ID物語

書きなぐりSF小説

第33話。夏立つ頃。12. 山へ

2010-11-28 | Weblog
 (山田氏のアイデアで、弁当持って、近くの山にツーリング。自分のバイクを加えて3台だ。山田氏はID社のバイクに乗る。エレキは貸してくれたバイクを使う。虎之介はエレキのバイクに、亜有はマグネのバイクに乗る。山の中腹の展望台に着いた。関東平野が見渡せる。)

清水。ふわあ、いい気持ち。来てよかった。

芦屋。どうですか?、使い心地は。

山田。微妙。とてもいいけど、普通の乗り心地。耐久性がありそうだから、砂漠とかジャングルだったら欲しくなりそうだけど、普段使うにはとんでもない贅沢。

清水。信頼性は抜群です。

山田。それにお金を出す人向けだ。運動性能とか、乗り心地だけでは、選択肢から脱落する。

芦屋。普通の運動性能なら、エレキが乗っていたバイクの方が良さそうだ。

山田。はっきり言えば、そう。国産だけど、とてもいいマシン。ずっと安いし。

清水。安くは見えない。

芦屋。高級品だ。その我が社のバイクと比べてってこと。

山田。私のブログで紹介していいですか?。

清水。どうぞ。我が社の商品ですから。

山田。隠された、世界の銘品。ID社の観測用高級オートバイ。ひょっとして、そのロボットも商品。

清水。貸出契約で売られています。この型だと、初期費用20億円、年間維持費5億円。5年使うとして、ざっと45億円。燃料代は別ですけど、とても安いし、ふつうの食事でも良い。

山田。値段が付いていたのか。

清水。量産の見込みがあるので、5年後には1/10になります。

山田。それでも、航空機の値段だ。そのバイクがロボットの移動手段になるのかな。

清水。普段はクルマを使います。水陸両用のオフロードカー。この前、山越えで対応できなかったので、バイクを試している。

山田。なるほど。じゃあ、今後も時々使う。

清水。つなぎです。いま、新しいバイクを開発中。

山田。斬新な。空飛ぶバイクとか。…、冗談です。

清水。当たり。空中バイク。

山田。そんなものあるの?。乗ってみたい。

清水。人間は乗れません。あまりに危険。超小型のホバークラフト、地を這う航空機。

山田。タイヤが地面に接してない。

清水。そのあたりから検討している。でも、そう。空中に浮いても操縦できないといけない。だから、航空機。形も、ローターのない小型ヘリコプターの感じになるはず。

山田。残念。空飛ぶバイクだったらよかったのに、それじゃ空飛ぶスクータだ。ちょっと感じが違う。

芦屋。単に一人乗りのジェット機だったらある。超小型の。

清水。何よそれ。

芦屋。IQ(IFFと競合する地下軍事組織)の…。

清水。ごほん、ごほん、ごほん。

山田。ちょっと寒いかな、ここ。

清水。花粉か何かよ。失礼。

 (亜有が山田氏のバイクに乗りたいと言ってきたので、山田氏は自分が運転して、後席に亜有を乗せる。虎之介は、今度はマグネの後席に乗る。普通の国道を走る。普通にツーリングだ。)

山田。どうですか?、乗り心地は。お嬢さん。

清水。やっぱり、こっちの方がいい。乗る楽しみがある。

山田。はは。うん、質実剛健にも程がある。あちらを気に入る人も少数ならいそうだが。

 (こっちはゆっくり走っているので、途中で別のツーリングの団体に追い付かれた。お互い、少数派との認識があるらしい。停車して、挨拶。ID社のバイクに注目が集まった。停車したまま、乗ってみたりする。マニアがいるらしい。ID社のバイクを知っている人がいた。)

山田。へえ、一部では知られている。

旅行者1。そう。ごく一部だけど有名。数が少なくって、幻の単車。恐ろしく堅牢。

山田。価格も破格。

旅行者1。ID社は積極的に売る気がないらしい。競合他社からはあきれられている。一度でも乗った人は気に入るけど、値段を聞いて二の句が継げない。

山田。軽く1000万円を超えるらしい。

旅行者1。無理して買えなくは無い微妙な価格設定。買った人は必ず満足する。

山田。こんなに武骨なのに。

旅行者1。それがいいんですよ。どんな無理にも耐えてくれそうな感じ。頼りになる相棒。

山田。そう言えば、そんな感じだった。確かに、こころ惹かれる。

旅行者1。うわさといっしょ。普段は目立たないのに、ここぞと言うところでどこまでも応えてくれる。

山田。なんだか、気に入ってきた。だが、買えそうもない。

 (何人かがどうしても試乗したいというので、広場に移動。軽くそのあたりを乗り回してみる。気に入ったという人と、値段の割りには平凡という人と、両極端。
 気候がいいので、もう一走りしよう、ということになった。団体と別れて、別の山を目指す。今度は、虎之介がエレキの後席、亜有がマグネの後席。)

清水。どう?。慣れてきた?。

マグネ。もう大丈夫。あの山田という人、プロ中のプロのようだ。

清水。そうなの。人当たりは普通だったのに。


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