遥かなる旅路(心臓バイパス手術手記)+(糖尿病日記)

実名で語る心臓バイパス手術手記+匿名で公開する糖尿病日記

平成10年7月19日(日曜日)から7月25日(土曜日)(2回に分ける)

2007年04月09日 | Weblog
 ☆☆ 暖かくなり始めました。自家用車(改造済
    み:スズキエブリー)の車内を旅が出来る
    よう整頓等し、((車内のリニュアール)
    を現在しています。今日は朝のうちは雨、
    残す事、アマチュア無線器の配置換えと、
    アンテナの調整を終えれば行動が出来るよ
    うになります)(一昨年:九州、昨年:北
    海道そして、今年は本州を旅したいと考え
    ております。=本当は、今年の冬から、徳
    之島で暖かい冬を過ごしたかったのですが、
    費用の点から無理と判断しました)。

     そんなことから、「糖尿病日記」を旅の
    出発までに終えたいと考えました。

     出来るかどうか判りませんが、今日から
    出発が出来るようまとめて公開します。

     もしかして、出発よりも早く終わるかも
    知れませんし、そうでないかも知れません。

     平成19年4月9日
              伊根杜 航

 
   △△△△△△△△△△△△△△△△△△△△

第1回目

平成10年7月19日 (日曜日)

 昨夜はよく眠れた。夜中にガサゴソと音もなくま
た、突然闇を裂くようなオナラの洗礼を受けること
もないまま、消灯時間の夜10時過ぎから今朝の4
時までぐっすりと眠った。

  はばからずオナラを発する患者さんが退院したの
で、オナラの洗礼を受けなくなるだろうと思い嬉しく
なってきた。

 病気とはいえ自由に歩き回れる患者が人前でオナ
ラを堂々とするのは礼儀外れというものだ。
(当人は、この狭い部屋に詰め込まれているのだ、
 オナラぐらいさせろと、言うかも知れないが...)

 昨夜退院した患者さんは、
 「俺、寂しいんだよな、家に帰っても誰もいないし...」

独り言を言うようにポツリと私に向かって言った。
 後ろ姿を見送りながら、

 「寂しいですね」

と私が答えたら、振り向いて本当に寂しそうに声の
ない笑みを浮かべ、肩を更に落して廊下の向こうに
消えていった。

60歳を超えただろうか、大柄とはいえないその
姿は昔、映画にでていた俳優さんとのうわさである
が、面影はすでにない。声優でもあったと言ってい
たその人は、その言葉の歯切れのよさと、声の大き
さだけがかろうじて昔を思わせた。

 私も54歳になり、我が人生をもう一度振りかえ
る時期であるのかも知れない。

治療日誌
 入院から3日目までは便秘が続いた。昨日やっと
普通に近い通じがあったが、今日はまた便秘である。
排便が苦しい。

血糖値(自己測定)

 7時00分 137(mg/dl)
11時00分 268(mg/dl)
17時00分 141(mg/dl)
22時00分 233(mg/dl)

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

平成10年7月20日 (月曜日)

今日は祭日である。しかし、シャワー室を開放し
てもらえたので、9時からシャワーを浴びた。久し
ぶりに浴びる熱いお湯、心身共にさっぱりした。

 海外生活の時も、お風呂はシャワーで湯船に浸か
ってのんびりするという贅沢は味わえなかった。病
院も身体を洗ってお湯をかぶるだけであるがそれで
も気持ちがいい。

午後10時の消灯時間が決められているので、朝
の目覚めが早い。 今日も4時には目が覚めた。洗
面所で少し洗濯をして屋上に干しに行く。

 他の患者さんのラジオを通して、今日は午後には
雨が降るとの予報を聞く。下り坂に向かうとのこと
だった。それに、梅雨明けが遅れるともいっていた。

 入院から1週間が過ぎる。血糖値の下がり方も、
見当がついてきた。食後3時間の値は300(mg/dl)
に近い、4時間経過すると200(mg/dl)台に、
5時間で150から200(mg/dl)まで下がる
ようだ。

また、夕食後から19時間以上経過した朝食空腹
時では相当に血糖値がさがっている。(血糖値測
定条件は、食後1時間に30分(歩数にして約3、
500歩程度)の運動療法を行い、薬を朝食と夕
食前の1日2回服用している場合の値)

治療日誌
 採血のため6時過ぎに起こされる。今朝の午前
4時30分過ぎから眠ったようだ。今日は運動量
と血糖値降下量を実験するため、最初の採血は運
動療法をしないことにした。

血糖値(昼食後3時間) 249(mg/dl)



 この値から判断して、1時的な運動の不足は血
糖値の上昇につながらないようだ。血糖値を下げ
るために一時的に集中して行う運動は血糖値を1
時的に下げる効果はある。

血糖値

7時00分 139(mg/dl)
11時15分  96(mg/dl)
17時15分 146(mg/dl)
22時00分 211(mg/dl)

   ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

平成10年7月21日 (火曜日)

 秋口のようなすがすがしさを感じる。この入院期
間をつかの間の休息と考え、仕事の事を忘れようと
するがなかなか簡単にはいかない。
 ドーンと重苦しいものが肩にのしかかってくる。
 昨日、運動の為に書店に行った。このとき大きな
見出しで書かれた本の表紙が目に飛び込んできた。

 「小さな事にくよくよするな」
 
 そのような活字が踊っていたように思う。プラス
思考で行こう。どうせこの世はただ一度。自分の人
生を大切にすること、それが家族を幸せにする事な
のだから。

 新しい患者さんが入院してきた。

診療日誌

血糖値(自己測定1回)

7時00分 127(mg/dl)

(運動量13、834歩)

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

平成10年7月22日(水曜日) 

 今朝は朝から曇っている。昨日の新患さんは、ご
そごそしていたかと思とすぐにいびきをかいて眠っ
てしまった。案外、図太い性格の人かも知れない。

 今朝は眠れないのか早くから物音を立てていた。
 私は、環境になじみやすい性格だから、案外と病
院生活を楽しんでいるが、他の患者さんは、早く帰
りたいのかしきりと、ため息をついている。

 仕事中にはやれなかった「C++Builder」(コンピュ
ータプログラミング言語)のプログラムの勉強を一
生懸命やっている。病院生活をそれなりに楽しんで
いると言っておきながら、仕事の準備をしている。

 なんと私は愚かな人間であろうか。仕事で無理を
強いられ、それを当然として月日が流れる。

 その後待っているのは悲しい現実である事が多い。
 私は、その現実が悲しく思えたから入院の道を選
んだ。
 恐らく、職場に戻ったらつらい日々が待ち受けて
いることだろう。そして、それは何時まで続くかわ
からない。
 気持ちのゆとりと体のゆとりがなくなった時、人
は病気に向かって走り込んで行く気がする。

 「ゆとり」であるが、こんなことがあった。私が
がむしゃらに技術移転をしていた国の政府の職員が
私にいってくれた言葉である。

 「そんなにがむしゃらに仕事をしなくても、同じ
  ようにここは動いて行く。いつもと変わりなく...」

 仕事を順調に進める為の努力をしている私は、こ
の言葉に突き放された。

 「俺って、そんなにどうでもいい人間なのかこの
  職場では...」

 それは、過労から高熱を出した時の事であった。
 彼は私に、「自分を犠牲にしてまで仕事をする必
 要はない。

 一番大切なのは自分と、自分を頼って生活してい
る家族だよ」といいたかったのであろう。この時、
私は目が覚めた思いをした。

 個人の幸せの上にすべての幸せがある。そう思え
るようになったのである。
煙草一本買うお金がなくて、草を丸め吸っていた
仲間が帰国のとき、お金を出し合ってパーテイを開
いてくれた。そして、妻も招待されて一刀彫りの大
きなヤシガニの置物をプレゼントしてくれた。

 事務所で1人の女性が時間をかけて木彫りのヤシ
ガニを何度も包み直していた姿が私を諭してくれた
職員の言葉と重なりあのときの事が、鮮明に思い出
される。

治療日誌

 先生が回診、左目の異常を訴える。この異常は海
外にでる前の検査で急激な運動をし(病院のビルの
階段を2階から5階まで、20分から30分かけて
運動)血糖値を下げた時に現れた。それ以来、低血
糖値になると同じ症状が現れる。

 今、目の状態が明らかに低血糖の症状を示してい
るのである。心配だから先生に症状を訴えた。その
結果、先生の診断は、

 「今までの高い血糖値が正常に戻ってきたから違和
  感を感じるのではなか?」

との事であった。即ち、血糖値が高いと濃度の差が生じ、
それによって目の厚さが変化する。先生は、セルロイド
の例を上げて説明してくれた。濃度の異なる液の中にセ
ルロイドを入れると、濃度差による拡散現象が生じてそ
れによってセルロイドの厚みが厚くなる現象が起こる。

 血糖値が上がると、同じ現象で目のレンズの厚みが変
わる。血糖値の上がり下がりの変動が激しい人は、レン
ズの厚みが激しく変わり,眼鏡を幾度作り替えても目に
合わない状態がでてくるとのことであった。

 今日も一つ糖尿病に関する知識を得る事ができた。

 ここで、新米看護婦さんに付いて触れておこう。新米
さんはすがすがしい。何事も新鮮で一生懸命に行動する。

 でもただ1つ我々患者は彼女の洗礼を受けなければな
らない事がある。今日はその日である。入念に腕をチェッ
クして、それも患者の両手を時間をかけて丹念に調べて
くれる。

 「右はものを書くのによく使うから」

と左手を選んでくれた。そして、血管を慎重に調べおも
むろにかつ、ゆっくりと力強く注射針を入れていく。

 「おお!痛い!」

肉が引き裂かれそうな痛さを伴って注射針が止まった。
 
 まだ私の血液は自分から注射器には入っていかない。
 指を動かして手助けをしたが、血液は自分から器に入
ろうとしなかった。看護婦さんが注射器のノブを思い切
り力強く引っ張った。そのとき、かろうじて器に血液が
入ってきた。

 血が吸引された事実は注射針が確かに私の血管に命中
していることを証明した。

 「新米さんおめでとう。あなたは成功したんだよ」

 注射針を抜くときも、針を刺す時と同じぐらいの痛さ
を伴なった。こうして、パソコンのキーを叩いている今
も痛さが残っている。新米さん。二度と私の血を抜かな
いで。でも心と裏腹に、

 「慣れるまで仕方ないね。がんばってね」

と看護婦さんを激励してしまった...。

血糖値
7時15分 135(mg/dl)
11時15分 237(mg/dl)
17時15分 203(mg/dl)
22時00分 195(mg/dl)

     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


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