騙されたら、騙される方が悪いのか?
今から数十年前、ある国立大学で私が教育学の授業を受けていると、教育学の教授が、『騙されたら、騙される方が悪いのだ』と高らかに宣言し、それを聞いていた100人余りの二十歳前の学生たちから大きなどよめきが湧き上がりました。
その後、この教授の言葉を真に受けて、現実にそれを実行して人を騙す学生も現れて来ました。
教育の影響力とは、実に大きなものです。
数十年後の昨年2019年11月、薬のチェック No86(2019年11月)(医薬ビジランセンター)に、「だまされることの罪」という論説が掲載されました。
その結論は、「だまされることは罪なのである。」というものです。
これは、様々な人が、様々な意見を持つ、解釈・判断の難しい事例です。皆さんは、どのように思われますか?
この論説は、高血圧ガイドラインを例に上げて書かれていますが、そっくりそのまま、他の事例、例えば、肥満、コレステロール、血糖値、糖尿病、糖質制限などにも当てはまります。
もちろん、このブログで取り上げているワクチンにも当てはまります。
以下に、医薬ビジランスセンターの論説をコピーしておきますから、各自でお考えになってください。
ちなみに私の結論は、数十年前も今も、「騙すほうが悪い」です。
これは、単純すぎる幼稚な結論なのでしょうか?
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(オープンアクセスなのでコピーを掲載させていただきます)
薬のチェック No86(2019年11月)、医薬ビジランセンター
https://www.npojip.org/chk_tip/86-Editorial.pdf
Editorial だまされることの罪
伊丹万作という映画監督・脚本家をご存知だろうか? 主な監督作品に「赤西蠣太」、脚本作品として「無法松の一生」がある。映画俳優・監督であった伊丹十三の父でもある。
敗戦の翌年 1946 年、肺結核のために 46 歳で亡くなった。表題はその伊丹万作のエッセイ「戦争責任者の問題」からとっている。
伊丹は、戦後、大多数の日本人が “ だまされて ” あの絶望的な戦争に加担させられたと言うことで、自分の責任から逃れようとしていた時に、“ だまされたものは正しいとは、古来いかなる辞書にも決して書いてはいない ”、“ だまされるということ自体がすでに一つの悪である ” と主張した。“ だまされるということはもちろん知識の不足からもくるが、半分は信念すなわち意志の薄弱からもくるのである ” とも述べている。
本誌 85 号と今号で批判している高血圧ガイドライン 2019 を、“ 雑作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失って ” 信奉し、高価な薬剤を、しかも多剤処方している医師たちは、伊丹の言葉を借りれば、罪人と言えよう。81 号の Editorial で取り上げたディオバン事件を思い出してほしい。ねつ造論文を使った宣伝に踊らされ、累計1兆円を売り上げるほどの処方をした多くの医師が “ だまされた ” と思っていることだろう。
しかし、医師はまがりなりにも専門家である。少しの懐疑心をもって、論文を批判的に読めば、だまされることはなかったはずだ。
ディオバン論文の不正を見抜いた京都大学の由井芳樹医師のように。
伊丹は言っている、“ だまされたといって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう ” と。
これを医師の世界に当てはめれば、「ディオバン事件でだまされたといって平気でいられる医師なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう」となる。
だまされた自分自身を深く反省したならば、この事件を全く反省していない日本高血圧学会が作成したガイドラインなどは信用せず、英国の NICE のような利益相反のない団体のガイドラインを参考に診療をするはずだ。だが、多くの医師がだまされた自身を批判的に顧みることをせず、無批判に高血圧ガイドライン 2019 に従い、過剰な降圧をもたらし、受診した人(高血圧患者であるとは限らないから)の健康を損ねている。
厳しい言い方にはなるが、健康診断等で血圧が高いと指摘され、医者の言うがままに処方された薬剤を服用する“患者”にも“だまされることの罪 ” があるのではないか。車や家など高価なものを購入する時には、ネットで検索を行ったり、本を読むなどして勉強するだろう。ならば、自分や家族の健康・生命にかかわる重大事である。高級品の購入以上に勉強してから、薬剤を服用するかどうかを考えるべきではないだろうか。
少しの努力で、本誌のような利益相反のない団体の情報にたどり着けるはずである。
だまされることは罪なのである。
以上