「 眠れない夜には 」

眠れない 青い夜には

淋しさが しんしんと
悲しみが ざーざーと 降ってきて

あっと言う間に流されて
夜の底に沈みます


瞬きもせず 石になり
ただ 上を見つめておりますと

懐かしさが ふわふわと
思い出が すわすわと 流れて来るのです

すると 私は 突然に
溺れて もがいて 苦しくて
涙や鼻汁が 流れ出ます


感情のないアラームは

六時きっかりに
私を底から引きあげると

又チクタクと 急ぎ足で
青い夜に向かいます

新しい朝が
始まったばかりだというのに

「 やあ、君 」

ある日の夕暮れ

地面にがっと立つ 私に会いました


やあ、君

細くて長い脚だね
ロールアップの裾が 元気でいいよ

よく聞いて
もうすぐ夜がやって来る
君なんて 簡単に丸呑みにされちゃうよ

今すぐ 逃げてしまいなよ

弱虫でも 負け犬でも
何を言われてもいいじゃないか

その長い脚で
行きたい場所へ 走って行きなよ

失敗してもいいからさ
あとは 私が引き受けるから

「 優しさは、私を搾る 」

湧き水みたいに トクトクと

目から水が溢れ出て

サイレンみたいに んーーー と

不細工でかっこ悪い音も出ます

そういえば

さっき観ていた テレビが優しくて

どうしてなんでしょう

どうして優しさって 私を搾るのでしょうか

搾り出た水は 私の毒ですか

響いたサイレンは アラートですか

「 つむじ風に乗って 」

夕陽が強く照らしました

避けられない光線に

じわじわと透けて
さらさらと砂になり

私は つむじ風に乗ります

突風が吹き荒れて
ざらざらしましたら

ぱぱっと払う その前に

そっと 感じてくださいね

いつもの ハンドクリームの香りですから