Yassie Araiのメッセージ

ときどきの自分のエッセイを載せます

朝日記 つづりかた220119  橘樹住香 随想 ゆめのくにもゆへきもののもゆるくに

2022-01-19 21:45:04 | 自分史

朝日記 つづりかた220119  橘樹住香 随想 ゆめのくにもゆへきもののもゆるくに 

 

(初出: HEARTTの会 会報No.108  2022年 新年号 NPO法人 人間環境活性化研究会 ISSN 2186  4464)

 

本シリーズ総合目次へは以下をクリックください:

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―随想―

 ゆめのくにもゆへきもののもゆるくに

                      会員 橘樹 住香

 

                        多々志

 

もうひとむかし前のこと、銭形平次や水戸黄門を見ているから、おれは徳川に詳しいというおもしろいお爺さんが、ちまたにいたものだ。こちらはまるで見ておらず、詳しくないので江府のことを聞かれると困るのだが、ひとつだけ気になることを。

 

参勤交代で鹿児島へ萩へ輿をかつぎ、歩きながら行き来したことに、なぜなのかと。

いにしへのふるき世にかえさんがため江府は牛車はつぶし、牛はころさず田や畠へ、萬葉のことのはに百姓を たから と、早馬は別として馬に たから をのせぬこととし、馬の背に荷物をのせ手綱をひくすがたとなる。

國のすがたをかへるほどの生麦のことはなぜおきしか。

日露は秋山好古の騎馬戰での華々しいてがらもあるが、昭和の車の到来まで馬の手綱のなごりをとどむ。

重い瓦などは手では運べぬ。街道沿ひは板葺きや藁ぶきとなる。歩きやすきやうに街道沿ひには両脇に家が立ち並び、くの字型に風よけにす。古代の荘園のなごりをとどめ、山を背に川から水をひく稲穂の景色をうみだす。家並がないところは杉や松、白樫、くぬぎ、風に竹むれがさわさわと はずれのね。夏の暑さや冬の風を防ぎ、歩きやすく居心地のいいけしき。

江府の世はよろずの國よりも ひときはうるはしき山紫水明の國とならむか。

たからの旅をゆるさず、早乙女がふるさとに泣きながらかえらむとすれど、箱根の関所でつかまり、討たれしといふかなしみをしる。

熊野や伊勢詣の手形はゆるし、風光明媚を味わふのだが。

蟻の熊野詣、那智の滝から熊野古道の奥につきすすむと、かつての村のなごりが苔むし、人のゐし けはひがすでにきえ、せすじにはしるこはさよ、今は世界遺産なれど。

 

地中海のかなたでは、とりでや驛馬舎をもなかに みちとなるといふ。

 

ましろき帆をなびかせ地中海より船出す。バチカンはうつくしき嶋々あらば、ポルトガルとスペインの國土としてよしと、のちにイギリス・フランスもきそひあひ、いまにつながる地圖とならむか。

ポルトガルの船が種子嶋へ、日の本が南蛮につたわることとなり、そして日の本はポルトガルのなわばりに。安土城にてバテレンのグレゴリオ聖歌などうるはしき歌聲がひびき、地中海の夢があこがれとなり、そして天正の少年使節や慶長の支倉常長などが、おとぎの國へと船出す。なれど嶋々を手にいれしバテレンからのあやしきつたへに、國を守らんがため、世界にゆるぎなき鉄砲そなへの國とす。バチカンに日の本は白人の國といふふみを。そののちバテレンを遠ざけ、よろづの國の けはひはいかに と長崎に出島を。

 

南蛮貿易でそのまま交易をしておれば、國柄が二百六十年早まり、ポルトガルのリスボン、スペインのマドリード、ローマの如き景色になりてもおかしくはなし。異国と交易するだけではすまぬ。灯台も港も居留地も、新政府でおこなひしことをその時に。ただ港をひらけばすむものではなく、髻や着物も刀もならぬと、さまざまなもとめをのまねばならぬ。

大和朝廷の國生みのころよりも江府は不自由となりて、たからを苦しめることとなるのだが、入り鉄砲に出女といはれしほど鉄砲をなくし、火薬を花火に。

大井川のごとく橋もかけず、輿やれんだいや肩ぐるまで川を渡り、江府は晴耕雨読を求め、穏やかな國を求めしか。

江府のともしびの消ゆるころ、津々浦々の人々が、手で運ぶ痛みから、車をつかへるやうに。それが大砲を運び王政復古へと。

 

シーボルトがドイツのスパイとしてオランダから倭國へ、150人ほどのやまとの子分を使ひ、やまとの植物や昆虫などを描かせ、一網打尽にもちだされ、おしいかな、ラテン語名のなかに日本原産をなくす。いまロイヤル英室植物園は、シーボルトの日本の植物からはじまりしやもしれぬ。オランダに持ち帰りし瑠璃色のミミズの学名はシーボルト、このとき桜をシーボルトと名付けておれば…。あじさいはつれあいの名を。指の隙間からもれし草ぐさを、牧野富太郎が丁寧にみいだし、ジャポニカマキノとして日の本のほこりをとりもどすのだが、倭が國の古来の草ぐさはこのとき倭國(やまと)原産ではなくなる。

また、日の本をくまなく歩き つくりし伊能の日本地図をシーボルトが盗み出し、欧米への引き出物として手柄とす。こんな國があるのかと よろづの國はおどろき、一斉に日の本をめざし、アメリカ艦隊が浦賀に、そして日米修好条約、さらにイギリス・フランス・ロシア・日独修好条約(ゆかりある安藤家の老中安藤信正があたる)等の条約となる。これら不平等条約をひきがねに王政復古に火がつき、吉田松陰・橋本佐内らの首をはね安政の大獄へ。そして、萩へ薩摩へ、骨の髄まであるくことのつらさから、長州がたちあがり、薩摩が加わり、新しき國生みへ。

 

古来、倭國のしろは山しろで堀は土堀。今から見るとしろらしくなく、まるでこどもの國、地中海の國王のとりでのすがたをとりいれ、おおづつの守りから石垣のしろへといれかわり、姫路城のような、日本のけしきを生みだす。

地中海からもたらせしものは石垣だけではなく、古代の日の本はよこもようだけ、大島紬のように格子もようはあるのだが、南蛮以降にたてのもようがはやる。

 

白鳳天平のころの萬葉に、ひろく帝から東歌まで家持がえらびしこころねに、神々の國として自由平等博愛をうたひし。倭が國は土人がゐて酋長、殿上人がゐて地下人。南蛮貿易から階層を取り入れるが日の本になじまず、大戰をへて新しきデモクラシーに喜びわきたち、いにしへの日の本の姿が、千羽鶴としてまいおりたのやもしれぬ。

 

夕波くらく啼く千鳥
われは千鳥にあらねども
心の羽をうちふりて
さみしきかたに飛べるかな
   若き心のひと筋に
   なぐさめもなくなげきわび
   胸の氷のむすぼれて
   とけて涙となりにけり
蘆葉を洗ふ白波の

                         住

 

流れて巌を出づるごと
思ひあまりて草枕
まくらのかずの今いくつ
   かなしいかなや人の身の
   なきなぐさめをたづねわび
   みちなき森にわけいりて
   などなきみちをもとむらん
われもそれかやうれひかや
野末に山に谷蔭に
見るよしもなき朝夕の
光もなくて秋暮れぬ
   おもひもうすく身も暗く
   残れる秋の花を見て
   ゆくへもしらず流れゆく
   水に涙のおつるかな
身を朝雲にたとふれば
ゆふべの雲の雨となり
身を夕雨にたとふれば
あしたの雨の風となる
   さればおちばと身をなして
   風にふかれてひるがえり

あさのきぐもにともなはれ

よる白河をこえてけり

みちなき今の身なればか
われはみちなき野をしたひ
思ひ乱れてみちのくの
宮城野にまで迷ひきぬ
   心の宿の宮城野よ
   みだれて熱きわがみには
   日影も薄く草かれて

あれたる野こそうれしけれ
ひとりさみしきわが耳は
吹く北風を琴ときき
悲しみ深きわが目には
いろなき石も花と見き
   あゝひとりみのかなしきを
   あじはひしれるひとならで
   たれにかたらん冬の日の
   かくもわびしき野のけしき

都のかたをながむれば
そらふゆぐもにおほはれて
身にふりかゝるたまあられ
そでの氷ととぢあへり
   みぞれまじりの風つよく
   小川の水のうす氷
   氷のしたに音するは
   流れて海にゆく水か
ないて羽風もたのもしく
雲にかくるゝかさゝぎよ
光もうすきさむぞらの
なれもあれたる野にむせぶ
   涙もこほる冬の日の
   光もなくて暮れゆけば
   人めも草もかれはてゝ
   ひとりさまよふわが身かな
かなしやよふてゆく人の
ふめばくづるゝ霜柱
なにをよひなく忍び音に
声もあはれのその歌は
   うれしや物のねをひきて
   のずえをかよふ人の子よ
   しらべひく手もこおりはて
   なにかどづけの身のはてぞ

やさしや年もうら若く
まだ初恋のまじりなく
手に手をとりてゆく人よ
なにをかくるゝその姿
   野のさみしさにたへかねて
   霜と霜とのかれくさの
   みちなきみちをふみわけて
   きたればさむし冬の海
朝は海辺の石のへに
こしうちかけてふるさとの
都のかたをのぞめども
おとなふものはなみばかり
   くれはさみしき荒磯の
   潮をそめし砂に伏し
   日の入るかたをながむれど
   わきくるものは涙のみ
さみしいかなや荒波の
岩にくだけてちれるとき
かなしいかなや冬の日の
うしほとゝもに帰るとき
   たれか波路をのぞみみて

そのふるさとをしたはざる
たれか潮の行くを見て
この人のよををしまざる

こよみもあらぬ荒磯の
砂路にひとりさまよへば
みぞれまじりの雨雲の
をちてうしほとなりにけり
   とほくわきくる海のおと
   なれてさみしきわが耳に
   あやしやもるゝものゝねは
   まだうらわかき野路の鳥
嗚呼めづらしのしらべぞと
声のゆくへをたづぬれば
緑のはねもまだ弱き
それも初音か鶯の

春きにけらし春よ春
まだ白雪のつもれども
若菜の萌えて色青き
ここちこそすれ砂のへに

春にけらし春よ春
うれしや風に送られて
きたるらしとや思へばか
梅が香ぞする海のべに
   磯辺に高きおほいはの
   うへにのぼりてながむれば
   春やきぬらんしののめの

しほのね遠き朝ぼらけ

『若菜集』草枕   藤村 

 

 
   

 

                             榮貴

 

 


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1 コメント

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今回 Aiuta本部Faracoiseを通じて 絶賛の言葉が届いてきたので (塚谷さん)
2022-01-23 22:26:35
住夫さん 公子さん
CC. 塚谷さん

 塚谷さんが 住夫さんのエッセイ・ギャラリーに大変感動され、これをAiuta本部に送され、ひろく世界に紹介すべく
推薦してくださいました。 
 今回 Aiuta本部Faracoiseを通じて 絶賛の言葉が届いてきたので是非、橘樹さんに伝えるべく依頼がありました。

塚谷さんから;
「その中では、私も感激しました、荒井さんが送って下さった作品に、フランスのアユータのトップから、絶賛の言葉が届いてます!橘さんに知らせて下さい。ACJでも、何らかの形で、荒井さんの許可を得てから、多くの人に、作品を見てもらいます。塚谷」

本部の手紙の原文と 小生の訳は以下に添えます:
Dear Akiko
Thanks you very much to sending these so beautiful drawing and painting
I would like to congratulate
I hope to have the possibility to meet you again in a next future
Let us informed on Japan long life learning
Warm regards
François
親愛なるあきこ
 なんとうつくしい描画と絵画をお送りいただきうれしくおもいます。
 わたくしもともに称賛したい。
 近い将来、あなたにお会いできることを希望します。
 これからも歴史に残る日本の作品を教えください。

敬具
François

 このメールの以下部分に 塚谷さんとの交信の記録をつけますので御覧ください。
 特に 塚谷さんのメールJan.13は 懇切なるおことばがありますので
 感謝して留意されれるよう願います。
 塚谷さんはACJ日本として積極的な作品紹介を期しておられます。

 あなたの方からも塚谷さんにメッセージを送ってください。
   康  2022/1/23
Yasumasa Arai

Blog keywords; (Yasumasa Arai, Asanikki, Ongaku kaiga)

(塚谷さんとのこれまでの交信は以下です)
From: Akiko Tsukatani <acj.tsuka@gmail.com>
Sent: Sunday, January 23, 2022 10:02 AM
To: Yasumasa Arai <araraiypol1a@ozzio.jp>
Subject: Fwd: ギリシャ彫刻と守屋多々志の倭繪

荒井康全さん、
長い間、ご無沙汰しております。コロナの影響で、色々なプロジェクトに大きな影響を受けて、困ってます。その中では、私も感激しました、荒井さんが送って下さった作品に、フランスのアユータのトップから、絶賛の言葉が届いてます!橘さんに知らせて下さい。ACJでも、何らかの形で、荒井さんの許可を得てから、多くの人に、作品を見てもらいます。塚谷
iPhoneから送信


日時: 2022年1月18日 17:09:07 JST
宛先: Akiko Tsukatani <acj.tsuka@gmail.com>
件名: Re: ギリシャ彫刻と守屋多々志の倭繪

Dear Akiko
Thanks you very much to sending these so beautiful drawing and painting
I would like to congratulate
I hope to have the possibility to meet you again in a next future
Let us informed on Japan long life learning
Warm regards
François

Le jeu. 13 janv. 2022 à 05:44, Akiko Tsukatani
荒井康全さん、
あまりにも素晴らしい作品で、私にはうまく表現できません。荒井康全さんも、
橘さんの、作品も其々個性があり、その素晴らしさをどの様に伝えるか、私の能力の限界です。全世界に伝えたいです。
ACJは、今では、全世界と交流してますので、私たちのルートで、全世界に発信します。内閣府や、世界中の、NPOに、どの様に上手く発信するか、みんなと相談します。荒井康全さんもハートの会以外のルートがありましたら、教えて下さい。もう素晴らしさに、感動して、頭が一杯になります。全世界の、人達に、ACJのネットワークで、勿論内閣府にも、高齢者福祉団体、日本、英国、アメリカ、など、又私もお世話になっている、物忘れ、認知症の、精神科の組織にも、情報を流して、幅広く、内外に知らせます。本当に深く感動して、いかに上手く世界中にその素晴らしさを伝えるかで、頭が一杯です!!!
私の能力を超えてます。素晴らしいの一言です。出来るだけ、世界中の、高齢者福祉の人たちを中心に、楽しんでもらいたいです。もっと良い発信方法があれば、同時に私に伝えて下さい。頭が一杯です!!!ACJにも画廊を作りたいです!!!感動で一杯です!!全世界に、発信します!塚谷
iPhoneから送信

2021/12/15 10:18、araraiypol1a@ozzio.jpのメール:
Madame A. Tsukatani
Hello, Tsukatani san.
I send three of Tachibana’s articles of two and Yasumasa Arai article of one with this e mail attached,
which will be supposed to be uploaded on HEART NO KAI journal, at coming issue of January or of March .
So, yet be open to public field, please keep them held at your site.
However, I am convinced that you would be surely enjoying both of them.
And if you like them, please circulate them to Mr. Vellas site at any date you set up.
I am applauding of Tachibana as a generous, really.
Have keep well for your health and be having Merry Christmas.
Best regarding, Yasumasa Arai
December 15, 2021
Yasumasa Arai

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