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震災/原発対策に戦略がない、では戦略とは?

2011年05月30日 | 日記
 マスコミ報道から知らされる東日本大震災復興、福島原発事故対策に対する政府・与野党・東電の考え方や行動には、誠に残念ながら「戦略」のカケラも見られない。

 彼らの考え方や打つ手は思いつきの感が強く、後手後手に回り、果たして全体像を把握し、先を読んでいるのかと疑いたくなる。事実、その疑問が随所に形になって現れている。例えば、関係部門間の連携・意思統一が不十分で、それが日を追う毎に暴露される。広報部門の発表に整合性が見られない。対策のための組織が乱立し、互いの連携が取れているように見えない。原発事故収束へ向けた工程表も(見直し分も含め)、東電や政府が希望する作業を単に並べたメニューに過ぎない……など。

 現に、読売新聞が5/13、14に実施した電話全国世論調査によると、被災地救援・復興支援をめぐる政府の対応を「評価しない」と答えた人は59%(前回4月調査で44%)、原発事故を巡る対応では「評価しない」が73%(前回61%)にも達している(読売新聞5/16)。

 政党も、与野党ともに復興・事故対策そのものよりも、党利党略優先の足の引っ張り合い、しかも最も気を配るのは目先の世論に対してだ。実に情けない。

 彼ら関係者は事態の本質を理解しているのか、彼らには戦略が見えない。解決へのストーリーがない。企業経営に例えるなら、震災復興・原発事故対策といういわば事業戦略だ。

 マスコミにも、戦略が見られない。いつまでも過去に起きた事実のお涙頂戴的報道に終始し、例えば震災復興・原発対策の問題点は何か、先々の復興対策の青写真をどう描くか、今後のエネルギー対策へどう取り組むかなど、国民に対する問題提起、啓蒙、解決策提案など、訴えるべきことが山ほどあるのに、マスコミとしての使命のストーリーが全くない。

 震災について語るとすれば、本件はマスコミ報道でしか知りえないことなので正鵠(せいこく)を欠くおそれがあり、従って企業経営を例に挙げて戦略の議論をしたい。

●共通する優位な定義

 「戦略」については、対象となるテーマ、時代背景、主観的状況などで、必ずしも一律に定義できないところがある。しかし有意な定義の根底には、共通するものが流れている。

 次に挙げる2例の主張についても、根底には共通するものが見えている。

 一例として、「戦略」について大前研一は、その著「企業参謀」(プレジデント社)で次のように定義する。「一見混然一体となっていたり、常識というパッケージに包まれていたりする事象を分析し、ものの本質に基づいてバラバラにしたうえでそれぞれのもつ意味あいを自分にとって最も有利となるように組み立てたうえで、攻勢に転じるやり方である。個々の要素の特質をよく理解したうえで、今度はもう一度人間の頭の極限を使って組み立てていく思考方法である。世の中の事象は、必ずしも線型ではないから、要素をつなぎ合わせていくときに最も頼りになるのは(システムアナリシスなどの方法論ではなく)、この世に存在する最も非線型的思考道具である人間の頭脳であるはずである。」

 もう1つの例として、非常に興味深い「戦略」の定義がある。楠木建 一橋大学大学院教授はその著「ストーリーとしての競争戦略」(東洋経済新報社)で、次のように定義する。「優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ」。「“違いを作って、つなげる”、一言でいうとこれが戦略の本質です。この定義の前半部分は、競合他社との違いを意味しています。

 競争の中で業界水準以上の利益を上げることができるとしたら、それは競争他社との何らかの“違い”があるからです。」「もう一つの本質」は「“つながり”ということです。」「つながりとは、二つ以上の構成要素の間の因果論理を意味しています。因果論理とは、XとYをもたらす(可能にする、促進する、強化する)理由を説明するものです。個別の違いをバラバラに打ち出すだけでは戦略になりません。それらがつながり、組み合わさり、相互に作用」(シンセシス)する中で、長期利益が実現される、とする。

 ストーリーがないものは、戦略と言えない。日頃「戦略」として誤解されている主な典型例を、楠木教授の主張に従って示そう。これによって、「戦略」を理解する助けになる。

 (1)「アクションリスト」:情報量の多さ・分析の密度・正確さと、「戦略」とは別物。構成要素が全体としてどのように動き、その結果何が起こるのか、ストーリーのつながりと流れがさっぱり分からないのが、「アクションリスト」だ。

 (2)「法則」:一部の、特にアカデミックな戦略論は、法則性の定立を目指す。大量観察を通じてそのシステムの挙動に規則性を見出し、そこから法則を導き出そうとする。しかし、規則性はあくまで平均的傾向を示すもので、他社との違いを問題にする戦略と相容れない。

 (3)「テンプレート」:因果論理のメカニズムを解明するよりも、実務家がすぐ食いつくようなツールの開発に主眼を置く。戦略をその企業の文脈から無理に引き離し、テンプレートのマス目を埋めていくというアナリシスに変容し、ストリートしての動きを失う。

 (4)「ベストプラクティス」:成功事例の最も目立つ部分に注目し、そこから教訓を引き出そうとするので、「違いを作る」/「シンセシス」という戦略の2つの本質に逆行する。

 優れた「戦略」では、戦略を構成する要素がかみあって、全体としてゴールに向かって動いていくイメージが、「動画」のように見えてくる。全体の動きと流れが生き生きと浮かび上がってくる。これが「ストーリーがある」というのだと、楠木建教授の主張だ。

●悲劇は誤解から起こる

 「戦略」を誤解したための、経営の悲劇の例を示そう。

 「戦略とは、重点主義だ」と喝破した、中堅事務機器メーカーA社のトップがいた。ある時期、A社主力製品の小型記憶装置が市場占有率も高かったが、トップは価格競争の激化を予想して「安く作る」ことに重点を置いた。極限まで原価を絞ったが、低価格競争に追いつけず、海外生産に切り替えた。しかし、やがて国内空洞化、恒常的赤字に転落した。そこには、他社との違いも、シンセシスも、従ってストーリーもなく、どこかで耳にした海外生産というベストプラクティスを頼りに、A社は価格競争の泥沼を突き進んで、自滅した。

 「戦略とは、先を読み、歯抜けを防ぐこと」と信じた東証2部上場のSI企業B社のトップは、懐刀の取締役経理部長と共に、2年後に1部上場を目指す計画を作った。B社主力事業の市場拡大とシェア向上を期待して業容拡大を目指し、そこに到るための実施事項を詳細に計画した。しかし実際は、それは単なる目標値を設定したアクションリストでしかなかった。

 競合他社との違いもなく、計画の構成要素は互いに独立して静止画の如き様相を呈し、ストーリーが見えなかった。当然市場もシェアも拡大することなく、事業規模は横這い、むしろ縮小傾向だった。B社トップは、方針を変更した。企業規模は小さくても高業績が期待できる優秀企業を目指すことに切り替えた。しかし往々にしてあることで、企業体質が軽くなるよりも、事業規模縮小の方が早く進み、企業業績は急速に悪化していった。

 成功した、戦略の例である。中堅のシステム機器メーカーC社の開発部隊は、情報端末機器を開発した。しかし情報機器専門メーカーに出遅れた上に、ハード・ソフト面で先行メーカーとの違いを出すことはなかなかできなかった。そこでC社は、大手事務機器メーカーD社に当該製品のOEM供給計画を持ち込んだ。C社の戦略は、事務機器メーカーや販売店がOAに指向している点に注目して、事務機器販売で圧倒的優位を誇るD社を利用し、売り方(販売ルート)で競合他社の優位に立つこと。

 市場にD社情報端末機器が普及するに従ってC社からのOEMであることが認知されて浸透し、やがてC社品質の信頼を得て、C社ブランドの情報端末機器に有利に働くこと。D社はかねてから営業が強いという評判だったので、D社内における営業と設計との関係や営業プロフィットセンターのあり方などのノウハウを吸収し、営業が弱いC社の強化に役立てること。さらにC社内で旧来製品として将来性が期待できず従業員の士気も上がらなかった健康機器の生産ラインに新規の情報端末機器を流し、従業員の士気を高めること、などという戦略ストーリーを描いた。そして結局、C社は情報端末機器事業を成功させた。

 さて、そろそろ「戦略」の理解と実行のためのまとめに入りたい。

 まず私たちが認識しなければならない第1のことは、日頃「戦略」と思っていた「アクションリスト」「テンプレート」「ベストプラクティス」などは、戦略ではないということだ。

 次に、ストーリーが重要ですべてだからといって、データも現状分析も不要というわけではない。楠木教授も指摘するように、「ストーリーをつくる前に、下ごしらえというか、基本的な材料は一通り揃えなければなりません。」現状分析をして、我々の立ち位置、到達すべき地点、あるべき姿、競争環境、市場環境、利用可能な経営資源とその制約条件などがあってこそ、優れたストーリーを作ることができる。「下ごしらえ」の軽視は禁物だ。

 さらに最も重要なことは、ストーリーを作ることはトップや経営者の仕事そのものだということだ。企画部門でも戦略部門でもない。彼らが、データや現状分析を取り揃えたり、ストーリーのアイディアやヒントを提案したりすることはありえるが、ストーリーを考え、作成するのは、トップや経営者自身だ。そこが、トップ(経営者)のトップたる所以だ。

 なお、楠木建教授の「後知恵」ならぬ「前知恵」の提案を見たいものだ。焦眉の震災・原発対策問題は、格好のテーマになるはずだが……。【増岡直二郎】 

(ITmedia エグゼクティブ)

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