遥かなる旅路(心臓バイパス手術手記)+(糖尿病日記)

実名で語る心臓バイパス手術手記+匿名で公開する糖尿病日記

7月29日(水曜日)から8月1日(土曜日)第3章終わりまで

2007年04月09日 | Weblog
平成10年7月29日 (水曜日)
   
昨日、同室の患者さんが、白内障の手術をした。
 しばらくして、主治医が手術直後の患者さんの
様子を見にきた。手術を受けた患者さんは、
「ごりごり音が聞こえていた」と先生に話していた。

 先日退院した患者さんもいっていたが、レンズを
入れるために水晶体の一部を切っていた音がそのよ
うに聞こえたのだろう。
 私は、まだ目の手術の経験がないのでどのような
状態なのか判らないが、濁った水晶体を手術で切開
して、レンズを入れる手術が白内障の手術だと聞い
ている。

 私も、糖尿病患者である以上、合併症は必ず起こ
るであろうし、腎臓、心臓、目それに主治医に教わ
った、神経障害が必ず表れるであろう。
 その時期を早めるか、遅らせる事ができるかが私
の糖尿病との戦いである。

診療日誌

便秘3日目、今日は何がなんでも、排便しなくて
はと悩む。糖尿病の合併症で目の手術をする場合、
光凝固で黄班部と言われる細かいものを識別する目
の大切な部分を保護するためにわざとレーザー光線
で黄班部の周辺を焼いてしまう療法があると聞く。

 この手術の時期は、目の細かい血管が詰まり、簡
単に新しく非常に弱い血管が増殖し(増殖網膜症)、
弱いがゆえに直ぐ出血をするという悪循環を繰り返
す時期でもあるとのことである。

 放置すれば、網膜剥離に結びつく。私の場合、現
在そこまで悪くなっていない。有りがたい事である。

     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

平成10年7月30日(木曜日)
    
今日は採血がない日だ嬉しい。昨日は、恐怖の新
米看護婦さんがやって来た。一生懸命がんばってい
るし、早く1人前にしたいと言う気持ちは、暗黙の
うちに我ら211号室の患者から伝わってくる。

 いよいよ、私の採血の番が来た。色々と気を使っ
た言葉が注射針を刺す前にたくさん並ぶ、私も悪か
った。「痛いとワメクかも知れないが、気にせずや
ってね」励ますつもりで言った言葉のはずだった。

 しかしこの言葉が新米さんの心に強く残ってしま
ったらしい。慎重に、腕の血管を探し、(私の血管
はそんなに細くはないし、注射針を刺すのは難しく
ないはずだが...)。

 一応、針は私の腕の皮を通り、肉を左右に引き裂
いて、血管まで届いたかに見えた。でもそこまでい
くのに何故か、非常に痛い。おもむろに注射針の先
端を握り、ポンプ部分を引っ張って我が血を吸引し
ようとするが、何時もの少し黒味がかかったあの赤
い血は全く注射器の中に吸い込まれようとはしなか
った。

 針を突き刺したまま、我が血管をまさぐり始めた。
ご存知の方も多いだろう。あの痛さを。

「痛てててて...!」

それがいけなかった。かの純真な23歳の乙女は、
どうしていいか判らずそこで時間が止まってしまっ
たのだ。
 針を刺したまま沈黙が続く。そこは新米さんであ
る。2日前の夜、同じように血管をまさぐられた事
がある。
 この時はベテランの看護婦さんだった。特有の大
阪弁を使って、

「ああそう、痛い?できるだけ痛くないようにして
 上げようと思って 前の針跡の穴に刺したら、血管
 まで針が届かなかったの」

としゃべりながら、手はグルグルと針をまわして、
休みなく我が血管を探していた。経験とは恐ろしい
ものだ。
 新米さんが可愛そうになってきたので、

「夕方の採血は成功しようね」

と心にもない事をいって慰めた。早く1人前になっ
て、上手に注射をしてくれる事を願いながら...。
        
(私の入院中は無理だね、願わくば、次回あなたが
 来るまでに私は退院をしたい)

診療日誌

昨日は、主治医が次のことを教えてくれた。イン
スリン注射は、膵臓のインスリン分泌の助けを補助
するものであるからそれをする事によりインスリン
注射が習慣づけられ膵臓が怠けて、インスリンを分
泌しなくなる事はない。膵臓の負担を軽減するので
あるから、膵臓はかえって元気を取り戻す。従って、
そうなれば、インスリン注射の量を減らす事ができ
る。 太ることは脂肪が蓄積されることである。
脂肪の蓄積は、インスリンのアクセプタの働きを悪
くする。従って、太る事は糖尿病にとって良くない。

  主治医は時々、私の回診を飛ばしてしまう。でも
私のベッドに立ち寄る時は糖尿病について、ご自分
の意見を話してくれる。これは私にとって病気に対
する知識を増やすとてもいい機会である。主治医の
意見と少し違った考え方を私は持っていたので先生
に次のように話した。

「私は、先生の考え方と少し違います。確かに体を
 休めれば、次への活力が沸いてきますが、使わな
 い事によって筋肉のように退化をすると思います。
  膵臓も、外部からインスリンを補給してやれば、
 自分は生産する必要が無くなるので機能が低下し
 ていくと思います」

  先生のご意見が正しいとか、間違っているとか
の次元で自分の意見をいったのではない。個人的に、
30年間この考え方で薬を拒否し続けた私は、常時
与えることによる「習慣化」から生じる機能の低下
の有無を先生に聞きたかったのである。また、外科
的治療以外はほとんどが対象療法であると思う。

 即ち進行を一時的に食い止める事は薬でできるが
完治させる事はできないと考えるのである。 糖尿
病治療は対症療法治療であると思う。

 それに、薬は必ず副作用があると私自身は信じて
いる。だから、薬を使わなければならない場合以外
は安易に使いたくないのが私の気持ちなのである。

  例外として、膵臓から全くインスリンを出さな
い糖尿病は、膵臓が怠けているわけでもなく、受動
態(インスリンを受け取る組識)の働きが悪いわけ
でもない。生まれつき全く機能しない(真性糖尿病)
のであるから、この場合はインスリンを投与しなけ
ればならない。薬の投与意外に治療の方法が無いの
である。

 自分の体に対して、自分への責任負担で拒否し続
けたのであり、たまたまそれでも糖尿病がそれほど
悪化しなかったという偶然性であるかも知れないか
ら、決して、他人に自分の考えを認めて欲しいとい
うのではない。
 真実を専門家から聞き出したいという気持ちが表
れたのである。運動療法、食餌療法で良好なコント
ロールができる間に頑張って糖尿病を悪化させる事
無く普通の生活が可能である事を示したい。

 そして、すべての物は自然の形が一番いいと私は
信じている。
(しかし、後に、心臓バイパス手術を受けた)


血糖値(自己採血)

7時00分 82(mg/dl)

     ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

平成10年7月31日 (金曜日)
   
 主治医にハッパをかけられたので、勉強の為の
本を3冊も買ってしまった。家にも糖尿病に関す
る本は持っているけれど、毎回、回診時に何か一
つは糖尿病に関する事を意識的に私に教えていっ
てくれるから、私としても、外交辞令上、何か本
を買って勉強をしている振りをしなければ申し訳
ない気持ちなのである。
 長い糖尿病生活の間に、数え切れない数の先生
方にお世話になった。しかし、すべての先生が良
い先生とは言えなかったと思う。

 例えば、患者が質問すると、頭ごなしに怒る先
生、直ぐにインスリン注射による治療を強要する
先生(それが必要である事を患者に納得させて欲
しいのである)。だから、私はこの病院で私の主
治医の患者に対する対応が好きなのである。少し
難を言えば、患者に対する言葉がぶっきらぼうな
ところだけであるが私にとって、これと治療とは
何の関係も無いのでマイナス要素とはならない。


診療日誌

今日は採血の日、幸い7時の採血は主任さん。
 少し痛かったが無事すんだ。運動量は、9時
30分過ぎから、30分間駆け足を混ぜながら
の運動を試みた。体調の変化としては、左目が
少し変に感じることと、今日は耳が少しツーン
としている。明らかに、散歩的な軽い運動とは
違いがあるようだ。血圧が上昇して、血糖値も
下がっているのかも知れない。

 明日、今日の血糖値が判った時、この体調の
変化が何から来ているのかわかるかも知れない。
 心臓に負担をかけないぐらいの運動量であった
と思うが、変化があると言うことは、運動に無理
があったのだろう。

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

平成10年8月1日 (土曜日)
    
今朝7時にはすでに小雨が降っていた。朝の4時
ごろから寒気がしたので、低血糖症状が出たと思っ
た。
 甘いものを食べる程のことでないと判断する。
 また、今まで努力して降下させた値を上げてし
まう不安があったので看護婦さんを呼ぶことをや
めた。
 しばらくして、眠ってしまったのだろう。看護
婦さんに起こされて7時少し前に目が覚めた。血
糖値の自己測定をしたら、76(mg/dl)であった。
やはり下がり過ぎたのだ(正常な人は、この血糖
値は良好な範囲であるのだが・・・)昨日、少し
駆け足を含めた運動をしたが、血糖値に運動をし
たことによる値の変化は現れていなかった。逆に
心持ち血糖値が上がった感じであったが、1日遅
れて、運動の効果が出てきたのだろうか。もしそ
うであれば、運動を続ければ昼間の血糖値が下が
る可能性が大である。

入院2週間目、今日は同室の糖尿病先輩の退院
である。しかし、よくなっての退院ではないので
ご本人もそんなに嬉しくはないようだ。対症療法
であるから、目が悪くなればレーザーで焼き、目
が濁れば、水晶体を人工レンズに変える。

 足が異常に赤くなれば、患部の切断をする。ど
れをとっても患者には嬉しい話ではない。
 入院と退院を繰り返してだんだんと糖尿病は悪
化していく。その間おおよそ、7年から30年の
歳月が流れる。
 この患者さんもその周期の中の1人であろう。
 病気は、ゆっくりと進行していく。しかし私の
ように運のよい糖尿病患者もいる。長崎で、病院
に何の気兼ねもなく通院できた環境が良かったの
だろう。看護婦さんはじめスタッフの皆さんは、
私が若いということから、食餌療法と運動療法で
血糖値を下げるよう指導してくれた。

また、毎年の定期検診は忘れかけていた糖尿病治
療を思い出させてくれたし、海外勤務を希望するが
ゆえの血糖値を下げる努力。あるいは、「お酒」は
1年間の間全く口にしなくても平気だという体質が
カロリーの制限を容易にしたのかも知れない。

 ただ「たばこ」はヘビースモーカーで1日に2箱
は吸っていた時もあった。どうしても禁煙ができな
かったが、この煙草の異常な喫煙量が、心臓に負担
をかける事になったのも事実である。

 私は、「たばこ」を、お医者さんにストップをか
けられる前に止めたことを自慢にしている。しかし、
今まで真剣に糖尿病の管理をしたかというと、心も
とない。

 やはり腹一杯食べて、飲んでいた様にも思う。土
曜日は、「羽目をはずす日」と決めて、アンパン、
ポテトチップスなど腹いっぱい食べていた。それが
何時の間にか週末だけでなく普段の日も食べるよう
になっていたような気もする。

 そのような状態の私を、引き戻してくれたのは
紛れも無い、妻であった。女房の私への管理と献
身は時には、腹立つ事もあったし、食べ物で喧嘩
する事もあったが、つまるところ彼女が行う私へ
の食べ物のコントロールが、私を合併症から救っ
たのだと思う。

 それに、歩くことを実行した。すでにお話した
が、南太平洋の島での生活は、通勤に往復2時間
20分をかけて職場まで歩くなど運動療法は特に
心がけた。

 これらが良い結果をもたらしたのだと思う。

診療日誌

 今朝4時、寒気がした。7時自己測定をすると、
76(mg/dl)と血糖値は健康な人の値である70
(mg/dl)台となった。本来ならとても嬉しい血糖
値であるが、高血糖値を維持している私には、逆に
この値が低血糖値として体に作用するのである。

 昨日の少し過激な運動が、一度は血糖値を上げる
作用をし、血糖値が低下する空服時に効果が現れた
のである。さらに、血糖降下剤を朝と夜に服用して
いるので、この薬の効果と運動によるカロリーの消
費が血糖値を異常に下げたものと思われる。

 このことから、運動をすることが血糖値を下げる
作用があること、血糖効果剤が働いていることが確
認されたことにもなる。
 回診時、主治医にこの事を話し薬の量を1/2錠と
してもらった。

血糖値(自己測定)

7時00分   76(mg/dl)
9時00分 182(mg/dl)
10時00分 264(mg/dl)
11時00分  203(mg/dl)


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