囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

なぜ碁盤は長方形か

2020年04月05日 | ●○●○雑観の森

 

向かい合って座ること ~ 「隔意」とはどういうものか 「興」とは何か の巻】

 


■なぜ、碁盤は「タテ長」なのか。

その素朴な疑問に答えを出しておきたい。

 

■「二人の対局者によって向かい合って打たれる遊び

であることが、合理的な理由として考えられる。

碁盤が正方形であれば

「どこに座っても結構です」

となってしまい、なんとも締まりがない。

そこで座る位置を示すために、わずかな長短を付けた。

この説が有力であり、収まりがよろしい。

日本人の美意識であり、智恵の産物であろう。

 

■さらに二人が対座する際の距離感だが、

両者の関係が疎遠であったり

疎遠の形式を取るべきであったりする時は、

その距離は自然と長くなる。

ころあいのよい「間合い」である。

剣道でいえば、切っ先を合わせて

その機をうかがっている「間合い」。

 

■対局というのは「非日常体験」である。

(とりあえず)敵対関係にある

という設定で始めるものだから、

普段は、仲良かろうと悪かろうと、

たとえ初対面であろうと、

対局中(=戦闘中)は

勝負を巡る『隔意』」が

なくてはならぬ。


「隔意」とは、読んで字のごとく

相手と自分を隔てる意識のことである。

両者は碁盤の長い方の辺を隔てて座る。

短い方だと、近すぎて具合が悪い。

その絶妙の距離感で碁石を操り

盤上バトルを展開するというのが

対局者(=指揮官)のミッションなのである。

 

■蛇足ながら、対局中に「おしゃべり不可」なのは、

周到に仕組んだコミュニケーションケーション

のフォーム(形式)があるからだろう。

 

古典落語にある「熊さん・八っつぁん」のごとき

「おしゃべり碁」も時には楽しいが、

緊張感不要の「縁台碁」だけにしておけばいい。

アマのヘボ碁のレベルであっても、

気の抜けた漫談碁は、わたしは興ざめである。

「遊び」「趣味」の類いは「興」がすべて。

興がなければ無価値。あるいはマイナスでさえある。

「気の抜けたコーラ」「冷めたピザ」「腐った鯛」

 

はっきり申し上げておくが、何度も書いてきたように

「待ったをする碁打ち」

「おしゃべりな碁打ち」

とは対局しない。

 

一局の積み上げた時間を台無しにする。

時間のムダ以外の何ものでもない。

 


■さて、タテ長の盤面になったワケについて

「盤上の手近な点と、遠い点では、
対局者と盤面を結ぶ視軸に長短ができる。
それを調整して盤面を均等に見渡せるため
タテ長にした」

という説がある。

これは俗説といわれている。

 

■ちなみに、

ネット碁やテレビ中継、新聞碁、棋譜などは正方形

地(陣地)の大きさが把握しやすい。

しかし、これも味がないとわたしは思う。

長辺と短辺に、わずか1寸(3.3㌢)の差を付けた

妙人の感性に思いをはせるのである。

 

碁盤 通常は縦横19本の線を持つ盤「19路盤」を指す。交点(目)の数は361、マス目の数は324。縦1尺5寸(45.5㌢)、横1尺4寸(42.4㌢)。縦が横より3.1㌢長い。その差は、ざっくり1寸(3.3㌢)差といわれてきた。正倉院御物の紫壇の碁盤は、縦が横より8㍉だけ長く、ほぼ正方形。この頃はまだ正方形だったと推測できる。

 

 


■新型コロナ渦のなかで対局機会が減り、

自宅でネット碁をしている碁友が多いようです。

身体の健康にも、精神の健康にも、よろしくない。

リアル碁が自由に楽しめるようになってほしい

と願うばかりです。

「つなぎ碁会」は土曜日午前です。ぜひ。



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