goo blog サービス終了のお知らせ 

囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

歴史秘話ヒストリア

2021年03月28日 | ●○●○雑観の森

 

歴史秘話ヒストリア  NHK大阪放送局制作の歴史情報番組で、逸話を中心に展開・解説した。2021年3月17日で終了し、12年の歴史に幕を閉じた。

 

 

 


長期にわたって権力構造が変わらなかった時代から学ぶこと

 ~ 本当に、失われた十年、とはいつのことか の巻】

 

 

 

幕末の実話を、おひとつ――

 


 才名高き小花和(おがわ)某なる侍が

 徒士頭(かちがしら)のお役に就いた。

 現代の会社の役職でいえば

 係長クラスであろうか。

 

 友人が昇進に当たっての心得を

 こう説いて注意した。

 「むかしから一職の長となったものは

 老中や若年寄の邸宅にうかがい、名刺を出し、

 お礼まいりをせねばならぬ。

 これより、お世話になるエライ方には

 品物を持ってゴキゲンを取らねばならぬ」

 

 すると、小花和はニコリ笑って

 「拙者の職は将軍様から命ぜられたもの。

 相手がたとえ大老であったとしても

 私邸に出向き礼を言う必要などない。

 ことに贈り物はワイロと同じであって

 武士として最も慎むべきことではないか。

 だが幕府の『しきたり』であるなら

 いたしかたあるまい」と言った。

 

 早速、見事な大マグロ数本を釣台に載せ

 大老や老中など要職の玄関にいたり

 これを仲間(ちゅうげん)にかつがせては

 一匹ずつ名刺をつけて

 <常例によってワイロを差し上げます>

 と大声で挨拶して歩いた。

 

 当時の大老は、赤鬼の異名を獲る井伊直弼。

 徹底的な「悪弊撲滅」を目指しており

 これを聞いて いたく感服し

 彼を日光奉行に大抜擢した。

 さらに内膳正(ないぜんのしょう)に任じ

 重用した。

 

 ところが「桜田門外の変」が起こり

 井伊大老は暗殺され、

 小花和は要職を外された。

 その後、官職には就かず

 もっぱら風月を愉しんで

 穏やかな日々を送った

 と伝えられる。

 


         ◇

 

粛清(安政の大獄)を断行し

暗殺(桜田門外の変)された。

かの大老の人物評はさまざまであり、

定説が今一つ定まらない。

徳川慶喜は回想録「昔夢会筆記」で

「才略に乏しいが、

決断力のある人物」

と評している。

いまでも決断力、突破力は

なかなかあなどれない。

 

        
         ◇

 


中国古典「中庸」のなかに

 隠れたるより見(あら)はるるはなく

 微(かす)かなるより顕(あきら)かなるはなく

 ゆゑに君子はその独(ひとり)を慎むなり

とある。


この「隠」とは幽暗の地、

すなわりヒトの見ていない場所。

また「微」とは零細の事柄を指した。

 

たとえば

ヒトのいる所では

如何に体裁を繕うていても

ヒトの見ていない裏に回れば

随分と道理に背いた心を出して

醜い態度をするものだ、というワケ。


また

大きな問題に対しては

相当深く注意するけれども

些細な事柄については

自分の勝手な理屈を付け

悪いこととは知っていながら

平気でやってのける。

 

そこで、この言葉については

君子は、

その邪念悪行の兆しを防いで

陰日向なく、よく独り慎むところに

成功の秘訣がある、

と解さている。

 


         ◇

 

現代のこの十年、

いや一年を振り返ろう。

支持率の上下の動きではなく

透徹した歴史観にて

誠実か否か

信任できるか否か

そこを見極めたいもの。

碁でいうところの

大局観というヤツである。

 

        



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。