1996年9月9日、「Beat out!repriseツアー」で組まれた追加公演。
日本武道館に到着した4人は笑顔で挨拶をして楽屋に荷物を置き、その足で会場を見に行く。360度客を入れるため後ろの大階段がなくなり、代わりに1階席に届くほどの渡りが左右に延びている。
「広いね。プレッシャーを感じる隙がないほどワクワクしてる」(TERU)
●立場が逆になった
15時からリハーサルが始まった。
本番さながらに照らされたライトの中、セリに乗って上がるシルエットが浮かぶ。上手からTERU、TAKURO。下手からHISASHI、JIRO、TOSHI。メタリックなステージに降り立ったTAKUROとHISASHIはステージ中央ですれ違いざまにがっちり腕を絡めた。
「ずっと人が立っているのを観てきた所だから。いつもと同じリハをしているはずなのに、ステージから客席を見て立場が逆になったんだと実感した」(HISASHI)
18時35分、開演。目が眩むほどの照明の中、GLAYのメンバーが日本武道館のステージに誇らしげに堂々と登場する。
ツアー中、ずっとオープニングを飾ってきた『More than Love』に1万人が「Yes!Yes!」と呼応した。“武道館では全員の曲をやる”というGLAYらしい思い入れを反映し、『Cynical』、『週末のBaby talk』、『SHUTTER SPEEDSのテーマ』等が続く。
TERUは順に3人を見つめ、TAKUROは感慨深げに客席に目をやり、HISASHIは顔中を笑顔にしてクルクル回り、JIROは何度も楽器を弾く手を拳に変えて突き上げた。
涙混じりの『Together』、眩しすぎる『グロリアス』、1万人の『BURST』。全17曲を演奏した4人は深々と頭を下げ、互いの顔を見つめ、名残惜しそうに振り返りながらステージを去った。
●感動のみがあった
終演後、大勢のスタッフ、ゲスト、家族を前にして、彼らは静かに語った。
「夢だと思っていた場所にあったのは、感動のみでした」(JIRO)
「最高だった。“このまま時間が止まってしまえばいいのに”などと、俺らしくもないことを思ってしまった。追加公演に武道館を選んでくれたスタッフの皆さんに感謝します」(HISASHI)
「ステージに立って、本当に沢山の人に支えられているのを感じた。このメンバーに会えて本当に良かった。これからも、堅い絆を持って一緒に歩いていきたい」(TERU)
「今日で2月から続いたツアーが終わりました。その一番最後、『軌跡の果て』を演っている時、なぜか『BELOVE』の“いくつかの出逢い”という詞が頭の中を流れた。一緒に頑張ってきた中で、出逢った多くの人のことが思い出されて様々な想いが胸をよぎった」(TAKURO)
21時50分、すべてのゲストが去り楽屋に戻る。TAKUROとJIROは、椅子に沈み込むように座っていた。HISASHIは廊下で共にツアーを廻ったスタッフと握手をしていた。TERUはメイク・ルームの鏡の前に1人腰掛けていた。
幸せすぎて、その時間に終わりが訪れるのが寂しい―― そんな想いの感じられる4人の目は、とても優しかった。
【記事引用】 「GLAY “GROOVY” Beat out!TOURS DOCUMENT BOOK」