麹町フレンチレストラン・・・

麹町のフレンチレストラン。
オーナーの奥様が、友人と親友なのだそうだ。

一連の事態は先月末のランチタイムから始まった。

美味しいコース料理とグラスワイン3杯目が友人のお腹に無事、収納された、その時、
満腹で満足しているはずの友人がオーナーを呼びつけた。
『オシャレなフレンチを謳っているのに、壁がシンプルすぎる。もっとオシャレにしなさい』
オーナーの奥様と親友だ、というだけの理由で、
奥様以上の威圧的な態度を取る友人は、さすが、である。

そして、こう付け加えた。
『りささんが生け花で壁を飾るからスペースをよこしなさい』

何？？？聞いていない？？？？？

でこっぱちの発言力はオーナーの思考回路を停止させてしまった。
この業界では名の通ったフレンチのオーナーが、どの壁を提供すべきか、店内をウロウロし始めたのである。

友人は畳みかける。店内の装飾を指さして言い放つ。
『この額縁を外して、りささんにスペースをよこしなさい』

圧倒的パワーにたじろぎ、挙動不審となったオーナーは“このスペースをどうぞ”と、店内正面の照明が当たる壁を差し出したではないか。
次は、ワタシがたじろぐ番となった。

『このスペース一面に思いっきり、花ぶら下げちゃってください』

え～～～さすがに営業妨害になりかねぬ。
壮大で深慮に欠けた発言。
日頃、小さな嘘をつく勇気もないワタシをはるかに凌ぐ大口である。今度、見習おう。

と言うわけで、先月末、数日間の猶予を与えられたワタシは、家内産業に勤しむこととなった。
様々な妨害、障害・・・



なだめたり、すかしたりしながら・・・

12月1日、作品は麹町フレンチレストランの一面どころか、二面を占拠することとなった。
正面の壁。

サイドの壁。

≪ステキな空間になりましたね～お客様にも喜んでいただけるとウレシイ限りでございます≫
風邪をこじらせつつ納品に立ち会って下さったオーナーと共に、
謙虚な思いに浸っていると、仁王立ちして壁掛け作業を見守っていた友人が言い放った。
『次は12月31日、お正月バージョンに入れ替えだから！ヨロシク！』

気高い誇りには、謙虚よりも才能を発揮させるものがある（ジャン・パウルの名言）





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