以前CVTフルードの圧送交換をご依頼頂いた石川県輪島市のお客様からヘルプのご連絡。
話を伺うと、圧送交換後は回転数が上下する症状は収まって快適に過ごしていたそうなんですが、つい先日不具合が起きたそうです。
今回の症状はお出掛けからの帰宅途中に
・走行中に回転数が上下する
・信号待ちからアクセルを踏んでも発進しないことがあった
・家の手前の坂を上らなかった
で、最終的にはLレンジに入れてなんとか上って家に駐車出来たそうです(>_<)
まぁCVTの異常でしょうね~(^^;)
自走で当店に来店頂くのはリスクがあり怖いということで、自動車保険に付帯されているレッカー搬送を使って入庫となりました。
ニッサン ノート NE12 2016年式 157200キロ

レッカーにて搬送されてきたわけですが、、、今は動きます(*・ω・)ノ
ただちょっとファンベルトが滑ってベルト鳴きの音は聞こえます。
エンジンを掛けた状態でメーターには警告灯の表示はありませんが、まずはスキャンツールにてDTC(ダイアグノーシス・トラブル・コード)を確認してみます。

トランスミッションに1つ記録されてました。こういった場合、DTCが無いより有った方が参考になるので助かります(^^)

P285A クラッチB圧

整備書を確認するとDCTの発生条件が記載されてました。低速域で記録されたようですね~

そして推定される原因として、ハイクラッチ・リバースブレーキソレノイドバルブかコントロールバルブASSYとの記載有り。
そして修理方法としてはコントロールバルブASSYを交換してみて直らなかったらCVTを丸ごと交換してね!って書いてありました。ってことはソレノイドバルブ単体の部品供給は無いのかな~と(^^;)
しかもコントロールバルブASSYすなわちバルブボディを交換してみて直らなかったら、何処かわかんないけど他の場所が悪いと思うので丸ごと(バルブボディはCVTの中に組み込まれてます)交換しちゃって~という(゜Д゜;)
どちらも高額修理になるわけですが、バルブボディとリビルトCVT ASSYの価格差を考えると、部品の返品が出来るわけないですし、そのやり直しは出来ませんよ(^^;)

一旦DTCを消去して状況を再現できるか試乗をしてみます!

しばらくストップ&ゴーを繰り返して走ってみたんですが、通常の巡回走行は問題なし。ちょっと加速を強めた場合はエンジン回転数の上下ブレ有り。トルクが必要な坂道を上る加速でも上下ブレ有り。
圧送交換をするキッカケとなった症状が再発且つ酷くなってきたみたいですね(>_<)
そもそも圧送交換をするときにお客様と話しをしていたのは、この回転数が上下する症状はCVTフルードの交換では直らない可能性があるということ(^^;) というのはソレノイドバルブの動きが悪かったりバルブボディの油路が詰まっているというより、CVTのギア比を決めるプーリーや金属ベルト側に滑りが起きている可能性のほうが高いからです(ノД`)
ですがフルードを交換することでプーリーに掛かる油圧が変われば滑りを落ち着かせることが出来るかも?ということで圧送交換をしたわけです。
で、その思惑通り(一時的ではありますが)収まっていたけど、やはり金属ベルトとプーリーのほうに物理的な問題があるのかなと(>_<)
試乗後、スキャンツールで確認すると『故障コードはありません』
あくまでも経験上の推測になりますが、今回のDTCは直接的な原因ではなく他にある根本的な原因、、、金属ベルトの滑りが油温を上昇させて油圧系の作動不良を引き起こしてDTCを記録したんじゃないのかな~と思ったわけです(^^;)
お客様はレッカー搬送前からCVTの載せ替えを覚悟されてましたので、直らない可能性が低くその場合に修理代が余計に掛かってしまうバルブボディの交換ではなく、CVTの載せ替えで提案をして了承を頂きました<(_ _)>

ついでにベルト鳴きの修理もってことで、ファンベルト交換から~

取り外し~

右が新品なんですが、車に装着されていた物と比べると山の太さが違いますね~
ベルトはこの方向に消耗するので交換の目安になります(^^)

オルタネーターやウォーターポンプなどのプーリーベアリングに異常が無いことを確認して、新品のベルトを取り付け。
ファンベルト交換完了(*・ω・)ノ
それではメインのCVT交換です。



フロントバンパーなど取り外していきます。

CVTフルードを排出。

圧送交換から8000キロ程走行したフルードがこれです。透明度が無くなって濁ってました(^^;)

冷却水も排出しておきます。

コンデンサーも取り外すのでエアコンガスも排出、、、ではなく回収です(^^)
回収したエアコンガスは装置の中で不純物を取り除くクリーニングをしてタンク内に一旦保管しておきます。
ちなみにこのスナップオンのマシンはクリーニング性能が非常に高くて、市販品のエアコンガスの純度が99.7%なのに対して99.99%まで純度を引き上げることが出来るんです(≧∇≦)

回収量は355グラム。
ちなみに~この車の規定量は400グラムなのでかなり優秀ですね♪

バッテリーを外して

ラジエーターアッパーサポート

コンデンサー、ラジエーターも取り外し。

作業がし易いようにフロントクロスメンバーも取り外し~

CVTに繋がっているホースや配線を外しておきます。


ドライブシャフトを左右とも取り外しです。


ここまでに取り外した部品達。
こうやってみるとそんなに多くの部品は外してないですね(^^;)


遮熱板を外すのを忘れてたのでここで取り外し(^^;)

セルモーターを外した箇所を利用して

リングギアとトルクコンバーターを切り離しておきます。


リアと左のマウントを切り離す前に

ミッションジャッキとリフトサポートを使ってミッションとエンジンを支えておきます。
その後、ミッションとエンジンを結合しているボルト、ナットを外すと

ミッションが下りました(*´∀`*)ノ

CVT ASSYですがトルクコンバーターなどは再利用となるので、リビルトCVTに移植となりますが~その前に

ここまでバラしたついでに、いずれオイル漏れをする可能性があるリアクランクシールを交換します。

リングギアを外すと現れます(^^)



取り付け完了~これでオイル漏れの心配は無くなりました(≧∇≦)b

で、元に戻します。

リビルトのCVTにパーツを付け替え完了。

ミッションケースが綺麗なのでぱっと見だと新品に見えますね~

慎重にエンジンに合わせていき

ドッキング完了♪
順に部品を戻していきます(*・ω・)ノ








戻し終わったところで冷却水をLLCバキュームチャージャーで充填です(^^)

まずは真空引き

真空状態が安定したところで

バルブを閉めて

真空状態が維持できるかどうかを確認

問題が無ければタンクに用意した冷却水を

充填開始!



充填完了です(*・ω・)ノ
通常は冷却水の充填後に何十分~何時間もエア抜きをしないといけないんですが、LLCバキュームチャージャーを使うと10分程度で終わる上に確実にエア抜きが出来ます(^^)

次はエアコンガスの充填です。
カーエアコンサービスステーションを再び接続して

先ほど回収して保管しておいた355グラムに不足分45グラムを足した400グラムにセットして充填開始。
もちろんお客様に負担頂くのは45グラム分だけです(^^)
但しエアコンオイルに関しては再利用は出来ないので、回収時に抜けた分だけ新品を補充してます<(_ _)>

エアコンガスの充填完了。

最後にCVTフルードの充填。
ドレンプラグを外してアダプターを装着。

使用するフルードはワコーズCVTFセーフティSです(^^)

規定量を充填。


CVT ASSYを載せ替えているのでエンジンを掛ける前にTCM(トランスミッション・コントロール・モジュール)を初期化する必要があります。

画面の指示に従って操作していくと

消去完了。

リセット前に『R』にシフトレバーを操作していたんですが、入れたまま次の作業へ進みます。
キャリブレーションデータがリセットされているか確認してみます。






確実にリセットされてますね(^^)
ここでシフトレバーを『P』へ(*・ω・)ノ

そうすることで新たなキャリブレーションデータの読み込みが始まり、メーターに『P』が表示されます!

そうすることで新たなキャリブレーションデータの読み込みが始まり、メーターに『P』が表示されます!


CVTフルード劣化度のデータも消去です。


消去完了。
これでやっとエンジンを掛けれます(^^)

しばらくアイドリングさせてCVT油温が規定値に入ったことを確認したら

しばらくアイドリングさせてCVT油温が規定値に入ったことを確認したら

オーバーフロー。
滴状になったらドレンプラグを取り付けて油量調整完了です♪
作業が完了したので不具合が解消されているか確認の試乗です。
まずは加速。スムーズに違和感なく加速していきます。
そして回転数の上下ブレ。色んなシチュエーションで走行してみましたが、ブレは一切発生しませんでした。
問題無さそうですね(^o^)
念の為、スキャンツールでDTCを確認してみましたが、当然ながら記録はされてませんでした(^^)
ついでにキャリブレーションデータを見てみると



しっかりと学習してますね♪
これにて修理完了となったのでお客様にお返しとなるのですが、今回は特別に休みの日を利用して納車してきました(*・ω・)ノ

立ち寄ったのと里山空港。

立ち寄ったのと里山空港。
初めて来ましたが、、、山の中に空港があってビックリです(゜ロ゜;ノ)ノ
皆様からの整備のご依頼をお待ちしています。