遥かなる旅路(心臓バイパス手術手記)+(糖尿病日記)

実名で語る心臓バイパス手術手記+匿名で公開する糖尿病日記

平成10年7月26日(日曜日)から28日(火曜日)まで

2007年04月09日 | Weblog
平成10年7月26日 (日曜日)
   
 「類は類を呼ぶ」、というのか、静かであった我
が211号室のベッドに、思い切り大きな音でオ
ナラを放る人が入った。私が入院して2、3日間
は静かであったが、今朝は、朝っぱらから2発も
洗礼を受けた。

 盲腸の後に待つオナラは別だが...。あまり気持
ちのいいものではない。

診療日誌

 日曜日は、あの注射針の洗礼を受けなくてすむ、
土曜日、日曜日は私の最良の日である。 少し心配
なのはやはり、「便秘」のこと。昔のように簡単
に用を足せない。昼ご飯を過ぎて3回目の挑戦、
体も脳もまだ排便の準備ができていないようだ。

 それに精神的な要素が多分にあるのだろう。便
器に座って待つ事15分、少しその気になってきた。

 ここを逃してはと力む。こうして目的を達成す
る。少し排便できた。
下腹が張っていたので明日は浣腸をしなければ
と覚悟していた矢先でありこれで安心。

午後2時30分頃からいつものようにJRの駅の
そばにあるデパートに行き、ノート2冊とウーロ
ン茶を買って帰る。これが午後の運動を兼ねた買
い物である。

血糖値(自己測定)

7時15分 107(mg/dl)


     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇  

平成10年7月27日 (月曜日)
   
 朝からさわやかな天気である。月曜日は採血の日
だ。午前7時15分の採血は夜勤明けであるから昨
夜と同じ看護婦さんだ。

 問題は、勤務交代後だ。1日、4回採血されるか
ら両腕の血管は注射針の跡でぶつぶつと小さな点が
残っている。あと半月ぐらい針を刺されるかと思う
とおっくうになるが、もっとひどい患者さんがいる
のだから我慢しなくてはとあきらめる。
 
空腹時の血糖値は落ち着いてきたようだ。大体1
10(mg/dl)前後だから境界値ぐらいまで下がっ
てきた。
 食後2時間ぐらいが最高値であり、300(mg/dl)
に近い値となる。この値は、まだ改善されていない。
 食後3時間後は、正常の人の約3倍以上ある。この
高血糖値が身体に相当な負担となっているものと考え
られる。同室の患者さんをみるとき、再入院される患
者さんの入院回数が多いほど、合併症が重症になって
いる。

 糖尿病は完治しないといわれるが、発病後の期間
が長い程、合併症が重症になっている現実から、糖
尿病治療の難しさを理解した。

 私の場合も正確には出戻り患者である。(以前、
千葉県にあるG病院に2週間ほど「教育入院」をし
た)この時、糖尿病患者で入院された方が、大声
でわめきながら意識も回復せず他界された現実を見
た。

しかし、自身の血糖値コントロールになると良好
に保つのは非常に難しい。今回、目の検査をしたが、
結果は(A2)ランクであり糖尿病患者としての症状
は出ているが、手術の必要はないと言われた。腎臓
も大丈夫なようだ。(平成19年3月現在もA2ラ
ンクであり、状態としては、約年間変化していない)

 ただ心臓が、安静時はどうもないのだが、歩いた
り、負荷をかけたりすると辛い。心臓については、
「心筋梗塞の疑いがあり」とか、「心臓は検査の結
果ネガティブだ」とか、正反対の診断をされている。
お医者さんにより診断がまちまちであるようだ。自
覚症状があるのだからと言う事で、心臓の薬を飲ん
でいるが、気持ちとしてはすっきりしない。

 一時帰国で日本へ戻った時、長男が学んでいる大
学へ行くためJRの四ツ谷駅の側にあるK大学前の道
幅の広い道路を横断しようとしたが渡りきれず中央
近くで立ち往生した。

 次の信号が青になるのを待って渡りきったという
状況であった。入院して直ぐに主治医が、「血糖値
があまりにも高い」という事で点滴をしてくれたこ
とがよかったのか、その1日後心臓がすごく軽く感
じたのであった。

 この時、直にそれを主治医に報告した。この状況
の変化から、心臓疾患を見つけてもらいたかったの
である。主治医はいとも簡単に私に言ったものだ。

「血糖値がさがったからだよ」

点滴をしてから、4日間ぐらいは心臓が普通に機能
していた気がする。この事を家内に

「入院してよかった。もしかしたら心臓が直ったか
 も知れない。負荷をかけても何時もと違うんだ」

と喜んで電話で報告している。しかし、現実はそれ
ほど甘くはなかった。

 横断歩道を渡りきれない状態ではないがまだ心臓
の機能は十分なものではない。私の心臓の状態が、
顕著な症状を示さないので、私は、主治医に心臓の
話をする時は、「心臓があるという事を感じる」と
表現する。不確実な表現であるが、私はこれが一番
正確な伝え方だと思っている。

「難しい表現をする」とたしなまれるのであるが、
「痛くてきりきりする」というような言葉ではっき
りと表せない症状なのである。「心臓が普通でない」。
この表現が一番合っているようだ。

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 トレッドミルと呼ばれる心臓の検査があるが、あ
のベルトコンベアーの上を時間の間隔をずらしなが
ら速度調節をして歩き、身体には電極をいっぱい付
けてその波形がオシロスコープと呼ばれる(電子屋
である自分はそう呼んでいるが、医療現場では何と
言っているのか判らない)複数台の機械で測定され
る検査を何回か受診した。この検査でも、心筋梗塞
の明確な診断は出ていない。また、「24時間心電
図」という一日中、心電図を付けて測定する検査も
あまり顕著な診断結果はでなかった。

 後日、入院先の病院で心臓のエコー検査を受け
たがその時の担当の先生は、「大丈夫心筋梗塞は出
ていない」・・・と。

 以前の経歴として心筋梗塞の後も見られないよう
だ。不整脈も現れていないし心臓については心配す
るような問題はない」と明確に心筋梗塞など私が以
前受けた健康診断結果を含めて今までの診断結果を
否定された。
 以前にも触れたが、27年から30年間糖尿病を
患っていながら、合併症については、目が(A2)
レベルである事以外はすべて否定されたのである。
 (☆ 後日、心筋梗塞で心臓バイパス手術を受け
る事になるのだが・・・・・・・)

ある患者さんが退院前日に私に話しかけてこられ
た。患者さんの血糖値の下がり方が私のそれに良く
似ていたそうである。(主治医から聞かれたのだろ
う)その方は、27年の糖尿病経歴があるとの事、
しかし合併症が出ていないと話しておられた。血糖
値は300(mg/dl)以上は高くなった事が無いとも話
された。私のような症状の糖尿病患者は他にもたく
さんおられるのだと驚いた。

主治医が、「薬でいけますよ」と退院説明の時話
しておられた。糖尿病の怖さをもっと多くの人々に
知ってもらい、諦めず適切なコントロールを行えば、
多くの患者が合併症の苦しみから救われるのではな
いだろうかと、入院してからすごく感じるようにな
った。

診療日誌

 朝食後、20分間力んでみたが、目的達成せず、
又便秘である。今回はあきらめて、もう少し時間を
置いてから試してみよう。肛門と腰のあたりがむず
むずするから便が詰まっているのだろう。

 下剤は使わないように努力しょう。

血糖値(自己測定)

7時00分  86(mg/dl)
11時00分 166(mg/dl)


    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

平成10年7月28日(火曜日)
   
 入院してから便秘に苦しめられ続けている。昨日
も、排便できなかった。3食残さず食べているのに
食物はどこに消えていったのだろう。「備蓄がなく
なった」と看護婦さんに冗談を言っていられるほど
余裕はなくなってきている。

 病院も慣れたもので、大と小の回数は聞いてくれ
るが、「あなたは、薬が嫌いね?頑張ってね」
と冷たく感じるような言葉だけを私に投げかけてく
れる。もう私の薬嫌いが病院スタッフには知れわた
っているのだ。

 入院という環境が便秘の原因だろうかともかく、
下剤を使わなくても良いようにがんばろう。それに
インスリン注射を拒否している以上血糖値の上昇は
絶対に避けなければならない。

そこで、病院食以外は食べない。運動はしっかり
実行する。血糖値の経過は自己測定を含めて記録を
とろう。
(血糖値自己測定は保険が使えない。
 従って、試験紙は、1箱1万5千円(100枚入
り)のものを使っている。測定器は亡くなった兄が
私にくれたものであり、ただ一つの兄の形見となっ
てしまった)

治療日誌

今日は、身体の電解液を調べると言う事で、朝
7時からの採血で多量の血液を採取された。主治
医は検査の結果を教えず、回診の時は、「何も解
かっていないな。本を買ってきて勉強しなさい」
と関係ない事ばかり言って帰る。そういう風に私
を挑発したあとで、糖尿病に関係のあることを教
えてくれるのである。
前にも話したであろうか、眼球は血糖値によっ
てそのレンズが厚くなったり、薄くなったりする。
 従って、血糖値の上がり下がりの激しい場合は
眼鏡が合わなくなることなど、例をあげて説明し
てくれるのである。

その時は医大の講師にもどっているのであろう。
 ここで主治医が今日、私に教えてくれた事を少
しまとめてみよう。


 糖尿病は自律神経が機能しなくなると大変であ
る。糖尿病による突然死は自律神経が機能しなく
なった場合である。
 呼吸は、自分で意識しなくても空気をすってい
るし、立ちくらみは血管の収縮現象が行われなく
なると血液が送れなくなっておこり。自立神経が
侵されると血管の収縮はできなくなり、抹消神経
も麻痺する。つまり、糖尿病性神経障害が起こる
のである。こうなると、足を切っても痛くない。

「糖尿病が発病してから大体7年ぐらいで合併症
がでるのではないか?」

と尋ねたら、医者の立場から言えば、大体15年
から17年ぐらいかかる。7年ぐらいで合併症が
でるのは患者さんが相当むちゃをしている証拠だ。

 水分を取る事は非常に大切だ。それと運動は糖
尿病の治療には欠かせない。それも、筋肉をつけ
る事だ、例えるならば、老人を軽トラックと考え
れば、若いはつらつとした青年は大型ダンプカー
だ。健康な人は、余った糖は脂肪に変えて蓄積す
る。
 大型のダンプはガソリンをたくさん食べる。し
かし、それをほとんどすべて消費する。軽トラッ
クは消費量が少ない。食物を多くとれば老人はそ
れを燃やすだけの力はないので、蓄積される。

 ダンプカーは、燃料を多く確保してもそれを消
費するからよい。消費するのは筋肉だ。つまり、
筋肉をつければ、糖はその筋肉で消費される。
 要約すると、糖尿病で恐ろしいのは、目とか心
臓よりも自律神経がおかされる事である。これに
より、我々が知らない間も動いてくれるすべての
もの、例えば、呼吸や、血管の収縮などに乱れが
生じ、停止する危険性がある。
 運動は、筋肉を作るために必要だ、糖の消費の
為に運動すると言う事より、糖を消費してくれる
筋肉を作ればいいではないか。

 一度にまとめて運動するより間隔をとって運動
するとよい。例えば、食後1時間、2時間という
ように。これによってあなたの血糖値は更に下が
る可能性がある。現在の昼食後の血糖値はまだ高
すぎる。これを正常値に持っていくようがんばり
なさい。

 など、主治医は徹底的に私を教育しようとした。
 できなければ、S先生に叱られるからともいった。
 どうやら、私はS先生からK先生に預けられたようだ。

治療日誌

血糖値(自己測定)

7時00分 88(mg/dl)
11時15分 229(mg/dl)
      (運動量 4、499歩)

17時15分  102(mg/dl)
      (運動量 7、071歩)

22時00分 測定なし
      (運動量 3、964歩)

 今日は、主治医の指導があり、運動量を2倍に
増やした。カロリー制限による体力の消耗がはげ
しく、運動途中でも少し向かい風が吹けばよろける。
 意識的にも足を前に運ぶのが精一杯の感じである。
 それに低血糖症状が出て左目が非常に霞む。

 以前、血糖値を強制的に下げたのと同じ症状がで
ているが、糖の補給をする事は止める。(ジュース
を飲めば、直ぐに楽になると思うが、糖の補給をす
れば、せっかく正常値に近づいている血糖値が悪く
なる)歩くと言う気力もなくただ足を前に運んで、
それも少し風が吹くと立ち止まり、やっと、X駅の
南側までたどり着く。
 そこで、こじんまりとした古本屋さんを見つけた。
 2冊1、000円の本を買って、X駅北側のビル街
を過ぎる頃には疲れはすっかり取れて、はつらつと
歩いていた。本屋さんでの立ち読みと、それによる
休憩、本を買ったという嬉しさですっかり疲れを忘
れているのである。

 運動状況を主治医に報告するかどうか考えるが、
このような状態はすでに幾度も経験しており、対処
の方法を知っているのでこのまま、昼間の食後の血
糖値が下がるかどうか一週間ばかりがんばる事にした。

 これで血糖値が下がれば運動量と血糖値降下の関
係が判り今後の運動療法に役立つと考えた。


  平成10年7月29日へつづく

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