷船頭 /奇数日版 
 
体温のある、すこし汗で湿った、生な色気の女船頭。猿之助さん。
対する雷を弘太郎が、ふっくらした身体で軽妙に動く動く。
楽しい。
 
三、弁天娘女男白浪
 
おなじみ浜松屋の騙りと、勢ぞろいの2場面で。
奇数日なので、
弁天小僧菊之助を幸四郎さん、南郷力丸を猿弥さん、鳶頭を猿之助さん。
この配役は新鮮だなぁ。
猿弥さんの南郷力丸、けっこう好き。

花道引っ込みの、弁天小僧と力丸のいたずらっ気をもうちっと期待。
 
(2019.3.3)
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◆昼の部 
 
一、女鳴神 龍王ヶ峰岩屋の場
 
初見です。
前回の歌舞伎座が平成3年3月・雀右衛門さん(先代)、たぶん観てない。
 
(歌舞伎座に通い始めたのは平成3年の春で、玉孝だったなぁ…
 調べたら、3月の夜の部だったようです。「平家蟹」観たらしい。
 女鳴神は昼の部)
 
エロい。
定番の方の鳴神もエロいけど、女鳴神はけっこうストレートですよね。
ヨロメキではなく、元々因縁があって、、ちゃんと鳴神尼には
背信的でない理由がある。
 
しかし、雲野絶間之助ひでぇ。(演技でなく設定のはなし)。
孝太郎さんかわいいから、殊更そうおもう。
鳴神尼が怒るのも無理ないので、玄蕃との対立は気の毒なのであった。
 
立回りの孝太郎さんの所作、手のあたりがビシっと力強くて、説得力
 
二、傀儡師
 
春のおだやかな気候を楽しむように、ひたすらゆったりと拝見しました。
隙がないと思うけど、隙の無さの圧迫感がない。優しい時間。
 
三、傾城反魂香
 
「近江国高嶋館の場」と併せての上演なので、
竹藪の虎の由来やお姫様の状況など理解がしやすい。
 
「近江国高嶋館の場」は"をいを~い"な二世の契りの展開が面白い。
米吉さんの銀杏の前と笑三郎さんの宮内卿の局、くみあわせいいぞ。
きれいでふつうみたいな顔してしれっと謀るところが最高です。
 
虎!
虎、大活躍。
道犬(猿弥さん)と。
 
襖の虎と、手水の人物、
傾城反魂香は入魂で描くシーンが2つあるのですね。
 
後半、ども又。
よく上演される演目ながら、現代人の自分には少し見るのが辛い要素が
あるのですが、でもやっぱり観たら、又平おとくの役者さんの厚みを
受け取らずにいられない。
 
白鸚さんの又平もよかったのですが、
今日の猿之助さんおとくが素敵だったなぁ。抱きしめたいおとく。
 
虎狩りの百姓の皆さんのワラワラ感がよくてこれも大好き。
 
(2019.3.17)
 

【歌舞伎】歌舞伎座 二月大歌舞伎 昼の部・夜の部 2019年2月

2019-02-17 22:45:44 | 歌舞伎
二月大歌舞伎
歌舞伎座
初世尾上辰之助三十三回忌追善。
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◆昼の部 
 
一、義経千本桜 すし屋
 
進行が丁寧な印象。
前観たときもこうだったのかな?端折りが少ない感じがするのは
演技の所為だろうか。
弥助とお里のやりとり、権田が金をせびる経緯。
 
菊之助さんの弥助に梅枝さんのお里、松緑さんの権太。
バランスが気持ちよかった。

"寝かせた生地"みたいなしっとり感が出てきたかも。
 
さらっとした中に因果と悲哀が浮かび上がる。
 
新悟さんの若葉の内侍が新鮮。
  
二、暗闇の丑松
 
時蔵さんによるお米が、菊五郎さんの丑松に切々と語り、
疑念を持たれたまま酌をするところで胸つかまれて落涙。
 
湯屋の甚太郎(橘太郎さん)の活躍の場面、楽しいなぁ。
 
四郎兵衛女房お今・東蔵さんの誘惑に、丑松は
夫がかわいいから、自分の命が助かりたいから、と幾つか解釈を言う。
脚本が書かれた当時に長谷川伸はどれか1つを宛てていたのかも
知れないけれど、単純な因果関係はリアルじゃなくなった現代、
複雑を複雑のまま受け取る、そういう芝居になっていたと思う。
 
報せを受けた四郎兵衛とお今の反応にしても、人間の多面が表現されていて、
四郎兵衛らと丑松は善悪の対峙ではなく、凶行に至る心理は単純でない。
 
三、団子売
 
お姿を拝見する度に若くなっていく気がする孝太郎さんが
驚異的なかわいらしさ。
芝翫さんとのコンビはとてもよくてほっこり。
 
(2019.2.17)
 
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◆夜の部 
 
一、熊谷陣屋
 
相模、藤の方とのシーンがことさらじわじわと印象深かった今回。
そして何度目かの鑑賞のはずなのに、また新しい。
「十六年、夢だ」。慟哭。
 
二、當年祝春駒
 
おなじみのシーンだけど舞踊なのだ。
  
大道具の梅、花が大きいなぁ。面白。
昨日「奇想の系譜」を見た影響で妙なところに気がいってしまった。
 
三、名月八幡祭
 
序盤、先行きどうなるか知ってるから、見てて辛い。
ああ新助どん、お祭り見物に残っちゃダメよ、魚惣さん引き留めないで…
 
あら、でも、前に見た時よりも
三代吉と三次がナチュラルボーンな悪というか悪でないというか。
単なる無邪気や奔放じゃない。考えて抱えて生きている。
そう見えるのは仁左衛門さん玉三郎さんが"流石"なんだと思う。
それで新助の独り相撲が際立つから、ますます胸が痛むし、
恋に狂うことの怖さよりも、やっぱお金って怖いなぁと。
 
芝居の中の他人事に置ききれない身近さが、見るの辛いけどすごい作品だと
思うし、役者さんが変わると違う受け取りになるのも面白い。
 
(2019.2.11)

【歌舞伎】国立劇場 初春歌舞伎公演 2019年1月

2019-01-14 17:34:30 | 歌舞伎
初春歌舞伎公演
通し狂言 姫路城音菊礎石
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起承転結ならぬ起承転転転転転で筋を追いつつ見せ場も見逃すまい。
集中。
いろんなネタや表現がてんこ盛り。
 
菊五郎さんが主役・印南内膳、出番は少なめの印象。
時蔵さんも立役姿多め。
 
物語を回すのは、菊之助さん・松緑さん・梅枝さん、
国松の寺嶋和史くんと福寿狐の眞秀くんも合わせて、次世代だなぁ。
 
坂東一家と片岡亀蔵さんが要所。
 
絢爛衣装。
狐の所作。
ダイナミックでちょっと新しい感じのある立回り。
 
(2019.1.14)
 
桃井陸次郎の持病(眩暈と頭痛)、ストレスがかかると出る感じで、
今っぽくて、やや身につまされたりして、ちょっと苦笑。

【歌舞伎】歌舞伎座 壽 初春大歌舞伎 昼の部・夜の部 2019年1月

2019-01-04 00:20:10 | 歌舞伎
壽 初春大歌舞伎
歌舞伎座
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いろんな味わいに瞳キラキラになる感じの、
新年いきなりのごちそう。
 
◆昼の部 
 
一、舌出三番叟
 
ことほぎの華やかな舞踊、新年。
 
二、吉例寿曽我
 
女工藤、福助さん。
花道での児太郎さんの口上的台詞。父、叔父、従兄。
芝翫さんの箱王の暴れん坊風なのが楽しい。
"未来は開けている"メッセージが溢れてた。
 
三、廓文章 吉田屋
 
幸四郎さんの伊左衛門に七之助さんの夕霧。
 
七之助さんの夕霧、ヤバい。可愛すぎる。
「病んでなぁ」から、つれなくされてるときの少し悲しそうな、
でも伊左衛門がこういう人だってよくよく分かってる故の仕方なさを
織り込んでるような、出すぎず引っ込み過ぎずの微妙な表情が。
伊左衛門が溶けちゃうよ。
吉田屋主人を東蔵さん、女房を秀太郎さん。
脳みそがほどけた。いい一幕だった。
 
四、一條大蔵譚
 
つくり阿呆と素顔の怖さと。
成瀬のエピソードは悲しいけど割と好き。
成瀬、高麗蔵さん。
 
白鸚さんの大蔵卿。
白鸚さんの一條大蔵卿は"願い"がある感じがした。
あまり意識したことなかったけど、これまで観た方々の大蔵卿は、
源氏再興を確信していた印象だったのかも知れない。預言者的。
今日の大蔵卿は"願い"か"祈り"。未来は不確定。当事者性が強いのかな。
 
吉岡鬼次郎夫婦を梅玉さんと雀右衛門さん、常盤御前を魁春さん。
この演目と、夜の部の勢獅子、このお三方が場のバランスを押さえてた。
 
◆夜の部 
 
一、絵本太功記
 
吉右衛門さんの武智光秀、手負いの十次郎・幸四郎さんに呼ばれ
扇子で足を二度叩く。
その叩き方が。
絶妙で。
涙腺が決壊。(客席のあちこちですすり泣き発生)
 
更に死期迫り視力を失った辺りの十次郎でトドメ。
あれ?落命で膝枕。いつもこうだったっけ?
 
祖母を東蔵さん、母を雀右衛門さん、かっちり。
米吉さんの初菊、鎧兜を運ぶ場面を丁寧に演じてて、
拍手し損ねてごめんね。
 
今月最も濃密な一幕。
 
二、勢獅子
 
全般楽しくて観飽きない。
舞手と音楽がたと鳴り物とみんなで組み上げられてる。
獅子がいいね。楽しかった。
 
三、松竹梅湯島掛額
 
猿之助さんの紅長を代表格として、
お七サイドの人物がみんな、どこかしらネジが飛んでいて、
それぞれ天然にさらりと演ってるのが妙味。
 
トンがっている。
 
吉三郎(幸四郎さん)と十内(廣太郎さん)はある意味たいへんに
真っ当・常識的な人物なのが、お七に甘いお七サイドの面々の
毒気のようなのにあてられている印象で面白い。
 
ただし、例えばお杉(竹三郎さん)、折々お七の行動を煽っているのだが、
櫓に登る前後にしても、成り行きにちゃんと必然性が入っているし、
お七への深い愛情も見えるので、"やばい人"にはなっていない。
ご母堂も紅長さんも。
 
時事ネタは、ハズキ、USA(皆さん揃っててすごい!)、チコちゃん。
 
櫓の場面は人形振り。
足遣いさん別動隊で(足音)。
七之助さんの目。
人じゃない動きがもたらす緊迫感。
義太夫と三味線に聞きほれながら。
 
(2019.1.3)