ID物語

書きなぐりSF小説

第33話。夏立つ頃。8. 空中バイク計画

2010-11-24 | Weblog
 (週明け。サイボーグ研の活動の認知度が高まり、見学者がひっきりなし。最近はポスドク級の応募者が多く、企業と違って勝手に乗り込んで来るので、やや迷惑。それでも、海原所長は丁寧に説明している。今日は6人もの希望者を相手にしている。
 また電話。係が星野さんに回す。報道だということで、大江山教授が相手している。)

芦屋。なんだか慌ただしいな。

火本。うん。すぐに下火になると思うけど。芦屋さんは何しに来たの?。

芦屋。虎之介でいい。お客さん扱いはやめてくれ。

火本。ごめん。オリヅル号のことかな。

芦屋。ズバリそうだ。トースター号に搭載するんだろう?。

火本。調査?、それとも意見を言いに来たの?。

芦屋。話を聞いてからだ。

火本。調査に役立つかどうか。

芦屋。ああ、その通り。勘がいいな。

火本。ぼくは調査は素人だ。意見が欲しい。

芦屋。なら、話が早い。

 (所長に了解を得て、火本が設計書を持ってくる。虎之介は真剣に眺めている。水本があきれている。)

水本。虎之介さん、こういうことなら分かるんだ。

芦屋。引っかかる言い方だな。だがそうだ。なぜか、直感が働く。

水本。そりゃ勉強しているからよ。この分野に関して。

火本。亜有さんと逆だ。彼女は安全保障なんて関心が無かったのに、今は一所懸命。

芦屋。堅牢で量産に向いた感じだ。よくできている。

火本。うん、模型飛行機では実績のある企業の設計だから。でも、まだまだ課題は多い。ロボットと言い張れるくらいの仕掛けにしなくちゃ。

芦屋。目的はなんだ。

火本。目標という意味ならシリーズEが目標。地質や植生の調査など。具体的に何に使うかはまだ決めていない。技術的限界が明らかになってないから。

芦屋。すでに引き合いがあるそうだな。

水本。そうなのよ。何に使うのかしら、こんな未完成品。

芦屋。性能調査と市場調査に決まっている。虎視眈々と狙われているんだ。

火本。トースター号なんか、いきなり5台の注文が入った。メーカーは、発注者の意見を聞いて、オーダーメイド生産するらしい。

芦屋。商売しに来てるんだから、いいのか。

火本。こちらの研究に差し支えなければ、構わない。とりあえずのデータはあるから、図面上での改造が始まっている。

芦屋。開発目標は自走車だったな。

火本。そう。多少、目や手足が衰えても、安全に操縦できるクルマ。

芦屋。人間のうっかりミスを防いでくれる。

水本。そこまでできたら、満点に近い。とりあえずは、センサー系を充実させて、人間の感覚をサポートする。

芦屋。大企業がやってそうだ。

水本。うん。激しい競争の渦中にいる。モグ班は真剣。

芦屋。あのポスターはなんだ。自動二輪を作るのか。

火本。オフロードバイク。検討中。

芦屋。さては鈴鹿だな。

火本。何で分かったの?。

芦屋。エレキとマグネの機動力を高めたいとか言ってた。こんなところに仕掛けするとは、あんにゃろ。

水本。自分が使いたいみたいよ。それに、自動人形用なら、モグみたいに他動人形として作ればいいじゃない。

芦屋。他動人形は量産できない。一品もので、極めて高価だ。

火本。マウンテンバイクでいいのに。

水本。芸がないわよ。A31と同じ。

芦屋。しかも、重すぎて、進行波ジェットでは飛べない。

火本。映画にはホバークラフトみたいな空中バイクが出てくる。

芦屋。フィクションだ。

水本。自動人形なら操縦できそう。

芦屋。お前ら、何考えている。

レイ。聞いちゃった。伊勢さんに相談してくる。

芦屋。行っちまった。どんなのができ上がるんだ。

水本。楽しみ。

火本。ここ、いいな。何でも夢がかなう。

 (もちろん、伊勢はルンルンで設計をはじめた。奇怪な機械のスケッチを描いている。)

奈良。何だそれは。

伊勢。空中バイク。エレキとマグネ用の。

奈良。そんなもの、存在するのか。

伊勢。単車をホバークラフトにするのよ。

奈良。安定しない。危なそうだ。

伊勢。だから、自動人形専用の地を這う航空機よ。火本くんのアイデアらしい。虎之介と話しているうちに思いついたんだって。

奈良。最強のタッグだ。

伊勢。ときどき、虎之介をサイボーグ研に行かせた方がいいみたい。

奈良。で、どこに発注するんだ。

伊勢。真剣に考えてくれるところ。本部航空部門はどうかな。

 (E国ID社が反応した。A31の空飛ぶ自転車をG国に奪われて、カチンと来ていたらしい。さすがに、今回はG国はだんまり。1カ月後に最初のバージョンをよこすと。)


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