that sound...

好きなもの・気になったもの・身近な生活

10/4 Sim Redmond Band @ Drunkard’s Stadium

2009-10-06 19:42:15 | ライヴ
 1曲目が始まってすぐからハウリングしまくり、それだけで気持ちがすっかり萎えたライブだった。リハーサルをまったくやれなかったのか、なんらかのトラブルがあったのかわからないが、それにしてもライブの初っ端からハウリまくるとはPAの仕事っぷりとしてあまりにも酷過ぎる。バンドのメンバーもうんざりした様子でPAに何度も指示を送っているし、観客もそんなPAの方を気にしながら振り返る。演る側も観る側もまったく集中できない環境でのライブがいいものになるはずがない。音をまったく管理できない人間のもとでのライブは、その場に居合わせた人すべてに不快感を与えるのだ。

 1stセットはとことん音のバランスが酷く、しかもほとんど修正できないまま。2ndセットになってようやく改善され、なんとか聴けるような音になったけれど、だからといってすぐ演奏にのめり込めるはずもない。

 バンドにとってはこの日がジャパン・ツアー最終日だし、さぞかし思うところはあっただろう。新メンバーのJen MiddaughとキーボードのNate Silas Richardsonは表情が変わるほど憤っていたし、リーダーのシムも怒ってはいるんだろうがただただ呆れている様子が見てとれた。バンド自体にはなんの問題もなかっただけに、集中した演奏を聴けなかったのはつくづく残念。
 ただ、アンコールにやった、この日の前座バンド、Majestic Circusのギターとの共演は素晴らしかった。あのキレのあるギター・ソロのなんと美しかったことか。これにはバンドのメンバーもいたく感激したようで、この日唯一のいい表情を見せていた。さすがにライブも終わるころなのでPAも問題なしで、この演奏が聴けたことはとてもラッキー。ただ、初めから問題がなにもなければ…としみじみ思うのだった。

 アンコールを除くと、バンドに集中力が欠けていたためライブ自体に感じるものはなし。ただ、バンドに責任はない。こんなライブにしたのは会場となった柏ドランカーズスタジアムのせいで、チケ代を返してもらいたいくらいだ。本当にガッカリしたし、こんなに怒りが収まらないライブは久しぶり。
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9/28 DONNIE FRITTS & THE DECOYS @ 渋谷O-EAST

2009-10-01 00:44:50 | ライヴ
 恥ずかしながら最近まで聴いたことがなかったドニー・フリッツ。名盤と言われる『Prone To Lean』も、アルバム自体はもちろん知ってはいたけれど、このジャケット写真がどうにも気に入らなくて、ずっと「聴かず嫌い」だったのだ。全身ビシッとキメ、表情も渋く、遠くを見つめるフリッツ。でもその座り方がめちゃくちゃカッコ悪い。ベンチに浅く、しかもチョコンと座り、威厳も貫禄も迫力もなんにもない姿勢。もっとドッカリと座っているならカッコいいだろうに、まるでなにかの理由で座ることを強要され、ビクついてるように見える。なにやら挙動不審な気配なのだ。なんだかトイレに座ってるようにも見えるし…。

 そんな理由でまったく近づかなかった『Prone To Lean』だが、いざ聴いてみるとジャケ写の印象とはまるで違い、ふくよかなアメリカ南部サウンドがカッコいい。フリッツの歌は上手くないけれど、バックのバンドがしっかりとボトムを支え、味わいぶかい融合を見せる。無駄のないアルバムだ。

 ライブは前座にカラ・グレインジャーが30分演奏してから、デコイズが単体で登場。初めの一音が鳴った瞬間の刹那は衝撃的で、そのひとつひとつの音の懐の深いこと深いこと。ドッシリとしたリズムに乾いたテレキャスが乗っかってくる気持ち良さはなんともいえない。特に、初めて聴くベースのデヴィッド・フッドがとにかく凄い。派手なベースではないけれど、彼がデコイズの音を決め、その豊潤な音を作り出しているのがはっきりと感じられる演奏。フッドを中心として絡み合うバンドはめちゃくちゃアジがあって、ものすごく上手い。ケルヴィン・ホリーがさりげなく繰り出す見事なオブリもとんでもなかったし、絡み付くように切れ込んでくるN.C.サーマンのゾクゾクする間の取り方など、プレイヤーとして円熟みのある演奏、まったく隙がない確固たるバンド・サウンドだ。個人的にはこのデコイズだけでライブが終わってしまっても構わないくらいな気持ちになったが、そんなデコイズが20分演奏してから主役のフリッツが登場する。

 力みとか気合いとかがまったく感じられないフリッツは、デコイズの濃厚な音の中で気ままに歌っているかのよう。フリッツが出て来てからはギュッと引き締まったデコイズの演奏も彼の存在感と緩い歌声により穏やかな雰囲気となり(といっても演奏自体の濃度はそのまま)、ドニー・フリッツのとらえどころのない魅力が溢れたライブとなった。ヴォーカリストとしてのオーラはあまり感じないし、歌自体も特別上手いわけでもなく、ベテランの風格みたいなものもまるでないが、なんだかわからない歌の吸引力みたいなものが彼にはある。手練なデコイズの元でノビノビと歌うフリッツの味わいぶかさを言葉にするのは難しい…。

 ただ、個人的にはやはりデコイズだったのだ。メンバーについてなんの知識も持っておらず、思い入れもまったくなかったのだが、そのバンドの音は驚愕だった。個々のメンバーが出す音ひとつひとつのなんと豊かなことか。どうやったらあんな音が出るのか、指の動きだけではけして測れない音の説得力を体感して、彼らの音楽の深さを思い知る。音楽の、とんでもなく深遠な世界を観てしまったという思いでいっぱいなライブだった。
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