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Mental Blog

2006年からメンタルトレーニングの勉強を始めたMT初心者によるエッセイ。

どの水準で目標を立てるべきか① ~宿題

2011-10-28 10:44:01 | ゴールセッティング
予告どおり、高畑好秀『自分の力を120%引き出す メンタルトレーニング』からひとつ記事をアップしようと思う。

3月まで公式戦がないこの時期、特に12月に入るとオープン戦もなくなり、モチベーションを保つのは難しくなる。
モチベーションを保つためのひとつの工夫が目標設定=ゴールセッティングである。
常々僕は君たちに目標を立てろという話をしている。
長期目標から中期目標へ、そこから達成度を逆算して日々の目標を立てる。
これが「目標の立て方」であるが、ではその目標の照準はどこに当てればいいのだろうか。
…そんな話をしていきたい。

たとえば、「鉄人」の異名をとる元広島東洋カープの衣笠祥雄。
彼はプロ入り20年目にして初めて打率3割を超えた。
それまでの彼は目標を「打率10割」としてきたという。
間違いなく達成不可能な目標であって、これは目標ではなく「心意気」であろう。
ところが、彼は目標を「打率4割」に変えたその年(1984)、初めて.329の打率をたたき出した。
高すぎる目標はそれがくじけやすいために、モチベーションを逆に低下させてしまうという。
「打率10割」などという目標は最初の試合の最初の打席で凡打を打った瞬間に達成が不可能になってしまう目標だよね。
だから、例えば「毎試合ヒットを打つ」ではなく、「3試合で3本」といったようなくじけにくい目標を立てるべきなんだ。
まぁ、プロではない君たちは結果を目標にするよりも経過を目標にするべきだとは思うがね。
よくわからなければ聞きにくるといい。

では、折角なので双方向通信にしよう。
今日ここに宿題を出しておくので、明日・明後日中に答えを考えてごらん。

衣笠の例とは逆のことが起きたとする。
例えば今週は「一日1000スイング」という目標を立てたとしよう。
その週が終わって振り返ってみれば2000スイングできた。
この目標設定は成功と言えるのだろうか。
失敗だと言えるのだろうか。
そして、それはなぜだろうか。
ちょっと考えてみ。
で、やる気のあるやつはコメント欄に答え・理由を書き込んでみ。

しばらく更新していなかったので、きづかない選手も多いだろう。
僕は今日も自由研究の仕事と日直で現場に出られない。
この更新に気づいた者は、連絡をまわしなさい。

さて、久々の双方向通信。
活発な議論…前にコメントした者の批評を述べても構わない…を求む。

不調時の練習

2011-09-30 08:35:06 | ゴールセッティング
先日OBから以下のようなコメントをいただいた。
どうもありがとう。これをネタに記事を書かせていただく。
「開き直り」の話というよりは課題などの「目標設定」の話といっていいだろう。
ってことで、ゴールセッティングにカテゴライズしてみた。

①不調の後は必ず調子がいい時が来ます。
②その不調の時の練習の姿勢やメニューも重要でしょう。不調の時は「調子を上げる」目的で練習するのではなく、調子が上がってきたときに「レベルアップしている」という目的で取り組んだ方がいいのではないでしょうか。例えば打撃の調子が上がってきた時に今までより速い投手を打てなければ意味がありません。
③不調の時の練習も「ひたすらスイングスピードを上げる」といった感じに開き直るのもいいかもしれない気がします。

分解して解説と補足を加えていこうと思う。

①について。
景気に関していえば不況のあとには好況がやってくる。
たしかにそれはそうなんだが、アダム=スミスが述べたように「神の見えざる手」すなわち「自動的に」導かれるかどうかっていうと、景気と調子は別問題となる。
メンタリティという視点から考えると、不調の原因はいくつか挙げられる。
【A:フォームの改善途中に起こる不調】
とうぜん意識しなければならない箇所が増えているわけだから、試合中に考えなきゃならないことが増えたために集中ができない。
【B:複数の指導者からアドバイスを受けて起こる不調】
これも上と似ているが、頭が整理できていないために集中ができない。
【C:外で気にかかることがあり起こる不調】
守備で気になることがあり、打撃の調子を落としたり、あるいは日常生活…成績やら恋愛やら人間関係…でのことがひっかかってパフォーマンスに集中できない。
…「そのうち調子も上がってくるだろう」と腹をくくってポジティブにとらえることは大事なんだけど、原因がAやBにあるうちは練習中に色々と課題をためしていかないと「復調」はあっても「向上」はない。それを彼は②で述べてくれている。
特にAのように「もっと打撃を良くしよう」という目的がある場合は、単純な開き直りではまずいということだね。
逆に目的のない不調、たとえばCに原因が求められる場合は、細かい課題をクリアしようとしないで③のように漠然とした目標を立てて練習に取り組んだ方がいい。

あくまで「開き直り」は試合中に集中するためのひとつの考え方である。
前にも書いた通り、練習で完全に開き直ることはありえない。
大胆にプレーすることは大事だが、それと開き直り…思いをおかないでプレーするという手法…は違うよね。
「大胆に前に出よう」とか、そこに「意識」が存在するわけだから。
ただ、繰り返すように、これは稀なケースだろうと思うが、何をやってもうまくいかなくて頭がぐちゃぐちゃしている状態のときは、守備に絞るとか打撃に絞るとか、やりたいことをちゃんと申し出つつ指導者に相談した方がいい。

目標の下方修正

2011-01-28 10:34:20 | ゴールセッティング
抽選日程も決まり、いよいよ開幕へのカウントダウンが始まったといってもいい。
だが、焦ってはいけない。
というよりも、無駄な焦りは禁物である。
人間の「動機づけ」=モチベーションの上げ方には2通りのパターンがある。
ひとつは【希望】を【エネルギーに変える】方法。
もうすぐ開幕だ!試合ができる!勝つぞ!…というポジティブな感情をそのままエネルギーにしてしまうというもの。
こっちは大体イメージがわくよね。

もうひとつは【焦り】を【エネルギーに変える】方法。

気をつけなければならないのは、達成期限が迫って【焦り】がネガティブな思考を生んではならないということ。
焦って「どうしようどうしよう、このままじゃヤバイ…考えれば考えるほど何も手につかない…」では逆に【エネルギーを浪費】しかねない。
各自が目標を設定していると思うが、期限から逆算して間に合わない計算になりそうならとるべき手段はひとつ。

目標の下方修正を行うこと。

そう書いてしまうと後ろ向きにとらえる者が多いと思うが、勇気ある下方修正は勇気なき猪突猛進より効率は格段にあがる。
たとえば2月下旬までにこんな3つの行動目標を立てた選手がいるとする。

A守備では捕球から送球への重心移動を意識し連動性をスムーズにする
B打撃ではグリップエンドからバットを出すフォームを固定する
C走塁では右足で踏めるルートを確定する

この3つの同時クリアはどうやっても間に合わない…。

そんなときには、まず優先順位を決めること。
どうやったら自分は使ってもらえるだろう。
試合に出るために補強したいのは守備だな…だとしたらまずはAを最優先しよう。
打てなきゃ走塁もないから打撃が第二の目標。走塁は3月にまわそうか。
Aを7割・Bを3割・Cは0でいい。
ということは、朝練や自主練では守備を最優先、フリー打撃のときも抜けさせてもらってノックを多く受けよう。
打撃・走塁は全体練のメニューに抑えて、家ではインサイドアウトを意識したスローモーションスイングを多めにやろう…。

やれる範囲は絞られてくるが、やりたいことがはっきりとするよね。
これが勇気ある下方修正というものだ。
下方修正といっても達成期限を延ばしたり、妥協した目標を立てろというわけじゃないんだ。
そしてやるべきことを絞った分、他の課題への【焦り】を新しく定めた焦点に向けての【エネルギーに変える】べきなんだ。
危機感を持つことは悪いことじゃない。
何も考えてないよりはずっとマシ。
だが、危機感を持った時こそ、着実に歩を進めるべきなんだ。

行動目標の設定

2011-01-22 13:12:17 | ゴールセッティング
さて、「出発地」の確認の仕方を昨日述べたが、今日は「目的地」の考え方を述べておきたい。
おそらく誰もが口にするであろう「ベスト16」という目標。
では、その目標に対し、どのような「ルート」をたどっていくべきなのだろうか。
僕は最近「プロセスを大事にしろ」という言葉をよく使うね。
プロセスとはその「ルート」のことであるが、これは「小さなゴール」の積み重ねと言い換えることができる。
「目的地」と積み重ねるべき「小さなゴール」。
これは実は似て非なるものである。

たとえば、駅のホーム(出発地)に着いてからから学校(目的地)に来るまでのプロセスを表すと以下のようになる。
1)ホーム(出発地)
2)改札を出る
3)バス停まで歩く
4)「割り込まずに」「荷物が邪魔にならないように」バスに乗る
5)バスを降りる
6)学校着(目的地)

6目的地と2~5の小さなゴールの違いがわかるかな。
6はプロセスの結果を表す「結果目標」と呼ばれるもの。
2~5は結果目標を達成するための「行動目標」と呼ばれるものである。
「ベスト16」に至るための「地区予選突破」もたとえば「レギュラー入り」も「打率3割」も「135km/h」もすべて結果目標であり、目的地に至るまでのプロセスにはなりえない。
「レギュラー入り」のために何をすべきか。
「打率3割」「135km/h」のために何をすべきか。
そこを考えていかないとプロセスとは言えないわけだ。
「プロセスを大事にしろ!」と言われている君たちが今立てるべき目標は、「結果目標」ではなく「行動目標」なのである。

では、行動目標を立てたところで、どのようにそれを現実化していくか。
それが、「お経作戦」である。
一例を挙げてみよう。
アトランタオリンピックで6位入賞を果たした女子バスケットボールチームの例である。

1ゴールと戦え! 2シュートは入る!
3豹のように走れ! 4うるさく守れ!
5攻撃の連続性を狙え! 6ニュートラルボールを狙え!
7緻密なプレー! 8集中!集中!集中!
9闘争心を燃やせ! 10自分を信じろ!仲間を信じろ!

(引用部分青字 白石豊・脇元幸一『スポーツ選手のための心身調律プログラム』)

著者の白石氏は「勝利の十箇条」と呼ばれるこの「お経」を、朝5回、練習前5回、練習後5回、一日最低30回は唱えるさせた。
プレーの指針を潜在意識レベルまですりこませようという狙いがあったらしい。
プロセスとしての行動目標はもう少し具体的に立てる必要があるとしても(大会前はこれで構わない)、特筆すべき点は以下の2点に見いだすことができる。
まず、ほとんどが「命令口調」になっているということ。
これは自分で自分に命令することで、これは監督やコーチからやらされているものではないという意識をうえつけるものだ。
そして二点目として、その中でも最も大事…なのかな?…得点に結びつきやすい「シュート」に関するお経のみ命令文になっていないことだ。
体言止めの目標はヌキにして。
これはただでさえプレッシャーのかかりやすいシュートの場面で「入れろ!」という命令口調にしてしまうと余計にプレッシャーがかかりやすくなるからとの配慮がある。

これを投手の目標に置き換えて具体的な例を挙げると…
「0-3から歩かさない!」は論外…目標に否定形は入れないもの。
「0-3から勝ち切れ!」でもプレッシャーの打破は難しい。
「0-3からでもうちとれる!」…この形がお経で唱える目標として最もふさわしい形といえよう。

目標を立てたところで、出発点とプロセスがはっきりしていないと意味がない。
出発点としての自己分析とプロセスとしての行動目標を明確にすること。
そしてそれを意識づけるために常に唱えること。
その際、プレッシャーを感じない程度に命令口調で自己暗示をかけ続けること。

以上がゴールセッティングを機能させるために欠かさずにやってほしいことである。

自己評価+他者評価=自己分析=「出発地」

2011-01-21 11:33:53 | ゴールセッティング
いかにモチベーションを保つか。
そんな課題をもってここ数日記事を書いてきた。
もう少しMT的な要素を加えて具体的なモチベーション維持方法を述べておくこととする。

MTの上ではなんといってもゴールセッティングこそがモチベーションを維持する最良の方法だろう。
色々な目標設定の仕方があるが、まず覚えておいて欲しいことは、現状を把握することである。
どこに行くにも携帯で電車のルート検索が容易にできる便利な世の中になった。
ルート検索は君たちもやったことがあるだろう。
そこに必ず表示されるものを思い浮かべて欲しい。
「出発地」と「目的地」である。

目標を立てなさいよ、というと君たちは目標はまあ書くことができる。
だが「目的地」だけを入力しても「出発地」が入力されていないとルートは検索できない。
これは意外と忘れられがち。
そこで必要になってくるのが「出発地」=「現在の自分」の把握である。
今日はそのつまりは自己分析の方法をのべておきたい。

君たちがたとえば3月に入るまでにクリアしておきたい課題をリストアップする。
(人によって項目数は異なってくる。)
その各項目に10点満点で現状の自分の評価をつけてみよう。
これが「自己評価」である。
しかしながら、これでは自己分析は足りない。
わかるかな?
自己評価だけだとひとりよがりな分析に陥りがちとなるね。
そこでもう一工夫してみよう。
それが「他者評価」。
複数のチームメイトに自分の評価を隠した上で同じく10点満点の評価をつけてもらう。
この「自己評価」と「他者評価」を短期的なスパンで繰り返し行い、自分の成長度合をしっかりと認識する。
そうやって現状の確認と課題の設定・修正を繰り返し、目標に向けて進んでいくのだ。

まず自己分析を行うことがゴールセッティングのスタートであると心得ておこう。
次回は目標をどのように立てるべきかのお話。