1996年3月29日、札幌市民会館。今日は、2月29日から始まった「BEAT out!ツアー」の最終日。
ステージを見に行ったTAKUROは、小楽屋で見つけたアコースティック・ギターを弾いていた。その裏では、HISASHIがスタッフに激しく食い下がっていた。
●客席から登場
「い・や・だ!」
ソロ・コーナーで客席から登場するというのを「危ないのでは?」と心配するスタッフに止められているのだ。「大丈夫だから」。SPの配し方、ステージから客席への抜け方等、分刻みで綿密に詰める。
やりたいことは必ず実現させる、彼の意思の強さを見た。
16時20分、サウンドチェックが終わった6人は、カーテンとドアを閉め電気を消し、楽屋を暗室に変えJIRO&TOSHIの持っていたレーザー光線の出るおもちゃで遊び始める。
些細な事を楽しむことにかけては天才的なGLAY。スタッフが「リハに入るよ」と声をかけるまで、真っ暗闇の中を踊る緑の輪を見つめていた。
18時33分、故郷での最終日ということで少し畏まった様子でステージに現れる。「こんなに多くの人を目の前にすると、瞬きをするのも惜しくなります」 TERUはそんな言葉を口にした。
『週末のBaby talk』、『LOVE SLAVE』、『Freeze My Love』。曲が激しさを増すごとに6人のテンションはもの凄いカ-ブを描いて上がっていく。
「してやったり」という笑顔で客席から鉄砲玉のようにHISASHIが飛び出して、無機質で攻撃的なソロを聴かせた後は、それよりもっと激しい演奏の応酬。重いリズムが頭と腰を直撃した。
●いつもと違う力
興奮状態は、スローな『軌跡の果て』まで続いた。
最後のフレーズを弾き終えた瞬間、感極まったTAKUROはTERUの腕の中に静かに倒れ込んだ。激しい拍手と歓声に呼び戻され、再び彼等はステージに現れた。HISASHIはTOSHIに肩車されている。
「北海道に帰って来ると、いつもと違う力がみなぎってくる」 TERUが力強くそう言った。そして、この「BEAT out!ツアー」最後の気の狂いそうに激しい『BURST』が炸裂した――。
【記事引用】 「GLAY “GROOVY” Beat out!TOURS DOCUMENT BOOK」