SEからコンサルタントへの華麗な転身

科学的アプローチによるPG・SEからコンサルタントへのスキルアップの実践的な方法を紹介します。

考課差異分析

2008-05-27 | クロス分析チャート

         『考課差異分析』
 

当分の間、人事関係をテーマに分析方法をご紹介します。


人事コンサルティングを進める上で、考課に携わる方々から様々な悩みを聞く。
その中でしばしば課題として取り上げられるものに、情意考課の有用性への疑問と
社員(被考課者)と上司(考課者)の考課差異(認識のギャップ)がある。
情意考課の有用性への疑問については、貢献度の位置付けを考えることが
解決方法の一つである。
情意考課が必要であるということは殆どの考課者が認めるところであるが、
情意考課の考課点は売上に対する貢献度と必ずしも比例していないため、
業績考課と情意考課の位置付けに苦慮する。

これは売上に計上されない貢献度を評価できる指標がないために、生じている
疑問である。
また、社員と上司の考課差異については考課差異があることを示すだけでなく、
その考課差異が貢献度に対してどのように影響するかをについても明らかにし、
考課差異をなくす必要性を認識させることが重要である。
さて、社員の活性化を図るためには、社員に対して正当な評価を行なう制度が
必要である。

正当な評価という言葉が意味する内容は、直接的に企業の売上拡大を図る場合と
社員活性化を図る場合においては大きく異なる。
前者の場合は、単に企業が設定する売上目標に対する社員の貢献度を数値化した
ものが、そのままにその社員に対する正当な評価であると言える。

しかし、後者の場合においては社員の意識に対して働きかけることを目的と
しているため、貢献度を数値化したものだけではなく、社員自らの自己評価を
考慮することが必要である。
つまり、社員の活性化を目的とした考課分析を行なう際においては、
社員(被考課者)と上司(考課者)の評価の違いを明らかにすることが求められる。
したがって、この考課差異分析は社員と上司の評価の違い、つまり考課差異を
分析することによって効果的な社員活性化戦略を考えることを目的としている。

X軸:上司による評価
Y軸:考課差異(上司による評価-本人による評価の絶対値)
円の面積:貢献度
分析単位:個人(被考課者別)
ベストポジション:第3象限

象限ごとの戦略を解説する前に、各指標について詳しく説明しておく。

X軸の上司による評価とは、考課の際の上司による評価点(業績考課および
情意考課等の総和)を数値化したものを示す。この評価点は原則として会社への
貢献度と比例することが望ましいため、円の大きいものが右側へ、円の小さい
ものが左側へ分布している状態となることが予想される。
円の分布のばらつきが大きい場合は、上司による評価において企業活動として
有益な評価を行なう考課体制を確立できていない状態であると考えられる。
この場合には考課尺度を見直すと同時に考課者教育を行なうことが必要である。
また、貢献度を業績考課に直結させている場合には、業績考課について考課差異を
分析する必要性が少ない。この場合は情意考課のみをX軸において表すことで
情意考課のあり方について集中的に分析することも有効である。

Y軸の考課差異とは、X軸に設定したものと同じ評価対象における上司による
評価と本人評価の差の絶対値を指す。
これは被考課者本人の考える自己評価と、上司つまり企業による被考課者への
評価の差であり、できる限り小さい値となることが望ましい。特定の上司に
ついてこの値が大きい場合、その上司と社員の意思の疎通が不十分であり、
上司のマネジメントスキルや考課スキルが不足していると考えられ、このことが
社員の意欲を殺いでいる可能性が高い。
また、交点の値が大きい場合には、会社としての考課体制に問題がある。
特定の上司についてY軸の値が大きい場合には、考課者教育が必要である。

また、会社全体の考課差異の値を低くするためには、会社が社員に対して求めている
目標を明確に設定し、充分に周知させることがまず必要である。そのためには、
職務分析を行い、会社として求めるスキルを体系化させた能力開発体系図を
作成することが最適である。
この能力開発体系図の作成を目的に厚生労働省のキャリア形成促進助成金の
申請に挑戦することも一つの方法である。
弊社では能力開発体系図作成コンサルティングを実施している。

次に、設定した目標への達成度についての評価尺度を、上司および社員に対して
明示せねばならない。人事考課制度の仕組みを公正に作り上げるだけでなく、
考課内容を社員に公表することが求められる。また、考課内容を社員に対して
フィードバックすることも欠かせない。

円の面積で表す貢献度については、この考課差異分析は、上司と社員の意思の
疎通状況を調べることを目的の一つとしているため、上司と社員の合意の下に
定められた目標に対する貢献度を設定することが望ましい。
この目標を何にするかということによって、社員の育成方法や成長の方向が決まる。
毎年、社員に対するフィードバックと目標の見直しを行うことが必要である。


【第1象限】
もっとも望ましくないポジションである。一般に自己評価の方が甘いことが
殆どであるため、上司評価よりも自己評価がかなり高い場合であると考えられる。

この象限において、貢献度が高い(円の大きさが大きい)場合は上司による評価が
過小であり、優秀な社員のやる気を殺いでしまう可能性が高い。
考課方法および内容を再度確認し、上司と社員の間で充分な話し合いを行なう
必要がある。
上司の管理者が上司の考課スキルを評価査定することになる。

また、貢献度が低い場合は、社員が自己を過大評価していると言える。
上司による評価に対して不満を抱える問題社員となりやすい。


【第2象限】
上司から評価されているにもかかわらず、不満を抱えている可能性が高い。
上司と社員の間での話し合いや意識改革が最も必要である象限と言える。
ただし、この象限において貢献度が低い場合は、考課方法が公正であるかを
確認するか、目標の設定方法を考え直す必要がある。


【第3象限】
考課に対する不満が起こりにくく、上司と社員の意思の疎通も図られている
ベストポジションである。
ただし、この象限において貢献度が低い場合は、上司がその社員を特別視している
可能性があり、公正な考課が行なわれていないと言える。このような状態は
その社員に対しても他の社員に対しても最も望ましくない状態であり、早急に
対処する必要がある。


【第4象限】
考課そのものに対する不満は起こりにくい。
この象限において貢献度が低い場合は新入社員であるか、能力が発揮できていない
社員であると考えられる。後者の場合は教育方法を見直した上で、社員の適性が
その業務に合っていないと考えられる場合は、配置転換を視野に入れるべきである。

もし、貢献度が低くない場合は、評価の低さは何らかの思い込みであるか情意的
要素によるところが大きいと考えられる。貢献度は充分であることを、この
グラフを提示して説明の上、自信をつけさせることが更なる貢献度の向上に繋がる。



以上が象限別の特徴であるが、クロス分析チャートにおいてはX軸とY軸の
交点はそれぞれの平均値であることに注意せねばならない。
考課の都度、交点のY軸の値を確認し、交点の値が上方に位置していないかに
留意しておく必要がある。

また、貢献度の値については、業績評価・情意評価・目標達成度など、様々な値を
入れ替えて分析することも一つの方法である。
既述の部門別分析から重点的に改革を図るべき部門を選択し、その部門に
対しては多面的な視点から考課差異分析を行なえば、より的確な能力開発戦略を
立案することができる。

               以上

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