GLAY Story

GLAY関連の書籍を一つにまとめてみました。今まで知らなかったGLAYがみえてくる――。

 “reprise”ツアー最終日

2009-08-10 | ブレイク期




 1996年9月6日朝。

 武道館は追加公演となるため、8月16日から始まった「BEAT out! repriseツアー」の最終日ともいえる北海道厚生年金会館へと旅立つ6人。だが、これまで培ってきた自信がそうさせるのだろうか。ラストだという気負いも感じさせず、むしろリラックスした様子で集合してくる。

 このツアーで、ほんの隙間の時間を見つけてリラックスに充てるという術を身につけた彼らは、食事を済ませるとボートに乗ることが出来るという情報を得て、近くの中島公園まで出かけて行った。


●6人で楽しむ感じ

 16時20分、サウンドチェックが始まる。

 武道館用のリハーサル時間がとれないため、この北海道厚生年金会館は武道館でやる曲を取り入れた特別メニューを組むことになり、『軌跡の果て』、『Cynical』などが演奏された。

 心地良い緊張感がステージに流れていた。そして、18時42分、静かに手を重ねる5人にTERUは「BEAT out!repriseツアーは今日で最後です。頑張りましょう」と少し改まった口調で言った。

 このツアー中、4人は何度となく「バンドとしての良いグルーヴを得られるようになった」、「6人で楽しむ感じが分かった」と話していたが、この最終日にはそれが形として幾度も現れた。

 TERUは『Cynical』のソロを弾くHISASHIの肩を何度も抱き寄せた。『Trouble on Monday』では、TAKUROの背中にもたれ客席を見つめた。JIROのコーラスはTERUのリズムに完壁に重なっていた。

 HISASHIとJIROは、どんどん即興性を増すリズムソロを聴かせた。「帰ってきたぜ! 札幌!」 そんな言葉の後、4人はそろってオーケストラボックスの最前列に並び立ち、顔をまっすぐに上げた。

 “ポケットの夢 それぞれの 人生を賭けたね I sing my dream forever”

 この北海道の地に育った4人の青春と現在が重なって見えた気がした。そこには、見栄も照れも飾りも不安も何もなかった。この瞬間、ただ前に前に向かっている姿だけがあった。


●あとは武道館だけ

 7日、ホテルのロビーに降りて行くと、壁際に小さく座るTERUの姿があった。「あとは武道館だけ。ツアーが終わるのをこんなにも寂しいと思うのは、もしかしたら初めてかもしれない」と、誰にともなく咳いた。

 前夜、全員が打ち上げに出かけた後も部屋に残り、このrepriseツアーについて話した彼の言葉を思い出した。

 「今回、やっと後ろからみんなを見られるようになった。今までは自分のことで精一杯だったんです。改めて幸せだなと思った。俺は、GLAYで演ることを本当に楽しんでいるんだと気づいた。」

 「『Together』とか考えさせられることもたくさんあったけど、でも自分なりに色んな手応えを感じたし、今回出会った全ての人に、今、本当に感謝しているんです」。

 冬の訪れを予感させる北海道から飛び立った飛行機の中の6人は、とても無口だった。






【記事引用】 「GLAY “GROOVY” Beat out!TOURS DOCUMENT BOOK


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