日本に今ほど、新しい事業や商品が求められている時代はない。ただし、多くの日本の企業は、縦割り構造が強く、異分子が混ざり合うチャンスが少ないのが現状だ。そんな状況にもめげす、大企業の中でイノベーションを起こしてきた“プロデューサー”たちにインタビューし、その思考法や生き方などを学ぶ。 《リンク》
(東洋経済オンライン 「ビジネスプロデューサー列伝」-「富士フイルム、新ビジネス請負人の上司論」-「富士フイルムのプロデューサー、戸田雄三氏に聞く(上)」 2014/03/12)
上の文章に、「(日本企業では)異分子が混ざり合うチャンスが少ない」と書かれています。その理由は、「縦割り構造」が強いことです。ということは、「異分子」とは「互いに異なる考え方をする人々」というような意味で使われていることになります。
しかし辞書によると、「異分子」の意味は次のとおりです。
い‐ぶんし 【異分子】(デジタル大辞泉)
一団の中で周囲の多数のものと性質・種類などが異なっているもの。「党内の―を排除する」
辞書の定義による「異分子」は、一団の中で少数派ですし、好ましくない傾向を持つ人という含みがあるようです。それに対して上の文章での異分子は、同じ社内とはいえ違う部署にあって、異なるカルチャーに染まっている人同士、ということであり、辞書の意味とは異なっています。
次に、プログレッシブ和英中辞典で「異分子」を引いてみました。すると、次のとおり、辞書の定義とも上の文章での意味とも違う英語が当てられていました。
いぶんし 【異分子】(プログレッシブ和英中辞典)
a foreign element; 〔人〕an outsider
異分子を排除する
eliminate [exclude] alien elements
彼らは新来者を異分子扱いする
They treat newcomers as outsiders.
They discriminate against newcomers.
これでは、「部外者」とか「外来者」という意味になってしまいますね。
旺文社和英中辞典も引いてみたのですが、プログレッシブと同じような説明になっていました。どちらも明白な誤りだと思われます。
まずはこうした事件が、どういう社会情勢のもとで起きたかを押さえたい。安全への脅威が、国内に充満した不満を背景としたものか、あるいは外部から侵入してきた異分子によるものか、その違いによって情報収集の勘所も異なってくるからだ。
(週刊エコノミスト 2013年2月12日号 p.90 「国際協力銀行の視点 脅威を察知するポイント」)
※ アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による襲撃事件に関する記事です。
この文での「異分子」は、和英辞典の説明する「異分子」に近いようです。