【鏡のなかのわたしの巻】
■このところ悪い夢を見る。真夜中に目が覚める。きょうは午前2時過ぎに目が覚めた。もう一度寝ても同じ夢を見るかもしれないから、そのまま朝まで起きている。キーボードに向かうか、碁盤に向かうか、本棚に手を伸ばすか、ラジオを聴くか、ペットを愛でるか。そのあたりである。子どもの頃からよろしくない腎臓のせいではなさそうだ。病院で定期的に診てもらっているが、まずまずである。では、なぜ?
■ヒトは誰にも話すことのできない秘密を一つや二つは抱えている(はずだ)。バレると、このままの状態で組織や家庭にいられなくなることだってある。分かっていて止められない。清く正しく生きている(と思い込んでいる)ヒトも、自分と世間に折り合いをつけて生きているだけだ。
■違法なものに手を染めているなら、バレるか、バレないかは深刻だ。バレたら、観念するしかない。バレたものが新聞の社会面に載る。大きな事件は一面に載る。この世では、最初の裁きだ。裁判がその次の裁き。その先も長い社会の裁きが待っている。
■だったら、思い当たることがないのに、悪い夢を頻繁に見るのは酷ではないか。いや、思い当たることがないこと自体が問題なのか。この頃のわたしの悪い夢は、今となってはたわいのないものだ。希望の学校に入れなかったとか、思いがけない部署への異動があったとか、なかったとか。すべて過去の話である。学生時代に考えていたことも、やっていたことも、やれなかったことも「みんな夢でありました」。浄玻璃鏡の前に立つのも遠い先ではなくなってきたのに、いまだ自分と向き合うことを恐れているわたし。
じょうはりのかがみ 閻魔王庁にあり亡者の生前の行いを映し出すという鏡。転じて、相手にごまかされない見識。(岩波国語辞典 第五版)