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GLAY Story

GLAY関連の書籍を一つにまとめてみました。今まで知らなかったGLAYがみえてくる――。

 JIROの脱退騒動②

2009-04-01 | JIROの脱退騒動



 「初めのうちは、またツアーが始まって楽しいなっていう感じだったんですよ。でも、1カ所に滞在する時間が長かったりして、何となく空気が煮詰まっていったんですね」

 「やっぱり、いちばん印象に残っているのが金沢ですね。僕らはオロオロするしかなかった。もちろん、そんなことじゃいけないんでしょうけど」というのはマネージャーの山本ッチャンである。

 仙台での4回公演を終えたGLAYはいったん東京に戻り、5月2日、金沢に入った。3、4、6、7日と、ここも4回公演だった。会場は石川産業展示館4号館。6000人が入るアリーナである。

 スタッフがオロオロするような場面は、4日に起きた。


●ここに立っていちゃダメだ

 JIROに異変が起きた。

 「あの頃はホントに何をやっていいかわからない状態だったんですよ。仙台の時もすげぇ参っていたけど、一番ヘビーだったのが金沢。あの時何千人いたのか知らないけど、1曲目から『ごめーん』と思いながらプレイしてた」

 「俺は今、ここに立っていちゃダメだなって。あの日は客席を見れなかったんですよ」

 金沢で何が起きたのか。あの日の記録用ビデオが残されている。カメラマンが撮影したものではない。PA卓の横に設置ざれた家庭用のデジタルビデオに残っている映像。

 レンズのアングルも固定で、アップになったりとか距離や角度が変わるわけではない。スクリーンに映し出されたメンバーの表情を見ることはできてもステージ上の姿は小さなシルエットで見分けるしかない。

 それでも、その日のJIROの雰囲気は感じ取ることができる。

 本編中、自分のポジションを動くことなくそのままだ。そして、全面スクリーンに時折映し出される映像でも、足下に視線を落としたまま無表情で顔を上げることもカメラを見ることも客席に視線を向けることもない。

 カメラ自体が意識的に彼を避けているようですらあった。

 他のメンバーは、彼とつかず離れず囲むように動いていた。本編の最後は、15曲目の『Will Be King』だった。スクリーンには水平線に沈む夕日に始まり、朝焼けや雲の動きや空を流れる雲の様子が一面に映されてゆく。

 エンディングのドラムの音でいったん暗転になって終わる。ステージに明かりがついた時、そこにJIROの姿はなかった。


●耐えられなかった

 アンコールまで12分かかっている。通常のアンコールより相当に長い時間だろう。

 メンバーの陰に隠れるように登場したJIROは、『Savile Row~サヴィルロウ3番地~』、『ACID HEAD』と2曲を演奏すると、中央に集まって客席に挨拶する他のメンバーをしり目に、逃げるようにステージを降りてしまった。

 それは、どう見ても普通ではなかった。ホームページには「風邪でもひいたのか?」という心配から「ふざけるな!」という抗議まで、ファンからのメールが殺到した。

 TERUはこう言う。「ファンはちょっと気づいていたと思いますよ。仙台あたりからアンコール1曲だったり、やらなかったりしてましたし。追い詰められている感じはありましたから。はれ物にさわるような空気が流れたりして」

 「金沢で『大丈夫?』ってひと言ってステージに立ったことは覚えてますね。不安になっている人間には、普通に『大丈夫?』って背中を叩くことしかできないんで。その時はまだ、JIROの本当の気持ちまではわからなかったんですけどね」

 「何だったんでしょうね。曲が終わって1回暗転になってからライトがついて、『ありがとう』って手を挙げて帰らないといけないんだけど、そのシーンを想像すると耐えられなかった。暗い間に帰ってしまいたかった」

 「あの日のお客さんには、本当に申し訳ないことをしたと思ってる。アンコールに出る時は、TAKUROくんが『出れる?ステージ上がれる?』って聞いてくれて、『無理だったら俺らアコースティックでもやれるから』って」

 「そこは意地だったんでしょうね。とりあえずやったんですけど、後味よくなかったですね」 JIROは金沢のことをそう振り返りつつ、「お客さんには悪いことをした」と何度か繰り返した。


●楽屋に戻ってこない

 増渕豊倫はこう言う。「あの時、JIROくんはアンコールで楽屋に戻ってこなかったんです」

 「あの会場はコンサート用の会場ではないんで、ステージ裏が暗いんですよ。懐中電灯がなければ誰がいるかわからないくらいなんですね。みんなが戻ってくる時に懐中電灯がひとつだけ違う方向に行ったのはわかったんですけど、誰だかわからなかった」

 「着替えをしている楽屋にJIROくんの姿が見えなくて、『あれ、JIROくんは?』って言ったら、TAKUROくんが気づいて捜しにいったんですよ」

 JIROの足元を懐中電灯で照らしていたのはネスターだった。彼は、仙台ですでにJIROの様子がいつもと違うのを感じ取っていた。彼は、非常口の横の暗がりでじっと座り込んでいるJIROの横に座って、彼の気持ちが落ち着くのを待った。

 ネスターは言う。「声をかけるとかそういう状況じゃなかったですね。待つしかないなと思って。どのくらいの時間が経ったかわからないんですけど、JIROくんが立ち上がったんで、『JIROくん、行こうか』って。それだけでしたよ」




 ⇒JIROの脱退騒動③


【記事引用】 「夢の絆 ~DOCUMENT STORY 2001-2002~/田家秀樹・著/角川書店


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