一意専心の資格マニアの記録

いくつか資格を取得するうち、楽しさを覚えるようになりました。主にビジネス系です。

荷が勝ちすぎた

2014-08-25 04:00:00 | 日本語・漢字

 たとえば、真夜中のオフィスで、明日の朝までにこなさなければならない絶望的に莫大な量の仕事と向き合ったとき。
「こんな量をひとりでこなすのは絶対に無理だ、徹夜しても終わらない」
 そういって、私には荷が勝ちすぎたと絶望し、誰もいないオフィスで、孤独感と絶望感に押しつぶされそうになります。
(山口真由(著) 「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。」p.186 扶桑社 2014年1月20日発行) 

に が 勝(か)つ(日本国語大辞典第二版)
荷物が重すぎる。また、責任や負担が過重である。
*滑稽本・浮世風呂〔1809~13〕四・中「けふはべらぼうに荷(ニ)が勝(カッ)たから重くってならねへ」
*人情本・春色玉襷〔1856~57頃〕二・一一回「随ぶん荷(ニ)も勝ってお出だが」
*初孫〔1900〕〈国木田独歩〉「益々肥太りて最早祖父様のお手には荷が少々勝(カ)ち過ぎるやうに相成り候」


 「荷が勝つ」の意味が既に「責任や負担が重すぎる」という意味であれば、これに更に「すぎた」を重ねて「荷が勝ちすぎた」ということはできないように思われます。しかし、辞書の例文には、「荷が勝ち過ぎる」を含む例文が載せられていますので、誤りではないのでしょう。



いやがおうにも

2014-08-24 04:00:00 | 日本語・漢字

 第二章で、努力をするには「できない」と思う機会を作り出すことが効果的だと指摘しました。これにも通じることですが、朝は出社時間が迫っており、いやがおうにもタイムリミットが設けられています。夜と違って、長く時間をとることもできません。
(山口真由(著) 「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。」p.154 扶桑社 2014年1月20日発行) 

 ×「いやがおうにも」 ⇒ ○「いやがおうでも」


(いや)が応でも(デジタル大辞泉)
「否でも応でも」に同じ。「―目標を達成しなければならぬ」
 
(いや)でも応でも(デジタル大辞泉)
承知でも不承知でも。どうしても。なにがなんでも。否が応でも。「―引き受けてもらう」「―今日いっぱいで締め切りだ」

いやでもおうでも 【▲否でも応でも】(プログレッシブ和英中辞典)
否でも応でも君はすぐそこへ行かねばならない
You have no choice but to go there at once.
You must go there at once whether you like it or not.

ためつすがめつ

2014-08-23 20:00:00 | 日本語・漢字

方法12 基本書のネット注文はNG
司法試験ともなると、予備校の参考書といっても、とてもたくさんの数があります。次は、そこからどれを選ぶかです。
(中略)
そうやって、ためつすがめつしたうえで、それらを満たした1冊を、自分の基本書と決めましょう。
(山口真由(著) 「天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。」p.75 扶桑社 2014年1月20日発行)

(た)めつ眇(すが)めつ(デジタル大辞泉)
あるものを、いろいろの方面からよく見るようす。「作品を―眺める」

 「ためつすがめつ」とは、辞書に書かれているとおり、「あるものを、いろいろの方面からよく見るようす。」ですが、上の文では、逆に「いろいろなものを比較検討する」という意味で使用されているようです。


た・める 【矯める/×揉める/×撓める】(デジタル大辞泉)
[動マ下一][文]た・む[マ下二]
 片目を閉じてねらう。ねらいをつける。また、じっと見る。
「何やら、もの思わしげな清葉の容子(ようす)を、最(も)う一度―・めて視て」〈鏡花・日本橋〉「テッポウヲ―・ムル」〈日葡〉

すが・める 【×眇める】(デジタル大辞泉)
[動マ下一][文]すが・む[マ下二]片目を細くする。片目を細くして見る。「目を―・めてねらいをつける」「ためつ―・めつ」 

「鉛筆をなめる」(首相周辺)

2014-08-17 04:00:00 | 日本語・漢字

 15日夜から再び山梨県内の別荘で約1週間の休みに入った安倍晋三首相。手に取ったのは推理小説「満願」(米澤穂信著)や歴史小説「異国合戦」(岩井三四二著)などだ。9月上旬に第2次安倍政権で初の内閣改造が控える。首相周辺は「休んでほしいが、全議員のデータが載った『国会便覧』を眺めて鉛筆をなめるんだろう」と語る。
(日本経済新聞 2014/08/16 記者手帳「夏休みのお供」)

 「鉛筆をなめる」とは、「数字を操作する」という意味だと思っていましたが、上の文章では「熟慮しながら書く」という意味で使われているようです。

 まず辞書を引いてみたのですが、「鉛筆をなめる」という慣用句は見出しになっていませんでした。

 次にJapanKnowledgeで全文検索してみたところ、次の3つの例文が見つかりました。

*蟹工船〔1929〕〈小林多喜二〉三「鉛筆をなめり、なめり書いた手紙が出た」 ※日本国語大辞典第二版「なめる」の項

*三月変〔1929〕〈岡田三郎〉「ちょっと鉛筆をなめって思案しながら」 ※同上

*自由と規律〔1949〕〈池田潔〉その生活・一「鉛筆をなめながら文案を練っている丸くかがんだ少年の肩が」 ※日本国語大辞典第二版「文案」の項

 いずれも「首相周辺」が述べたのと同じで、「熟慮しながら書く様子」を表しているようです。

 また、Webで調べてみると、次のとおり、「数字を操作する」という意味でも確かに使われていました。

 空港の整備は路線の開設が前提になる。かつて路線の参入・撤退は、運輸省の認可制の下でコントロールされた。羽田―札幌など主要都市を結ぶ〝ドル箱路線〟への就航を航空会社に認める場合は、併せて採算性の低い地方路線にも就航させた。少々「鉛筆をなめて」も空港が成り立つ時代だった。 《リンク》
(高知新聞 「空の隙間」-「ボンバル機事故からの探求」-「第5部 競争と安全は両立できるか」-「(60)鉛筆なめた官製業者」) 


「平仄を合わせる」(リース会計基準)

2014-08-16 20:00:00 | 日本語・漢字

29. (中略)また、改正前会計基準は、リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類する点や、借手がリース資産を固定資産として計上する点など、国際会計基準及び米国会計基準と平仄を合わせるものであった。 《リンク》
(『企業会計基準第13号 リース取引に関する会計基準』 改正平成19年3月30日 企業会計基準委員会)

34. また、当委員会では国際会計基準審議会との間で行っている会計基準のコンバージェンスに向けた共同プロジェクトにおいて、リース会計を短期的な検討項目として位置付けており、この基準の改正が行われることにより、現状の国際会計基準第 17 号「リース」と平仄が合い、国際的な会計基準間のコンバージェンスに寄与することとなる。
(同上) 

「平仄」の項の慣用句としては、「平仄が合わない」は辞書に載っていますが、「平仄が合う」は載っていません(下記)。どちらも使われるのであれば、肯定形の方が載せられるのではないかと思うのですが、否定形のみが載っているということは、肯定形はあまり使われないということでしょうか。

平仄(ひょうそく)が合わない(デジタル大辞泉)
漢詩を作るときに守るべき平声字と仄声字の配列が合わない。転じて、物事の筋道がたたない。「―ない話」