笑いによる入院患者の体調改善の研究報告: 新潟市民病院の臨床研究
野本優二・矢部正浩医師(新潟市民病院 総合診療内科)により、笑いによる入院患者の体調改善の研究報告が公表されています。
(論文の詳細は後の部分に記載)
『お笑いの公演で笑ったと回答した人はそうでなかった人に比べ,体調が改善したと回答する割合が有意に高かった(オッズ比4.07, 95%信頼区間1.34 ~12.41; P = 0.014).
同様に「声を出して笑った」と回答した人は「ニヤッとした」と回答した人に比べると,体調が改善したと回答をする割合が有意に高かった(オッズ比2.24,95%信頼区間1.21 ~ 4.14,p = 0.010).』
笑いは、細胞核内の遺伝子DNAを作動させ、DNA→→RNA→→タンパク質(酵素、受容体、コラーゲンやエラスチンのような構造タンパク質など)を作り出す原動力になります。
血糖値や血圧も下げてくれます。
ストレスホルモンのコルチゾールも低下させます。
ノーマン・カズンズの著作「笑いと治癒力」には、笑いによる重症の膠原病の治癒がまとめられています。
この本の内容に関しては、神奈川大学 人文学会の学生による要約があります。
http://human.kanagawa-u.ac.jp/gakkai/student/pdf/i07/P015-019.pdf
村上和雄 公益財団法人国際科学振興財団バイオ研究所所長の「心と遺伝子研究会」のサイトには次のように書かれています。
「思いが遺伝子の働き(オン・オフ)を変える」という仮説を科学的に証明するため「心と遺伝子研究会」を2002年8月29日に立ち上げ11年が過ぎました。 この間に数多くの成果が得られました。
「笑い」が糖尿病の患者さんの食後血糖値上昇を抑えたという実験の論文はロイター通信で世界に紹介され、世界各地で反響をいただきました。
またその後「笑うネズミ」実験では「快」を感じたネズミのストレスが軽減されることを見出しました。
「笑い」というポジティブなストレスはよい遺伝子のスイッチをオンにすることが検証されてきました。
ここに至って私は「祈り」に科学的アプローチを試みたいと考えています。
人類は宗教が始まる以前から祈ってきました。 どの民族にも祈りによる効果が出ています。
だから、祈ることが今現在も続いている。 科学的なアプローチはまだまだこれからの段階ですが、その道筋を我々はつかんでいきたい。
祈りは効果があると思って皆さん祈られているはずです。 だから祈りには必ず効果があります。
それを遺伝子レベルでも解析するのが私の役割です。
この研究は今後人々の人生観や健康観に大きく影響を及ぼしていくはずです。
私たちの健康は心に大きく影響を受けています。 心が体を治すということを証明していきたい。
私たちは仏教的な祈りと遺伝子の働き(オン・オフ)の研究を2013年12月8日から開始しました。
本プロジェクトは日本人の中にある良い遺伝子、やる気遺伝子をオンにするための研究と活動を目的としております。
(引用終わり)
平成23年度 桐生市高齢者大学 開放講座 『笑いと健康~笑いの医学的効用~』
https://www.youtube.com/watch?v=LC03f7aYgI0
もネットにあります。
これらは、笑いが人体を構成する分子(オーソモレキュラー(正常分子))を適切に調整して作り出し、健康な人体の機能を生み出す能力があることを示しています。
有毒物質である医薬品を騙されて飲まされて、死に至る重篤な副作用に苦しめられたり、死亡リスクの上昇や癌リスクの上昇に怯える恐ろしい現代医療を受けるより、非薬物療法である笑いの方がはるかに効果的だと思われます。
例えば、ネット検索で「吉本新喜劇」「落語」「ドリフターズ」などで動画を検索すれば数多くヒットし、無料で見ることができますから、それらを見るのも良い方法です。
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笑い学研究26(2019.8)p.65-73
笑って病気は吹き飛ばせたか―入院患者さん向け院内お笑い公演「笑って病気を吹き飛ばそう」7公演の総括―
野本優二・矢部正浩(新潟市民病院 総合診療内科)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/warai/26/0/26_65/_pdf/-char/ja
要旨
【緒言】
入院患者さん向け院内お笑い公演「笑って病気を吹き飛ばそう」を7回行った.果たして,笑って病気を吹き飛ばすことはできたのだろうか.
【方法】
新潟市民病院で2006年から2013年まで,2007年を除き年に1回お笑い公演を開催した.出演者の大部分は毎年異なっており,出し物は漫才,漫談,落語,雑芸等であった.参加者にアンケートを配り,年代,公演前の体調,公演の感想,公演後の体調変化の4項目を調べた.
【結果】
総計240名分のアンケートを解析した.参加者の年代,公演前の体調,公演の感想に関する回答では年度による有意差は認めなかったが,公演後の体調変化についての回答では,年度による有意差を認めた.
ランダム効果モデルを使って7公演の結果を統合すると,公演で笑ったと回答した人はそうでなかった人に比べ,体調が改善したと回答する割合が有意に高かった(オッズ比4.07, 95%信頼区間1.34 ~12.41; P = 0.014).
同様に「声を出して笑った」と回答した人は「ニヤッとした」と回答した人に比べると,体調が改善したと回答をする割合が有意に高かった(オッズ比2.24,95%信頼区間1.21 ~ 4.14,p = 0.010).
【結論】
お笑い公演を見て笑った人は笑わなかった人に比べると,体調が改善したと回答する割合が高かった.さらに声を出して笑うことは,ニヤッとする笑いよりも効果的であることが示唆された.
キーワード:笑い,お笑い公演,笑いの効果,アンケート調査,ユーモア
研究者のプロフィール
野本優二
1999年3月富山医科薬科大学(現在富山大学)医学部医学科を卒業.1999年4月から新潟市民病院で内科初期研修開始.2001年4月以降,総合診療科(現在は総合診療内科に改称),緩和ケアチームで診療に従事.2014年4月から緩和ケア内科部長となり現在に至る.
矢部正浩
1995年3月新潟大学医学部医学科卒業.1995年5月から新潟大学市民病院内科初期研修開始.1997年5月から川崎医科大学総合臨床医学臨床助手となり,2000年4月から日本原病院内科で診療を行う.2002年11月に新潟市民病院総合診療科(現在は総合診療内科に改称)に移り,2008年4月同科部長となり現在に至る.