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一意専心の資格マニアの記録

いくつか資格を取得するうち、楽しさを覚えるようになりました。主にビジネス系です。

「異分子が混ざり合う」(東洋経済オンライン)

2014-03-23 04:00:00 | 日本語・漢字

 日本に今ほど、新しい事業や商品が求められている時代はない。ただし、多くの日本の企業は、縦割り構造が強く、異分子が混ざり合うチャンスが少ないのが現状だ。そんな状況にもめげす、大企業の中でイノベーションを起こしてきた“プロデューサー”たちにインタビューし、その思考法や生き方などを学ぶ。 《リンク》
(東洋経済オンライン 「ビジネスプロデューサー列伝」-「富士フイルム、新ビジネス請負人の上司論」-「富士フイルムのプロデューサー、戸田雄三氏に聞く(上)」 2014/03/12)

 上の文章に、「(日本企業では)異分子が混ざり合うチャンスが少ない」と書かれています。その理由は、「縦割り構造」が強いことです。ということは、「異分子」とは「互いに異なる考え方をする人々」というような意味で使われていることになります。

 しかし辞書によると、「異分子」の意味は次のとおりです。

い‐ぶんし 【異分子】(デジタル大辞泉)
一団の中で周囲の多数のものと性質・種類などが異なっているもの。「党内の―を排除する」

 辞書の定義による「異分子」は、一団の中で少数派ですし、好ましくない傾向を持つ人という含みがあるようです。それに対して上の文章での異分子は、同じ社内とはいえ違う部署にあって、異なるカルチャーに染まっている人同士、ということであり、辞書の意味とは異なっています。

 次に、プログレッシブ和英中辞典で「異分子」を引いてみました。すると、次のとおり、辞書の定義とも上の文章での意味とも違う英語が当てられていました。

いぶんし 【異分子】(プログレッシブ和英中辞典)
 a foreign element; 〔人〕an outsider
異分子を排除する
 eliminate [exclude] alien elements
彼らは新来者を異分子扱いする
 They treat newcomers as outsiders.
 They discriminate against newcomers.

 これでは、「部外者」とか「外来者」という意味になってしまいますね。

 旺文社和英中辞典も引いてみたのですが、プログレッシブと同じような説明になっていました。どちらも明白な誤りだと思われます。

 

 まずはこうした事件が、どういう社会情勢のもとで起きたかを押さえたい。安全への脅威が、国内に充満した不満を背景としたものか、あるいは外部から侵入してきた異分子によるものか、その違いによって情報収集の勘所も異なってくるからだ。
(週刊エコノミスト 2013年2月12日号 p.90 「国際協力銀行の視点 脅威を察知するポイント」)
※ アルジェリアで起きたイスラム武装勢力による襲撃事件に関する記事です。

 この文での「異分子」は、和英辞典の説明する「異分子」に近いようです。


「辟易とする」(東洋経済オンライン)

2014-03-21 04:00:00 | 日本語・漢字

まずSTAP細胞発表時はリケジョの星と持ち上げ、疑惑が指摘されると、今度は批判のスパイラル報道で儲けるメディアを見ていると、ある時は韓流を押して儲け、次はその反動の嫌韓で儲け、という節操のない行動を繰り返す「事実・真実に関する審査能力のないメディア」に辟易とするわけだが、むしろメディアに信頼性の担保を求めるのがどだい不可能で、真実の番人はより厳正な審査機関に任せざるをえないのが実情だろう。 《リンク》
(東洋経済オンライン 「グローバルエリートの弟子は見た!」-「STAP騒動に見る、一流教育機関のあり方 悪いと思ってなかった、小保方さんの不正論文」 2013/03/18)

 上の文では「辟易とする」と書かれていますが、形容動詞ではなくてサ変動詞なのですから、正しくは「辟易する」ですね。

へき‐えき 【×辟易】(デジタル大辞泉)
[名](スル)《道をあけて場所をかえる意から》
1 ひどく迷惑して、うんざりすること。嫌気がさすこと。閉口すること。「彼のわがままには―する」「毎日同じ料理ばかりで―する」

 日本語コーパス「少納言」では、「辟易とする」の使用例が5件見つかりました(ブログ、知恵袋を除く)。そのうちの1つだけを次に掲げておきます。なお、単なる偶然でしょうが、5件のうち3件は文芸社という出版社の書籍でした。

駅前のバス乗り場にはすでに長蛇の列が出来ていて辟易とするが、気を取り直して列の後尾につく。
(鈴木 延勇(著) 「夫唱婦随・婦唱夫随の山登り」-「登山実践マニュアル 共白髪まで楽しむ」 文芸社 2001年)

 青空文庫でサイト内検索をしてみたところ、「辟易と」の使用例は、次の1件だけでした。

「どんな性格なのですか」
 柴崎の質問に美枝子は笑った。
「いまにいろいろとわかってくるわ。辟易とさせるのではないかしら」 《リンク》
(片岡義男 「物のかたちのバラッド」)


消耗、錯乱、心神喪失

2014-03-19 04:00:00 | 日本語・漢字

博士論文からの画像流用が明らかになった今月10日朝、竹市氏から論文の撤回を求められると、小保方さんは消耗した様子で「はい」とうなずき、現在は精神が不安定な状態に。竹市氏によると「申し訳ない」「反省している」と繰り返しているという。 《リンク》
(産経デジタルIZA 「小保方さん、ずさんな才女だった 幼少期から上昇志向、一方で周囲からは『不思議ちゃん』」 2014/03/16)

一体、小保方氏に何が起きているのか。4時間に及ぶ会見でも、小保方氏が錯乱状態になっていることが明かされた。 《リンク》
(東スポWeb 「疑惑の小保方氏『24時間監視下』に」 2014/03/16)

また、竹市氏が今月3日に小保方氏に論文の撤回を勧告した際には、「相当、心神喪失した状態で、何を言ってもうなずくくらい」だった。竹市氏が「撤回した方がいいと思う」と言葉を掛けると「はい」と返答したという。 《リンク》
(スポニチSponichi Annex 「小保方さん会見の意思も…『申し訳ない』繰り返し『心神喪失の状態』」)

 小保方晴子氏の様子についての記述を3つ集めました。「消耗」、「錯乱」、「心神喪失」という言葉が使われています。それぞれの意味を確認しておきます。

しょう‐もう 〔セウ‐〕 【消耗】(デジタル大辞泉)
2 体力や気力を使い果たすこと。「神経を―する作業」

さく‐らん 【錯乱】(デジタル大辞泉)
入り乱れて秩序がなくなること。ごちゃごちゃになること。特に、感情や思考が混乱すること。「考えが―する」「―状態」

しんしん‐そうしつ 〔‐サウシツ〕 【心神喪失】(デジタル大辞泉)
精神障害などによって自分の行為の結果について判断する能力を全く欠いている状態。心神耗弱より重い症状。刑法上は処罰されない。

  「消耗」、「錯乱」、「心神喪失」のうち、正しく使われているのは「消耗」だけです。

 「錯乱」は、3つ目の文に書かれていることと全く違う状況ですし、「心神喪失」は刑法の用語ですから、いずれも不適切です。 


「祝福されて泣き崩れる」

2014-03-17 04:00:00 | 日本語・漢字

23歳になる京大生は最初の夫との間にできた次男。
「京大医学部に入学したという話です。合格した時、堀は関西ローカルの番組に出演中で、出演者に祝福されて泣き崩れる場面もありました」(関係者)
(日刊ゲンダイGendai.Net)

 上の文は、以前、日刊ゲンダイGendai.Netに掲載されていた記事の一部のようで、いろいろなところに転載されています。「堀」とは堀ちえみさんのことです。

なき‐くず・れる 〔‐くづれる〕 【泣(き)崩れる】(デジタル大辞泉)
[動ラ下一][文]なきくづ・る[ラ下二]激しくとり乱して泣く。「その場に―・れる」

とり‐みだ・す 【取(り)乱す】(デジタル大辞泉)
2 心の落ち着きを失う。見苦しいようすをする。「人前で―・す」

 「祝福されて泣き崩れる」と書かれていますが、このような場合に「泣き崩れる」とは言えないようですね。


「艶然とほほ笑んでいます」(東洋経済オンライン)

2014-03-15 04:00:00 | 日本語・漢字

現在、多くのメディアで「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」のような企画を目にします。雑誌のインタビューでは、ビジネスパーソンとしても、妻としても、母としても完璧な美人起業家が、「幸運だっただけです」「周囲の協力に恵まれて」と艶然とほほ笑んでいます。 《リンク》
(東洋経済オンライン 「最新 職場の心理学 女と男の探り合い」-「『男より男な女』か『女より女な女』か? 女性政治家のサバイバル術」 2014/04/10)

えん‐ぜん 【×嫣然/艶然】(デジタル大辞泉)
[ト・タル][文][形動タリ]にっこりほほえむさま。美人が笑うさまについていう。
「四分の羞(はじ)六分の笑(えみ)を含みて、―として灯光(あかり)の中(うち)に立つ姿を」〈蘆花・不如帰〉

 上の文では「艶然とほほ笑んでいます」と書かれていますが、「艶然」という言葉にすでに「ほほえむ」という意味が含まれていますので、重言でしょう。辞書の例文のように「艶然としています」というべきです。

 日本語コーパス「少納言」で「艶然」の使用例を探したところ、上の文と同じように重言になっているものがいくつかありました。次の文はその一つです。

名前も本来マキと読むのだが、女の子たちからはマサキと呼ばれている。 と、ネコも艶然と微笑んで、 「ああ、俺もそお思てな、今日は死人も生き返って笑い死ぬぐらいの、とっときのネタ用意してきたんや。このギャグ聞いたら、聡美ちゃんも絶対元気に…」
(霧咲 遼樹(著) 「リバーゲーム」 集英社 1996年)

 「艶然」は「美人が笑うさま」を言い表す言葉ですが、この文では、「艶然と微笑ん」だ猫が男言葉を使っていて、この点でも誤っています。

 

※ 「婉然」は「しとやか」、「宛然」は「そっくりそのまま」という意味です。


「志気」と「士気」

2014-03-13 04:00:00 | 日本語・漢字

 ちなみに、この訓練は毎日10時間以上のヴィパッサナー修行を3カ月連続で行うというハードなものです。聞いただけでも志気が萎(な)えそうになりますが、より最近の研究では、20分の瞑想を5日間繰り返しただけでも、すでに脳活動に変化が認められるというデータが得られつつあります。
((扶桑社新書154 「脳には妙なクセがある」p.320 2013年12月1日発行 池谷裕二(著)))

 上の文で「志気」という言葉が使用されていますが、同音の「士気」という言葉もあります。それぞれの意味は似ているようですし、どちらかというと「士気」の方がよく使われると思います。そこで、「志気」と「士気」の意味の違いを確認してみました。

 

し‐き 【志気】(デジタル大辞泉)
物事をなそうとする意気込み。こころざし。「―盛んである」

し‐き 【士気】 (デジタル大辞泉)
兵士の、戦いに対する意気込み。また、人々が団結して物事を行うときの意気込み。「―を鼓舞する」「―が上がる」

 いずれも「意気込み」を表す語であるという点では共通していますが、「士気」は集団で物事を行うときに使われるようです。「志気」の方は、個人でも集団でもどちらでもよいのでしょう。

 そうすると、上の文では、「志気」は使用できても「士気」は使用できない状況と考えられます。

 


「集う」が他動詞として使われていました。

2014-03-11 04:00:00 | 日本語・漢字

 さて、フリードリチ博士らは、16歳から35歳までの女性18人を集(つど)って研究を行いました。
(扶桑社新書154 「脳には妙なクセがある」p.31 2013年12月1日発行 池谷裕二(著))

 上の文では「集う」が他動詞として使用されています。念のため辞書で調べたところ、古語では他動詞もあったのですが、現代語としてはやはり自動詞しかありませんでした。

つど・う 〔つどふ〕 【集う】(デジタル大辞泉)
[動ワ五(ハ四)]人々がある目的をもってある場所に集まる。「若人(わこうど)が全国から―・う」
  →集まる[用法]
[動ハ下二]集める。「事もなき手本多く―・へたりし中に」〈源・梅枝〉 

  個人的には、「集う」が他動詞として使われていると強い違和感を覚えます。

 日本語コーパス「少納言」で見つかった使用例は次の1つだけでした。

資本家から投資を集い、株価の上下に合わせて売買する凪子は常勝無敗の伝説を日々更新した。
(池上 永一(著) 「ニュータイプ」2005年5月号(第21巻第7号) 角川書店 2005年)

 Webでは「を集い」や「を集って」等をフレーズ検索してみると、使用例がかなり見つかるのですが、プロのライターによるものは見つかりませんでした。「を募って」と混交しているのではないかと思いました。

 さて、女性18人を集めて行った実験ですが、その内容は、女性に痩身のモデルの写真を見せると脳のどの部位が反応するか調べるというものです。結果は、「不安」に関与する部分だったとのことです。「劣等感」を感じるはずの場面で「不安」を感じたという実験結果から、「不安と劣等感は、じつは、共通した動物的な情動である」と推論しています。

 この実験結果にはそれほど関心を持ちませんでしたが、他に、「コーヒーの香り嗅ぐと人は親切になる」「ボクシングでは赤コーナーの選手の勝率が高い」などの興味深い実験結果・観察結果が数多く紹介されていました。

 資格試験に関連する事柄では、「脳によい/わるい、12の栄養素・最新リスト」という項目がありました(pp.215-220)。しかし、残念ながら、若年層の男女に対して効果が実証されているものはありませんでした。ただし、「鉄」は若い女性の認知機能を改善するとのことです。

 また、資格試験に重要な「記憶」について、「睡眠の効果を最大限に利用するためには、起床後の朝ではなく、睡眠直前の夜に修得した方がよい」(p.292)との記述がありました。

《Amazonの同書のページへのリンク》


「融通無碍」(朝日新聞)

2014-03-09 04:00:00 | 日本語・漢字

 出世のためには自分もなくして組織に尽くす。その一念で上司に仕え、融通無碍(ゆうずうむげ)に行動する西川公也を、周囲はちょっと古い「昭和のサラリーマン」に重ねる。落ち目の農林族議員の中で今、生き残りをかけて動き続ける。
(2014/03/06 朝日新聞 「政々流転」-「西川公也・自民党TPP対策委員長(71)」)

 上の文で「融通無碍」という言葉は、まったく文脈にあっていませんね。

ゆうずう‐むげ 〔ユウヅウ‐〕 【融通無×碍】(デジタル大辞泉)
[名・形動]考え方や行動にとらわれるところがなく、自由であること。また、そのさま。「―な(の)考え」「―に対処する」


2014年2月に憶えた言葉

2014-03-04 04:00:00 | 日本語・漢字

1日 【好発】病気などが発生しやすいこと。「好発年齢」。

2日 【2プラス2】外務・防衛担当閣僚級協議。「日本にとって2プラス2開催は米国、オーストラリアに続く3カ国目。米国とは同盟関係にある。オーストラリアとは2007年に安保分野の共同宣言を発表し、日米豪を含む共同訓練も重ねてきた。領空侵犯や領土問題を抱えるロシアとの枠組みは異例だ。」(日経Web刊2013/11/3 0:54)

3日 【鄙(ひな)】田舎。「鄙にはまれなしゃれた店」

4日 【杜漏(ずろう)】手抜かりが多いこと。

5日 【国家戦略特区】「国家戦略特区は、“世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくる”ことを目指し、我が国経済に特に大きな効果があると認められる、地域の先導的な取組に対し、国が主体的にコミットをして、総理主導の下、 大胆な規制改革等を実現するための突破口となるものとする。」(国家戦略特区ワーキンググループ・第2回・配布資料)

6日 【ジョブ型正社員】職務や勤務場所を限定して雇用契約をする正社員。従来型の正社員は「メンバーシップ型正社員」。

7日 【プラント】工場設備。生産設備一式。
【テーパリング】米連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和(QE)のために毎月購入している国債の額を漸減させること。2013年5月から。

8日 【浩瀚(こうかん)】広大なさま。特に、書物などの量の多いさま。また、書物が大部であるさま。

9日 【BOPビジネス】おもにアフリカやアジアなど途上国の年収3000ドル以下の低所得層を対象に展開するビジネス。BOPは「ベース・オブ・ピラミッド」の略で、全世界の人口の7割が属するとされる。
【横ぐし】
縦割りの各組織内の互いに関連のある部署を連携させること。また、そのためのプログラム。「縦割りの施策に―を通す」 

10日 【(あやま)ちて改めざる是(これ)を過ちという過ちはだれでも犯すが、本当の過ちは、過ちと知っていながら悔い改めないことである。

11日 【全国農業会議所】農業・農業者の代表的な公的機関である農業委員会系統組織の全国組織。根拠法は、「農業委員会等に関する法律」。

12日 【旨とする】主として重んじる。

13日 【胸(むね)に迫・る】ある思いが強く押し寄せる。感動する。「万感(ばんかん)―・る」
【フリクション】書いた字を消せるパイロット社のボールペン。

14日 【接(ぎ)穂/継(ぎ)穂(つぎほ)】いったんとぎれた話を続けようとするときのきっかけ。つぎは。「話の―を失う」

15日 【不日(ふじつ)】日数をあまりへないこと。
【ナルセペダル】アクセルとブレーキが一体化したペダル。踏むとブレーキ、右側面のレバーを横に押すと加速するという、“踏み間違え”が起きない安全ペダル。熊本県玉名市のナルセ機材が取り扱う。約13万円。

16日 【腹を固める】覚悟を決める。
【瀑(ばく)】

19日 【権威筋(けんいすじ)】ある分野や事柄に精通している人や機関。

20日 【スーパー堤防】地域全体を盛り土して地盤を上げる。
【フラジャイル5】ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカ、トルコ。

22日 【尻目にかける】問題にしない。

25日 【病膏肓(やまいこうこう)に入る】不治の病気にかかる。ある物事に極端に熱中して、手のつけられないほどになる。
【ダニング=クルーガー効果】能力の低い人ほど自分のスキルを過大評価するという現象。※週刊エコノミスト2014年3月4日号p.3


「己を捨てる」

2014-03-02 04:00:00 | 日本語・漢字

以来、梅澤氏は毎日毎日、男女が洗髪する様子を観察。そしてついに、
・女性は髪を、男性は頭を洗っている
ということを発見。
 さらに男性のニーズに注目してリサーチを重ね、洗髪の理由は「スカッとしたい」ためだという真の目的を突き止め、メントールをシャンプーに入れることを考えついたとのこと。
 そうして出来上がったのがサンスタートニックシャンプーで、発売以来40年のロングセラー商品となりました。
 梅澤氏は己を捨て「観察」に集中したことで、男性の洗髪行為の本質「スカッとしたい」を見抜いたのです。 《リンク》
(日本経営合理化協会・経営コラム 「先達の英知に学ぶ 社長のための兵法経営」-「第96回 『小を見るを明と曰い、柔を守るを強と曰う』」 2014/02/25)

 上の文章で使われている「己を捨てる」という言葉は、デジタル大辞泉、日本国語大辞典第二版、大辞林第三版、岩波国語辞典第五版には載っていませんでしたが、JMdictという和英辞典では「to set aside one's interests」と訳されていました(リンク)。「自分の利益を無視する」ということですね。

 しかし上の文章では、JMdictとは違って、「先入観を持たない」というような意味で使われているようです。

 日本語コーパス「少納言」で見つけた使用例を見てみましょう。

【例1】
「イスラーム」の語源は、アラビア語の動詞の語幹s・l・m(「帰依する」の意)で、内容的には「アッラーに絶対的に服従する」という姿勢を意味する。「ムスリム」(muslim)は、そういう姿勢で信じ生きる者であり、己を捨てて服従する者を意味する。女性形は「ムスリマ」である。

(高尾 利数(著) 「こころをよむ2003年1-3月号」 日本放送出版協会 2003年)

【例2】
さらに、人事の結果は本人のみならず、その家族にも大きな影響を与えることを考えると、極論すれば、人事評価は、本来、人のするべきことではないとさえ思われます。実に、それほど大それたことをしている。

 したがって人事権者は、まずもってその自覚が必要であり、常にそうした心がまえで、己を捨ててコトに当たらなければなりません。
(堀田 力(著) 「堀田力の『おごるな上司!』」-「人事と組織の管理学」 日本経済新聞社 1994年)

 【例1】では、JMdictと同じく「自分の利益を捨てる」という意味で使われているようです。【例2】では、今一つはっきりしないのですが、「先入観を持たない」に近く、「自分の好き嫌いを反映させない」というような意味で使っているように思われます。


「社内で物議を醸しました」

2014-02-28 04:00:00 | 日本語・漢字

――『ことりっぷ』は正方形のような小型サイズが特徴的です。旅行ガイドとしては、この判型自体、珍しかったのではないですか? 今はいくつかのシリーズを見掛けるようになりましたが。
ええ。企画段階では、「なぜ定番のサイズから変える必要があるのか」と、けっこう社内で物議を醸しました。ただ、女性にアンケートを採ると、従来の旅行ガイドに対する不満がたくさん出てくるのです。 
《リンク》
(東洋経済オンライン 「爆発人気『ことりっぷ』が変える女子旅の常識 業界の常識は、女子の”非常識”!」 2014/02/20)

物議(ぶつぎ)を醸(かも)・す(デジタル大辞泉)
世間の論議を引き起こす。「大臣の発言が―・す」

 「物議を醸す」とは、辞書によると「世間の論議を引き起こす」ことです。「社内で」議論を引き起こしたくらいのことでは、「物議を醸す」とは言えないでしょう。

 日本語コーパス「少納言」でも、狭い範囲で議論を引き起こす場合に「物議を醸す」を使っていると思われる例が見つかりました。

6 平凡なことに反発する 「普通だ」とか「まともだ」と言われることは屈辱的です。物議を醸し出すような原因をわざわざつくる人もいます。
(スーザン・デリンジャー(著)/ 西本 志津子(訳) 「サイコ・ジオメトリック人間学」-「5つの図形で□い仲も〇くなる」 主婦と生活社 2003年)

 しかし、ほとんどすべての使用例では、世間の論議を引き起こす場合のことが書かれていました。


「馬の念仏」(東洋経済オンライン)

2014-02-26 04:00:00 | 日本語・漢字

多くの日本企業は「イノベーション、イノベーション」と馬の念仏のように唱えながら、そのカギを握る“編集的な人材”を蔑ろにしてきたのです。 《リンク》
(東洋経済オンライン 「ネット化で『編集者』の黄金時代がやってくる 『編集者』のニーズがこれから激増する理由」 2014/02/22)

 上記の文に「馬の念仏」という言葉が使われています。馬が念仏を唱えるはずはないのに、と思いつつ辞書を引きましたが、やはりそのような言葉は載っていません。「馬の耳に念仏」とも関係ないようです。

 上記記事の真意は「空念仏」なのでしょう。つまり、次のように言い換えればよいと思います。

多くの日本企業は「イノベーション、イノベーション」と念仏を唱えながら、そのカギを握る“編集的な人材”を蔑ろにしてきたのです。

から‐ねんぶつ 【空念仏】 (デジタル大辞泉)
2 実行の伴わない口先だけの主張や宣伝。「彼の約束はいつも―に終わる」


「散見される」(今日の日本語検定)

2014-02-23 04:00:00 | 日本語・漢字

【当てはまる熟語は?】見たところ、君のレポートには間違いが( )されます。
A.散発 B.散見 C.散乱
(今日の日本語検定 2014/02/22)

 時事通信社のニュースサイト「時事ドットコム」に「今日の日本語検定」という日替わりの問題が載っています。たまたま見かけたのが上記の問題です。

 正解はもちろんBの「散見」です。

 それはともかく、日本語検定なのですから、「散見されます」ではなくて「散見します」としてほしいところですね。

 大辞林のように「散見される」という使い方を例文として載せている辞書もありますが、「散見する」が今でも多数派です。

《参考》大修館・漢字Q&A(その3)Q0110


「対処療法」(Chikirinの日記)

2014-02-22 04:00:00 | 日本語・漢字

医療行為の多くは対処療法(原因を治しているのではなく、症状を緩和させることが目的)だし、胃にガンができた時に外科手術で胃を摘出するのは、「胃がんが治った」のではく「治せないから切り取った」だけです。 《リンク》
(Chikirinの日記 「すれ違う前提 (医療編)」 2009/06/03

 5年近く前に書かれたものですが、2014/02/17のエントリーにリンクがつけられていましたので、読んでみました。

 「対処療法」ではなくて「対症療法」ですね。発音がよく似ているので、つい間違えて覚えてしまうのでしょう。対義語は「原因療法」だそうです。

 さて、日本語コーパス「少納言」で「対処療法」を検索してみると、7例が見つかりました(ブログと知恵袋を除く)。中には医療関係の専門書もありました。

●過活動型せん妄に対しては対処療法的に高力価の抗精神病薬を少量使用する。
(中川 康司(著) 「精神科研修ハンドブック」 海馬書房 2005年)

 JapanKnowledgeのコンテンツでも「対処療法」が見つかりました。

標識等の整備は運転手の注意義務を増やすことによって事故防止を図ろうとするもので、対処療法の域を脱していない。
(日本大百科全書(ニッポニカ) 「自動車事故」の項)

現在、日本には潜在者も含めて推定200万人以上の患者がいるとみられる。治療は対処療法が中心。
(情報・知識 imidas 「慢性疲労症候群」の項)


「権威筋」(天声人語)

2014-02-20 04:00:00 | 日本語・漢字

絵画についてだが、作家の開高健が「感動のきっかけは最初の一瞥(いちべつ)にある」と書いていた。そこで自分をとらえてくれなかったものは凡作であると。知識や権威筋によらず自分の感性に頼り切るあたり、この人らしく潔い。賞の意味など、どこかに消える。
(2014/02/19 朝日新聞 天声人語)

 「総理大臣賞」などの権威に対する弱さを扱ったコラムの最後の方からの引用です。ここで「権威筋」という言葉が使われていますが、辞書にによると、その意味は次のとおりです。

けんい‐すじ 〔ケンヰすぢ〕 【権威筋】(デジタル大辞泉)
ある分野や事柄に精通している人や機関。報道などで、情報源を公表しないとき、情報の信頼度が高いことを示すのに用いる。

 上の文中で「権威筋」という言葉がどのような意味で使われているのか、今一つはっきりしません。「総理大臣賞のような権威を感じさせるもの」なのかもしれませんし、辞書に書かれているとおり、「ある分野や事柄に精通している人や機関」なのかもしれません。どうも前者のような気もしますが、はっきりしません。

 さて、この「権威筋」という言葉の使用状況を日本語コーパス「少納言」で調べてみました。すると、恐らく「権力者」の意味で使用しているであろうと思われるものが見つかりました。幾つか挙げておきます。辞書のとおりの意味とはっきりわかるものは、見当たらないようでした。

金持ちであるというだけでは十分ではない。事実、最大の金持ちが往々にして権威筋の一員ではなかった。家柄というわけでもなかった。
(P・F・ドラッカー(著)/ 上田 惇生(訳) 「『新訳』産業人の未来」-「改革の原理としての保守主義」 ダイヤモンド社 1998年)

そのため、卑猥な言動をとくに恐れていた教会の権威筋は、そうした集いにかなり警戒の目をむけるようになった。
(ジャン・ヴェルドン(著)/ 吉田 春美(訳) 「図説夜の中世史」 原書房 1995年)

「ユダヤ人」と彼が指摘するとき、意味するのは、日常生活のルールだけでも七百余を、人工的に付加した上での旧き律法遵守「のみ」が、神に嘉される生き方と、前以てきめてかかり、その生き方を守る自分たち「のみ」が、神のほんとうの民であると公言し、彼らが父祖とも教師とも呼ぶアブラハムやモイゼがとうに予見し、時代を下っては、イザヤやエレミア等々の預言者が次第に声高く告げた「国籍・国境なきよろこびのメッセージ」「神の心は慈愛と公正」等々をいまこそたずさえて来た、旧き教えの完成者キリストのことばを、拒みつづけた「頑なな人々」。すなわち神殿の権威筋や政界のリーダーたち。
(犬養 道子(著) 「天と地とのシンフォニイ」 新潮社 1993年)
※ 嘉(よみ)する:よしとしてほめたたえる。(デジタル大辞泉)