浦和インターから高速道路で行けば、奥日光は近い。 山、川、湖、滝、湿原、そして温泉と、バラエティーに富んでいる。 そう、「世界遺産」もありましたね。
しかし私は人が作ったものより、自然が造ったものの方に感動するようです。
霧氷のシラカンバ 湯元温泉のペンションで、朝食を取っていたら、オーナーの写真仲間からオーナーに電話が入った。「戦場ヶ原が霧氷できれいだ」という。 オーナーは、私たち客へのサービスを放り出して、さっさと写真撮影に出かけてしまった。
私たちも行く予定をしていたので、早めに食事をすませ、出発だ。 何しろ、シーズンに3・4回しか見られないとのこと。
急いで車で向かう、道路わきの木々が霧氷になっていて、キラキラ、光っている。 日が昇るにつれて霧氷がパラパラと落ちて、消えてしまうのだ。 葉を落とした唐松林を背景に、シラカンバが枝先まで白く浮かびあがっていた。
オオアカゲラ 冬の戦場ヶ原は人の気配がまったくない、音のない世界だ。
しかし、耳を澄ませば、野鳥たちの日常生活の音が聞こえてくる。
コツッコツ コツコツコツ、音のする方に双眼鏡を向け、ピントを合わせると、そこに赤と黒の伊達な姿の、オオアカゲラがいた。
ウソ 散策道を歩いていたら、急に頭上がにぎやかになった。
わずかに残ったズミの実を、ウソたちが食べに来たのだ。
もう少しで春が来ることを、彼らは解っているのだろうか。
散策道の休憩所 スノーシューを借りて、雪の戦場ヶ原を歩こうと、この時期わずかに営業している三本松の茶屋に行った。客は一人もいない、ヒマそうだ。レンタル料は意外と高い、使うのは午後の3時間程度なので、試しに半額に値切ってみた。交渉成立、言ってみるもんだ。 散策道に入る、もく道はすっかり雪に覆われていて、踏み外す心配はない。快調に歩きながら、景色や野鳥たちを楽しむ。休憩所に着く。積もっていた雪も解けてきて、テーブルが見えている。
温かいポットのお茶を呑みながら休憩。ほんとうに気持ちがいい。
ヒガラ こんな雪の原にも、飛んでいる虫がいるようだ。 小さなブヨのように雪の上を、ランダムに飛んでいる。
それをヒガラがチョンチョンと、飛び跳ねるように追いかけていた。
彼らは必死なのだろうが、実にかわいらしい。
雪原と男体山 4月ともなればそんなには寒くない。
だれでもハイキングできそうだが、ハイカーは数人に出会っただけだ。こんな美しい風景を見にこないなんて、もったいない。
雪の戦場ヶ原 4月上旬、まだ雪の風景だ、風が吹くと雪煙があがる。
充分雪景色を味わって、茶屋に戻った。
スノーシューを返す、温かい甘酒を注文、両手を暖めながら呑む。
これで、さっき値切った分の少しを返した。
ウグイス 5月も下旬になって、ようやく木々の芽吹きが始まった。 さまざまな落葉樹たちが、森全体に「春が来たぞー」と思い思いに動き出す。
キビタキ 夏鳥たちがいっせいにやってきて、我先にと縄ばり宣言を始める。 あちこちで、綺麗なさえずりが聞こえるシーズンになった。
ズミのつぼみ 6月上旬本格的な春になった。戦場ヶ原のあちこちでズミの花が咲き出す。
ズミの花 植物分類では、バラ科でリンゴに近いそうだ。
ミヤマカタバミ もく道の足元や森の小道に、いろんな花が、ひっそりと咲いている。
ハクサンフウロ もちろん、おしゃべり中心に歩いている人には見えません。
ノビタキ 戦場ヶ原のビューポイントに座って、ポットのお茶を飲んで休んでいると、よくノビタキが近くにやって来る。戦場ヶ原では一番多く見られる野鳥だ。 

アオジ ズミの樹上で、いつも高らかにさえずっている。カッコウと共に奏でるアンサンブルは、高原にいる気分をさらに高めてくれる。
ワタスゲと男体山 6月の下旬、白い穂が一面に広がる。これも年によって当たり外れがある。何年か通わないと“絶景”は見られないかも・・。

シカ 野生の大型動物を日本で見ることは難しいが、シカだけは戦場ヶ原でよく見られた。 最近は植物の被害が多きいため、ここのシカは駆除されてしまったので、見ることはできないかもしれない。
ノビタキ親子 7月下旬になると、幼い鳥たちもだいぶ成長して、親に餌をねだる風景に出会うことがある。人と変らない親子のやり取りが、ほほえましい。
夏休みシーズンになると高原もさほど涼しくない、先生に引率された子供たちの団体や、おばさんたちのグループも多い、同じようにワイワイ、ガヤガヤ、騒がしい。子供たちを、たまにまともな先生が「こういう場所では少し静かにして、自然を楽しみましょうね。」と指導する。ついでに、おばさんたちも指導してほしいものだ。
ホザキシモツケ 戦場ヶ原では普通に見られる。あとは霧ヶ峰くらいだそうだ。下野(しもつけ)と言う名前のとおり、他ではあまり見られない、珍しい花らしい。 すれ違う子供たちはだれが教えたのか、「こんにちはー、こんにちはー」と一人づつ挨拶して行く。挨拶は良いのだがこちらは大変だ。何百回も「こんにちは」とお返ししなければならない。中には良い子もいて「どんな鳥が見られますか?」などと質問してくる。こちらも得意になって、「あそこにいるから見てごらん」、と双眼鏡を貸して、ノビタキなどを見せてあげる。「ワー、きれい」などと言ってくれる子供には、頭をなでて何かあげたい気分だ。
湯ノ湖のマガモ 奥日光の紅葉も近年は遅くなっている。湯ノ湖のマガモは観光客に餌をもらっているのか、あまり遠くへ逃げない。

紅葉の山 10月下旬、朝は雲っていて見えなかったが、霧が晴れてきて紅葉の山が見えてきた。
キレンジャク もく道を歩いていたら、遠くの枯れた高木に止まっている小さい鳥が見えた。双眼鏡で見ると、わずかに頭に冠がある。レンジャクだッ、群れは幸運にもすぐ近くまで移動してくれた。ついには私の頭上に来た、冠が風で揺れているのも見える。もく道を踏み外したりしながらも、夢中で見上げた。ズミの実のように見えるのは、カンボクの実だ。別名「鳥食まず」とも呼ばれ、鳥も食べないほどまずいらしい。 色はズミより鮮やかな赤色だ。鈴なりの赤が、モノトーンの冬の風景に映える。
ズミの実 11月下旬、ズミの実は熟して野鳥たちの餌となる。ウソの好物のようだ。 実のなる量は、春から夏の気候によるのだろうが、 実の少ない年が多い、鳥たちには厳しい冬になる。 私も食べてみたが、甘さより酸味が強い。味も濃厚だ。 美味いものばかり食べてきて、野生を失ってしまった人間には、無理なようだ。
12月の戦場ヶ原 ほとんど色のない世界が広がる、華やかさのない冷たい風景だ。
植物や鳥たちは、何を思っているのだろうか。まもなく雪も降るだろう。
でも、不思議に美しい、なぜだろうか・・。