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10/8 Geoff Muldaur & Amos Garrett @ 渋谷Club Quattro

2010-10-10 22:08:40 | ライヴ
 エイモス・ギャレットを初めて観たのは90年、ダグ・サームとの共演で来日したときだ。両者の音楽をまったく知らないで臨んだライヴだったが、初めて生で観たテックス・メックス、南部のいなたい音楽からは豪放な男っぽさばかりを感じたのを覚えている。サームを中心に響く骨太な音に身を委ねる心地よさはそれまで味わったことのない感覚だった。そしてその傍らでゲストとしてフィーチャーされていたエイモス。一人、神経質そうにギターを奏でる姿は周りのメンバーと異質な気配だったが、その繊細なフレーズが骨太なサウンドにガチッとはまる瞬間の高揚感も忘れられない。そして個人的には主役のサームよりそんなエイモスのギターの方に心を奪われたのだ。
 初めて聴いた『Sleepwalk』は衝撃的だった。繊細に奏でられるフレーズは音が煌めきながらこぼれ落ち、エイモスのひっきりなしにされるトーン・コントロールにより荘厳ささえ湛える、ギターによる美の極致がそこにあったのだ。『Sleepwalk』は自分にとってのギターの美そのものだ。

 ジェフ・マルダーとエイモス・ギャレットの31年ぶりの来日公演、といっても、目当ては30年ぶりに観るエイモスだ。ここ数年はコンスタントに来日しているエイモスだけれど、個人的な情報収集の問題でいつも見逃していた。それがどういうわけか、今回のジェフとの共演の情報は知ることができた。よりによってジェフの歌伴としてのエイモスが聴ける機会。いったいどんな演奏を見せてくれるのか…。

 和やかな雰囲気のなか、ジェフは艶のある歌声を聴かせ、エイモスは微妙な音色の、あの独特なギターを聴かせる。バックに3人の日本人バンドを従え、次々と繰り出される名曲たち。曲ごとに言うべき言葉はたくさんあるが、一言でまとめるなら、色褪せることのない曲を職人が丁寧に仕上げていくさま、その職人芸を間近に見ることができるライヴだった。

 この日、ゲストで出ていたブラック・ボトム・ブラス・バンド(BBBB)と中村まりとの共演も素晴らしかった。BBBBの演奏にジェフがノリノリで歌いエイモスが絡んでいく場面や、中村まりをマリア・マルダーに充てるベタに思える演出も、当の中村まりがキッチリとこなすなど、ゲストによっても引き締まる内容の濃いライヴだったのも特筆すべき。
 途中、チューニングがうまく出来ずに悩み苦しむエイモスを見たり、ゲストで招いたBBBBとの共演に子供のようにはしゃぐジェフを見たりと、二人の意外な姿も目にすることができた。演奏者も観客も、その場にいた人が楽しみ、驚き、ワクワクしていたはず。ショウとしても申し分のない、奇跡的なライヴだったと思うのだ。

 このライヴは録音され、公式音源として発表されるとのこと。多少、印象は違うかもしれないが、これはぜひとも聴いてみたい。会場にはカメラもあったので、ドニー・フリッツのようにDVD付きの音源発売も期待したい。
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