秋たけなわの日、六本木にある国立新美術館で開催されている[東山魁夷]展に行きました。
展覧会会場の天井が高く、大きな空間の中での展示は見応えがありました。戦後間もない初期の作品から晩年の唐招提寺御影堂の障壁画、心を写す風景画まで六つの部屋に区切られた集大成といった見応えのある展覧会でした。
私が最も心惹かれたのは、冬華と題した白い木立が雪原に立ち鈍く光る太陽がグレーで描かれた絵です。祈り求めた結果得た境地であることが感じられます。
もう一つは[白い朝]と題した画面一杯の雪が積もった枝に一羽のキジバトが後向きに描かれた絵です。繊細な雪の表情と後ろ向きの鳥に
作者の心の思いが重なって見えました。
今回の東山魁夷展で、どんな風景であろうともそれに心を通して描くと、見る人を惹き付けることがわかりました。
私は徳之島で朝陽が昇る様子や広大な海と空を目にした時、私の拙い筆で描くことに怖れ多く、ただ何時間も眺めて心に焼き付けて、祈るような気持ちでいたことを思い出しました。
大画家が祈る気持ちで描いておられたことが解り、怖れながら私も同じ境地になったことに感慨を覚えています。
年齢を重ねることで見えてくることがあり、人生最後まで無駄がないことを思い知らされた展覧会でした。
ミュージアムショプで、この展覧会用に売られていた画集や顔彩を手に入れることが出来たのも収穫でした。