GLAY Story

GLAY関連の書籍を一つにまとめてみました。今まで知らなかったGLAYがみえてくる――。

 NOBUMASA、ドラムスに内定

2009-09-10 | 「灰とダイヤモンド」ツアー




 94年9月2日、札幌の空は雲1つなく晴れ渡っていた。夕方6時を過ぎると、北国の空に綺麗な星が輝き始めた。

 「メンバーだけで、ささやかな打ち上げをやろうよ。」 前日の10月21日、北見『オニオンスタジオ』でのライブを最後に、約1カ月に及ぶ全国13カ所のツアー「灰とダイヤモンド」ツアーを終えた。

 そしてこの日、GLAYのメンバーはスタッフとともに車で北見から札幌に到着した。


●狸小路で打ち上げ

 大通公園にほど近いシティホテルにチェックインして、部屋に長旅で大きく膨らんだバッグを放り込むと、TAKUROから電話が入った。「5分後、1階のロビーで集合ね。」 いつものTAKUROの口調だ。

 フロント前のロビーで待ち合わせた僕たちは、大通公園を越え、北海道最大の歓楽街『狸小路』に足を伸ばした。

 居酒屋に入り、北海道ならではの味覚、海産物やジンギスカン料理などを注文した。「ホントお疲れさま。よくみんなでこのツアーを成功させたよね。」 TAKUROの音頭で乾杯をする。

 しばらく談笑するうちに、TAKUROがこんな言葉を切り出した。 「今日は、メンバー全員で決めておきたいことがあるんだけど。」 その言葉に全員がTAKUROの顔を見やった。

 「みんな、どう? 俺たちの仲間であるドラムのNOBUMASAを、正式にメンバーに加えようと思うんだけど、どうかな。異論のある人がいたら言ってくれない?」

 TAKUROの言葉に、HISASHIが大きくうなずいて言った。

 「賛成だよ。オバちゃんだと何でも話せるしね。バンドのメンバーとして活躍してるのはまだ4、5ヵ月だけど、それ以前から知ってるじゃない。オバちゃんの性格、絶対俺たちに合うと思うよ。」

 その言葉を聞くと、JIROも続けてくれた。「オバちゃんと俺、すぐに打ち解けられたしね。どんなにドラムがうまい奴でもこ気持ちが通じ合わない人だったらなかなかできないけど、俺、オバちゃんが入るの賛成だよ。」 はっきりこう言ってくれた。

 TERUはもう、当然という風だった。おいしそうにビールのグラスをあけながら、「ここまでやって来れたのも、オバちゃんの存在によるところも大きいし、俺たち4人にオバちゃんが加わるのいいと思うよ。俺も大賛成だよ。」


●正式メンバーに内定

 この年の3月、TAKUROから、「ドラムが必要なんだけどさ、うちでやってくれないかな。」 そんな話があってから、ずっとメンバーとともに活動していたが、あくまでもサポートメンバーとしてだった。

 GLAYの結束力を知っていたこともあり、まさかこのようなメンバーだけの打ち上げの席で、TAKUROがそんな言業を口にするとは、僕には思いもよらなかった。

 「オバちゃんはどう? 俺たちとやる気ある?」 TAKUROの言葉に、僕は弾かれたように背筋を伸ばした。

 そして、「いろいろなバンドでドラムをたたいてきたけど、やっぱりGLAYの曲っていいよ。センスもあるし。僕はみんなが認めてくれるなら、このままGLAYのメンバーとしてがんばりたいよ。」と力強く答えた。

 4人のメンバーは拍手をして僕を迎えてくれた。 「そうと決まったらレコード会社の人にも報告しなくちゃ。」

 いつもの打ち上げといえば3時間、4時間とダラダラと酒を飲み続けるのに、メンバー全員の合意で、「NOBUMASAは本日から正式メンバー」と決まるやいなや、残ったビールグラスを一気に飲みほし、全員が席を立った。


●レコード会社スタッフの部屋へ

 ホテルに着くとTAKUROは、「これから僕がその件をレコード会社の人に報告してくるから、みんな安心しててよ。」 こう言って、レコード会社のスタッフの部屋へ向かった。

 エレベーターのドアが開いて、TAKUROが乗り込む。階の表示が2階、3階、4階とゆっくり上昇していく。TERUが僕の顔を見た。「オバちゃん、良かったね。ホント俺たちとやろうよ。」 こう言って握手を求めてきた。

 「俺ってなんてラッキーなんだ。こんなに音楽を愛し、自分たちの活動に情熱を傾けられるバンドに参加してわずか4、5カ月で正式メンバーとして迎え入れられるなんて。サイコーだよ、俺って最高にラッキーだよ。」 心の中でそう叫んだ。

 TERUの部屋に行き、備え付けの冷蔵庫からビールを取り出して、また飲み始めていると、TAKUROが一戻ってきて言った。

 「一応僕たちの総意として、オバちゃんを正式のメンバーに加えるってことを伝えてきたよ。ただ、レコード会社サイドはこう言ってたんだ…。」 少し間があく。TAKUROの次の言葉を、僕は固唾を飲んで待った。

 「『技術的な問題もあるわけだし、今度何度か彼の演奏を見せてくれないか。それで彼のドラムテクニックが充分だってわかったら、私たち会社側も認める』って言われたんだけど、オバちゃん、それでいいよね。」

 僕にとっては、その言葉だけでも十分だった。





【記事引用】 「GLAY‐夜明けDaybreak/大庭伸公(デビュー初期のドラマー)・著/コアハウス


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