日々・ひび・ひひっ!

五行歌(一呼吸で読める長さを一行とした五行の歌)に関する話題を中心とした、稲田準子(いなだっち)の日々のこと。

打ち上げ花火

2006年09月07日 | 引っ越しな日々
引越しをした8月21日、クーラーを取り付けてもらえなかった日の夜のこと。

とても暑い。

引越しを手伝ってくれた、実家の父母と、
晩御飯を外食し、
お風呂は自転車でスーパー銭湯に行き、
とにかく、家にいないようにしたけれど、
寝る場所までは移動できなくて。

午前零時ぐらいまでは起きていたけど、
あきらめて、寝床についた。

頼りにするのは、
窓からの風。

だが、ここは、
阪神高速道路もすぐそばにあるし(8月15日の写真参照)、
その下みちも、頻繁に車が通るところ。

夜中になると、少なくなるだろうと思っていたら甘かった。

夜中は夜中で、昼間はあまり走らないものが走る。
改造車&改造バイクだ。
必要以上の排気音がけたたましく鳴る。

あぁ、若者よ、今日一日ぐらい暴走しないでおくれ……。

それでも夫は、順当に眠りの世界へ行った……かのように見えた。

     ★

暑い&騒音。

だけど私も夫も、引越し作業で、朝早くから起きていて、
からだは眠りの底に、
沈もう沈もうとしていた。

α波のでない頭を無理に、体の疲れに引きずりこんで、
眠らせよう、眠らせようと、目を閉じる。

その努力の甲斐あって、水底に足が届きそうなときだった。

ヒュ~ン……パンッパンッ

と、心臓に直接来る音がした。

「なんやなんや?!」と、
多少の音では
めったに起きない夫までが起きた。

どうやら、打ち上げ花火のようだった。

しばらくすると、男女の笑い声が聞こえた。
これがまた神経を逆なでする。

えぇ~!!
なんで丑三つ時にするんだよ。
せめて、8時~10時の間にしろよ。

     ★

気を取り直して寝ようとしたけど、
少し間があっては、パン!パン!とか、
マシンガンのように、パパパパパパパンンと音がして、
どんどん寝ようとする気力が萎えていった。

最初こそ、起きたが、
夫はがんばって寝ようとしている。

私は開き直って、ベランダに出る。
こうなったら、タダで花火を見さしてもらおう、と
気持ちを切り替えて。

花火をしているカップルは二組いた。
川向こうの土手で、手で持つ花火をしていた。
にぎやかに笑って。

こういうスポットを知っているということは、
おそらく、同じく川向こうにある大学の学生なんだろう。

迷惑だ!!と腹を立てたら、
迷惑だと腹を立てているのは、ひょっとして、
私と夫だけか?と、
ブーメランのようにかえってきた。

私らんところが、窓を開けて寝ているからいけないの?

このマンションの住民は、
ひょっとすると、
この花火に気がついていないかもしれない。

騒音防止のため、窓を締め切り、
クーラーをつけて、快適に眠れる環境にいるから。

でも、だからといって、
真夜中に打ち上げ花火をする子らって、
常識がないことには変わりないよな。

常識がなくても、防衛できたら、
その若者たちは、ずっと野放しなわけで。

まさに、対岸の火事(いや、厳密には花火ですが)ってこと?
いや、見て見ぬ振りって訳でもないけど。
気づいてないんだから。

むむむむ……。

     ★

私はどうだったんだろう。

夜中に花火をしたことはなかったんだろうか。

……「夜」に花火をしたことは思い出せるが、
「夜中」はないなぁ……。

でも仮に「夜」だったとしても、
迷惑がってた人もいたかもしれない。

私は、典型的なインドア派なので、
誰かとの付き合いでしか、花火なんてしたことないけれど、
私や私の友達が、
きゃあきゃあと夏の一生の思い出(←ぼんやりとしか覚えてないが)を
作れたのは、
その地域住民の我慢のおかげだったかもしれない。

目の下にクマを作って、
はしゃぐカップルらを見ながら、
常識云々で見る以前に、
お鉢が回ってきただけだと、思うべきかもしれない、
と、感情が思考へ転換していく。

これが毎日なら、考えなければならないけれど。

(毎日かどうかってのも、
うちの家にもクーラーが来たら
わからなくなることなんだろうけど)

     ★

9階から見る打ち上げ花火は、
目線からちょっと下で花開く。

見たこともない光景だが、
自分がしてなきゃ、この程度の花火じゃ、
タダで見るにはショボすぎるぜ、
と贅沢に毒ついた。

それから、
いくら汚い川だからといって、
時々、手に持っていた花火を川に投げ込んでいたのには、
胸が痛んだ。

       釣り人の
       いなくなった夕暮れ
       今日を生きのびた
       魚
       一差しの舞    (樹 実作品:『五行歌』2005年12月号)

この歌の魚は、
私の家の前を流れる川に住んでいる
(2㌔ぐらい北上したところに、彼女は住んでいるので)。

汚い川でも、生き物はいるのに。

     ★

花火を終えて、カップルらは、
自転車とバイクに分かれて、
カップル単位で消えてった。

それでも、ひっきりなしの車の騒音。

この騒音を、潮騒だと思って、
寝ることはできないだろうか、なんて、
無駄な思案を
もうしばらくしてから、
寝床に戻った。

だったら、丑三つ時で、鳴きやむのにな、なんて、
思い出しながら。

「花火は終わったん?」と、夫に聞かれて驚いた。
「もう寝たんかと思ってたわ」と言ったら、
「寝れるわけないやん。あんな音だされて。
アホなやつらが、ホンマ多いわ」

……まぁそうなんだけど。

本当の原因は、夫の場合、
音よりも、暑さのほうかも……と疑ったけど、
そのあと、浅かったらしいけど、ちゃんと寝ていたようなので、
やっぱり花火なのかもしれない。

地響き付きの雷よりも、花火のほうが弱い夫。

怒られるよりも、褒められる方が弱い性格を
反映しているかのようだ。

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