松屋が今さら「格安ステーキ店」を出したワケ
3月にオープンした「ステーキ屋 松」。開店当初は長い行列ができた(記者撮影)
牛丼チェーン「松屋」を運営する松屋フーズホールディングスは3月、東京・三鷹に初のステーキ店をオープンした。店の名前は「ステーキ屋 松」。看板商品の「松ステーキ」は米国産牛肉のミスジを使用し、200グラムで1000円(税込み)と破格の値段設定だ。
「あの松屋がステーキを始める」とインターネット上でも話題になり、開店初日は最大90分待ちとなった。オープンから2カ月が経った今でも、昼時になると並んで待つ客が発生する。そのため、店の前には整列用のベルトパーテーションが設置されている。連日の盛況の結果、約2カ月間の累計売上高は当初の想定と比べて1.5倍。月商にすると牛丼「松屋」の約2倍になるという。
「女性1人の顧客や高齢者もいる」(同社広報)と、老若男女を問わず幅広い顧客が来店している。全23席がカウンター席だが、郊外という立地もあり、週末には家族での来店もあるようだ。
直接仕入れの強み
ペッパーフードサービスが運営する「いきなり!ステーキ」が牽引役となり、ブーム化して久しいステーキ業態に、松屋フーズが“今さら”進出したのは、その勝算があるからにほかならない。
松屋を展開する同社は、アメリカから直接貿易で牛肉を仕入れる。問屋を介さない取引のため、牛肉の調達価格を比較的抑えることができる。そのためステーキ業態でも他社よりもう一段安く提供することができる、と踏んだ。
実際、200グラムで1000円の「松ステーキ」はサラダバーとスープバーがつくため、1グラムにすると5円を下回る。いきなり!ステーキの看板商品「リブロースステーキ」の1グラム6.9円(税抜き)と比べても、リブより安価なミスジを使用しているとはいえ、安さが際立っていることがわかる。
松屋フーズにとっては、事業の多角化という意味もある。同社は3月末時点で松屋を958店、とんかつ店「松のや」を188店展開している。これら2業態の今後の出店余地が限られてきたこともあり、第3の収益源の育成が求められている。ただ、カレー店や中華料理店を運営しているが、その中ではすし業態「すし松」の8店が最多と、店舗数の拡張はまだできていない。
ステーキ屋 松への消費者の期待は高く、「関西地方にも出店してほしい」といった問い合わせも少なくない。「もくろみ通り1店舗目を収益化できれば2店目を出したい」(同社広報)と、まずは足場固めを優先し、その後に出店を拡大する方針だ。
各社が苦戦するステーキ業態
ただ、今後の拡大にあたっては乗り越えなければいけない壁も大きい。格安ステーキの市場はすでに過熱し、レッドオーシャン(競争の激しい市場)になりつつある。いきなり!ステーキは2013年に銀座に1号店をオープンして以来、急速に店舗網を拡大してきた。2018年11月には47都道府県への出店を完了し、昨年末時点で397店となった。
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