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Musik von Augustin Hadelich

ヴァイオリニスト、アウグスティン・ハーデリッヒの演奏活動Note

レビュー (オレンジカウンティ・レジスター 2008年9月)

2010-04-21 | Reviews
ヴァイオリニスト、『アービン・スペクタキュラー』で真の花火を披露
レビュー:火災事故から復帰のアウグスティン・ハーデリッヒ、大砲と花火をもかすませる演奏
2008年9月7日
ポール・ボダイン
オレンジカウンティ・レジスター

・・・・・・もう一つのハイライトはイタリア生まれのドイツ人、24歳のアウグスティン・ハーデリッヒの演奏である。火災事故から復帰したハーデリッヒの知名度はまだ比較的高くないが、325歳になるストラディヴァリウスを手に、優美な解釈をもって(また、ありがたくも甘さやくどさのない)ラフマニノフのボカリースを演奏、その優れた技巧を早々と提示した。休憩後に演奏されたチャイコフスキーの協奏曲は正直に述べて大げさに演奏されがちな作品である。だが、同作品のハーデリッヒの演奏はまた際立ったものだった。ハーデリッヒは、ロボットのような指使いで曲を駆け巡ったり、聴衆にアピールするために心揺さぶる過度の感傷でお決まりのカーブや盛り上がりを強調したりはしなかった。

超一級の、けれども強引さや派手さのない技巧、この上ない品格、一貫した豊饒さをもって、ハーデリッヒはこの定番中の定番曲に生命を吹き込んだ。力みの全くないその演奏は、一方で深い感動を生み出す。勇気と洗練がバランスされた演奏は、ふだんチャイコフスキーの協奏曲には見られない(少なくとも第三楽章までは)興味深さと、深い芸術性を生み出した。

ベライゾン・ワイヤーレス劇場に集まった大観衆はハーデリッヒの演奏に感激するあまり、第一楽章の直後に総立ちになり、歓声は長く鳴り止まなかった。途切れない拍手に、セント=クレアが「演奏がお気に召しましたか?」と口をはさむ。雷のようなさらなる拍手に、セント=クレアが応える。「それはよかった、実はもう二楽章残ってるんですよ」
残りの2楽章の後に沸き起こった一層大きな総立ちの喝采に応え、ハーデリッヒはパガニーニのカプリースをアンコールに演奏した。

CDレビュー (American Record Guide 2008年9/10月 )

2010-04-03 | Reviews
CDレビュー (ハイドン ヴァイオリン協奏曲 NAXOS)
2008年09/10月
イレイン・ファイン
American Record Guide 

明確な技巧と常に心を惹きつける歌うような音色を持つアウグスティン・ハーデリッヒの演奏を好きになるのは簡単だ。しかし、とりわけ魅力的なのは、その長く深いフレーズ感、ピッチとの官能的な関係から生まれる豊かな音色、そしてハイドンの音楽に対する新鮮なアプローチである。ハーデリッヒの演奏にある何かが、他のヴァイオリニストとは違った形で私の『内面的なヴァイオリニスト』を刺激する(それは『外面的なヴァイオリニスト』と常に反目する)。ハーデリッヒの演奏には何かユニークなものが存在する。もしかするとそれは純粋な意思から生まれてくるのかもしれない。もしくは音楽の本質をついた構想から生まれるのかもしれない。言葉でそれを表現するのは難しいが、演奏を聴けばすぐに気づく。

ハーデリッヒはフレーズを空中へと羽ばたかせ、素晴らしく優美なアーチを描くことができる。そしてそれを軽やかに、しかし明確な意志を持って着地させる。彼のハイドンの演奏を聴いていると幸せな気持ちになる。浮ついた幸福感ではなく、分別のある幸福感である。音楽が流れている間、世界がとどこおりなく流れているような気持ちになる。

2006年度インディアナポリス国際ヴァイオリンコンクールで優勝したハーデリッヒは、副賞の一つとしてこの度のレコーディング権を手にした。また、優勝により元ギンゴールド使用のストラディヴァリウスを4年間貸与され、同アルバム収録にも使用されている。ハイドン、ハーデリッヒ、ストラディヴァリウスの三重奏は、互いの最高のクオリティーを引き出し合っている。ハーデリッヒ自作のはっとするほどに美しいカデンツァは、これら協奏曲の最も美しい瞬間を映し出している(そして、時にはより一層美しくしている)。

ナクソスのレコーディングにあたり、ハイドンの3つの協奏曲を選んだハーデリッヒには感銘を覚える。同協奏曲は極めて高難度の曲だが、ヴァイオリン奏者以外にはそうは聴こえない。第一番ハ長調以外の曲はけして人気も高くない。だが、ヴァイオリニストやその共演者は、これらの曲がどれほど多大な音楽の才と技巧、優れたオーケストラを要求するかをよく知っている。ハーデリッヒはこのレコーディングにあたり、ヘルムート・ミュラー・ブリュールとケルン室内管弦楽団というすばらしいオーケストラを得ている。

このアルバムを聴けば、アウグスティン・ハーデリッヒの24歳の手の中に、偉大なヴァイオリン演奏の輝かしい未来が約束されていることに賛成頂けるだろう。


コンサート・レビュー (ロサンゼルス・タイムズ 2008年8月)

2010-03-30 | Reviews
代役のミゲル・ハース=ベドヤ、アウグスティン・ハーデリッヒ、ハリウッドボウルを熱狂に包む
2008年8月30日
リチャード・S・ジネル
ロサンゼルス・タイムズ


木曜の夜、指揮者エド・デ・ワールトとヴァイオリニストのジュリアン・ラクリンによるロシア音楽の演奏を聴こうとハリウッドボウルに集まった人々を二重のショックが待ち受けていた。

まずは、デ・ワールトが急病のため出演をキャンセル。わずか1カ月前にハリウッドボウルで2回のコンサートを指揮したばかりのミゲル・ハース=ベドーヤが急遽、木曜日の指揮代行を務めることになった。次にラクリンがこれまた急病のため出演をキャンセル。今年1月にハース=ベドーヤ指揮のフォートワース交響楽団と共にカーネギーホールで演奏を行ったアウグスティン・ハーデリッヒにハリウッドボウルでの思いがけないデビューのチャンスが舞い込んだ。

この奇妙な夏に続くキャンセルの波は収まりを見せる気配がない。ロサンゼルス交響楽団の臨時指揮者、ジョアナ・カルネイロが、来週末に予定されている『チャイコフスキー・スペクタキュラー』コンサートへの出演を、同じく病いのためにキャンセルした。

しかし、良いニュースもまたある。ドイツ人の両親の元にイタリアで生まれ、これまでにハイドンの協奏曲を納めたアルバム(ナクソス)1つしか発売されていない24歳のハーデリッヒは、大変な掘り出し物ときた。

ラクリンからプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第二番を引き継いだハーデリッヒは、同曲の演奏で完璧な掌握と理解力を示した。ハーデリッヒは第一楽章のアーチのようなラインをしっかりととらえながらも、その演奏にはラインとの接点を失うことなく衝動的な激情に身をゆだねる自由があった。1683年製作の最高級のストラディヴァリウスから澄んだ深みのある音を引き出し、第二楽章に広がる美しい旋律と、影を帯びたゆらめきを鮮やかに照らし出した。最終章で、その音色にかすかな粗さが感じられたものの、ハーデリッヒのリズムは、オーケストラ以上に確かなものだった。ハーデリッヒはまた、最終章に流れる遊び心を忘れず演奏に織り込んだ。

同協奏曲はハリウッドボウルの聴衆を確実に湧かせるような曲ではない。またハーデリッヒは会場の巨大なビデオスクリーンを意識してこれみよがしに大げさな演奏をするタイプの演奏家でもない。けれども、その演奏は聴衆を熱狂に包んだ。ハーデリッヒは絹のように柔らかい音色と寸分の狂いもない重音奏法でパガニーニのカプリース第21番をアンコールに演奏し、人々の心に鮮烈な印象を残した。




コンサート・レビュー (ヒューストン・クロニクル 2008年6月)

2010-02-25 | Reviews
シンフォニー、ヴァイオリニスト二人の物語を披露
2008年6月29日
チャールズ・ウォード
ヒューストン・クロニクル

ミラー野外劇場で行われた第2回目のヒューストン交響楽団のコンサートでは、2人のヴァイオリニストと2人の指揮者の物語が披露された。

ヴァイオリニストの歳の差はわずか4歳だ。アウグスティン・ハーデリッヒは24歳。クロエ・トレヴァーは20歳。けれども、演奏の洗練度と解釈の深さにおける違いは莫大であった。

金曜日にモーツァルトのヴァイオリン協奏曲第3番を演奏したハーデリッヒは、2006年度インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝。副賞として貸与されている元ジョーゼフ・ギンゴールド使用の1683年製作のストラディヴァリウスで演奏を行った。

ハーデリッヒは同曲の演奏で自作のカデンツァを披露。幾分長めではあるが、巧みに作曲されている。同曲のテーマやスタイルを忠実に汲みながらも、モーツァルトの典型的な音楽には見られない技巧的トリックが加えられている。だがそれらは、ハーデリッヒの演奏に見られる自然な“容易さ”の中で、より鮮烈な印象を与えた。

ハーデリッヒがアンコールに披露した、二コロ・パガニーニのカプリース第9番の演奏は、ただの見世物を超えるものだった。(その意味では、ハーデリッヒの“容易さ”は、ここでは完全ではなかったかもしれない)。しかし、彼が他の作品をどのように演奏するのか、一層の興味をそそられた。



CDレビュー (KOLNER STADTANZEIGER 2008年6月)

2010-02-04 | Reviews
ケルン室内管弦楽団-ハイドン ヴァイオリン協奏曲ハ長調
2008年6月
KOLNER STADTANZEIGER

アウグスティン・ハーデリッヒは、ハイドンの手強いヴァイオリン協奏曲を魅惑的なタッチで演奏し、ダブル・ストッピングが連続する楽節においてさえ、その音色は輝くように澄み切っている。ハーデリッヒは、第一楽章の持続低音など、同曲の魅惑的なディテールを引き出すとともに、第二楽章のアダージョでは、セレナーデを歌うようにヴァイオリンを奏で、心惹きつける演奏を行っている。

CDレビュー (All Music Guide 2008年6月)

2010-01-23 | Reviews
ハイドン ヴァイオリン協奏曲(NAXOS)
2008年6月
All Music Guide
マイク・D・ブローネル

現存するハイドンの3つのヴァイオリン協奏曲が、レパートリーの中で見過ごされがちなのはどうも腑に落ちない。確かに、ハイドンの協奏曲にはベートヴェンの協奏曲や、それ以降のロマン派協奏曲のような威風や壮麗さには欠けるかもしれない。しかし、一見容易にも見受けられる同曲は、演奏者に多大なチャレンジを課し、卓越した演奏者の手をもってすれば、聴衆を充分に感嘆し得る作品である。

協奏曲ハ長調とイ長調は、ハイドンと同様エステルハージ家のお抱えであったヴァイオリン名手のために書かれたと伝えられている。協奏曲ト長調と比べ、これら2つの協奏曲には長大なソロ部分があり、演奏においてより高度な技術が要求されることからも、その説が有力である。今日においても、同曲を演奏しきるには大きなチャレンジが強いられる。

アウグスティン・ハーデリッヒは演奏に必要な洗練された技巧を有するだけでなく、音楽的清澄さと溢れる若さをもって、これらの曲を相応しい高みの世界へといざなっている。ハーデリッヒの演奏は明瞭かつエネルギッシュで、適切に取られたリスクも巧みに演奏されている。自らの手によるカデンツァは、ややロマン派よりの趣があるものの、ハイドンの全体的な概念を維持しており、曲の自然な流れを踏まえて書かれている。ケルン室内管弦楽団はハーデリッヒの明るく澄んだ音と鮮やかなアーティキュレーションに一つ一つ応え、揺るぎない音を添えるとともに、エキサイティングで魅力あるトゥッティを奏でている。

CDレビュー (ClassicsToday 2008年6月)

2010-01-15 | Reviews
ハイドン ヴァイオリン協奏曲(NAXOS)
2008年6月
ClassicsToday
ダン・ディビス

ハイドンのヴァイオリン協奏曲は、これまでにもアルテュール・グリュミオーやクリスティアン・テツラフにより素晴らしい演奏が収録されている。それらの仲間入りにふさわしいレコーディングがまた一つ生まれた。その上、手頃な価格となっている。ジュリアード学院で学んだアウグスティン・ハーデリッヒはインディアナポリス国際コンクールで優勝、真正とされるハイドンの3つのヴァイオリン協奏曲に若々しい鋭気をもたらし、また自身の才気溢れるカデンツァを作品に添えている。ハイドンの初期作品である3つの協奏曲は、ハイドンがエステルハージ宮殿に仕えていた1760年代にさかのぼる作品である。著名なヴァイオリン名手、ルイジ・トマジーニのために書かれたとされる優美な作品群には、ダブル・ストッピングで奏される挿句と快活なパッセージワークが散りばめられている。

協奏曲ハ長調は、快活な第一、第三楽章、そして優雅な第二楽章アダージョで特筆に値する作品である。同曲を優美に歌い上げているハーデリッヒの演奏には、心打たれる内向性と感情の激しさが見られる。ハーデリッヒはまた、イ長調の華やかなソロ、そして付点音符、ダブル・ストッピング、装飾音など名手的タッチを特徴とするト長調の中間部を巧みに演奏している。全曲を通じ、ハーデリッヒの高音域における優美な音色は、ただちに聴くものを魅了する。唯一、ハーデリッヒの演奏に異議を唱える余地があるとすれば、まれに使われるスローテンポのビブラートが、ソプラノ歌手の震えるような声を連想させることだろう。

コンサート・レビュー (カンザスシティ・スター 2008年6月)

2009-12-10 | Reviews
ストラディヴァリウスも誇る演奏
2008年6月1日
ポール・ホースレー
カンザスシティ・スター


ヴァイオリニスト、アウグスティン・ハーデリッヒは、優美な音色と魅惑的な熟練を持って演奏する。ハーデリッヒはこの土曜日、カンザスシティ交響楽団とドボルザークのヴァイオリン協奏曲を演奏、優美で揺るぎないその音楽表現に触れるのは至上の喜びであった。

ドイツ人の両親の元にイタリアで生まれ、ジュリアード学院で教育を受けたニューヨーカーのハーデリッヒは弱冠24歳。圧倒的な勝利を収めた2006年度インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールの副賞の1つとして、1683年製作Ex-Gingoldを4年間演奏することになった。ストラディヴァリウスが製作した楽器の中でも、最高傑作の一つに挙げられる名器である。

暖かく、まろなか光沢を帯びたその音色は人の声を思わせる。ハーデリッヒはその音質を存分に生かし、ドボルザークのゆるやかで壮大な第二楽章を魅惑的に彩った。

次席指揮者、デイモン・ガプトンは同楽章に巧みな伴奏を沿え、ヴァイオリン対オーケストラというより、滑らかに流れるアンサンブルのような効果を演奏にもたらした。最終楽章では、稀にアンサンブルに荒さが見られたものの(その一つにはドキリとさせられたが)、喜びに満ちたエネルギーを損なうことはなかった。

ドボルザークの協奏曲は素晴らしい調べを持ちながらも、やや長々とした感は否めないが、ハーデリッヒは同曲を巧みに表現しきった。豊かでまろやかな音色とともに、高難度な楽節を心満たされる容易さをもって演奏した。

コンサート・レビュー (サンタバーバラ・インディペンデント 2008年5月)

2009-10-20 | Reviews
サンタバーバラ交響楽団、アーリントンでお別れコンサート
2008年5月15日
ジェームズ・ヘンリー・ドネラン
サンタバーバラ・インディペンデント


アーリントンの夜空には今も星が瞬いている。しかし、サンタバーバラ交響楽団がアーリントンの星空の下で輝いたのは、5月10日の土曜日が最後だった。来シーズンよりグラナダに移転する楽団は、その夜、優雅なスタイルでアーリントンに別れを告げた。

その夜の演奏は、力強く高潔なベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲ニ長調で幕を開けた。2006年度インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールの優勝者であるイタリア出身の才気溢れる若手音楽家、アウグスティン・ハーデリッヒが、驚くべき清澄さと豊かな感受性をもって演奏を行った。

ハーデリッヒは、コンクール優勝により3万ドルの賞金に加え、ギンゴールドが以前に演奏していたストラディヴァリウスを4年間貸与されることとなった。ハーデリッヒとストラディヴァリウスは一つとなって素晴らしい音色を奏でた。

演奏はあらゆる面において完璧と言えた。フレージング、イントネーション、音色はすべて際立ったものだった。けれども、ハーデリッヒが他の演奏家たちから突出している点は、曲に対する解釈の深さにある。ハーデリッヒはけして、その優れた才能を披露するために演奏しているのではなく、曲の中の物語を人々に語り伝えるために演奏しているのだった。

例えば、ハーデリッヒは第一楽章のシンプルかつ確信に満ちた主題を、極限の活力を持って送り届け、続いて展開部に潜むあらゆる可能性を一つ一つ導き出していった。第二楽章『ラルゲット』の演奏は、感動的であると同時に知性に満ちあふれ、最終章に甦る確信が、音楽の力をもって賛美された。ハーデリッヒはアンコールにパガニーニのカプリース第9番を演奏し、再び満場の大喝采を浴びた。

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リサイタル・レビュー (ニューヨーク・コンサート・レビュー 2008年3月)

2009-10-08 | Reviews
2008年3月
ニューヨーク・コンサート・レビュー

・・・・・・悲惨な事故を乗り越えステージに復帰した若手音楽家、アウグスティン・ハーデリッヒが、カーネギー・ホールでのリサイタル・デビューにあたり、バラエティに富む4つの重要な作品を演奏した。その洗練された音色、非の打ちどころのないテクニック、ずば抜けた聴力、そして作品への芸術的献身は、人々に大きな感銘をもたらした。