シャーロット交響楽団:ハーデリッヒとぺリック、深い音楽性と妙技を華やかに融合
2008年3月15日
ウィリアム・トーマス・ウォーカー
Classical Voice of North Carolina
その夜、ブルメンタル・パフォーミング・アートセンターのベルク劇場周辺では、ACCバスケットボールの決勝戦や聖パトリックズ・デーにまつわるお祭り騒ぎが繰り広げられていたが、劇場には多くの人々が集まり、シャーロット交響楽団のゲスト・ソリスト、指揮者、オーケストラによる最高の演技を楽しんだ。音楽監督のクリストフ・ぺリックによるドイツ人作曲家のレパートリー、とりわけリヒャルト・シュトラウスの作品には定評がある。しかし、この日のコンサートがことのほか待ち望まれていた理由は他にもある。人々は、グリーンズボロ交響楽団とのグラズノフの協奏曲の演奏にて稀にみる熟練度を披露したソリスト、アウグスティン・ハーデリッヒの演奏を、心待ちにしていたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)のヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61は演奏機会が多いため、作品の根本的な要素が見落とされがちでもある。同曲の形態は、モーツァルトによって起用されたような典型的な協奏曲の形態とはまったく対照的である。華やかなオーケストラの序奏は控えられ、曲を始めるティンパニーの5つの柔らかい音は第一楽章の音調とリズムを設定するだけでなく、楽章全体のフレーズをつなぎ合わせる役割を果たす。幅広い音域に渡るヴァイオリンの装飾音および合いの手は、オーケストラのメロディーの発展と対比している。ヴァイオリンのカデンツァ(この場合はフリッツ・クライスラーによるカデンツァ)の後、ようやくソリストはオーケストラの旋律を本格的に取り入れる。第一楽章の結びであるこの箇所はまた、優美な第二楽章から意気揚々とした第三楽章への移行部において、鮮やかに反映される。
悲惨な事故で大火傷を負ったハーデリッヒは、幾度にも及ぶ手術とリハビリを克服し、2006年度インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝した。ハーデリッヒの演奏はあたかも、名手の矢筒に秘められた矢が、完璧な演奏の中に一つ一つ解き放たれていくかのようだった。完璧なイントネーション、音色とデュナーミクの洗練されたコントロール、クリスタルのように透明な弦の調音。ハーデリッヒの黄金のように輝く、驚くほど軽やかな音色は、深みある微妙な効果を帯びるフレージングと調和していた。ハーデリッヒは、パガニーニのカプリース第9番を苦もなく演奏し、アンコールを飾った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2008年3月15日
ウィリアム・トーマス・ウォーカー
Classical Voice of North Carolina
その夜、ブルメンタル・パフォーミング・アートセンターのベルク劇場周辺では、ACCバスケットボールの決勝戦や聖パトリックズ・デーにまつわるお祭り騒ぎが繰り広げられていたが、劇場には多くの人々が集まり、シャーロット交響楽団のゲスト・ソリスト、指揮者、オーケストラによる最高の演技を楽しんだ。音楽監督のクリストフ・ぺリックによるドイツ人作曲家のレパートリー、とりわけリヒャルト・シュトラウスの作品には定評がある。しかし、この日のコンサートがことのほか待ち望まれていた理由は他にもある。人々は、グリーンズボロ交響楽団とのグラズノフの協奏曲の演奏にて稀にみる熟練度を披露したソリスト、アウグスティン・ハーデリッヒの演奏を、心待ちにしていたのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)のヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61は演奏機会が多いため、作品の根本的な要素が見落とされがちでもある。同曲の形態は、モーツァルトによって起用されたような典型的な協奏曲の形態とはまったく対照的である。華やかなオーケストラの序奏は控えられ、曲を始めるティンパニーの5つの柔らかい音は第一楽章の音調とリズムを設定するだけでなく、楽章全体のフレーズをつなぎ合わせる役割を果たす。幅広い音域に渡るヴァイオリンの装飾音および合いの手は、オーケストラのメロディーの発展と対比している。ヴァイオリンのカデンツァ(この場合はフリッツ・クライスラーによるカデンツァ)の後、ようやくソリストはオーケストラの旋律を本格的に取り入れる。第一楽章の結びであるこの箇所はまた、優美な第二楽章から意気揚々とした第三楽章への移行部において、鮮やかに反映される。
悲惨な事故で大火傷を負ったハーデリッヒは、幾度にも及ぶ手術とリハビリを克服し、2006年度インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝した。ハーデリッヒの演奏はあたかも、名手の矢筒に秘められた矢が、完璧な演奏の中に一つ一つ解き放たれていくかのようだった。完璧なイントネーション、音色とデュナーミクの洗練されたコントロール、クリスタルのように透明な弦の調音。ハーデリッヒの黄金のように輝く、驚くほど軽やかな音色は、深みある微妙な効果を帯びるフレージングと調和していた。ハーデリッヒは、パガニーニのカプリース第9番を苦もなく演奏し、アンコールを飾った。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・