
■うまい商売
それにしても商売として見たときフェイスブックがイヤな人々のフェイスブックは実にうまくできている。サービスの典型なのだが、古今東西不変にして普遍の人間の本性を衝いている。「自己愛」である。
僕ももちろんそうだが、人間は誰しも自分がいちばん可愛い。それが人間の本性を衝きまくっているがゆえに、ユーザーは自分の日常生活のポジティブな断面を切り取ってせっせとフェイスブックに載せる。それを見てくれる友達がいる。しかも、「いいね!」と反応してくれる。自己愛→自己顕示→他者による承認→自己愛の満足という人間の本性が織りなす成り行きをワンストップできっちり面倒見てくれるのがフェイスブックなのである。人間の本性を衝くほど太い商売になる。技術は日進月歩でも、人間の本性は変わらない。技術さえあれば、フェイスブックは平安時代でもウケたと思う(縄文時代だとやや難しいかもしれないが)。
元も子もない話だが、「いいね!」といっても、見ている人は必ずしもホントに「いいね!」と思っているわけではない。ほとんど反射的・習慣的に「見ましたよ」というサインを送っているに過ぎない。フェイスブックのタイムラインを見ているのは、時間にすれば90%以上が本人だと思う。「いいね!」やコメントがついている自分のタイムラインを見て、「いやー、俺もなかなか素敵な生活をしているじゃないの!」という気分になる。ここにフェイスブックの本質的なユーザーにとっての価値がある。
■ようするに「広告の会社」
「プラットフォーマー」というと何でもできる万能選手のように聞こえるが、フェイスブックという会社の「商売」の実体はいたってシンプル、ひたすらに「広告の会社」である。アマゾンにカネを払ったことがある人は無数にいるが、フェイスブックに(個人として)1円でも払ったことがある人は滅多にいない。これは「2面プラットフォーム」というインターネットの情報サービスの商売に典型的なやり口である。つまり、個人向けのサービスはタダで提供して(こっちをサブシディ・サイドという)、実際の商売(マネー・サイド)は企業向けの広告ないし販促サービスにある。
これを書いている時点で最新(2016年)のアニュアル・レポートによれば、フェイスブックの売上の97%は広告収入に依存している。3年前はこの数字が92%だった。いろいろと新しいことに手を出してはいるが、フェイスブックの広告収入依存度はここに来てさらに増大している。フェイスブックはバーチャル・リアリティの技術を実装した廉価なハードウェア(ゴーグル)を発売して先日話題になった。これにしてもハードウェアの商売そのもので儲けるつもりは毛頭なく、あくまでも将来の広告収入のための顧客接点として、新たな集客チャネルを意図したものであるのは間違いない。
グーグルの商売もその実体は2面プラットフォームの広告業で、ここまではフェイスブックと同じである。しかし、グーグルの検索連動型広告やYouTube(グーグルが運営しているメディアのひとつ)の合間に入る広告と比べて、フェイスブックが繰り出す広告や販促はユーザーにより刺さる。フェイスブックの広告やプロモーションは、自分自身や自分の「友達」が発信した情報に紐づけられている。広告の生命線はコンバージョン(広告を見た人が実際に何らかのアクションを取ること)にある。人は中立的な情報よりも知り合いから来た情報により注意を振り向ける。その結果としてコンバージョンが上がる。
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