Now Know No Limits.

なののり。日々のしょうもない書き散らし。

動揺

2010-09-30 03:27:23 | 書き散らし
仙台に来て,一年半が経過した.

第一志望の研究室に入ることは適わなかったが,腰掛けでもこれ幸いと入った今の研究室で,それなりにやっている.
これまた幸いにして研究成果はそれなりに順調というか,良い評価を受けた.過分といってもいいくらいだ.
ドクターもパスした.マスターを無事通れば,まず間違いなく来年の春には進学しているだろう.

ドクターからは必ず入れます,といってくださった第一志望の研究室の先生にはわるいことをしたが,過分な評価で底上げされた今の研究で走り続けることにしたのは今年のはじめ頃だったと思う.
当然,迷った.
しかし,合同ゼミなどで見た元第一志望の研究室の研究テーマにあまり魅力を感じなくなっていた.私が関心を持っている内容と志向が異なることが原因だ.たぶん,それなりの道筋を示してやらせてくれ,って言ったらやらせてもらえるのだろうけど.それなりの道筋を示せるほど情報も,ネタもないのが実情だった.
それと比べれば,いまやっていることはそれなりに軌道に乗っていると自分で思っていたし,外部から評価されたこと,そしてドクターでの継続性という強みを考えれば,このまま行くことがベターに思えた.ある種,夢よりも実利をとったわけだ.その結論に納得もしていた.
二線級でも良いから,わたしが研究者としてやっていくためには,まずドクターを確実にとらなくてはならない.今の研究はあまり耳目を集めないかもしれないし,ニッチ過ぎて潰しが利きにくい.
直続の指導教員はとても良い人であるし,ドクターとるという一点で言えば,悪くないと思っていた.

ところが,今週になってあることに気がついてしまった.
引用文献のリストを作っていた.指導教員の雑誌論文.誌名で調べた.怪しげな組織だった.組織名で調べた.奴らはpseudo scienceなのか?という海外掲示板での質問.良くて営利目的の詐欺だという批判.擁護意見の痛さ.
英語版 Wikipedia では「内容が宣伝でしかないから」という理由で記事が削除されている.開催会議のメーリングリストにおけるスパム扱い.根拠の分からない招待講演の申し出と無視した,無視すればいいという書き込み.

気付くべきタイミングは,あったと思う.例えば,なぜ,我々のグループ,更に言えば私が書いたところ以外で引用されていないのか.
大きな注目を受けていないというのは,まぁ仕方ない.ニッチな分野だし,十分起きうることだ.加えて,医学系の分野なのに,我々は工学系からのアプローチである.医学系から認知されていないことは十分あり得る.グループとしても小規模だし,このテーマがはじまってからまだ2年ちょっとだ.
それこそ直続の指導教員のことを考えないにしても,研究室自体がやや特殊な分野・経緯をもっている(ちなみにボスはたぶん間違いなくおかしなところはない先生).

あるいは直視したくない部分もあったのかもしれない.あるいは判断するだけの情報を持ち合わせていなかったこともあるかもしれない.
他にもいろいろと好意的な解釈は出来る.直続の指導教員の評価に関しても,この研究テーマではないけれども,某世界的な学会の委員を務めていた,とか.割と人がよいタイプなので付き合いとかでそういう方面にも手を出しているんじゃないかとか.あとは怪しげな組織の恥知らずな活動に関する種々の情報は5年前くらいがピークなこととか.その論文誌にしても,ひとつとはいえ別のメジャーな学会の記事検索でリストされているとか.その怪組織も当初は人集めで無茶をしていたがいまは成熟してきている,ということなのかもしれない.あるいは無視することが当たり前になったのかもしれないが.

それでも,いずれにしても,怪しげな雑誌の論文一本が我々のグループの筆頭成果であることに間違いはない.
現在,私のやっていることは,もしかしたら偽物の上塗りなのか?

元第一志望の研究室のことが頭をよぎった.
まだ,ぎりぎり軌道修正はできるのかもしれない,と思った.

もちろん,これから私自身が注力して,状況を変えていくこともできる.
これまでに受けた外部からの評価は,上で書いたネガティブなこととは独立に起きたことで,それは研究の内容自体がそれなりの質を持っていると判断されたといえると思う.そのあたりを足がかりにすることは出来なくはないはずだ,そう考えることは出来る.

それでも,大いに動揺している.迷いが再び生まれている.

来月号,とあるメジャーな雑誌にそのニッチな分野のサーベイ記事が載るらしい.そこで「筆頭成果」に一切言及がなかったら,どうしようかと考えている.
そして,出張中で不在の教員が戻ってきた時,自分がどのように振る舞うべきか.それを考えている.

2010/09/30 3:55

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