公文で九年

公文式教室を9年間経営していた学習塾経営者です。
公文教室とはどういうものか私の視点で公開したくなりました。

分度器も使えない中学一年生

2012-10-18 | 現在の教室運営
最近お引き受けした中学生なのですが
小学校4年生程度の「常識」がまったく入っていないのには今更ながら驚きました。
計算力だけではどうにもならないのです。

ふつう、うちの教室では中学生からの入会は受け付けません。
いうまでもなく、ある程度のレベルに達するまでは
学校の定期テストに反映しないので、親も当人も
≪通うこと≫≪会費を払うこと≫に価値を認められなくなってくるからです。
かといって、四則計算も満足にできないのに方程式の解き方をいくら教えたところで
笊で水をくむようなものです。

学年相当ラインにたどり着く前にやめるくらいなら
「他塾へ行かれたほうがいいですよ」と はっきり申し上げます。

しかし。
この生徒の場合には、中学での成績が最下位で
このままでは私立高校でさえ入れるかどうかわかったものではないということを
親も認識していたため、
あと二年間でどこまでやれるかわからない、と念を入れてお引き受けしました。
で、割り算のあたりから特訓開始。
最近分数計算を始めたのですが、約分・通分もわからないので
公文時代に買った、分数の説明キット(木製の、正式名称は忘れましたが)を使って
説明すると
「ああ、そういうことだったんだ」ととても嬉しそうでした。

一方で、うちの教室では計算以外の算数テキストも併用しているので
応用問題は小3程度から始めました。
「和」と「差」の関係がよく理解できていないというのにも驚きましたが
さらに驚いたのは分度器が使えないということ。
角度を測るということさえできないのです。
(う~っ、小学校の教師はなにしてたわけ?)と思いつつ、説明を始めました。

この生徒はおそらくADHD、ですが日常生活に困るほどではないので
学校でも家庭でも見過ごされてきたものでしょう。
お母さんにADHDの症例について説明をすると、
「これまでのトラブルの原因が分かった」と とてもホッとされたようでした。
そして、おうちでもこの子の≪理解しにくいこと≫について怒るのをやめるようにしたそうです。
結果、この子はずっと明るい表情を見せるようになってきています。

昨日、この生徒に入会以来学習してきた算数のプリント、
教室でのものも、宿題の分も全部教室で預かっていたのですが、
それを束にして返しました。
目をぱちくりさせて
「こんなにやったんだ・・・・・・」と驚いていました。
「これは算数の分だけで、他にも国語や英語の分を合わせたら、もっともっとだよ」
というと、「ふーん、そうなんだ・・・・・・」
「今まで、こんなに勉強したことなかったでしょ?」といえば、「うん」

半年に一度の割で学習状況をご家庭へ連絡する「学習記録リート」に
お母様からのコメントがあり
「長時間の学習にうちの子が耐えられるかどうか、いつ辞めたいと言い出すか
ハラハラしていましたが、喜んで通っています・・・・・・etc」と
感謝の言葉がつづられていました。

このコメントをスタッフにも回覧しました。

この子の学習会費は、他の中学一年生と同じです。
どの子もそれぞれのレベルで
わからないことを教わるということにおいては同じだからです。
そういうことでは、他の自閉の子も健常児と同額です。

うちの生徒の誰彼が、学年順位が一桁で・・・・・・
志望校に合格して・・・・・・
というのがうれしいのももちろんですけれど、
いわば底辺にいる子たちが少しずつでもわかることが増えていくというのも
塾稼業の醍醐味かもしれません。

研究会のフランチャイズ方針とは相いれないものがあっても
「塾」を続けているのは、やっぱり、≪好き≫なんでしょうね。



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