ID物語

書きなぐりSF小説

第33話。夏立つ頃。10. 亜有と虎之介と

2010-11-26 | Weblog
 (第二機動隊本部にて。)

芦屋。暇だ。

清水。結構なこと。

芦屋。なんだか、お前とペアを組んでいるようだ。

清水。実際上、そうよ。何かご不満でも。

芦屋。いや、夢のような生活だと思ってな。

清水。なんてジジくさい言いよう。

芦屋。最初は、お互い警戒してたよな。今は信頼しきっている。

清水。うん。2年近くになる。最初は恐かった。今だから言える。

芦屋。はは。慣れたか?。

清水。全然慣れない。でも、平気にはなった。

芦屋。慣れると平気とはどう違うんだ?。

清水。そうね。扱い方が分かった、ってとこかな。

芦屋。おれが猛獣で、亜有は飼育係かっ。

関。そうよ。

芦屋。おわっ、聞いていたのか。

関。筒抜けよ。虎之介っ。

芦屋。は、はいっ。

関。あんたと亜有さんの関係がはっきり分かりました。

清水。ところで、関さん、いつ帰れるの?。

永田。7月に帰れる。

清水。まだ1カ月以上もある。

永田。人事に絡んでいるのだ。これでも早い。

清水。じゃあ、お気の毒に、新任の上司…。

永田。想像の範囲内だ。おれからはしゃべれない。

芦屋。次の担当がいいとは限らない。

関。誘導には引っかからないわよ。でも、そのとおり。良くなるとは限らない。

芦屋。何だか、次の展開が予想できる話だな。

永田。憶測はしないように。

清水。お二人ともお出かけ?。

永田。見たとおりだ。いつものつまらない仕事。

関。どこに行くかは言えない。

清水。そりゃそうか。

関。行ってきます。

芦屋。ああ、気をつけて。

 (出て行った。)

清水。さて、私もお出かけしようっと。

芦屋。自動人形の訓練か。

清水。そう。観察と。

芦屋。おれも行こうか。

清水。濡れ落ち葉。

芦屋。何か言ったか。

清水。エレキとマグネをバイクに乗せるのよ。虎之介はオートバイは?。

芦屋。必要な技能だ。

清水。要は自由自在に操れるってこと。ご指導、頼めるかしら。

芦屋。亜有が実演しようと思っていたのか。

清水。どうせ、自動人形には最初から組み込まれている。

芦屋。そんなの、基本技術だけだ。水くさいぞ。しっかり教え込んでやる。

 (郊外のオートバイ専用の練習場に行くのだ。2人は駐車場にエレキとマグネを連れて行く。小型のワンボックス車に長野本社から運んだ2台のオートバイが乗せられている。バイクはI国ID社製だ。一見するとツーリング用のオートバイだが、悪路も走れるように工夫されている。例によって、過酷な環境での計測機運搬用だ。)

芦屋。ヘルメットは買ったんだな。

清水。自動人形の予算で。自動人形のは作戦用の特注。私の分は普通のレース用の服。

芦屋。そうか。

清水。そうかって、あなたはそのスーツ姿で乗るの?。

芦屋。ああ、手袋とヘルメットして。

清水。手袋はサイバーグラブ(奈良註: 情報収集部用の特性手袋)、ヘルメットは一般用。工事現場の見学か通勤みたい。

芦屋。一般用ではない。服ともども、強化してある。

清水。悪趣味。

芦屋。本当に使う組み合わせ。おれの練習にもなる。


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